英雄機ドランノーガ   作:兵庫人

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二人の国主(1)

「サイ・リューラン君。ブリジッタ・アックア嬢。少しよろしいだろうか?」

 

 エレナとアルベロを初めとする彼女の取り巻き達との会話の後、サイ達が図書館でブリジッタと話をしていると、士官学校の教官が彼らに声をかけてきた。その教官は三ヶ月前にサイ達を校長室に呼び出した教官であった。

 

 教官は三ヶ月前とは別人のように、若干の怯えが混じった声でサイ達に話しかける。

 

「その……話の邪魔をしてすまないね。君達を呼び出しがきているから……ついてきてくれないか?」

 

「あっ、はい」

 

「分かりました」

 

 サイとブリジッタはそう答えると教官の後について行き、その後をピオン達四人のホムンクルスが続く。そして教官によってサイ達六人が連れてこられたのは、三ヶ月前と同じ士官学校の校長室……ではなく貴族の来客用の貴賓室であった。

 

「それじゃあ私はここで失礼するよ。……リューラン君、アックア嬢。そしてピオン君達四人も、くれぐれも中の人達に失礼のないように」

 

 貴賓室の前に着くと教官はそう念押しをしてからサイ達から離れて行く。その時の教官は、歩調こそ急いでいなかったが、まるで逃げているように見えた。

 

 教官が去った後、サイが代表して貴賓室の扉をノックすると、貴賓室から男の声が返事をしてきた。

 

「開いている。入りたまえ」

 

「……? 失礼しま……す……!?」

 

「まぁ……!」

 

「何故ここに……?」

 

 聞き覚えのある声だと思いながらサイが貴賓室の扉を開くと、サイとブリジッタにピオンの三人が貴賓室にいる人物を見て絶句する。

 

 貴賓室の中でサイ達を待っていたのは二人の男だった。

 

 一人は銀色に見える金髪に黒く日焼けした肌をした二十代の男で、もう一人は黒髪を逆立てたどこか野生的な印象のする四十代の男。

 

「やあ、久しぶりだね。サイ君、ピオン君、ブリジッタ嬢。そしてそちらにいる三人のお嬢さん達が報告にあった新たに加わったホムンクルスだね」

 

「ほう、三人とも美人じゃねぇか。やるなぁ、サイ。ブリジッタも久しぶりだな」

 

 二十代の男と四十代の男はサイ達に挨拶をした後、ヴィヴィアンにヒルデとローゼを見てそう言い、サイはそんな二人に信じられないって表情で尋ねる。

 

「あ、あの……何でお二人がここにいるのですか? フランベルク陛下。バルベルト陛下」

 

 サイが二人の男の名前を口にする。しかも名前の後ろに「陛下」の敬称を付けて。

 

 銀色に見える金髪に黒く日焼けした肌をした二十代の男は、サイの祖国であるフランメ王国の国王、フランベルク三世。

 

 黒髪を逆立てたどこか野生的な印象のする四十代の男は、このアックア公国の大公でありブリジッタの父親であるバルベルト・アックア。

 

 教官に貴賓室に呼び出されたかと思ったら、そこにフランメ王国とアックア公国の二国のトップがいれば驚くなと言う方が無理だろう。

 

「実はこの辺りで気になる噂を耳にしてね。丁度アックア公国とある条約について話し合いをする予定もあったので、こうしてやって来た訳さ」

 

「気になる噂、ですか?」

 

 サイの疑問にフランベルク三世が答えると、その言葉に気になる点があったサイは、首を傾げて再び自国の王に尋ねる。

 

「ああ。少し前からこの国にとある盗賊団が忍び込んだという噂だ。……サイ君、君も聞いた事があるだろう? 『黒竜盗賊団』だよ」

 

「……! はい」

 

 フランベルク三世が口にした盗賊団の名前にサイは表情を硬くして頷いた。

 

「マスター。黒竜盗賊団というのは何ですか?」

 

「十年前から世界各地で暴れ回っている盗賊団だよ」

 

 後ろから聞いてくるピオンにサイは黒竜盗賊団について説明をする。

 

「黒竜盗賊団はとても慎重な盗賊団で暴れるだけ暴れたらすぐに姿を消して足取りを掴ませない。しかもかなり大きな勢力で、その戦力は小国をも壊滅させる程らしい」

 

 サイがピオンと他の三人のホムンクルスに向けた説明にフランベルク三世が頷く。

 

「そういう事だ。そして私達フランメ王国は、他のどの国よりもあの黒竜盗賊団と因縁がある。黒竜盗賊団が出てくるのなら私が出るしかないだろう」

 

「……そう、ですね。仰る通りだと思います」

 

 フランベルク三世の言葉にサイだけでなく、黒竜盗賊団の事を知るブリジッタとバルベルトも同意して頷く。

 

 黒竜盗賊団の戦力は他の盗賊団とは次元が違い並の軍隊では相手にならず、黒竜盗賊団と戦うにはフランメ王国の国王であると同時にゴーレムトルーパーの操縦士でもあるフランベルク三世が出る必要もある事を理解していたからだ。

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