鬼滅の刃-誠の花-   作:仲村 リョウ

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 日間ランキング24位……初めてのことで震えております……

真菰の最終選別時期が分かりませんでしたので、カナエ救出後に致しました。


其の捌:真菰

-最終選別4日目-

 

「今日で合計13体目の討伐……相当飢えてるんですねここの鬼達は……」

 

 一日で平均三体くらいは鬼に襲われており、どれも全部は返り討ちで灰へと返している。

 

 無事に水源を確保し、食料を調達する以外無駄な動きはせず、鬼に襲われた時だけは動く──これを上手くやる事で、体調を崩すことなくやってこれた沖田だが、毎日毎日と鬼に襲われるのは流石にため息を吐いてしまう。

 

(しのぶさんの薬のおかげで少しは楽ですが……)

 

 だからと言って、油断は禁物だ。しのぶ自身も、

 

『薬はまだ試作ですので過信しすぎないようにしてください』

 

 っと、注意を受けている。それでも、呪いとも言える病弱体質を抑えれる薬を作りだしたしのぶは流石である。

 

「さて……拠点に戻りますか……」

 

 刀を収めて、歩き出そうとした時だった。

 

「うわぁあああああ!!!」

 

 突然、草木をかき分けて現れたのは少年だ。腰には刀を掛けているため、最終選別を受けている者だろう。相当焦って走っていたのか、目の前にいる沖田に気付く事なくぶつかってしまう。

 

「いたっ!?お、鬼!!」

「なっ!?失礼な!!沖田さんの何処が鬼に見えると言うんですか!!」

「ひっ!?す、すみません!!」

 

 尻餅をつきながらも必死に謝る少年。沖田は「全く……」と呟きながら、片膝をついてしゃがみ込んで少年の顔を覗き込んだ。

 

「何があったんですか?」

「うぇっ!?え、えっと……」

「──?」

 

少年は間近にある沖田の顔を見るなり赤面してしまう。それも当然だ──なにせ、沖田は抜群に美人の部類に入る。そんな美少女が思春期の男児の近くにいるとなると、たじろいでしまうのも無理はない。

 

「ば、化け物……鬼がいたんです。それも、普通じゃなく大きい奴です」

「大きい鬼ですか」

「はい……触手がグルグルって──とにかく、異形です。アイツは相当人を食べてますよ」

 

 鬼は人間を食べた数で強さが決まる──沖田はそうカナエから聞かされていた。

 

「も、もう無理だ……あんな奴がいるだなんて……た、戦えないよ……」

 

その鬼のことを思い出してしまったのか、恐怖のあまりに少年はカタカタと体を震え出してしまう。

 

「諦めないでください」

「えっ──」

 

沖田はそっと少年の肩に手を置いた。顔を見上げると沖田は微笑んでいる。

 

「あなたは地獄のような所で四日間生き延びてるんです。なら、最後まで諦めないでください」

「で、でも……」

「何も戦うことはありません。この最終選別の条件を思い出してください」

「条件……あっ」

「七日間生き残ること──そうでしたよね?」

「は、はい……」

「だから戦わなくてもいいんですよ。命が危なくなったら逃げること……それは人間が持つ、当然の権利なんですから。だから生きてください」

 

沖田はそれだけを伝えると、立ち上がってその鬼の気配を探るため神経を集中させる。

 少年が走ってきた先から、ピリピリと強い気配が肌で感じてしまう。彼の言う通りこの鬼は少し強い。だが、それと同時にもう一つの気配……少しずつ弱まっていく感じだった。恐らく、誰かがその鬼と戦っているのだろう。

 

「私はもう行きます」

「は、はい──あ、あの!」

「──?」

「逃げてきた身で勝手を言ってすみません!その鬼と戦っている女の子がいるんです!どうか……どうか助けてあげてください!!俺──もし、最終選別を生き抜いて、鬼殺隊に入ったら、ちゃんと戦いますから!!」

「──はい」

 

沖田は微笑んでそう言うと、鬼がいる方へと走り去っていく。

 

「……は、速い。もう見えなくなった……」

 

やはり、沖田の速さは普通の人から見れば異常だった──

 

▽▽▽

 

「うぐっ!?」

「クスクスクス。いい加減諦めろ、鱗滝の弟子……大人しく食われた方が苦しまずにすむんだぞ」

「くっ……誰が!」

 

 切っ先を地面に突き刺しながらフラフラと立ち上がる少女。目の前には緑色の異形が少女を見下ろしている。もう人間の原型は留めておらず、無数の腕を生やして胴体に結びつけている──もはや、鬼と言うのも怪しいものだ。

 

「倒す……鱗滝さんを悲しませた奴は……必ず!!」

 

 少女は立っているのもやっとな状態だ。それでも、刀を構える──

 

 そして、少女は地面を蹴って走り出した。もう技も出せないのも自身では分かっていた。それでも──この鬼だけは倒さないと帰れない。

 

「クスクスクス。やっと捕まえたぞ」

「──!?」

 

地面から這い出る無数の腕が現れ、少女目掛けて飛んでいく。斬り裂こうにも、もう遅かった。四股を掴まれると、宙へと持ち上げれ刀が手から落とされる。

 

「いたっ!」

「クスクスクス。痛いか?だから言ったろう。大人しく食われた方が楽だと……さて、何処から潰してやろうか。いや、引きちぎったほうがいい声が出そうだなァ」

 

 楽しそうに見つめながら、下衆な笑みと言葉を使う鬼。

 

(私──死ぬの?)

 

目の前までそれは迫っている。もう、恐怖とかは感じない。

 

(鱗滝さん、ごめんなさい……私……)

 

 死を覚悟し、目を閉じて師へと詫びを入れた瞬間だ。

 

「グァアアアアア!!!??」

「えっ?」

 

 鬼が悲鳴を上げた時に目を開けると、四股を掴んでいた腕が斬られ、少女はいつの間にか桜色の着物を着た女性に抱き抱えられていた。

 スタっと衝撃を与えずに着地すると女性はソッと少女を地面へとおろし、笑顔を見せて──

 

「もう大丈夫ですよ」

 

と伝えた──

 

 少女は思わずその容姿に見惚れてしまう。白がかったブロンドの髪に剣士とは思えない華奢な体……桜色の着物に赤みがかった袴がよく似合っている──こんな状況でもそんなことを思ってしまった。

 

「あ、ありがとう……」

「あの鬼は私が倒しても?」

「は、はい──今の私では戦えないから……」

「分かりました。では、終わったあと治療しましょう」

 

 沖田はそう言うと鬼へと振り向き、平正眼の構えをとる。

 

(な、なんて殺気……気をしっかりしてないと、気を失いそうなほど……)

 

ぱっちりとしたつり目から急に剣士への顔つきへと変わる。本物の殺気というのは、こういうものなんだと少女は理解した。

 

「ちくしょう!ちくしょうちくしょうちくしょう!!よくも俺から獲物を奪い取りやがって!!せっかく鱗滝の弟子を食えると思ったのに邪魔しやがってぇ!!」

 

 地面から這い出た腕が一斉に沖田へと襲いかかる。すると、沖田は縮地を使って地面を蹴るのと同時に腕を一斉に切断してしまう。

 

「す、すごい……」

 

あまりの速さに驚いてしまう少女は呆然としてしまう。沖田がいた場所を見ると、そこにはもう土煙しか舞い上がってなかったのだから。

 

「クソ!!何処行きやがった!!」

 

 消えた……そう思った鬼は辺りを見回す。

 

「何処を見ているのです」

「なっ!?」

 

後ろへと回られていたのか、鬼は攻撃する暇もなく、胴体に結びついている腕を斬り落とす。

 

「クッ!?さ、再生を──!?な、何故だ!何故腕が再生しないィ!!」

()った!」

 

 沖田はそのまま地面を踏み込んで頸目掛けて飛び込む。

 

「鱗滝ぃぃいいいい!貴様が──貴様がこんな檻に入れたせいでぇぇえええ!!!」

 

そして、鬼の胴体から頸が離れて宙を舞った。

 地面へと降り立った沖田は血を振り払って刀を鞘へとしまう。

 

「クソッ……クソッ……鱗滝ぃ………貴様の……せいでぇ……俺は……」

 

鬼はそう言いながら灰へと変わっていく。

 

「クソッ………うぅ………兄ちゃん……ごめん……なさい……」

「──!………早くお兄さんの所に行ってください。お兄さんは貴方が行くべき場所で待っていますから……」

「ほん……とう……?それな…ら……行…かな……くちゃ……」

 

その言葉と同時に鬼は灰へとなり、消滅していった。

 

(カナエさんの言う通り……鬼は元々人間……)

 

 だとしても、鬼がしてきたことは許せないことだ。敵であるなら全て斬り伏せる──そうでなければ、あの少女は死んでいた。だから、沖田は後悔はしない。斬らなければ死ぬのは自分であり、他人だということはとっくの前から理解はしているのだから……

 

「ふぅ……」

 

軽く息を吐いて、少女の方へと振り向く。先程の殺気は何処へ行ったのやら……笑顔を見せる沖田の姿に少女は戸惑うばかりだ。

 

「さて──自力で動けそうには……ありませんよね」

「う、うん……ごめん」

「謝らないでください。さあ、応急処置しましょう」

 

沖田はそう言うと、風呂敷を地面へと下ろして包帯やら医療品を取り出す。

 

「じゃーん。しのぶさんが作り出した特別な塗布薬です!少々痛みますけどね」

 

瓶には薄い緑色のクリームが詰められている。

 

「ふむ……両腕の手首と両足の足首に青あざ……相当強く握られたんですね」

「うん……引きちぎられてたかもしれないけど……」

「……間に合ってよかったです」

 

そう言いながら沖田は両手に塗布薬を滲ませて、少女が負った青あざの所へと塗っていく。

 

「いっ……」

「我慢してくださいね。痛みはすぐ引いてきますから」

 

 塗布薬を塗った後は包帯を巻き、続けて外傷の消毒を行う。目立つところも軟膏を塗布してガーゼを貼って包帯を巻いていく。アオイの指導のおかげと言っていいのか、慣れた手つきで次々と応急処置を行っていく。

 

「はい、完了です。まだ他に痛むところとかありますか?」

「ううん。特にないよ──ありがとう。えっと……」

「あっ、名前はまだ言っていませんでしたね、……私は沖田総司と申します」

「えっ?沖田……総司?」

 

やはりと言っていいほど同じ反応だ。沖田は以前、朝太警部補と同じ説明をすると、これも同情と言った言葉をかけられる。沖田にとってはなかなか複雑な思いだ。

 

「えっと……沖田」

「はい」

「本当にありがとう」

「いえいえ、どういたしまして。では、拠点へ一緒に行きましょうか」

「拠点?」

「はい。遭難は別として、こうした環境では必要最低限動かない方が生き残れますからね」

「へぇ〜……」

「では行きましょう。肩を貸しますよ」

「えっ?わ、私もいいの?」

「勿論ですよ。困った時はお互い様です。なにより、こう言う状況では助け合った方が生き残れますからね。それに、あなたとこうして会えたのも何かの縁だと思います」

「──うん。ありがとう……えっと……」

「──?どうしましたか?」

「そ、総司って呼んでもいいかな?」

「はい!勿論ですとも!」

 

沖田は笑顔で了承すると、少女の手を掴んで肩に捕まらせる。

 

「あっ、そういえばまだ貴方の名前聞いていませんでしたね」

「そうだったね──私の名前は真菰だよ」

「真菰──はい。よろしくお願いしますね真菰」

「こちらこそよろしくね──総司」

 

 お互い自己紹介を終えると、その場からゆっくりと歩き出していく。

 

『ありがとう──』

「──!」

 

声が聞こえたような気がした──

 

 沖田が後ろへ振り向くと、鬼を倒した場所には狐のお面を被った十数人の子供達の姿があった。

 

「総司?」

「……なんでもありません」

 

静かに微笑みを浮かべながら軽く頭を下げると、沖田達はその場を去っていくのだった──

 

 

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