人機絶唱シンフォギア 機械仕掛けのD   作:火力万能主義

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4月初投稿です。
これでやっと本章が進みますねアハハ
さてと、本編に入る前にいくつかお知らせをしたいと思います。

まず、外国語にルビーを振るのはどうか?というアンケートですがこれからもやってほしいという意見が多々ありました。ですので今後もまた外国語を使った描写は出していきます。しかし、毎回違う国に行って同じやり取りをするのもあれなので主人公がいない場面でより使う機会が増えると思います。
原作第一期にもフィーネとアメリカのやり取り見たいな感じでちょくちょく出していきます。


そして2つ目、毎回目線が変わっていたりしてややこしいかも知れませんがこれも全て私の力不足故のものです。色々と試しながら少しずつでも成長していきたいと思うが故の試行錯誤ですので指摘やアドバイスのあるお方は遠慮せずバシバシと言って下さい。

ただ、不評不満だけを言わされると改善点がわからない上にモ   チベが下がるだけですので「ここはこうするともっといいかもしれない」「ここは文字が無駄に多かった気がする」などの一言でもいいのでよろしくおねがいします。

あと、今回はプロローグで書いたのよりも生々しい描写やグロテスクに含まれるものを書いたと思います。まだこれぐらいは大丈夫だという方なら問題はありませんが、いつ行き過ぎた描写で読者の方々に嫌な思いをさせるかわかりません。なのでこれぐらいならまだ大丈夫、または少しキツイなどと教えて頂ければそこらはんの調整もしやすいものであります。

こちらも新しくアンケートを作りますのでご協力お願い致します。


最後は後書きで書いてあります。一応更新が遅くなるのと近状報告がてら何故そうなるのかの説明もしておきましたので気になりましたらお読みください。
さて、長くなりましたが今回は第三者目線での目線から描写してみました。
それではどうぞ。


動き出す悪意 2ー3

 自然のあふれる森林の奥でしばらく横たわっている仁。今まで後ろを振り返る余裕すら与えられなかった彼だ。禄に休むもひまもなく中国の広大な土地を歩き回ったからには相当疲れたのだろう。いくら肉体が疲労を感じず、食事と睡眠が必要ないといっても精神まで疲れないわけではない。むしろ寝ることも食べることもなくなった影響でストレスを発散する方法がなくなったのだから今の彼にはこうして十分な休憩をとる必要がある。

 

 

「フゥーこうして平穏になると、色々と頭の中で浮かんでくるな」

 

 

 草のはえ渋った地面に横たわったまま仁は小さく呟く。日本から突如知らぬ土地に飛ばされてからの半一年。こうして休憩し心身をリラックスさせていると様々な考えが頭によぎる。

 

 家族との突然な死別、ノイズの大群と広げた死闘。

 初恋の少女も目前からいなくなり、あげくには人間を半分辞めた‘ナニカ’への変貌。一年にも満たない短い時間で起きたこれらの出来事は充分に彼を追い詰めていた。

 

 帰るべき居場所も、迎えてくれる誰かもいない。

 まさに天涯孤独にして孤立無援。

 

 その現実は未だに仁の両足を引っ張ろうとするが、それでも彼は前を向いて歩こうとしている。まわりからもらってきた大きな愛と最後まで励めしてくれた両親の激励が仁の背中を押しているおかげだ。

 

 前を向け、そして進め。今日を生きて明日に繋げろ。生きることを諦めるな、諦めずに全力で生きのびろ、と後ろに倒れそうだった彼をもう一度立ち上がらせている。そして仁もまたそれに応えようとしている。

 

 

 例え帰るべき居場所がなくなっても自分()は今を生きている。なら、全力で今日を生きて明日を掴む。一度失った絆は二度と戻ることはない。しかし、失ってもなお残るものがある。それがあるかぎり仁の心が完全に折れることはないだろう。

 

 

「……少しだけ、今は休んでいてもいいよな  

 

 

 そうして仁はまた目をつぶり自然の音を楽しもうと耳を澄ますその瞬間    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾクリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然、背筋に這うようなナニカを仁は感じ取った。

 

 

 

 

 

 

 

    ッ?!」

 

(これは……殺気っ?!)

 

 

 まるで身体の奥からが凍るような強く、そしてどこか悍ましくも感じる殺気に反応して立ち上がる仁。すぐに枕元に刺しておいた双剣を両手に握りまわりを見渡すも、周辺から感じられる気配はない。先程の強い殺気から小動物たちと虫はすでに逃げるか息を潜めて隠れ、後に残るのは静寂のみ。今この場には彼しかいない。

 

 

  …………気の所為、だったのか?

 

 

 何も感じられないことから仁は構えを解こうと力を抜く。しかしその瞬間、彼は再び襲ってくる殺気を感じ取る。先程のよりも濃密な殺気はまだ隠れていた小鳥や虫たちにも向けられ、あまりにも濃いそれに耐えられずにショック死する程のものだった。木々に留まっていた鳥たちはみな地に落ちリスや鼠、兎といった小動物たちも腹を見せたまま次々も息絶えた。

 

 

「っ殺気だけで動物たちが死ぬ程って……一体どこから?!」

 

 

 先程から感じられるこの殺気には誰か一人に向かって放たれたものではなかった。これほど濃厚な殺意が森の中でだだ漏れしているのに、その殺気の主はこの森にはいない。発される方向から考えると今いる場所から何十Kmも離れた都市からだと、ヴェーダはそう告げている。

 

 

 

 

 逃げろ

 

 

 

 今のあなたでは到底敵わない

 

 

 

 あなたには勝手に死ぬことすらも許されていない

 

 

 

 

 うるさいアラート音までを流しながら頭の中で強く言ってくるヴェーダ。今まで一度もここまで強く意見を出してきたことはなかった。いくつかの警告を俺が無視してもまた別の案を出してサポートしてくれた存在がこればかりは譲れないと踏ん張っている。

 

 もし相手が普通のノイズだったらここまで言うことはなかった。むしろ俺の動きを邪魔しない程度での戦闘補助ともっとも効率的な移動ルートの確保等をして戦うことを勧めてきた。戦えば戦うほど侵食率が上がるのを狙ってのことだ。しかし今回だけは明らかに違う反応と態度を見せてくる。もしかして今のはノイズ以外の存在だというのか。

 

 

「なぁヴェーダ。今のってノイズじゃないのか?」

 

  肯定。今の波状エネルギーパターンから推測される個体はデータベースに乗っています

 

  しかし今のあなたでは敵う存在ではありません。相手に発見される前に素早く退避()()()()。あなたの命を無駄にすることは計画において想定されておりません

 

(……あのヴェーダがここまで自己主張するだなんて)

 

 

 こいつに命令されるのはこれが初めてだ。

 仁はヴェーダとのやり取りを頭の中でしながら先程殺気を放たれた方向を見る。そしてヴェーダに問う。

 

 

「まさか今のヤバイやつを放ったのが俺を探しているってことか?」

 

  肯定。高確率であなたの命を狙っているものがいると推定します

 

「そしてお前は多分やつの正体には何かしら気付いてる上に、その目的も知っている、と?俺はまったく知らねぇのにどうしてお前は知っているんだ?」

 

  それもまた現レベルでは閲覧出来ない情報となります。詳細はまだ教えられませんが、確かなのはあなたの命を狙う‘敵’がどこかに潜めているということです

 

 

 何かしら手掛かりを掴めそうならすぐにこれだ。

 侵食率が低い故に触れられる情報の数も質も落ちる。

 限られた情報だけを教えながら宿主でもある自分の両目と耳を塞いでいる。しかしそれをどうにかしたいのなら戦い続けろと言っているのもまたヴェーダだ。今みたいに戦うことを止める時もあれば、自分よりも先にと戦いの用意をする。一体どうしろっと言うのだ。

 

 仁は急に怒り叫びたくなる気持ちを何とか抑える。そして奥歯を食いしばりながらもう一度問い詰める。

 

 

「だからお前はこう言いたいんだろ?弱いやつは死ぬと不味い状況になるから引っ込んでろって」

 

  ………………

 

「…そんなにやばいんだな、今回のは」

 

 

 世間一般では一生に一度災害に遭う確率でノイズに遭遇すると言われている。しかし、仁が足を運ぶ場所には必ずといっていい程にノイズが現れて人たちを襲ってきた。もちろんその度にノイズは撃退し襲われる人たちも助けた。己とはまったく無関係な人間であっても助けてしまうのはもはやトラウマになったあの事件の影響だろう。ノイズと共に崩れ落ちる元人間だった黒い粉。その光景を見る度に失った両親と弟が脳内でフラッシュバックする。

 

 その度に、家族を失ったという事実を否定するかのように更に苛烈になって戦う。ノイズに襲われそうな人を助けるのもその一環だろう。しかし今回ばかりは今までのそれが通じる相手ではない。

 

 あきらかに格上な存在に態々戦いをしかけにいくのはあまりにも無策にして無謀。しかし、それを今まさにその身で行おうとする者がいる。

 

 

「……ってことは、今のやべぇのを放ってきたのがあっちにいるってわけだな?ならヴェーダ、今からそいつがいそうな座標を計算してくれ。ある程度でもいい」

 

  お待ちに下さい。今のをお聞きになられてもなお仰るのですか?

 

 

 今にも居場所を知る次第に飛び込みそうな仁。

 自らの身の安全を考慮しない仁の言動にヴェーダも大きく動揺し、まるで子供を叱る母のように強く非難するような口調で問い詰めようとする。自分の命を軽んじているようなその姿に反感を持ってのことである。彼の命があってこその計画(プロジェクトD)だ。それをたった一人の意思で無駄にするわけにはいかない。

 

 

「驚いた、お前にも感情なんてもんがあったのか…すげぇ高性能なA.I.だな、おい」

 

  そんなことはさておきもう一度問います。あなたは今のことを聴いてもなお仰るのですか?

 

「もちろんだ」

 

 

 即答、である。

 己の命を失うかも知れない状況の中で彼はなんの迷いもなく答える。

 

 

  …っ貴方は理解していない。貴方という存在が本計画(プロジェクトD)においてどれ程重要な存在なのかを

 

「知らねぇよ、計画なんか。今の俺にとって大事なのは後悔しない選択をするかどうかなんだ。勝手に巻き込んでおいてそうYesと答えるはずないだろ」

 

  貴方の価値は例え人間1000人分の命であっても譲れない程です。貴方がいなければ計画は成立しない上に全人類の未来も揺らぐかも知れないのですよ?

 

「人間の命に価値なんて基準はない。人は誰もが大事な存在だし誰かにとっての居場所にもなるんだ。それをまるで金で買える商品(もの)みたいに言うんじゃねぇ!」

 

 

 またも即答。

 誰よりもよく知っている。命の大事さも、家族という居場所が与える温もりを。またそれを奪われる理不尽への怒りと悲しみは決して忘れない。すでに知っている痛みだ。こんなものを他の人たちにも味わってほしくはない。

 

 

  貴方は全知全能な神でもなければ一人で世界を変えれるほどの力を持っているわけでもない。それでも行くのですか?

 

「確かに俺はまだ子供だし、出来ることもたかが知れてる」

 

  ……………

 

 

 俺の望んだこと全てを叶えられるわけじゃない。不可能なのは不可能のままだ。それにもしそんな能力あったのならそもそもあんな悲劇は起こらずに済んでいる。

 

 

「でも、眼の前にいる誰かに向かって手を伸ばすことはできる。そうやって助けられた命もいるのはお前も一緒に見てただろ?」

 

  ……………………

 

 

 

 無理だから、出来ないからと逃げては駄目だ。

 その場では楽になるだろうけど、それも一時凌ぎで終わっちゃう。

 本当に変えたいんなら少し無理をしてでも、例え失敗で終わろうとも前に進むしかない。今の俺は他の人たちみたいに2歩前進のために必要な1歩後退もすら禄に出来ないんだ。なら答えは一つしかないだろ?

 

 

「出来るところまででも良いから手を伸ばしたいんだ。手を伸ばせたのに結局伸ばさずに後悔するのはみっともないし、俺自身から俺を許せそうにない」

 

 

 仁は覚悟を決めて己と家族に誓う。

 前に進むことだけを、その道が茨の道であっても彼は進み続ける。その果てに何があろうとも。そしてそのための一歩を今踏み出す。

 

 

「子供の我儘だと、現実を知らないガキの理想ばかりだと言ってもいい」

 

「でも俺は本気だ。伝説や神話に出てくる英雄(ヒーロー)でも、漫画や映画に映る主人公でもない俺だが、夢が出来たんだ」

 

 

 実体のない相手に向かって語り続ける。

 何もない空に、しかしまるでその相手がいるかのように真剣に。

 直接目があうことはなくとも、その気持ちが伝わるよう。

 

 

「だから俺に手を貸してくれ、ヴェーダ」

 

  …………………………分かりました

 

「っ本当か?ありがとう、ヴェーダ!『しかしこれは確率がとても低いギャンブルよりも質の悪いものであるのは変わりません』あぁ、分かっている」

 

 

 仁は相棒とも言える存在の了承に喜ぶが、ヴェーダもまた釘は刺す。

 

 

  今の貴方の行動は失敗するとほぼ同時に命を失うリスクを抱えています

 

  しかし、それ以上に成功時のリターンが大きい。ならその成功の確率を少しでも上げる手段を今から教えます。出来ればこのことは伏せて置きたかったのですが、仕方ありません

 

「悪いな、いつもこき使ってばかりで」

 

  いいえ、それが私の存在理由ですのでお構いなくこれからも有効活用して下さい。それが計画のためです

 

「お前はいつもそればっかだな」フッ

 

 

 いつもの調子を取り戻した相棒に自ずと苦笑いを浮かべる。

 

 

「よし、方向は大体分かっているから…ヴェーダ!」

 

  はい、何でしょう

 

「もう座標ぐらい特定し終わったよな?俺が走る間には案内頼むぜ」

 

  了解。では案内の最中になりますが、先程話したある方法についても説明します。この方法は極めて負担が大きい上に失敗するリスクもあります。使う際を見誤らないで下さい

 

「頼んだぜっ」

 

 

 

 

 そして仁は走り出す。

 殺気が放たれた方向は東に向かって約423Km離れた観光都市、孫日市。人工筋肉と有圧プレスで強化された四肢のおかげで仁は軽車並のスピードで山をかけていく。東京から京都並の長距離を息一つ乱さずに走るが、仁は間に合うだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 孫日市、その東方の外郭に位置した工場地帯。

 森から走り出しておよそ6時間、休まず両足を酷使したおかげで日が暮れる前には着くことが出来た。しかし彼の目に真っ先に映ったのは火煙が上がる建物と、朱い‘何か’肉片が地面や壁等を問わずにあらゆる場所にて塗りたくられた光景だった。

 

 

       ッ!!」

 

 

 数時間前までは人であっただろう肉片と血の跡(ナニカ)が散らばっている。誰かの手足だっただろう長い骨、切れた糸のように絡まっては胴体(なか)から溢れたままの贓物。力任せに千切られたような切り口の肉片には鋭い歯型のような跡もくっきりと残っている。更に風を通して漂ってくる黒い粉はおまけにしか見えない。

 

 約半年前、萩原仁の運命を捻じ曲げて、その心には未だに大きな痛みと苦しい思いを授けた現世の地獄。かつてのそれが時と海を超えた今、また再現されていた。燃える建物と黒い煙に肉が焦げる匂いと濃密な血臭が漂う。朱い血溜まりの数々と人の型を残こしたまま黒い粉(炭素)に変わった元人間。

 

 

「ヴェーダっ早く生存者だけを優先して探してくれ!」

 

 

 あまりにもショッキングな光景に一瞬言葉を失うもすぐに気を締めて生き残りを探す。しかし  

 

 

  生命活動感知センサー及びサーモグラフィーカメラを起動。感知範囲は半径3kmに設定

 

  非人間体型の物体(マテリアル)を感知対象外に設定。聴覚センサーを45%強化、集音開始

 

 

 準備を終えたヴェーダの合図と共に走り出す。

 舌で直接味見するぐらいしか出来ない味覚はともかく、嗅覚もここでは使えない。工場地帯全土を塗りたくった血痕から漂う血臭で鼻が麻痺していて使えないのだ。使えるとしたら視覚と聴覚に精々触覚を入れたこの三つが限度だろう。そして仁は使えそうなもの全てを限界近くまで強化し工場内外にているだろう生存者を探し始める。

 

 まずは壁越しで人の体温を色で見分けできる熱感知センサー(サーモグラフィー)である程度の位置を確認する。そしてその中からまだ人の原型を保っていそうなのを優先して確認する。走る途中にも両耳を澄まして助けを求める声や負傷者のうめきもないか聞き探す。

 

 しかし見つかるのはずてに息の絶えた遺骸のみでどこに行こうが間に合うことはなかった。

 

 人の原型は保てどすでに顔色は蒼白で身体もだんだん冷えていくのばかり。失血多量でショック死か、骨折した骨の一部が内部の急所にささり死んだ人間はまだ良好な方だった。

 

 皮肉だけを綺麗に向かれて中の筋繊維が丸見えなものや、刃物などでめった刺しされたような穴だらけの死体も少なくない。他にも崩れた建築材に刺され、また押しつぶされた死体もしばしば。

 

 

「ウゥプッ、うげぇぇぇぇ」

 

 

 結局込み上がってくる吐き気に耐えられず、地面に手足をついたままもがく。この一ヶ月近く何も口にしてなかったので溢れるのは少しばかりの胃液と唾液が少々。だがそうでもしないと気が狂いそうで何かのアクションが欲しかったのも仕方あるまい。

 

 しばらく地面に向かって俯いたままだったがそれをまた追い打ちするように感情の籠もってない冷たき声でヴェーダが告げる。

 

 

  半径10km内にて救助活動と思われしき動きはありません。ノイズを感知するセンサー諸々各システムがダウンしていてノイズ警報も反応がないだけで少なくない数のノイズが複数の群れをなしてまわりを闊歩しています

 

 

 

 

 

  ここにあるのは冷たい死体とノイズの群れだけで、唯一この場で生きているのは貴方だけです

 

 

 

 

 

  つまりこの工場地帯の内部生存者は‘(b)(ゼロ)《/b》’です

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生存者は(ゼロー)、つまりこの場にはもう生き残った人はいないということ。

 

 

 

  ィクショッ」

 

 

 

 

「チクショウ!」

 

 

 

 

「クソクソクソッこの、チクショがあああぁぁぁッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

  また間に合わなかった。

 

 

  もっと全力で走れば後二人も助けられたかも知れないのに、俺はっ

 

 

  仁、しっかり。これらのことは分かっていた筈です。貴方は貴方自身が言った言葉をもう忘れたのですか?

 

 

 

 あぁ分かっている、分かっていたさ。

 どうやろうとも手が届かない命があるってくどぐらいは分かっているんだ。今まで何度もノイズに殺された人たちを見てきたけど、けど  

 

 

「あんまりだろうが!こんなの、人の死に方なんてじゃないだろうっ!!!」

 

 

 今にもまだ両手にはあの感覚が残っている。

 やっと見つけた生存者を抱き上げたようた瞬間、急に息が止まり身体から力が抜けてくあの感覚が蘇る。血を流しすぎてどんどん冷たくなってゆく子供の呟いた最後の言葉を思い出す。

 

 

『あり、がと……そして、すまない…………』

 

『寒いよ、お兄…さん、僕……寒いよぉ』

 

 

 頭の中で次々とフラッシュバックする光景。

 

 建物の中で焼け死んだ焼死体。

 生身を焼かれる苦痛と絶望を知っている。

 俺は途中半身が機械になったおかげで痛みが消えたけど、この人たちは肺とのどがやられて叫ぶこともままならずに苦しんでいたはず。

 

 革を剥かれたまま死んだ死体の表情が忘れられない。

 限界までひん剥かれた両目と息絶える瞬間まで叫び続けただろう大きく開かれた口からその絶望がどれ程のものだったのな伝わってくる。

 一体どんな神経をしていてあんな惨い殺し方が出来るんだ。どうしてあんなことをする必要があったのだ。

 

 めった刺しにされ穴だらけになったまま死んだ女性の顔には涙と鼻水を流した跡がくっきりと分かる。自分の流した血だらけの顔には涙と鼻水で少し洗われているのがその証拠だ。

 

 この場にある死体はどれもが共通した特徴がある。

 方法とやり方には違いがあれど、これの犯人は人殺しを愉しんでいた。表情の歪んだ死体ほど損傷が激しいしやり方も過激になる。中には口で直接噛み砕いたような骨や食い千切られた跡がある。歯型からするとやつには門歯や臼歯はなく、歯のすべてがするどいナイフやアイスピックのような犬歯しかないことが分かる。

 

 ここまで証拠が集まれば自ずと分かるだろう。

 

 

 

 

これらの死体は全て同一存在に殺されたに違いない

 

 

 

 しかもそいつは十中八九ノイズとは異なる人外の化け物だとくる。口はもちろん目や耳、鼻といった感覚器官がないノイズには出来る仕業じゃないし、普通のノイズならこんなことをするとは思えない。

 

 人間に直接触れることで共に炭素になって崩れ落ちるのがやつらの戦法だ。今までずっと捨て身戦法を使ってきたやつらが急にこんなことをしでかす理由がない。抵抗する人間を殺してはその死体すらバラして撒き散らすのはあまりにも効率が悪い。知性はなくただ人間を襲うことしか知らない連中が人の苦しみ様を楽しむ為に態々拷問したとは考えられない。

 

 

 なら、答えは一つのみ。

 人間を敵視する存在には知性があり、また人の苦しみと絶望を見ながら楽しむという残虐性を併せ持ったやつが今回の主犯だ。

 

 どのようにしてノイズを利用できたかは知らない。

 けど奴が俺一人を探して殺すためだけにこんなことをしたんなら上等だ、乗ってやるよ。

 

 

「そっちがその気なら、俺もまあテメェ等全員殺してやらァ!!」

 

 

 背負っていた大剣を双剣に分離して両手に持つ。

 全身の有圧パイプ(きんにく)に力を込め、走り出す。

 先程俺が叫んだ声に惹かれて現れたノイズを2体、すれ違いながら切り潰す。 

 

 刃で切り裂くのではなく、刀身に力を込めたまま振るうことで切り込むと同時に真っ二つにする。切られた2体はそのまま黒い粉になって崩れる。それを機にして次々と現れるノイズの群れ。

 

 その中には丸い体型をしたカエル、アイロンのような手をした人型ノイズ見たいな小型から一軒家並の大きさをした4足歩行するシカノイズ。様々な形をしたノイズたちが仁を殺すために集う。

 

 

  適正反応を確認。現時点で推定出来る数はおよそ160内外です。しかしこれはあくまで増援がなければの話です

 

  これ程の規模のある襲撃にも関わらず警察や救助隊が来ないということは、つまりー

 

「あぁ今回の襲撃は同時多発の、しかもこの都市を完全に潰すためのものだろうな」

 

「それか俺を誘き出すためのエサ…」

 

 

 着々と建物の中や物陰から出て来るノイズたちを凝視しつつ武器を構える。

 

 

  敵性体の増援が来る前の殲滅を推薦します。殲滅させる次第に都市の中心部に向かうことが賢明です

 

「そうだな。こいつらはこのまま野放しするのも、したくもないし」

 

 

 右手で握った双剣の片方を目前にあるノイズ()たちに向けて告げる。

 

 

「テメェらが一体どうしてこんなことをするのか、どんな目的と理由があるだろうが関係ねぇ。テメェらが人の命と未来を奪い去る理不尽であり続けるんなら、俺はその理不尽を潰す」

 

「奪われる痛みを、悲しみをッ怒りを知らねぇテメェ等(ノイズ)がいる限り俺は戦う」

 

「それが今の俺にとって最も後悔しない、選択だァァァアアアアアア     !!!!」

 

 

 そう告げて仁は走り出す。

 人々の命と未来を奪う理不尽に抗うために。

 自分が自分()であるために、出来るだけのことをする。

 例えその先に望んだ結末がなくとも彼は前だけを向いて走り続ける。

 

 何故なら、それが萩原仁という人間だから

 




 いかがだったでしょうか?
 今話で仁の言動ががらっと変わりましたね。
 始めはすごく前向きで正義感あふれる好青年みたいな描写だったのに、後半になると途端雰囲気が変わったのですがちゃんとした 理由はあります。

 まず仁は別にヒーローや英雄になるのを目指しているわけではありません。ただ自分に降り掛かった理不尽に抗うために前進するのみです。その途中に色々とするのですね。
 眼の前で助けが必要な人がいれば助ける。手を伸ばすことが出来れば精一杯伸ばす。それが萩原仁という人物です。

 その決心と覚悟を見てヴェーダは説得するのを諦めます。あ、ちなみにヴェーダは人工知能ですけどもちゃんとした自我といいますか性格はあります。ただ彼女(?)は自分の存在意義を知っており、またそれに納得しているからこそ計画(プロジェクトD)を遂行出来るよう仁をサポートしているのです。
 別に仁の身体を乗っ取ったりはしません。ヴェーダは計画を遂行することを第一に考えており、己自身と仁はそのための駒と認識しているから計画のために犠牲になるのを喜ぶような性格です。

 そして急に仁の性格が変わったような描写についてもです。
 いくら覚悟をしたとはいえ、いきなり本文中にあった光景を目の当たりしてその匂いを嗅いだら誰もが叫んだり吐くなりするでしょうしそれが当然です。ただ仁は怒りや絶望といったものを一度ドン底まで味わった経験があるし、またそれらの負の感情を糧にして戦えるメンタルになったから後半のような展開に繋がるんです。

 もちろん、今後彼の性格が変わった原因もより詳しく書いていく予定ですのでお楽しみに(^^)
 主人公は作者を殴り飛ばしていいはず…


 そして次回でようやく中国編の後半ストーリーとなります。




 それでは最後に、前書きで予め言っておいた近状報告がてらこれからの投稿ペースについてです。

 作者は今年で大学三年生になり専攻授業とバイトの時間もあって更新スピードが周に一度のペースが2週や3週に一度までに遅くなると思います。課題レポート以外にも実習やら発表やらで夜の時間はほぼ埋まり、週末やGWもほぼバイトに注いでるので本作品を書く時間は基本深夜か空き時間の2,30分程度です。最悪の場合、一ヶ月更新以下にもなる可能性は十分です。

 ですでしばらく更新がなくとも作者はまだ生きていて書く時間とモチベ(集中力)の確保が難しい故のものと思ってください。まだ死ぬには早すぎます(笑)

 それでは皆さん、またの次回でお会いしましょう!


 感想と評価、お気に入りお待ちしております。
 あと、アンケートも新しくしたのでどうぞご協力お願い致します。

今後のR-15タグ付き描写について

  • R-15描写は好きだから今後も使って
  • 毎回じゃなくて、たまに使うぐらいならOK
  • むしろもっと苛烈で生々しくしてぇ!
  • そもそもやるな
  • 好きにしたら?
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