いきなり動きが変わったEX-ASを前に、オーディン小隊の面々は翻弄されていた。
「うきゃう!?」
「レギン!? クソォ!!」
右前足を折られ弾き飛ばされたレギンをカバーしようとミサイルを放つ。が、
「おせぇんだよ!!」
「なっ速ッ!? ぐおっ!?」
近づかれたフェデリコに容赦なく蹴飛ばされる。
「そんな、グリンブルスティ大尉と准尉が…………」
唖然とするアルジュ。その隙を、フェデリコが逃すわけがない。
「そこだぁ!!」
「させません。」
スコープを除いたティナが、対艦ライフルのトリガーを引く。発砲された弾丸の上を、フェデリコは、飛び超えた。
「ッ!?」
「す、スプラウト少尉!! 危ない!!」
そのアルジュの言葉があったから、とっさに機体をそらすことができた。その結果、ビームサーベルを上空から振り下ろしてきたアポストロズによってトールの右腕が飛ぶ。
もし反応できていなかったら。ビームに貫かれる感覚など何があっても体験したくはない。
「くっ!!」
「そのまま死ねっ!!」
「少尉からぁ!!」
ビームサーベルで容赦なくトールにとどめを刺そうとしたフェデリコだったが、とっさに突き出されたベイオネットを回避することでその動作が中断される。
「目障りだぞ偽物ども!!」
吼えるフェデリコだったが、その瞬間飛んできた
「おいおい、部下にばっか手を出してるんじゃあねぇよ。」
ヒルドルブの戦車砲から、白煙が昇っている。
「しょ、少佐!! お逃げください!!」
「馬鹿野郎。部下を殺して逃げる上官がどこにいる!! ラジードの仇だ。コイツはここで仕留めるぞ!!」
「早すぎる!!ヒルドルブでは…………。」
「お喋りしてる間に近づかれんだよ!!」
アルジュの言葉を遮って、フェデリコの凶刃がソンネンに迫る。
「この距離じゃ戦車砲は役に…………がっ!?」
肉薄したフェデリコだったが、その瞬間、ヒルドルブが放った砲弾により跳ね上がった履帯に殴られて地面を転がる。
「役に立つんだよ。こんな風にな。」
そのまま放たれる散弾。しかし、跳ね飛ぶような動きでそれをフェデリコは回避する。
「舐めんな!!」
「油断も驕りもなしでかかってるよ!!」
マシンガンを乱射して弾幕を張る。
「甘い甘い!! そんなんでコイツには…………。」
「クソッ、気色の悪い動きだな盗人野郎!!」
が、しかし、そんなものは阿頼耶識によって動いているフェデリコのガンダム・アポストロズを相手に何の意味もなさない。
「そこだぁ!!」
「何のぉ!!」
右腕だけしかないはずのアポストロズ。しかし、その右腕だけでここまでの暴れようだ。
「(クソッ、勝つためにはあと一手。一手でもいい!! 何か…………。)」
無くなっていく弾。気分は沼の前に座るカイジだ。
「往生しろや!!」
「やなこった!!」
ビームサーベルを、ドーザーブレードとマシンガンを一丁犠牲にしのぐ。
「まだ耐えやがるか。だがもう限界だろ? 次で切り飛ばしてやる。」
「弾丸は惜しまねぇさ。いつだって勝負を決めるのは一発だ。」
ソンネンとフェデリコ。違うところは多けれど、二人には根の部分で同じだ。
同じ、生粋の戦争屋なのだ。ゆえに、
「「テメェなんざ、一発あれば十分なんだよ!!」」
咆哮と共に放たれたAPFSDS弾。それを、フェデリコは回避する。
「ヒャアッ!!」
そして、肉薄した。
「オラァッ!!」
「舐めんな!!」
ヒルドルブのショベルアームで殴り掛かる。が、
「そんな付け焼刃でよぉ!!」
一本目が切り飛ばされ、迫る二本目も
「俺が止められると、本気で思ってのか!?」
返す刀で切り飛ばされる。 ここぞとばかりに突き付けたマシンガンも、蹴りで破壊された。
「死ねよ、デメジエール・ソンネン!! すぐに部下もおんなじ所に送ってやっからよォ!!」
そして、ソンネンの機体を踏みつけ、サーベルを振り下ろそうとした時だった。
「待ってたんだぜ、この時をよぉ!!」
ソンネンが獰猛な笑みを浮かべる。そして、その瞬間、背後から迫る砲弾に、とっさにフェデリコが飛びのいたが、その砲弾は、炸裂した。
「何ィっ!?」
炸裂した砲弾によって、スラスターが誘爆する。
「しまっ!?」
「終わりだな。」
そして、ところどころType-3弾を装甲に受けているヒルドルブの砲身が、空中のガンダム・アポストロズをとらえる。
「デメジエェールウゥゥゥ!!」
吼えるフェデリコ。しかし、黒煙を噴き上げるスラスターは動かない。先ほどの動きで、吹かしまくった推進剤が切れていたのだ。
「地獄でやってろ。お前だけに殺されるわけにはいかねぇのさ。」
放たれるAPFSDS弾。それは、完全にフェデリコの居るコクピットを貫いた。
倒れこみ、爆発炎上するガンダム・アポストロズ。
「ふぅ。」
ソンネンは、たいして柔らかくもない座席に、体を預けた。
「状況は…………。」
「トールが大破。グングニールは戦闘継続可能ですが、ラゴゥハウンド二機は…………」
「う、うごけないの。ミサイルも打ち尽くしたし。」
「何でもいいが助けてくれないか?」
そう。蹴飛ばされたオッテル機は横転して動けなくなっているのだ。四本の足をもぞもぞ動かす姿に、
「「「(かわいい。)」」」
と思ってしまったのは余談である。
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その後、オデッサでの戦闘は、駆けつけたシノ達の戦果もあり、ジオンの勝利に。ジオン軍は、オデッサの物資集積場を手に入れることに成功した。
しかし、連邦軍の多大な反撃、EX-AS、被害は、大きかった。
「おい、隊長!!」
疲れてMSデッキ近くのベンチに座るソンネンに、血相を変えたリツが走ってくる。
「リツ?」
「ラジードのザクが見えないんだけどよ、さっき、レギンに聞いたら…………その、」
「事実だ。」
「…………ッ!!」
わなわなと、体を震わせるリツ。
「こんなところでする話じゃねぇな。ちょっと来い。」
そう言って、ソンネンは立ち上がる。
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「レギン、入るぞ?」
「オッテルお兄ちゃん?」
オッテルが扉を開けた先にいたのは、ベットの上うずくまるレギンだった。
「食事を持ってきた。食べに来ていないと心配していたぞ。料理長がお替りこれないからって特別に大盛りにしてくれたぞ。お前の好きなキノコと鶏肉のソテーだ。勝利祝いのな。」
笑みを浮かべ、トレーをテーブルに置く。しかし、
「祝えないの。」
「レギン?」
うずくまったレギンは、オッテルに顔もむけず、かすれた声でそうつぶやく。
「どうした? 何時もはしゃぐお前が、珍しいな。」
「リツ大尉が…………。」
「彼女がどうしたのか?」
「ラジード君が…………その、死んだことを知らなかったの。」
「…………何?」
「それを言った時の、あの顔が……わすれられないの。」
「レギン。」
「甘ったれだって、戦闘前に言われたの。」
「…………たしかに、そうではあるな。」
「でも、ラジード君が死んで、悲しくて…………今まで私が殺してきた人にもこういう風に、悲しむ人が…………。」
「確かに、いただろうな。」
「だったら、私、私…………。」
「分かってる。お前がそれをつらいと感じるのも、軍人になったのは、俺たちに認めてもらいたかったからだってのも。顔も知らない奴らのために、泣いてやれるくらいの善人だっていうのも。」
うずくまるレギンに、オッテルは背中をさすりながら声をかける。
「お兄ちゃん。」
「だが、それが戦争だ。俺たちは、軍人なんだ。覚悟を決めなきゃならない。」
「覚悟はしてるの。恨まれる覚悟も、殺す覚悟も。だけど…………。」
ベットは、もう濡れている。レギンは、涙でゆがんだ顔で、オッテルに向き直った。
「私、悲しいよぉ!! こんな奪い合いだなんて!!」
「ああ。わかってる。だから、終わらせるために戦うんだ。」
「でも、でもぉ!! ぐすっ、うわあぁぁぁん!!」
泣き叫ぶレギンをオッテルは優しく抱きしめた。
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基地の外。すっかり暗くなった星空の下で、コーヒー片手に手すりによりかかったリツは、ミントタブレットを放り込んだソンネンに問いかける。
「……なぁ、マジなのかよ、隊長。ラジードが、死んだって…………。」
「誰から聞いた?」
その質問に答えず、ソンネンは聞き返す。
「……あの甘ったれ」
「レギンか…………」
そっぽを向いてつぶやいた言葉で特定した。
「ならわかるだろ? アイツには裏表がない。まっすぐな奴なんだから。」
「……できるなら、そんなまっすぐな奴がいたずらで言った不器用なブラックジョークだって信じてぇよ。」
コーヒー缶から、ミシッ、と言う音がする。
「言うと思うか? そんなブラックジョーク」
「分かってんだよ…………そんなことは!!」
吐き捨てるようにリツが言う。
「でも、信じられるか!? フォルネウスッつう二つ名持ちだが、年端もいかねぇガキなアタシのお目付け役だったんだ。アイツは、あれでもそこそこの実力があったんだぜ?」
「…………人間死ぬときってのは、あっけないもんだ。誰でもな。」
「…………なぁ、」
「ん?」
コーヒーを一口飲んで、ソンネンにリツは顔を向けた。
「アイツの、ラジードと、アイツをぶっ殺した奴の最後、教えてくれよ。」
「…………お前の気が済むならな。」
「ああ。」
そう言われると、ソンネンは話し出した。ラジードと、フェデリコの最後を。
話が終わるころには、コーヒーの缶は空っぽになり、アスファルトの上に、透明な液体が落ちていた。
「……油断、大敵じゃねぇかよ…………あの、馬鹿野郎…………!!」
吐き出すようにそういう。
「…………」
その姿を、ソンネンは、黙って眺める。
「なぁ、隊長。」
「ん?」
「仲間が死ぬって、こんなに、辛いんだな…………」
「ああ。これだけは……、慣れねぇよ。」
「……残された奴らは、どうするのが正解なんだろうな…………」
その言葉に、ソンネンは自分のコーヒーを飲みほした。
「残された奴に出来ることは、そいつらの死が無駄じゃなかったって、そいつらの生きた道の先を行くことだけだ。……レギンにも、似た様な事を言った」
「……ハッ」
かすれた笑い声がこぼれる。
「何だよ……アタシも、あの甘ったれと変わんねぇってことか」
「変わらねぇさ。年端もいかないガキなんだからな…………」
そう言うと、リツは限界を迎えたように。
「チクショウ……寂しいぜ…………ラジードォ、何で……、どうして死にやがった…………なんでだよぉ!!」
と、声をあげて泣いた。ソンネンに出来るのは、それを黙ってみて、慰めるだけ。
「うわあぁぁぁ!!」
リツの鳴き声が、夜中のオデッサに木霊した。
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「教官は……こういうのは上手でしたよね。」
その近くで、アルジュはタバコを片手にそうつぶやいた。
「……そろそろ行くか。」
煙草を消して、後にしようと食堂を通りかかった時だった。
「あうあ。」
ベチャ
「ん?」
食堂の方からそんな音が聞こえてきて、顔を向ける。
「あうあ。」
ベチャ
そんな音と共に、爪楊枝と皿をタコ焼きが行ったり来たりしている。
「スプラウト少尉?」
すると、眠たげな顔のティナは、
「あ、准尉…………。」
と、アルジュに顔を向ける。
「何をしているんです?」
「夜食にタコ焼きをいただいたのですが……あうあ。」
ベチャ
爪楊枝に持ち上げられたタコ焼きが、滑り落ちて皿の上に転がる。
「このタコ焼き、私の口から逃げるようなのです。まだ内部のタコが生きている可能性が…………。」
「だったらタコじゃなくてクリーチャーですね…………。」
と突っ込んでから、
「少尉、タコ焼きと言うのは一本の爪楊枝で刺すと安定しないのですよ。」
と言って、もう一本爪楊枝を取ってきて、二本の爪楊枝で刺して、タコ焼きをティナの口に運んだ。
「はむっ。」
もぐもぐ。とタコ焼きを食べる彼女を見て、
「(…………少尉、死体慣れしてるのかな? グリンブルスティ准尉やリツ大尉みたいに泣いたりしない。かといって……。)」
またしてもタコ焼きを口に入れるのに苦戦しているので入れてあげる。
「(大人びてるわけでもない……と言うか、こういうのは年端もいかない少女だって思い知らされるんだよなぁ…………。どうなっているんだろう?)」
と、考えていると、
「
「は? なんでしょう? スプラウト少尉。」
もぐもぐ、ごくん。とタコ焼きを飲み込んで、
「そういえば、お礼がまだでした。あの機体との戦いのとき、准尉の言葉が無ければ、私は死んでいました……。」
「そんな……少尉の実力なら…………。」
「スナイパーと言うのは、近づかれると弱いものですが、有効射程距離が長い凄腕スナイパーなんて言うのはフィクションの中の存在です。近づかれたら弱いのに、近づかないといけない。ですから、信頼できる見方が必要なのです。」
20㎞先の戦闘機に砲弾を命中させる少尉が言うと説得力がないなぁ。と思いながらも。
「では、ありがたく受け取っておきます。」
と、アルジュは笑みを見せた。
今回は戦闘より、その後の方に力を入れました。オーディン小隊編から、ここから再び流れが603に戻ります。神速のゴーストファイター。そんな彼の前に現れる、強敵の存在。
強化された【奴】相手に遠慮なく激闘を繰り広げてもらおうと思うので、お楽しみに!!
先に見たいのは……?
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