このポーション屋に祝福を!   作:霜降り 

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息抜きで書く小説の方が筆が乗るんですよね……


第十四話

 それは、紅魔の里での事件も解決しアクセルに戻りポーション屋の開店準備をしているときだった。

 私のポーションを売り込んだお店の店員が私のとこへ来たのである。

 話を聞くとどうやら私のポーションが早くも売り切れたらしい。

 思ったよりも早かったなというのが感想。

 安めとは言えポーションはポーション、駆け出しにはそこそこな値段だったのだが……そこは命あっての物種ということなのだろう。

 もしくは噂がいい感じに働いたか。

 

 まあ、それは置いといて。

 店からしても予想以上に売れたので私と契約したいとのことらしい。

 もちろん、契約した。

 金の余裕はあるが、金はいくらあっても困ることはない。

 

 その後他の店も同じ理由で来たため、数店と契約をした。

 そして、気づいた。

 

「素材が足りんな……」

 

 数店も契約したせいで、毎月百本は超えるポーションを作ることになってしまった。

 少し後先を考えなさ過ぎたか。

 お陰様でポーションの作る手間もそうだが、素材を取るのが面倒くさい。

 この量を一人でやるとなるとほぼ毎日働く必要があるだろう。

 流石にそれは勘弁だ。研究の時間がなくなってしまう。

 

 今更契約の取り消しはできない。

 さて、どうしたものか……

 素材を買う……なしだな、私のポーションは紅魔の里付近の強い魔物の素材が多いので買うとなると高くついてしまう。

 ……仕方ない、契約のポーションの量を減らしてもらうか、少しダサいが。

 

 それ以外の策も思いつか……あ、そうだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「『クリエイト・ウォーター』」

「ぼぶっ……!ちょっ!?急に何!?溺れる!?お、ボボボボボ……」

「起きたか」

 

 閃いた私は紅魔の里のとある一軒家に来ていた。

 場所を詳しく言うとぶっころりーの実家のぶっころりーの部屋である。

 

「ゲホッ、ガホッ、はぁ……はぁ……ふ、ふらすこ……?な、なんで俺の部屋に?」

「少しお前に用があってな」

「そ、それはわかったけど、もうちょっとマシな起こし方してくれないかな!?」 

「すまない、私が寝不足だというのに、昼間まで惰眠を貪っているお前を見ると無性に水をかけたくなってな」

「ただの八つ当たりじゃん!?布団ずぶ濡れなんだけど!?どうしてくれんの!?」

「知るか、自分で乾かせ。無職なんだからそのくらいの時間はあるだろう」

「無職じゃないから!魔王軍遊撃部隊やってるから!」

「なるほど、無職か」

「違う!魔王軍遊撃部隊だよ!」

「最近魔王軍幹部は吹き飛んだようだが」

「ま、また来るかもしれないだろ!」

「そうか。まあ、そんなことはどうでもいい。用と言うのはお前に仕事を持ってきたんだ」

「え……?嫌だ!働きたくない!」

 

 ぶっころりーからの返答は拒否だった。

 あまりにも酷い理由にちょっとイラッときたが、ここは抑える。

 まだ話は終わってないのだ。

 

「まあ、待て。仕事と言ってもそんな難しいことじゃない。お前の所属する無職連盟ついでにできる内容だ」

「無職連盟じゃなくて魔王軍遊撃部隊だよ!ついでにってことは素材採取ってとこか?」

「ああ、私のポーションのための素材が欲しくてね。暇なやつということでお前なわけだ」

「嫌だ」

 

 …………こいつは一回精魂叩き直した方がいいのかもしれない。

 もしかして自分がニートであることがアイデンティティになるとでもおもっているのか?

 

「ふらすこのことだし、とんでもない量の仕事出されそう」

「安心しろ、むしろ少ないくらいだ。現代ではありえないくらいアットホームでホワイトな仕事だ」

「信用ゼロだよその仕事」

「まあ、仕事量が少ないのは本当だ。エリスにでも誓っておこう。で、どうだ?」

「俺は働きたくない!」

「親が泣くぞ?」

「既に泣いてもう諦めの境地だが?」

「『インフェ「ちょっ!?家燃える!家燃えるから!僕以外にも迷惑かかるから!」

「家燃やされたくないなら来い、採ってほしい素材を教える」

「はい……もっと寝てたかったのに」

 

 今は三時である。

 

 

 

 

 脅しによる半誘拐的な感じでぶっころりーを連れた私は紅魔の里周辺の森に入っていった。

 

「なぁ、教えるだけなのに森までくる必要あった?」

「お前は植物の見分けつかないだろう?」

「まあ、そうだけど……」

 

 どうやら、ここまで来てもぶっころりーは未だ働くのが嫌なようだ。

 ちょっとこいつの親に対して同情心が湧いてきた。

 まあ、前世含めて子供を持ったことのない私が同情したところではあるが。

 

「マンドラゴラは知っているだろう?まずは……とっ、予定変更だマンドラゴラの説明はあとにして、こいつの説明をしておこう」

 

 ぶっころりーに植物の素材の採り方について説明しようとしたら、植物ではないが丁度いいものを見つけた。

 

 木の根本に座る可愛らしい少女、安楽少女である。

 

「素材の一つ安楽少女だな。こいつは特殊だから教えておくぞ」

「……え?あの子狩るの?」

 

 安楽少女の方へ近づいていく、少し遅れてぶっころりーもついてきた。

 安楽少女に人差し指を向けながら私は告げる。

 

「こいつの手と足が素材だ」

「……ん?ごめん、もう一度言ってくれる?」

「こいつの手と足が素材だ」

「待って!?この子の手と足が素材なの!人じゃん!どう見ても人じゃん!」

「人じゃない、モンスターだこいつは」

「見た目の問題だよ!こんな可愛らしい少女を殺すとか俺にはできないよ!」

 

 なるほど。

 ふーむ?

 

「ニートというクズの癖に、そんな気持ちがあるとは」

「ふらすこはニートをなんだと思ってんの?」

 

 最低でも魔王軍幹部と並ぶクズだとは考えている。

 人に迷惑をかけるという点では同レベルだろう。

 早く独り立ちしろ。めぐみんでもしてるぞ。

 

「まあ、そこはどうでもいい。今後この仕事をするのだ、今のうちに慣れておけ」

「それ慣れたら駄目やつ!?ていうか今後やるなんて言ってないし!」

「ごちゃごちゃとうるさい。紅魔族だろう弱音を吐くな」

「それ紅魔族ハラスメント!」

 

 なんだ紅魔族ハラスメントって。

 面倒くさい、早く倒せ。燃やすぞ。

 

「あ、はい。やりますやります」

 

 ぶっころりーが安楽少女へトボトボと近づいていく。

 そして、魔法を唱えようとした瞬間だった。

 

「……ころすの?」

「ぐっ……!」

 

 安楽少女が喋った。

 どうやらその言葉が刺さったらしくぶっころりーは胸を抑える。

 これだから知性あるモンスターは厄介だ。

 

「……いいよ。……わたしはモンスターだから……しかたないよね……」

 

 ぶっころりーがこちらを見てきた。

 ふむ、せっかくなのでこいつの反応で遊ぶか。

 

「殺さなかったらお前のこと燃やすから」

「そ、そんなっ!」

 

 私の言葉を聞いてぶっころりーは視点を安楽少女と私を交互に見る。

 さてと、あいつは自分を取るか安楽少女を取るか。

 なかなかの見物である。

 

 ぶっころりーが安楽少女と私を交互に見るのを繰り返して大体五分たったくらいだろうか?

 

「あなたがくるしむくらいなら……いいよ」

「……うおおおおお!ふらすこぶっ倒してやる!『ライト・オブ・セイバー』!!」

 

 どうやら安楽少女の言葉が決めてになったらしく。

 私に反抗するという手で、安楽少女を取ったようである。

 まあ、

 

「『インフェルノ』」

「ああああああああああああああああああああああ!?!?」

 

 私に勝つなんて百年早いが。

 

 

 

 

 

「茶番もやめだ。早く殺せ」

「本当に容赦もないね!?」

 

 私のインフェルノにはギリギリ水魔法が間に合ったらしく、そこまで、あくまでそこまでだが怪我はしてないぶっころりーに命令する。

 てっきりポーションを使うことになると思っていたので完全ではないとはいえ防げるのは予想外だった。

 魔王軍遊撃部隊を名乗ってるだけはあるか。

 

「……わかったよ!やればやればいいんだよね!?」

「ああ、時間は有限だ。早くやれ」

「……っ、ごめん」

 

 どうやら覚悟は決まったようだ。

 ぶっころりーは目を閉じながらではあるが、安楽少女の前に立った。

 

「せめて楽に死ねるように……『インフェ「『ライトニング』!アホ!炎系の魔法を使ったら素材が燃えるだろうが!」

 

 はぁ、なんともカッコつかない男である。

 当初の目的を忘れたのか、素材採取だぞ?燃やしてどうする。

 

「いやいやいやいや、邪魔してきたのそっちでしょ!?」

「カッコつけごときに目的を忘れるな。こいつの素材は使う素材の中でも多いんだ。あまり無駄にはしたくない」

「じゃあどうやれって言うのさ!」

「ライト・オブ・セイバーがあるだろう?」

「……あの、この子を斬れと?」

「それ以外に何がある?ああ、そうだ。できれば手と足を最初に斬るんだ」

「……絵面が猟奇殺人なんだけど」

「それがどうした」

「鬼畜!めぐみんとかも鬼畜だと思ってたけどふらすこが一番鬼畜だよ!」

「そうだな、早くしろ」

「お、俺ライト・オブ・セイバー使えないので……」

「私にさっき使っていただろう。なんだ、お前は私に武器を向けられてもモンスターには向けられないのか?」

「い、いや……ああもう!やる!やってやるよぉ!!」

 

 それはぶっころりーの口が呪文が唱えようと動いたのと同時だった

 

「さ、さっきから一人でぶつぶつ言って……きゅ、急に大声上げて……な、何をヤるつもりなの……?ぶっころりー……?」

 

 木々の合間、そこから顔だけをだしてこちらを伺う女性。

 里でも凄腕の占い師とその美貌で有名であり、ぶっころりーの片思いの相手でもあるそけっとだった。

 どうやら、彼女からは木などが邪魔で私のことは見えていないらしい。

 

 さて、ここで彼女から見たらぶっころりーがどう見えるか考えてみよう。

 可愛らしい、外見で判断したら十歳程度の少女の前で『やってやるよぉ』と叫ぶ成人男性(ニート)一人である。

 

 ふむ、圧倒的犯罪臭だ。日本なら速攻通報からの警察が来て事情聴取のコンボが決まるだろう。

 

「そ、そけっと……あ、いや!これは違うんだ!?」

「じゃ、じゃあ何してたの?」

「えっ……えっとそれは、ふらすこ!?いないし!?」

 

 そして事実は腕と脚を切り落とそうとした瞬間である。ある意味誤解の方がマシだろう。

 ちなみに私は光を反射することで透明になる魔法を使っている。

 にしてもこいつ結構いじると反応面白いな。

 

「ふらすこ……?あの子がどうしたの?」

「ふらすこも一緒だったんだよ!」

「ふ、ふらすこもヤるつもりなの!?」

「ちがっ!?違う!違う違うんだそけっと!」

 

 まあ、あいつも好きな人と話せて嬉しいだろう




素材は安楽少女は自分で、それ以外はそけっとに頼むことになりました。

ぶっころりーはニートのままです。


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