鬼滅の刃-誠の花-   作:仲村 リョウ

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日間ランキング63位入りしてました……

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其の漆:最終選別へ

 あれから二ヶ月──いよいよ鬼殺隊へ入るための最後の試練である最終選別へ挑む日がきた。沖田はカナエに買ってもらった予備の桜色の着物と袴を着て、玄関でブーツを履き、風呂敷を肩へと縛る。

 

「気をつけてね沖田ちゃん。ちゃんと生きて帰ってくるのよ」

「はい」

「沖田さんの実力なら大丈夫だと思いますけど、無茶だけはしないでくださいね。ただでさえ病弱なんですから……私が作った薬はしっかり飲んでくださいね?」

「はい。ありがとうございます、しのぶさん」

「わーん!必ず帰ってきてくださいね沖田様ー!」

「美味しいご飯を作って待ってますー!」

「御武運をー!」

 

きよ、すみ、なほは泣きながら沖田へと声援を送りながらも、しばらくしがみついていた。沖田がしばらくいなくなる事に、不安で寂しいのだろう。

 

「沖田様。帰ってくるのを待ってます」

「はい。アオイもお元気で」

「…………」

「カナヲも──」

 

ポンっと優しくカナヲの頭の上に手を乗せて微笑む沖田。カナヲは少し無言のまま沖田を見つめていたが、手を離して玄関から外へ出ようとした時だ。

 

「えっ?」

 

カナヲが沖田の袖を握っていたのだ。

 

「あらあら。カナヲったら……」

「カナヲが珍しい……」

「やっぱり寂しいのかしら。沖田ちゃんもお姉ちゃんだものね」

「カ、カナヲ〜……」

 

 カナヲが少し心を開いてくれた事に思わず感動してしまう沖田。あれからというもの、沖田はカナヲとは積極的に話をしたりとおやつを一緒に食べたりと行動を共にしていた。また、その部分はいずれ語るとして──やっとの思いで努力が報われた瞬間がやってきたのだ。

 

「カナヲ。私は必ず帰ってきますから手を……」

「………(フルフル)」

 

 首を横に振るうカナヲ。これには思わず沖田も動揺してしまい呆然としてしまう。

 

「ええっと……」

「カ、カナヲ?沖田ちゃんもう行かないといけないから手を離して……」

「………(フルフル)」

 

どうしても首を横に振っては手を離そうとしないカナヲ。

 

「ちょっ、カナヲそろそろ手を離してくれませんと最終選別が……ふぬぬ!って、力強い!」

「ほ、本当に力が……しのぶ。手伝って!」

「ふん!──って、なんですかこの力!」

 

デフォルメで映されるコメディ場面と言えるだろうか……しのぶの他にアオイにも手伝ってもらい、ようやく沖田の袖から手を離したカナヲ。

 

「はぁ……はぁ……やっと離れたわ……」

「お、沖田さん。もう行かないと……」

「は、はい。すみません。では行ってきます」

 

 お辞儀をして玄関から走り去って行く沖田。其の背中を見ていたカナヲは小さな声で、

 

「沖田お姉ちゃん……」

 

と言っていたのは誰も気がつかなかった──

 

▽▽▽

 

-藤襲山-

 

 最終選別が行われるこの山は麓から中腹まで藤の花が咲き誇っている。

 

(綺麗……)

 

階段を登りながらも沖田は紫色に覆われた世界に思わず目を奪われる。

 階段を登り切れば、そこには最終選別に参加するであろう少年少女達が二十名ほど立っていた。

 

「「皆さま、今宵は最終選別にお集まりくださってありがとうございます」」

 

 藤の花柄の着物を着た瓜二つの女の子たちが最終選別の説明を始める。まず、白髪の少女が口を開く。

 

「この藤襲山には鬼殺の剣士様方が生捕にした鬼が閉じ込めてあり、外に出ることはできません。山の麓から中腹にかけて、鬼共の嫌う藤の花が一年中狂い咲いているからでございます」

 

 そして、交互に黒髪の少女が説明を行う。

 

「しかし、ここから先には藤の花は咲いておりませんから鬼共がおります。この中で七日間生き抜く」

 

「「それが、最終選別の合格条件でございます。では、皆さま──いってらっしゃいませ」」

 

 

そして、最終選別が始まりを告げるのだった──

 

 ▽▽▽

 

 沖田が山の中へと足を踏み入れて数時間が経過した。最終選別が始まるなり、二十名くらいいた者たちは散り散りと山の中へと消えていく。

 

「さて……カナエさんからは最低限の非常食と水は持たされていますが……」

 

勿論、これだけで七日間耐えられるのなら苦労はしないだろう。最低限、水は確保しなければならない。

 

「あとは──治療用の消毒薬に包帯、軟膏ですか。これはアオイが用意してくれたものですね」

 

 暴漢の件以来、アオイからは慕われており、今では柔術といった護身術を教えたり、応急処置の仕方を教わったりという仲になっている。護身術に関しては、せめて人の手からは守れるようアオイから申し出てきたのが始まりだ。

 

人間()だ!」

「久方の獲物だ!!」

「待て!俺が食べる!!」

 

 突然前方から飢餓状態の鬼が三体、沖田の方へと走ってきた。鬼を見るなり沖田は「またですか」とため息を吐いて、鞘から刀を抜く。

 

 そして、一瞬で鬼の方へと移動し、一体の頸を斬り裂いた。

 

「は?」

「なっ!?い、一瞬で──かひゅっ!」

 

 動揺したのが命取り……また、もう一体の鬼の頸が宙を舞う。沖田はまたも、その鬼の背後へと回り込み刃を振るったのだ。

 

「なっ!こいつ……ただのガキじゃ……」

 

最後の一体も最後までしゃべる事なく頸が胴体から離れる。

 

「ふぅ……どうして、こうも鬼って斬り合いの最中に話したがるのでしょうか」

 

血を振り払い、鞘へと納刀する。鬼達は霧状の灰となり散っていく。

 

「まあ、その分すぐ倒せるので楽と言えば楽ですが……」

 

 普段、親しい者と接する時はお調子者で物腰柔らかい印象を見られる彼女だが、戦いになると非常なほど冷酷かつシビアな面を見せる。これが沖田総司という剣士だ。相手が人間であれば、顔を見ただけで慌てふためきながら逃げていくだろう。

 

「さて。油断せずに行きましょうか」

 

 まずは拠点となる場所と水源の確保だ。出来るならあまり動かずにいたいのが本音だ。これは、しのぶからのアドバイスかつ注意されたことである。

 

『鬼に襲われた時以外はあまり動かないこと。動きすぎると体力が消耗するのは当たり前ですけど、沖田さんにとってそれが命取りになることを肝に銘じてください』

 

 確かにしのぶの言う通りである。今はまだ冬の季節であり、体温を維持するため体力の消耗は多いだろう。また、夜の山はまた一段と冷える──早めに拠点となる場所を見つけないと、体力がもたないのは目に見えている。

 

「この状況──意外とハードモードですね……」

 

 軽くため息を吐くと白く舞い上がっていき、改めて冬の寒さが身に染み渡っていく。

 

(うぅ……長い七日間になりそうです)

 

 

 こうして、沖田の最終選別が始まりを告げたのだった──

 




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