人機絶唱シンフォギア 機械仕掛けのD   作:火力万能主義

7 / 18
すみません、また遅れました(汗)

頑張って書いていたら、小説の主人公になった気分で1万字超えて書いてしまった…


始まりはいつも突然 2ー3

(…………どうして紗耶香が死ななければならないんだ……) 

 

(……何で父さんや母さん、健太が死ななければならないんだ…!)

 

(お前らが人間を否定するんなら、俺がお前らを否定してやる。)

 

(…殺してやる、世界の果てまで追いかけても殺し尽くしてやる……)

 

「お前らが…お前らなんかがいるからぁぁぁああああああー!!!!」

 

 

 仁は怒りと絶望に震えつつ拳を握り目の前の(ノイズ)に向かって走り出した。彼の前には、100は優に超えるノイズたちがあり、また彼の後ろには木々を超える巨体を誇る大型ノイズが陣取っており圧倒的なほど不利な戦いだった。

 いくら炭化能力が効かないとして身体能力は普通の人間と何も変わらない、ごく普通の人間の身だ。いくつか倒したとしてもまた次々と現れる別個体たちにより押し潰されるのは明白だった。なのにも関わらず、彼は諦めなかった。 

 

「オラァアッ!」 

 

 体重を乗せた前蹴りでアイロンノイズを前方に蹴り飛ばし他のノイズを巻き込みつつ体制を崩させ

 

「はぁっ!」 

 

 彼の拳がいくつも重なったノイズの胴体を貫く。

 

「オラッ飛んでけぇっ!」 

 

 また空いた片手で掴んだオタマジャクシノイズを他のノイズに向かって投げつけた。

 

「死ねぇ!」 

 

 頭突きと噛みつきで他のノイズを牽制しつつ、指先を立て手刀にしては抜手にチョップを繰り返し、ましては近くのノイズに突き刺したまま振り回す。

      

 そのようにして死闘を繰り広げる仁とノイズたち。

 

 

     

 

 

 10分……

 

 

 

 

   

 

 

 30分………

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 1時間………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 3時間…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 6時間……………………………………

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

     

 

    

 

 

 

 

 すでに日は暮れ、まわりは暗くなった。しかし、それでも戦いは終わらす、静かながらも死闘を延々と繰り広げる仁とノイズたち。すでに彼らの身体とまわりは黒い山のように積もった炭により真っ黒に染め上がっている。

 

「ハァハァ、まだどんだけ残っているんだよ…」

 

 修羅のごとく暴れまわる間にも倒してはすぐに他のノイズに補充された上に包囲網もさらに狭くなる。すでに100体近く倒したのにも関わらずその勢いはまるで衰えない。 

 しかし、そんな状況でも仁が諦めることはなかった。いや、諦めたくなかっただろう。両親の遺言を守り、大事な人たちを奪われたその仇を討つためにも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 更に3時間後………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァハァ…くそっ…」

 

 10時間も続く戦いは終わらず、仁は何とか奮戦はするも圧倒的に不利な状況は続く。更に3時間の間、彼は変わらずにノイズたちを倒していた。その間に倒した数だけ小型が36、中型が2体。明らかに最初よりペースが落ちている。

 何とかペースを維持しつつ数を減らそうとした仁だったが、それでもやはり圧倒的に不利な状況は続く。

 仁は戦いの中で何度も折れようとする心を激励しつつ手足を動かしていた。しかし、嫌々ながらも現実を認識し始めた仁はやがて手足を動かすことを止める。遂に身体の限界が来たのだった。 

 

 何とかペースを維持しつつ数を減らして行く仁だったが、それでもやはり圧倒的に不利な状況は続く。

 仁は戦いの中でも何度か折れようとする心を激励しつつ手足を動かしていた。しかし、嫌々ながらも現実を認識し始めると、彼の手足も徐々に止まり始めた。 

  

「…これは、もしかしもクソも無く詰んだな」

  

 前後から数え切れないノイズの軍勢が円を描くように囲い込み、その背後にはあの大型ノイズが地を鳴らしながらゆっくりと近づいていく。どれだけ数を減らそうともその勢いは止まらず、大型ノイズが排出するノイズの量が圧倒的に多い。戦いの結末は始まる前からすでに決まっていたのだ。

 

 戦闘に途中参加したそのイモムシノイズは本来小型と中型を体内に収納して運搬するのを想定して造られたタイプだ。強襲型ノイズよりも耐久性はもちろん、収納できる量にも優れており全ノイズの中でも特に戦線維持能力が高い。ただし動きがすごく鈍く、また直接戦闘力がないから今まではノイズの生産に集中していたが仁の体力が底をついたことを機に動き出したのだ。炭化能力がなくてもその大きな質量なら人間1人は簡単に押し潰せるだろう。

 

(父さん、母さん…ごめん。諦めるなって、何があっても生きろって言ってくれたのに…俺、もう身体が思うように動かないんだ……健太も、紗耶香もごめんな。守ってあげられずに先に死なせてしまって………)

 

 そして、幾ら揺れようとも決して折れることはなかった彼の心が、今ここでようやく折れようとする。

 

 手足が鉛のように重く震えが止まらない。身体が思うように動かない上に、いたる所に痛みが走っている。膝が今にでも崩れ落ちそうなのを意地で何とか我慢している。呼吸は乱れ肩を上下させながら息をしている。炭と血だらけの顔を上げ前を向いているがその視線が定まらない。どこからどう見ようともすでに戦えるような状態ではなかった。

 

 彼はすでに限界に達していた。

 人間として生まれながらの、生き物である故に存在する限界に彼はすでに達していたのだ。

 

(…もう全身がボロボロで、っ限界だ……)

  

(……どこから狂ったんだろう……キャンプ場に来てから?俺が幸せを感じたから?それとも……俺がこの世界に生きているから?) 

 

(………どうしてだ……俺は………ただ繋がりがが欲しかっただけなのに……………) 

 

 

 

 

  

 

 

 

〈side仁〉

   

 

   俺は…死ぬのか?

  

 

   みんなの…父さんと母さん、健太、紗耶香の仇も取れずに?

 

 

 

 

   嫌だ… 

 

 

   嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ!!!!

 

 

   死にたくない…死んでたまるもんかっ

 

 

   こんな、所でっ

 

 

   死んで、たまるかー!!!!!!

 

 

 

〈side仁out〉

 

 

 

 

 

 

SYSTEM ONLINE

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

〈side ???〉

 

 

 

  

    おや、もう動き出すのかい?想定したイレギュラーの内に一つではあったけど、それでも早すぎたね。これは計画を見直さねばならなくなったか。

 

    君にはこれからやってもらわねばならない事が山程にもあるんだ。今死んでもらっては困るよ。ということで勝手にだけど、こっちから手助けをさせてもらおうか。 

 

    …僕が手を出したお陰で少なくとも目の前にいるそいつら(ノイズ)を倒せる程の力は手に入れた。これなら当分の間は力に困ることはないはず。もちろん、ただで手に入るものではないし、尋常じゃない痛みも伴うけど必要経費だと思ってほしい。

 

    許してくれとは言わない。僕は君に決して許されない行為をすでに何度もしているんだ。そう簡単に許されないだろうし許されたくもない。何故なら僕は君にとって全ての元凶と言って等しい存在の一人だから。

 

    あと、まだもう一つ。今の君には聞こえないだろうけど万が一があるから言わせてくれ。

 

    今回ばかりは仕方ないから身体改造レベルを一気に飛ばしたけど、本来ならじっくり時間をかけて少しずつ肉体と魂を変えるのが正しいやり方だ。こんなことがまた続くといくら僕であっても予測出来ない結果になるから気をつけてくれ。

 

 

 

 

 

 

    これで全ての準備は整ったよ。あとは君のこれから次第によって人類の未来は変わる。しかし、今回の無理矢理な介入のお陰で当分は君の力になってあげられない。他にもいくつか用意はしておいたけど、それらをどう使うのかは完全に君の自由だ。

 

 

  使わなくても良し、どのように活用するのかも君の意思のままだ。だから存分に戦ってくれても構わない。計画が動き出したからにはもう止まることは許されないんだ。出来るのは精々前だけを進み続けるのみ。

  

 

    …ハァ、人間の肉体と魂をより高位な存在に進化させると言えば聴こえは良いだろうけど、結局の所この計画は人から人としての全てを奪うものだ。この計画が始まったからには遅かれ早かれ、君はいつか人間を完全に辞めることになる。

 

    萩原仁、君には僕の都合の良さと背負うべきものの全てを押し付けてしまったと心の底から思っている。子供にこんなことをするだなんて親失格だ…

 

 

  未だに晴れることもなくただ溢れ続ける巨大な悪意を、これから君一人で受け止めるしか方法はない。だけど、これだけは知ってほしい。君の犠牲があるおかげでこの世界の人類は救われることを。

 

 

    いずれ時が来たら存分に殴ってくれて構わない。それに、その時には君が探し求めていた真実も一緒に話すとしよう。だから今は頑張って生きててくれ。君なら僕がいるこの場所までちゃんと辿り着けると信じているから

 

 

 

 

 

〈side ??? out〉

 

 

 


 

 

 

〈side仁〉

 

 

 ノイズたちの大群に囲まれた仁。今にも倒れそうなのを意地で我慢していたが、もう限界だろう。一度心が折れたせいで立つことすらままならないのが現状だった。そうやって静かに死を待っている中で、突如にして彼の纏う空気が変わり始めた。

 

(…死ねない……死にたくないっ…こんな所で死んでたまるもんかっ) 

 

(あの時、誓ったんだ。この世界で生きていくと、(萩原仁)のせいで消えたこの世界の萩原仁()の分まで生きるってそう誓ったんだっ!!)

 

(だからっ)

 

 呼吸するだけで悲鳴をあげる身体に鞭を打って立ち直る仁。今彼の中には怒りや憎しみ、絶望といった負の感情よりも激しく燃えるものがある。それは生への渇望。

 目の前までに迫ってきた明確な死のイメージ。それを前にして彼の生存本能が刺激されたのであった。そして生への渇望、すなわち今を生きんとする強い意思が彼の中に眠る()()を呼び覚ました。

 

 

 

ドクン

 

 

 

 

    システム起動

 

 

    予定時刻より早い起動を確認

 

 

    計画の遂行に支障がないと判断

   

 

    プロジェクトD、第一段階を開始

 

 

    本体の周辺にレベル2以上の脅威を確認

 

 

    レベル3戦闘改造プログラムを同時に進行

 

 

    左腕部及び全神経系、骨格の置換を開始

 

 

「っこれは?」

 

「腕が、いやっ身体中が赤い…?」

 

 全身に響く大きな鼓動と共に現れた赤い痣。心臓のある胸部から現れたそれは一瞬にして仁の身体を覆い尽くした。奇妙な紋様を描きつつ淡い光を発していたそれらから仁は徐々に熱を感じ始めた。いや、赤い痣だけじゃなく、それらを含めた身体全てに掛けて急激な高熱を感じた。

 

「くっ何だこれは、身体が…熱い?」

 

    全身の体温が急上昇、目標数値への到達を確認

 

    続けて不要な有機物の()()を開始

 

「何?…ガァッ?!」 

 

 そして、彼の肉体は激しく燃え始めた。

   

「グゥゥォォォォッッッ?!」

 

(な、何で?か、っらだがもえっつ?!) 

 

 左上半身にて突如に起きた人体発火。それは激しい痛みと共に彼の肉体を呑み込んだ。仁は左腕を始め上半身の左半分を呑み込んだ炎にのたまってしまう。

 

 

    …………焼却作業と並行しレベル3戦闘改造を開始

 

    …………レベル0、心臓部の超融合炉への再構築完了

 

(か、からだのっ、おくから…もっっ!) 

 

 仁から発した炎は皮膚や筋肉といった表面を焼くだけでは終わらなかった。心臓付近から感じる熱に仁は体内の奥からも高熱により焼かれ始めたのを感じた。

 身体が燃える痛みは肉体だけじゃなくその精神にも多大なダメージを与えていた。肉体的、精神的ショックで苦しみながらも炎を消すために地面に身体を擦り付けるがまるで消えず、また地面でのたまう仁を殺すためにノイズたちは動き出した。

 

(くっそ……本当にこれで終わるのか?)

 

 仁が抵抗の素振りすら見せず、炎を消すことに夢中なことを機にノイズたちは再び進軍し始めた。

 両目の視野を埋め尽くす程のノイズの大群。身体の半分以上を呑み込んだ炎。今度こそ彼の息の根を止めるためにイモムシノイズがその巨体を持って走り出し、小型中型を問わずにその場全てのノイズたちが仁を押し潰さんと身を投げ出した。

 

ジュババババババッッツ!!

 

 

「っウォォォオオオオオオー?!」

 

(死ぬ!このままじゃ本当に押し潰されるっ!)

 

 すでに仁の身体はノイズたちに埋もれて久しく、短時間にてノイズの小山が出来上がった。小型1体や2体ならまだ中学生である仁でも片手で持てるのだがいかんせん数が多すぎた。推定0.5t以上の大質量が彼を上から襲う。小型だけで300を優に超える上に中型も決して少なくない数が仁たった1人を殺すために迫って来たのだ。例え彼が成人した健康な大人だったとしても精々窒息死か全身骨折で終わるだろう。

 

(…嫌だ。お前ら何かに負けたくもないっ負けてたまるか!)

 

(熱さが何だっ痛みが何だってんだ!)

 

「死んだ父さんも母さんも、健太と紗耶香もっ!あの人たちはもうそれすら感じられねぇってのに、俺はっ!!」

 

    …………炉心の活性化及びエネルギー上昇を確認

 

キィィイイインンン

 

 仁の身体を覆っていた痣が今までとは違う光量の赤い輝きを放ち始め、やがて痣を通して放たれていたその輝きは元心臓があった胸の奥から再び放たれた。更なる輝きと共に強い鼓動を放つ彼に変化が訪れた。

  

 

    …………レベル1、各神経系の再構成及び配線完了

 

 まず全身の神経系は一度分解され、メインコンピュータ(大脳)からの信号と炉心(心臓)から溢れる無限のエネルギーを繋げるネットワーク回路兼エネルギーパイプに再構成された。

 

    …………レベル2、全骨格の強化及び再構成完了

 

 全身の骨、つまり骨格そのものが生体金属により補鋼され、その構造も作り替えられた。より効率的かつ繊細な力の分配が可能となり、より頑丈な構造へと内部造形が変化し、より高い戦闘力を得るための改造が左腕、そして全身に施される。

 

 

    これで全ての準備は整ったよ。あとは君のこれから次第に未来は変わる。

 

 

 左腕を覗いた全身から放たれる赤い輝きはやがてその勢いが収まり、逆に左腕の痣は更に力強く光を放つ。

 

    …………レベル3、左腕部の再構成及び武装化の完了

 

 五本の爪は鋭利な刃物のようになり、その腕も肥大化し元の大きさの約2倍近くなっている。手の平に空いた孔からは一瞬だけ赤いエネルギーが漏れまわりを照らす。そして手先から肩の付け根までを更に覆うかのように赤いエネルギーが纏わされ、巨大な武器となりその腕に装備される。

  

    B.S.W.ー001シーザーブレイド、002デストロイアーム装着完了

 

 左手に持たされるのは巨大な鋏のように交差する二本の刀身をもつ大剣。そして、その左手をまた覆い隠す巨大なガントレット(籠手)

 

    レベル3戦闘改造プログラム全ての完了

 

    炉心の稼働状況…オールグリーン

 

    …稼働率の急上昇を確認

 

    31……32………33……………

 

    …37……38………稼働率の安定化を確認

 

    現最高稼働率38%を記録

 

    戦闘支援プログラム起動開始

 

 何処からか聞こえる謎の機械音声と空中に映る謎の文章。己の身に起きた変化に気づいた仁は全身から、特に左腕からとてつもない力を感じる。

 

 

      さぁ、これで準備完了だ。思う存分に暴れてくれ

 

 

 反撃の狼煙は上がった。

 

 

 

 

 

side 仁

 

 

    何だ…?身体が、腕が…変わった?

 

 いつの間にか全身を呑み込んで燃え盛っていた炎が赤い痣と共に消えていた。だけどいきなりそれらが消えたと思えば左腕に何かデカイ剣見たいなものと籠手?が塡めれていた。何が起きたのか一瞬考えたけど、今はそれどころじゃないことを思い出した。

 

    っ早く抜け出せないと!……いや、待ってよ?

 

「全然、重くない…?」

 

 つい先までは死ぬ程に重かったノイズが今はまったく重く感じない。いや、むしろ軽すぎる程だ。どういう事だ?まさか先程の音声と関係があるのか?そもそも何だこの剣は、左手も何か黒くてゴツい籠手が填められているし一体何が起きたんだっ?

 

       さぁ、これで準備完了だ。思う存分に暴れてくれ

 

 …っもちろんだ!言われるまでもない、こいつら(ノイズ)は全部俺の手でぶち壊すっ!!

 

 

    炉心からのエネルギー漏れを確認

 

    戦闘に支障がないと判断

 

    戦闘支援A.I.Veda(ヴェーダ)システムオンライン

 

 胸の奥、心臓(融合炉)から熱い何かが流れ出す。これが何かはよく分からない。けどこれ一つだけははっきり言える。

 

      今日がお前らの命日だって事だ  !!!!

 

  ォォォオオオオオオ    !!!!」

 

 

 

 

 死に曝せっ!!!!

 

 

 

 

side 仁 out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キャンプ場の一部だった残骸たちと炭の山が転がっている中でノイズの小山が出来上がっていた。しかし、出来てものの数分にして壊された。数え切れない程のノイズたちが蠢くその山から突如、ノイズ同士の隙間から漏れるように赤い光が現れた。そして、その光が漏れてすぐにしノイズの小山が爆発した。

 

 

 

 

ドーン

 

 

 

 一瞬にて出来上がった大きなクレーター。そして爆発により崩れ去るノイズの残骸()が赤い光と共に宙を舞う。爆発と共に現れた赤い閃光は大きな衝撃を伴いながら広がり、近くにあったいくつもの山にも届いた。円を描くように広がったそれらはやがて山の頂きを崩してしまう程に強力だった。

 その山たちは轟音を響かせながら大きな土砂崩れを起こした。 

 

 その全てを引き起こした張本人である萩原仁はクレーターの中心に二本の足で立っていた。その左腕はまるで異型のものであり、その手には大きなガントレット(籠手)と奇怪な刀身を二本持つ大剣が握られていた。

 

 仁のまわりにいたノイズは爆発の影響を至近距離でもろに浴びたので消滅し、また先程の小山を囲んでいたノイズたちも少なくない数がやられていた。

 

「ふぅー。あんな爆発があってもまだこんだけいんのかよ」

 

  クソが。

 

 しかしそれでもノイズの大群は健在で、後方から近付いたイモムシノイズが大量の小型と中型を吐き出す。あっという間で補充されたその数は何と300。仁が10時間もかけて倒した数よりも遥かに上回る物量をイモムシノイズはいとも簡単に揃い出したのだ。

  

「はっまだそんなに隠してたのかよ。」

 

 さすがにこれ程簡単に数を揃えられては切りがない。10を減らしてもその倍を出されては倒したくても倒しきれない。しかし、だからと言ってまったく方法が無いわけではない。

 

「ならまずはこれだな」

 

 仁は手の平がイモムシノイズに向かうように左腕を構える。すると突然、彼の胸から左腕にかけて赤いスパークが走る。

 そして

 

  赤いビームがイモムシノイズを貫いた

 

 大型ノイズを一撃で葬り去った赤い光線。それの勢いはまるで止まるごとなく空を突き進みながら夜空を照らした。

 

「くっ…たったの一発を撃つだけで反動がかこんなにっ」

 

 そしてその光線をを放った本人は元々立っていた位置から大きく後退っていた。両足が反動により地面に突き刺さったまま半端強引に引かれたのだ。そのせいで彼の足元には大きなクレーターが溝のように掘られていた。

 

(けど、これでもう数が増えることはなくなった。ならっ)

 

「今度こそ終わりだっ!」

 

 イモムシノイズが倒されたことでその場にいたノイズの大群はもう戦力を維持する術を失なった。なら後は倒すだけのみ。ほとんどのノイズたちもエネルギーが尽き、動きも鈍くなっていた。

 そんなノイズたちに仁からの攻撃を避ける、もしくは凌ぐ術はもう残っておらずただ蹂躙される一方だった。

 

「ハァッ!」 

 

 ガントレット(籠手)に包まれた五本の指がノイズを切り裂き、巨大な拳がその大質量と豪力を持って(ノイズ)叩き潰す。左腕そのものが一つの兵器となっている今、仁は右手に持った剣と左腕の拳でノイズを次々と葬っていく。

 

「オラオラオラオラオラオラァ  !!!!」 

 

 鋏状の刃を持つ大剣、シーザーブレイドを二本の剣に分離しそれぞれの手に持つ。そして全力で振り回しながらノイズを怒涛の勢いで切り刻んでいく。左手の刃で切り裂き、右手の刃で突く。右腕で切り上げつつ、逆手に持った左腕の剣を横一文字に振り払う。一振りで3体、二振りで6体を炭に還す。そこには凝った剣技も小細工もない力任せの荒業のみだった。

 しかし、仁は生まれてから一度も剣を持ったことがない。そんな仁がどうやってこれ程の冴えた剣術もどきを扱うことが出来たのか?それは彼の(スーパーコンピューター)にある戦闘支援A.I.ヴェーダが戦闘の間にも常時最適化による動作補正を行っているからだ。

 また、ヴェーダの能力はそれだけではない。ヴェーダの戦場把握能力は凄まじく精度が高い。仁の動きに合わせて次々へと最も効率的な動きを指示し、より向いた攻撃手段の選別、広範囲かつ正確に戦場の変化を探知するなど現代の軍事用コンピュータを軽く上回る性能を誇る。

  

 

   3時方向から分隊規模の小型ノイズが接近

 

   広範囲攻撃に向いてないデストロイアーム代わりにシーザーブレイドをお勧めします

 

「っそこか!」

 

 いつの間にか近付いたノイズの群れが突っ込んでくるが仁は難なく攻撃を避けながらシーザーブレイドでまとめて切り倒す。力任せに振るわれた大剣は大きな風切り音を上げる。ノイズを次々へと炭に変えるその姿はまさに戦場の鬼のようだ。

 

   12時方向から中型ノイズの率いる小隊規模のノイズを確認。約2分後に有効攻撃範囲に到達と予測 

 

   10分の1に威力を抑えたリパルサーの照射なら高確率で殲滅可能です。しかし、周辺に大量に舞う可燃物質(炭素)により粉塵爆発が起きる可能性の方がたか「ンなの知るかっ」

 

「喰らえー!!」

 

 しかし、ここで一つ忘れていた事がある。長時間に渡る戦闘と家族を全て失ったことにより仁の頭は完全に血が上がっていた。そんな彼に冷静な判断が出来るわけがなく、左手のリパルサーから光線を放つ。オペレーター(ヴェーダ)の警告にほとんど耳を貸さずに暴れ続ける仁。

 

ドーンッ!!

 

 そのせいでヴェーダの警告した粉塵爆発は起きてしまった。風により飛び舞う黒い粉塵()がリパルサーの光線が放つ高熱に熱されて爆発したのだった。その爆発を機に起きる連鎖爆発は地面に積もった大量の炭にも引火し、炎を引き起こした。爆発の影響でキャンプ場は跡すら残らず破壊され、仁が立っている山には大規模の山火事が起こされた。 

 

   残りの敵対存在(ノイズ)、あと100体を切りました。

 

 もはやヴェーダの声すら聴こえない仁。ノイズを葬ることしか頭にない彼にはそれ以外の全てがどうでも良かった。ただひたすらにノイズを葬っていく。

 二つに分離したシーザーブレイドを中型最後の2体に投げ飛ばし、左腕のデストロイアームの大型クローを展開したまま切り裂く。五本の指に重なるように纏っているそれにノイズたちは紙か豆腐を切るかのように簡単に岩木もろとも千切り飛ぶ。しかし、仁がノイズを喜々と蹂躙する間にも火事は広がり続ける。メラメラと燃え上がる草木は黒い煙と共に炭と灰になってゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 仁 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

  気づいたら全て終わっていた。

 

 まるで出来の悪い悪夢のようだ。両親が目の前で串刺しされ、弟がノイズに押し潰される姿を見せつけられた。大事な友だち(初恋の相手)もまた目の前で消えて死んだ。こんな悪夢が現実であってたまるか…

 

「父さん、母さん…健太…紗耶香……」

 

  何処にいるんだよ、みんな

 

 でも現実は非常だった。今朝までには綺麗な緑と人々の声で溢れる楽しいキャンプ場だった筈が、今は跡すら残っていない。人は皆死に、キャンプ場は山ごと破壊されている。

 

メリメリッドサッ

 

  ……家族たちと過ごす楽しいキャンプになる筈だった…始めて全家族が揃って思い出を作る筈だったんだ…なのになぜ…

 

 これは夢だと叫びたい。このまま目をつぶっていれば父さんがこんな悪夢から起こしてくれると思いたい。だっていうのにっ

 

「っ何で夢から覚めないんだよ…!」

 

 頭の中では否定しているのに、心はそうじゃない。もうすでに半分受け入れ、いや諦めたんだ。誰も生きていないって、みんな死んじまったって俺は心の何処からか諦めているんだ。生きていてほしいってのにっ、肝心の俺が生きていることを祈るのを諦めたんだ。

 左腕は黒くてデカイままだし俺の近くには、先程まで両手に持って振り回していた剣が二本、地面に刺さっている。何時間もぶっ続けて戦った記憶もちゃんと残ってある。あれは夢なんかじゃないって嫌でも伝わってくる。

 

 「っあの時断わればよかったんだ…俺がはしゃいだせいでみんな死んじまった!俺が…俺のせいで……」

 

 何も出来なかった。俺が無力だったから、無能だったからっ皆死んだ…

 

  あの時もっと早く合流すれば父さんも母さんも死ぬことは無かった

  

  もっと気をつけて走れば健太は死ななかった

 

  先にゲートを通らせたせいで紗耶香が死んだ

 

  俺が…俺がいなければ死ぬことは無かったっ

 

「もう…誰もいないんじゃ、俺は本当に独りぼっちになったじゃないかっ」

 

 いくらノイズを倒したって死んだ人はもう戻ってこない。

 どれ程凄い人間になっても喜んでくれる人はもういない。

 家に帰ってきてもお帰りと言ってくれる人はもういない。

 俺が愛し、また俺を愛してくれる人はもう残っていない。

 

 

 

  ポツポツ

 

 雨が降り始める。始めは数滴俺の顔に落ち、まるで涙のように流れ落ちる。こんなに悲しいのに、こんなに叫びたいのにっ、こんなに泣きたいのにっ涙が出ない…!

 

 

  ざぁざぁ

 

 

「ッゥゥウウウ…」 

 

 激しく降り注ぎ始める雨が俺の気持ちを代弁してくれるようだ。

 

  

  ァァアアアアアアー!!!!!」 

  

 

今度こそ、俺は独りだ。

  




 さて、ようやくこれでプロローグは終わりです。
 プロローグでは我らの主人公、萩原仁君がどのような人物でどんな事情を抱えているのかについてのオリジンを描く章でした。作者が頭の中で想像したのが少しでも伝わったらと思います。

 さて、これからの展開についてですが、目次で目に見えるよう原作(アニメ第一話のライブ会場襲撃事件)から10年前と書いてありますね?これはプロローグと原作が開始する時点までの間に作者オリジナルのストーリーを挟んだ後に原作突入する予定だからです。
 タグもストーリーの進展と共に随時更新して行く予定です。これからもどうか、拙作ながらも機械仕掛けの復讐者を応援して下されれば幸いです。



私はトースター様、ぷっかつのタネ様、廣實陸様、もけもけの鎌足様、毒蜘蛛様、逆ハンター様、ラインス様、EXAMSystem様、ヨルムン様お気に入りありがとうございます。

*お気に入り、評価、誤字報告、感想よろしくお願いします。作者の力となります。

今後のR-15タグ付き描写について

  • R-15描写は好きだから今後も使って
  • 毎回じゃなくて、たまに使うぐらいならOK
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  • そもそもやるな
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