英雄機ドランノーガ   作:兵庫人

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お断りします

『いいえ、お断りします』

 

 エレナがサイに向けて言った「友達になってほしい」という言葉に答えたのは、サイではなくピオンとヴィヴィアン、ヒルデにローゼの四人のホムンクルス達であった。しかも四人同時の即答である。

 

「え……? あの、私はサイさんに言ったのですけど」

 

(俺もそう思う。何でピオン達が答えているんだ?)

 

 いきなりピオン達四人に断られたエレナは、戸惑いながらも笑みを浮かべて言う。サイも内心では彼女と同じ気持ちであったが、それに構う事なくピオンが四人のホムンクルスを代表して答える。

 

「私達はマスターの補助をする為のホムンクルス。つまり私達の声はマスターの意思だと思ってください。そして私達の目から見て貴女はマスターのご友人に相応しくありません」

 

「……! そ、それはどうしてですか?」

 

 ピオンの言葉にエレナは先程と同じ困惑した笑みのまま聞くが、サイは一瞬彼女の目と口元が不愉快そうに引きつったのを見逃さなかった。

 

「エレナさんがマスターのご友人に相応しくない理由は二つあります。一つ目は貴女がいつもそうやって大勢の男性を引き連れている事。マスターは女性は大好きですが、男性は嫌いです。一人や二人ならともかく、そんなに大勢の男性に耐えられるはずがありません」

 

「おい」

 

 自信を持って断言するピオンにサイがツッコミを入れる。

 

 確かにサイは女性が好きだが男が嫌いという訳ではない。それにそんな言い方だと、まるで病的な女狂いみたいではないか。

 

 しかしピオンはサイの声が聞こえていないのか言葉を続ける。

 

「そして二つ目はマスターは大の巨乳好きです。言い辛いですが貴女からは何の魅力も感じません!」

 

「……」

 

 言い辛い、と言いながら自分の豊かな胸を張って断言するピオン。しかし自分が巨乳好きである事を自覚しているサイは、これには何も言う事ができなかった。……けっして制服越しに揺れる彼女の胸に見惚れていた訳ではない。

 

「………!」

 

 このピオン(Fカップ)の胸を張って言い放たれた言葉にエレナ(AAカップ)は表情をなくして絶句する。しかしエレナが何かを言うより先に、彼女の隣にいたアルベロが怒声を上げる。

 

「このホムンクルス! そんな豊かな胸を見せつけてエレナへの見せつけのつもりか!」

 

 というアルベロの言葉を皮切りに、他の取り巻きもまた声を上げる。

 

「そうだ! いくら本当の事でも言ってもいい事と悪い事があるんだぞ!」

 

「人間は真実を突きつけられることが何よりも勝る苦痛になる事があるんだぞ! それなのにお前には情けが無いのか、ホムンクルスの少女よ!」

 

「確かにお前のその山のような胸は素晴らしいが、エレナの泉のような胸にも魅力があるんだぞ!」

 

「その通り! 私達はエレナの泉のような胸の魅力を知っている為、そのような誘惑には動じないぞ!」

 

 口々に言うアルベロを初めとするエレナの取り巻き達。彼らは彼らなりに彼女を弁護しているつもりなのだろうが、ピオンの胸が衝撃的だったのか全員よく考えずに勢いだけで話しており、全くの逆効果になっていた。

 

「あ、ありがとうございます、皆さん……! わ、私を、助けて、くれて……!」

 

 その証拠に、一応自分を弁護してくれたアルベロ達取り巻きに笑顔を浮かべて礼を言おうとするエレナだったが、目元や口元が引きつっていた。声も内心で押し殺し……切れていない怒りで若干震えており、額を見ると青筋が何本も浮かんでいるのが見えた。

 

 そんなエレナの姿はピオンとアルベロ達取り巻きの発言に無理をして怒りを我慢しているのが丸分かりだった。分かっていないのはアルベロ達取り巻きぐらいだろう。

 

「ぷぷー♪」

 

「………!」

 

 怒りを我慢しているエレナに向けて、ピオンが口元を隠してわざとらしく吹き出してみせる。それによりエレナの額の青筋が一本追加。

 

「あ、あの、私……ちょっと気分が悪くなったで今日はこれで失礼します……。サイさん、また今度お会いしましょうね」

 

「あ、エレナ、待ってくれ」

 

 エレナは所々引きつった笑みでそう言うと足早にこの場から立ち去っていき、アルベロ達も彼女の後を追って立ち去っていく。起こされたサイ達はエレナ達の背中を見送った後、ヴィヴィアンが首を傾げる。

 

「それで彼女達は一体何をしたかったんでしょう?」

 

「さあな。それでピオン? 何で彼女を怒らせるような事を言ったんだ?」

 

 サイはヴィヴィアンの疑問に首を振った後、ピオンの方を見る。先程からのホムンクルスの少女の態度は、わざとエレナを怒らせようとしていたのは明らかであった。

 

「それはもちろんあの女をマスターに近寄らせない為です。あのエレナって女、顔は笑っていましたけどあからさまにマスターを値踏みするような目で見てきて……。あんな女の側にいるとろくな事が起こりませんよ」

 

「……そうだな」

 

 質問に答えるピオンの言葉にサイは同意する。彼は自分を見てくるエレナの目に見覚えがあった。

 

 馬や豚などの家畜を見て、それがどれくらいの価値があるかを見定める農家や商人のような目。あの時のエレナはそんな目でサイを見てきた。

 

「どうやらビークポッドの話は本当のようだな。……まあ、あれだけやればエレナもしばらくは現れないだろう。ありがとう、ピオン」

 

「いえいえ、どういたしまして♪」

 

 噂通り男を侍らせて食い物にするようなエレナと関わりたくなかったサイは、彼女が自分から離れる理由を作ってくれたピオンに礼を言うと、最初の予定通り図書館へと向かった。

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