「【Jack kinfe】がやられた?」
狙撃用EX-AS、【Walk eye】のビームスマートガンで、シューティングゲームの様に次々とザクを撃ち抜いていたレイナだったが、近接用EX-AS撃墜の報告を聞いた瞬間、思わずスコープから目を離した。
「あの機体がやられたとなると………例の流星と戦車かしら?」
ここは連邦軍の南アメリカ一の補給基地。資源が欲しいジオン軍からしたら、絶対に取りたい地点。最前線になるからには、奴らが来ることは彼女なりに予測していた。
「まぁ、今は考えていても仕方ないわね。もしスコープに映ったら、撃ち抜くだけだわ。」
冷静に、クールに、そう自分に言い聞かせる。
「しかし、さっきからレーダーの調子が悪いわね…………。」
スコープから片目だけは無し、横に向ける。レーダーには時折ノイズが走ったりしていた。
「どいつかジャミングしてる機体があるわね。どれかしら?」
スコープを覗き、敵の位置を探ろうとすると、
ビー ! ビー ! ビー !
警報音が鳴り響いた。
「警報!?どこ!?」
辺りのカメラを見回すが、敵の姿は見当たらない。しかし、その瞬間、一つだけ見落としている方向に気が付いた。
『おい、EX-AS01、上を見ろ!!』
「真上!?」
移動しながら、オペレーターに促され機体の上空を見れば、大気圏突入用のVLSポッドがあった。そこに記されたマークは…………
「シーマ艦隊…………だって?」
レイナはスラスターを吹かしながら目を見開いた。
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「ハッ!あのEX-ASとやら!!尻尾巻いて逃げてるよ!!」
黄色と紫でカラーリングを施された、シーマのザクの中で彼女、シーマ・ガラハウは笑った。
「しかし、オデッサ上空に、しかも、衛星で確認した狙撃用EX-ASの真上に、ステルスとジャミングシステムを搭載した新型ポットを叩き込むなんて、あのヨーツンヘイムの坊やの案みたいだけど、全くクレイジーな作戦だねぇ。」
彼女は作戦会議が終了した後、ガルマの命令で、ヨーツンヘイムと合流していた。
「しっかし、シノの坊やが試作のドダイで現場に急行するとはいえ、私達の
ブリーフィングルームにて、シーマは手に持ったセンスを開いたり閉じたりしながら、ヨーツンヘイムの面々にそう声をかける。
「手段はそっちが用意するんだろう?ただし、」
睨みつけるモニクに目を向けた彼女は、センスをパン!!と大きな音を立てて閉じた。
「アタシらを捨て駒にしたり、死ぬ確率がバカ高いような作戦なんて考えてたら、アンタたちをハチの巣に指せてもらうよ?」
「無礼な!!我らの案を愚弄するか!!」
机に手を突き、立ち上がったのはモニクだ。シーマ艦隊は、かつてコロニー落しを実行する際、コロニー内にVXガスをばら撒いた張本人。ザビ家直属であり、神器を重んじる名家の出身である彼女にとって、到底許せる人間ではなかった。
「貴方とは、そりが合わなさそうですねぇ、特務大尉。実際そうだ。上層部は偉そうに命令するだけ、どんな案だって軍人なら従わなきゃいけないかもだけどねぇ、責任を被るのはアタシら実行する立場なのさ。それくらいの心配をする権利は、あると思うけどねぇ。」
「だからといって、脅しつけるような真似が通るとでも…………!!」
苛立つモニクに対し、シーマは座り、余裕の笑みを見せる。
「モニク大尉、落ち着いて。」
「【特務】大尉だ!!忘れるなと言っているだろう。それと、名字で呼べ!!…………ック!!」
それに対し、ヤマギが彼女をなだめる。ヤマギに対して一通りの愚痴をこぼした彼女は、席に戻った。
「へぇ、これが噂の、ヨーツンヘイムの技術少尉かい。随分と若い坊やじゃぁないか。」
ニヤリ、と細く笑む彼女。
「…………作戦を説明させてもらうよ。」
VXガスの件と、コロニー落しの件を知っているヤマギも、シーマに対しては思うところがあるようだ。
「まず、シーマ艦隊の最終目標だけど、ビデオに映っていた狙撃型の敵新型モビルスーツ便宜上、【EX-AS】と呼称するけど、奴を撃墜してもらいたい。」
「へぇ?
「そうだね…………宇宙から、奇襲する。」
「は?」
シーマはその言葉に顔をしかめる。まさかYESで帰ってくるとは思わなかったからだ。
「新型の降下用HLVがあるんだ。ステルス機構と、ジャミング装置を備えてる。それを使って地球にMSを下ろす。」
「しかし、狙撃用のEX-ASなんだろう?撃ち落とされたら終わりじゃないかい?」
「ううん。そこについてなんだけど、このHLVが降下するのは、EX-ASの真上にする。衛星カメラで見つけてね。」
ヤマギがそう言うと、シーマは腕を組んで俯いた。
もしかして…………そう思い、ゴクリ。と喉を鳴らすヤマギ。しかし、
「…………ハッ。」
シーマの口からこぼれたのは、笑い声だった。
「ハッハッハッハッハッ…………ハーッハッハッハッ!!」
大笑いするシーマ。
「ちょっ、シーマ様!?」
そんな彼女の姿を見て、副官であるコッセルが驚くが、シーマは笑うのを止めない。
「貴様!!いつまで笑えば気がすむ!!」
その姿にモニクがキレると、
「ハハ!!いやぁ悪いねぇ…………あまりにクレイジーな作戦だよ。しかし、気に入ったよ坊や。その作戦。乗らせてもらう。それに、」
立ち会がり、ブリーフィングルームを出て行こうとする。
「そう言う風に、アタシ達を信頼して作戦を任せてくれる酔狂な奴らは珍しくてねぇ。こういう機会に、立てられる手柄は立てておきたいのさ。じゃぁ、失礼するよ。機体の準備がある。」
そう言って歩いていくシーマ。
「(それに、あの坊や。)」
背後にいる部下達には見えないが、シーマの表情は、いつもの笑みとは違っていた。
「(アタシたちと同じ匂いがするよ。散々良い様に利用された奴から匂って来る特有の、『掃き溜めの匂い』って奴がねぇ。)」
そう思案する彼女の顔は、鼠を見つけた猫のような笑みを浮かべていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「
髪を振り乱し、レイナはそう叫ぶ。
「クソッタレがぁ!!」
スマートガンを構えて、HLV目掛けて放とうとするが、
「お前達、出番だよ!!」
「「「へいっ!!」」」
後方のHLVからマゼラトップ砲の射撃が飛んでくる。降りてくるHLVは全部で五機。その中から、十数機のザクが降下してきた。
「チッ、そんな物でぇ!!キャッ!?」
近くに砲弾が着弾し、衝撃でよろめいた。放ったビームはあさっての方向へ飛んで行ってしまう。
「行くよ!!しっかり援護しな!!」
黄色と紫にカラーリングされ大盾を装備したシーマのザクが先陣を切って降下する。バックパックにはパラシュートも付いているのだが、シーマの隊は開こうとしない。
「アタシがいいと言うまでパラシュートを開けるんじゃないよ!!ゆっくり降下するMSなんて、対空砲の餌食だ!!」
そう叫びながら、シーマの機体も、EX-ASに向かってマシンガンを放つ。
「弾幕張りな!!アイツに撃たせるんじゃぁないよ!!」
「「「「「へいっ!!シーマ様!!」」」」」
ザクが一斉にマシンガンの弾丸をばら撒く。
「チッ、なめるなぁッ!!」
しかし、EX-ASのバックパックからサブアームが伸び、二枚の盾を展開した。
「何ッ!?」
シーマが驚いた矢先、
「死ね!!」
ビームスマートガンから、ビームが連射される。次々とVLSが落されて行き、
「次はお前だ、シーマ・ガラハウ!!」
ビームが放たれ、シーマはとっさに盾を構えた。
「舐めるなよ!!その程度の鉄板で、このEX-ASビームが防げるか!!」
しかし、放たれたビームはその盾に阻まれた。
「なっ!!」
それにレイナは目を見開く。その瞬間、シーマのザクは、マシンガンを収納してシュツルム・ファウストを放った。
「グッ!?」
それはスマートガンを直撃し、爆散する。
「フッ、坊やに保険として持たされた対ビームコーティングが施された対ビームシールド。持ってきて正解だったね。さて、お前達、行くよォ!!」
パラシュートを捨て、地面に着陸したシーマは部下に呼び掛ける。
「へいっ、シーマ様!!」
マシンガンを撃ちながら、海兵隊のザク部隊はEX-ASに突撃する。
「チッ、ザク風情が!!」
一方でレイナは、腰のユニットからビームピストルを一丁抜いて構える。
「所詮は一丁。お前たち!!」
ザク部隊がEX-ASを取り囲むように動いた。
「連続で叩いて、囲んで、すりつぶすよォ!!」
「「「「「合点!!」」」」」
マシンガンを撃ちながら飽和攻撃を仕掛けるザク部隊。しかし、ピストルとサーベルで次々撃墜されて行く。
「オオォォォ!!」
背後から襲来したザクが、シールドを支えるサブアームを一本切り落とす。
「チッ!!」
そいつをビームピストルで撃ち抜いたレイナだったが、
「もらったよ!!」
シーマのザクの通常とは形状が少し異なる特殊なヒートホークが、もう一本のサブアームを切り裂いた。
「シーマ・ガラハウ!!」
ビームサーベルを振るうが。
「甘いよ、小娘ェ!!」
「げうっ!?」
ひらめいたシーマの膝蹴りで体勢を崩され。左腕を切り落とされる。
「もらったよッ!!」
「誰がぁッ!!」
振るわれたヒートホークを、レイナはかろうじてビームピストルの腹の部分で受ける。
「随分とアタシの部下たちをその小憎らしい機体で殺してくれたみたいだね。その借りは返すよォ!!」
「ふざけるな!!ならば、お前達がVXガスをまいて殺したサイドⅡの者達に、借りを返してもらおう!!」
EX-ASのパワーで押し切り、ビームピストルを構える。
「その事かい…………だけどねぇ!!」
一瞬だけ、彼女の表情に影が差す。その瞬間を逃さず。レイナはビームピストルの引き金を引いた。
「グッ!!」
それはザク腹部のホースを掠めただけに終わったが、シーマはヒートホークを振るう。
「終わりだよォ!!」
「まだまだぁ!!」
ピストルを捨て、右手でビームサーベルを引き抜いたレイナ。それは、ヒートホークを両断した。
「終わりだぁ!!」
「まだだよ!!」
一閃。しかし、そのサーベルが振るわれる前に、ブーストを吹かし、シーマは懐に飛び込んだ。
「悪あがきを…………!!」
「悪あがきじゃないさね!!」
腰の装甲がスライドし、一本のナイフが現れる。シーマのザクは、それを左手で掴んだ。
「仕込みナイフ!?」
「墜ちな!!」
刃をEX-ASの装甲の隙間に叩き込んだ。
「ガラハウゥゥゥ!!」
そんな絶叫が、シーマに届き、グシャグシャと色々なものを砕く音が聞こえた。
「恨みたければ、恨めばいいさね。アタシらはそれだけのことをしてきたんだ。」
倒れたEX-ASを眺めるシーマの瞳は、何処か悲しそうだった。
「シーマ様!!」
副官のコッセルの声が聞こえた。
「分かってるよ。お前達!!このEX-ASを回収しな!!技術部に持ち帰るよ!!」
「はいっ、シーマ様!!」
いつも通り、彼女は凛とした声で号令を出した。
オリヴァー・マイの技術調査レポート
オリヴァー・マイ(以下、マイ)
「どうも皆さん。オリヴァー・マイの技術調査レポートのコーナーです。」
オッテル・グリンブルスティ(以下、オッテル)
「今回のゲスト。オッテル・グリンブルスティだ。技術中尉、前回はレギンが世話になったな。」
マイ「いえいえ。お気になさらず大尉。今回の機体解説は、ジオンの新型MS。ラゴゥハウンド。その中でも、作中でお二人兄弟が乗る、L(レギン)専用ラゴゥハウンドと、O(オッテル)専用ラゴゥハウンドの紹介ですね。」
(図面が展開される。)
オッテル「作者によれば、モデルはSEEDシリーズから、バクゥだそうだな。」
マイ「まぁそれは、読者の皆様も理解していると思いますよ。なんたって作者に隠す気がありませんから。」
オッテル「機体名は、バクゥの指揮官機【ラゴゥ】と、バクゥの改修機、【ケルベロスバクゥハウンド】を混ぜているそうだな。中尉。メタ発言はこのくらいにしておいて、機体の説明に入ろう」
マイ「そうですね。この型式番号YMD-03【ラゴゥハウンド】分類上は、モビルスーツとも、モビルタンクとも違う、【モビルドッグ】となっていますね。四足歩行形態は通常のモビルスーツではいけない様な劣悪な足場を楽々移動できます。」
オッテル「その代わり、脚を一本でも失えば木偶の坊だ。」
マイ「四足歩行の機体は、【足が四本じゃないと重心が不安定になってしまう】という事ですからね。どちらの方が安定しているのか。議論の余地はありそうですね。」
オッテル「たしかにだ。武装は、口部にある近接武装【ヒートナイフ】と、【バルカン】。あとは、背部にオプションとして、ビームキャノンかミサイルランチャーを着けられる…………。案外武装が少ないのも欠点だな。」
マイ「腕が無いですからね。本部で改修案が上がってるそうですよ。」
オッテル「本部、という事は兄上か。」
マイ「大尉とレギン准尉の兄上…………たしか、ファフニール・グリンブルスティ中将ですよね?鬼神の如き強さを誇り、MS開発にも携わっている。」
オッテル「ああ。僕の自慢の兄だ。さてと、機体について説明するつもりが、ほとんどが雑談になってしまったな。これと言って解説できることが無い…………と言うか、ぶっちゃけカタログスペックはバクゥとほとんどのポイントで変わっていないからな…………」
マイ「あはは…………じ、次回は我らがオーディン小隊のエース、ソンネン少佐のヒルドルブを解説します。本編でも、少佐が大活躍を見せます。お楽しみに!!」
先に見たいのは……?
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亡霊が生んだ奇跡(ヅダ編)
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大海ニテ白鯨ノ影アリ(リゴック編)