英雄機ドランノーガ   作:兵庫人

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サイの選択

「み、皆、ちょっと大げさすぎないか?」

 

 ピオン達の力を合わせてサイのサポートをするという発言に、当の本人が若干気圧されたように呟いた。ホムンクルスが自分の主人に尽くす存在だという事は、この一月にも満たない期間で充分すぎるほど理解したつもりのサイだったが、こうして改めて絶世の美女である四人に言われると気後れしてしまう。

 

「いいえ。ちっとも大げさではありません。私達ホムンクルスにとって様々な場面でマスターのお役に立つ事こそが存在意義であり、至上の喜びなのですから」

 

 ピオンがサイに向かって言うと他の三人のホムンクルスも同意するように頷き、次にローゼが口を開く。

 

「それでは早速マスター様のお役に立ちたいと思います」

 

「え? 何をするんだ?」

 

「はい。まずは……」

 

「え……?」

 

 サイが聞くとローゼは妖艶な笑みを浮かべて彼に近づき、服を脱がせようとしてきた。一瞬、彼女が何をしてきたか分からなかったサイだったが、慌ててローゼの手を捕まえて止める。

 

「ちょっ!? ちょっと待てローゼ! 一体何をするつもりだ!?」

 

「何を、と言われましても……。今は夜で、殿方の前に裸体を晒した女性が三人もいるとなれば、する事は一つしかないでしょう? ……それに、マスター様の『そちら』も苦しそうですし?」

 

 ローゼはそう言うと意味ありげな視線をサイの股間にと向ける。

 

「ど、どこを見ているんだよ!?」

 

 サイは左手で股間を隠してローゼに怒鳴るが、先程からローゼ達の裸を見て興奮していたのは事実であったので、その怒声にはあまり勢いがなかった。そして褐色の肌をしたホムンクルスの女性は、そんな自分達の主人を微笑ましいものを見るような目で見つめる。

 

「そんなに恥ずかしがらなくても良いではありませんか? 私達ホムンクルスは男性の主人の子供を産んだり、この体を持って主人の心の疲労を癒すのも大切な役目。すでにマスター様はピオンさんの体を味わっているのでしょう? でしたら次は私達の体も味わってくださいな?」

 

「はい! マスター殿が喜んでくれるのでしたら、私をいつでもどこでも抱いて下さって結構です!」

 

「私も……。愛しのマスターの哀しみを癒せるのでしたらこの体、捧げます」

 

 ローゼが妖艶な笑みを浮かべながら言うと、それにヴィヴィアンが元気よく、ヒルデがゆっくりとした口調で同意する。その申し出は男としてはこれ以上なく魅力的で嬉しいものなのだが、それに対してサイとピオンは気不味い表情を浮かべていた。

 

 そんなサイとピオンの表情に疑問を感じたローゼが首を傾げる。

 

「……? マスター様? ピオンさん? どうかしましたか?」

 

「いや……。その、期待を裏切って悪いんだけど、俺とピオンってまだ……シていないんだよ……」

 

「……はい」

 

『『っ!?』』

 

 サイとピオンの告白にローゼにヴィヴィアン、ヒルデの三人が驚愕の表情となる。

 

「そ、そんなまさか……! 私達ホムンクルスは世間一般の殿方に好かれるように顔立ちや体を調整されているのに手を出していないだなんて……。まさかマスター様は不能? それとも同性愛の方なのでしょうか?」

 

「誰がだ!? そうじゃなくてこの最近、色々と忙しくて機会が無かっただけだって!」

 

 絶望したような顔となって言うローゼの言葉にサイは顔を真っ赤にして怒鳴り返す。

 

 サイの言葉は嘘ではない。ドランノーガを手に入れた直後から彼は、モンスターの大群との戦闘、フランメ王国とアックア公国のトップ二人との会談、他国の士官学校への留学と立て続けに大きな出来事に遭遇して、中々ピオンと二人っきりになれず「行為」をする機会に恵まれなかったのだ。

 

「ああ、そうでしたか」

 

 サイの説明にローゼだけでなく、後ろで話を聞いていたヴィヴィアンとヒルデも安堵した表情となる。

 

「それなら今がその絶好の機会です。マスター様、どうぞ私達の体を味わってくださいませ。……さあ、誰から抱いてくださいますか?」

 

「えっ!? そ、それは……」

 

 ローゼに聞かれてサイは顔を赤くすると、目の前にいる三人のホムンクルスを見る。

 

「……ふふ♪」

 

 蠱惑的な笑みを浮かべるローゼは、士官学校で出会ったあのブリジッタよりも大きな乳房を惜しげもなく揺らしており、この中で唯一の褐色の肌が異様な色香を出していた。

 

「はい! はい! 私を選んでくれたら、頑張って喜ばせます!」

 

 その場で何度も小さく飛んでみせるヴィヴィアンは、飛んでいる事で大きく揺れているピオンより僅かに大きな乳房に、ほどよく引き締まった肉体が健康的な色気を振りまいていた。

 

「愛しのマスター、誰を選ぶのも貴方の自由です。……しかし私を選んでくれたら嬉しいです」

 

 静かな笑顔をみせるヒルデは、ローゼのものよりも更に大きいこの場で最も立派な肉の果実を胸に実らせており、夜空の月や星の光を反射する柔らかな肌が大人の魅力を感じさせた。

 

「お、俺は………ん?」

 

 それぞれタイプこそ違うが絶世の美女である三人のホムンクルスを前に、サイが初めて肌を重ねる相手を考えていると、不意に服を小さく引っ張られた。

 

 サイが服を引っ張られた方を見ると、そこにはスカートを脱ぎ捨て、裸の上に前を開いた士官学校の上着を羽織っただけという姿のピオンがいた。

 

「ま、マスター……。わ、私はマスターの最初のホムンクルスです。確かに、今までマスターにご奉仕出来なくて、胸もこの中で一番小さいですけど、私はリーダーで……最初のだから……抱かれるのも、最初のはずだから……。マスター? 私を、選んでくれますよ、ね?」

 

「………………………………………!!」

 

 真っ赤な顔で上目遣いなって、捨てられそうな子犬のような視線を送ってくるピオンを見て、サイの中で理性の糸が「プツン……!」という音を立てて切れた。

 

 

 

 数時間後。哨戒任務を追えたドランノーガはアックア公国の首都ヴァンリスクへと帰ってきた。しかしその帰還は予定よりも二時間も遅く、ドランノーガには見知らぬホムンクルスの女性が三人も乗っており、その上サイが酷く消耗している様子に、出迎えたアックア公国の軍人達は全員首を傾げたのであった。

 

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