メリメリッ、ドサッ
それはまさに現世の地獄だった。少し前までは緑で溢れる空間だったそれが、今は灼熱地獄のように燃え盛っている。鬱蒼とした木々は全て倒され燃えており、滝と共に流れていた綺麗な小川も完全に乾び上がっている。熱された空気と共に舞う黒い炭と白い灰により息をすることすらままならない、そんな光景が広がっていた。
燃える大地にあるのはいくつものの黒い炭の山、そして現在進行形で燃え上がっているいくつものコテージ。
そしてそんな地獄絵図で唯一動いている少年がいた。その少年、萩原仁は地獄とかしたその地をおぼつかない足取りで彷徨うかのように歩いていた。
その顔と髪は炭と灰で汚れ、着ていた衣服も所々が燃えボロボロになっていた。身体のいたる所にあるのは生々しい火傷と切り傷。
しかしその中でも最も目立つのはその
「父さん…母さん…健太…」
(……家族たちと過ごす楽しいキャンプになる筈だった…始めて全家族が揃った思い出を作る筈だったんだ…なのになぜ…)
そして、彼のまわりに生きている人間は誰も居なかった。あるのは燃え尽きた木々とコテージの残骸のみ。その空間に生き物は彼以外には何もないのであった。
「あの時断わればよかったんだ…俺がはしゃいだせいでみんな死んじまった!俺が…俺のせいで……」
大事な人を全て、しかも同時に失った仁の心は絶望に打ちひしがれていた。全ての元凶は自分にあると自ら心を責めていた。
誰のせいでもなく、ただ不運な偶然が重なっただけに過ぎないのにも関わらず…
全ての始まりは5日前までに遡る。
_______5日前の夜
「ふぅ、今日の勉強はこれぐらいにして寝るか」
期末試験も終わり夏休みを迎えた俺たちはそれぞれの方法と場所で受験に必要な勉強や面接の練習などをしつつ2学期にある推薦入試に備えていた。クラスメイト同士に教え合う勉強会も何回かあったし、互いに書いた作文を読みあいもした。楽しく勉強しながら過ごしたあの日々は今でも大事な思い出だ。
そうしている間に夏休みもあっという間に過ぎ去り、約2ヶ月あった夏休みもあと1週を切らし入試もすぐ目の前に迫ってきた。この2ヶ月間、自分に出来ることは全てやり遂げたと思う。後は入試までに作文と面接の練習を中心的にすれば良い。休み中に学校で練習していたら担任の先生にも合格のサインをもらったお陰で自信も着いた。受験を舐めているわけではないが、こういう自分への自意識向上は許されるんじゃないかと密かにも思う。
「しかし、こうして思うと本当にあっという間だったな…」
もうすでにこの世界に来て半年を超えたし、この家の人たち、家族たちともすでに打ち解けている。いや、打ち解ける所かそもそも家族として迎えてくれたこの家に俺がやっと馴染んだと言うべきか?
とにかく今はすっかり一つの家族になれたんだ。何か一つでも思い出を作りたいのが今の気持ちだ。受験を目の前に控えているやつが何言っているのかと思うだろうが俺はいたって真剣だ。
何でそんなに焦っているのかって?
そもそも俺はこの世界にとって部外者だ。少し前までにこの部屋にいたのも俺じゃなくこの世界の‘萩原仁’だ。俺であって俺じゃない。いくら言葉で家族だと言っても血は繋がっていないのだ。だからか俺は目に見える証拠が欲しいと感じる。
ただ写真を取るだけでは足りない。一緒に同じ時を過ごした思い出が、萩原仁がこの世界に存在していたという足跡を残したいんだ。
それさえあれば、俺は本当の意味でこの家族の一員になったと実感できると思う。
「まぁ受験が終わるまでは当分おあずけだろうけど」
さてと、そろそろ寝ますかー
翌日、いつもの様に起きて四人で朝飯を食べた後、部屋の中で適当に本でも読みながらくつろいでいると母さんがやってきた。
コンコン
「シンちゃーん少しいい?」カチャ
「どうしたの、母さん?」
何だろう?
「あのねーシンちゃんの夏休みってそろそろ終わるんでしょ?それでね、夏休みが終わる前にみんなで出掛けないかって幸之助さんが」
出掛ける?何だピクニックの話か。
「しかし急な話だな、父さんがいきなり何で?」
「それがねー。私も気になって聞いてみたら『仁は今まで頑張ってきたしこれからも頑張り続ける子だ。でもそんな子だからこそ息抜きをさせて気合を入れ直してあげなくちゃ』だって♪」
「マジで?!よっしゃぁー!」
父さん、ありがとう!
マジでサンキュー!
あざっす!
「それで?いつ出掛けるんだ?どこに行く?」
「こらこら落ち着きなさいよ、もう。」
「ご、ごめん。つい…」
「フフッいいわよ。でもそんなに嬉しいんだ?」
もちろん嬉しいに決まっている。何せ俺がこの世界に来てから始めて家族でのお出掛けだ。今までは父さんの仕事の都合上、母さんと健太、俺ぐらいしか行けなかったんだから。
「嬉しいに決まってるさ。何せ俺がこの世界に来て始めての全家族が集まって出掛けるんだから!」
「それもそうね。お父さんも一緒に出掛けるのは今回が始めてだもんね」
医者である父さんは仕事の都合上あまり休みは取れないし連休なんて今までなかった。だから今度こそ家族全員で思い出を作るんだ。どれ程の時間が経っても覚えられるように、
「ああ、だから今度こそみんなで思い出をたくさん作ろう。それで!」
「それで?何?」
それでいつか…
「…いや、何でもないよ。少しテンションが高くなっただけ」
「フフッ何それ。今度の週末に幸之助さんがちょうど連休をもらったから一泊2日でキャンプ場に行くんだからそれまでに準備しておきなさい。それじゃ私はまだお掃除が残っているから」
そうして母さんは残りの掃除を終わらすために部屋を出ていった。
しかしキャンプか…
「楽しみだな」
バーベキューをしても良し、水遊びでも良し遊び放題だ。元の世界でもこうして外で泊まりながらどこかに出掛けるのはなかったから本当に楽しみだ。
まだ戻れる方法も手段も見つかっていない分、この世界で一生懸命に生きていたい。本当に居るべき
「さてと、荷造りでも始めるか!」
えーと、まず着替えと水着からだな。それにカメラもあったら良いかも。
続きはまた後でー
*ジムリー・クリーンド様、ステータスプレート様、locura様お気に入りありがとうございます!
今後のR-15タグ付き描写について
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R-15描写は好きだから今後も使って
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毎回じゃなくて、たまに使うぐらいならOK
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むしろもっと苛烈で生々しくしてぇ!
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そもそもやるな
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好きにしたら?