Fish that are called by different names as they grow larger   作:瓶ラムネ

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第一章開幕


第一章「箱庭最下層のチートコミュニティ」
最下層のトンチキなコミュニティ


喝采が上がる。

 

大通りの一角。

角地という最高の立地に居を構えた店、「久遠(くおん)の雷鳴」に大量の客と()()が群がる。

 

最近最下層で旗揚げした2人組みの振興コミュニティ「ヴェルトルエノ」、彼らが構えた店だ。

 

居並ぶ観客は彼ら"久遠の遠雷"が販売する西側の特産品に群がり、その品質が良く中々手に入らない品々を手にとっては購入していく。

 

そして何より、それらの値段が安いのだ。

 

通常、西側の品を購入しようとしたら、輸送量の問題が発生して値段が高くなってしまいがちなのだ。

 

商人がどれだけ頑張り、大量に買い込んでもゲートの行き帰りの使用料金が大きな足かせとなり、また購入の手間、倉庫への搬入、在庫管理などなど、その他を考えればどんどんと値段が高騰していく。

それが、多少西側で購入するよりかは割高とはいえべらぼうに高騰しているわけではない、妥当な範囲の値段設定。

 

それこそが彼ら"久遠の遠雷"の最大の強みだ。

 

しかし、彼らの強みはそれだけにあらず。

 

なんと言ってもここは箱庭世界。

ギフトとギフトをぶつけ合わせたギフトゲームこそが華とも言える世界だ。

 

なればこそ、彼らはギフトゲームをより楽しめるよう、購入しない冷やかしの客をも巻き込めるよう、大々的にギフトゲームを受けて立つ。

 

久遠の雷鳴で常時開催されているゲームが3つある。

 

1つ、腕っぷしと腕っぷしのガチンコバトル。鍛え上げられた腕力対決。

2つ、頭脳VS頭脳。客と店員がクイズを出し合っての頭脳対決。

3つ、総合競技、有効判定は平手で相手に触れること。ガチンコ鬼ごっこバトル。

 

この3つだ。

専用のリングを用意し、腕相撲と頭脳対決を受けて立つ。

そして、この東の街全てをフィールドとした鬼ごっこバトル。

 

このどれか一つででも彼らに勝てれば店の商品をどれでも1つ、タダで手に入れることが出来る。

 

負けたら何かしら絶対に購入しないといけないというペナルティがありつつも、そもそも欲しいものがあって店に来ている客が大半だ。

そう思えば、ほとんどペナルティのないギフトゲーム。

 

参加者は日に1回まで参加可能という大盤振る舞いっぷりに連日並んでは勝負を挑んでいく人間が後をたたない。

 

そして、町中でアドルに飛鳥、サンダーバードを必死に客が追いかけ、それを余裕綽綽で逃げ回る彼らの光景に周囲で見ていた人間が気になって店に寄ってしまう。

 

そして店で売っている商品の安さと品質の良さにリピーターになり、また店に群がる人だかりが大きくなる。

 

そういう循環が出来上がりつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「西側で商品を仕入れる?」

 

何それ面白そう!と顔を輝かせる飛鳥。

隣ではバサバサと羽を羽ばたかせ、湖上を吹き抜ける清涼な風を気持ちよく受けてあくびを漏らすサンダーバード改め小鳥ちゃん。

 

場所は湖の中心に出来た半径百mにも満たない小さい島。

 

鬱蒼と木が生えていたそこをバッサリと伐採して景観を整え、屋外テラスのように魔改造したその場所。

 

周囲を湖に囲まれ、ザブザブと波音を聴きながらサウザンドアイズで購入したテラス用の真鍮製の椅子に座り、東側特産の紅茶を飲むという贅沢。

 

遠くには東側と北側を分断するように連なる大山脈が雪を被りながら雄大に横たわり、湖には多くの水棲生物が自由に泳ぎ回って時折水音を奏でる。

 

まさしく、絶景。

 

これだけ景観に優れ、足元の湖にも森にも食糧が大量に眠ってるとあれば、このサンダーバードもここから離れようとは思わないわけだ。

そう思わせられる。

 

まぁどっちが上でどっちが下かバチコりその身に叩き込み、今ではしっかり我々の仲間になっているわけだが。

 

それはそれとして閑話休題。

 

我々がこれから出店する店で取り扱う品の話である。

 

これから我々はコミュニティを運営するのだ。

どこかからギフトゲームで品々を奪うばかりではなく、我々も我々のやり方で箱庭の経済活動に参加したいではないか。

 

そんな俺と飛鳥の共通の思考から導き出された結論は出店だった。

自分たちで店を構え、商品を売り捌き、その儲けで美味しいものを食べる。

もちろん、自分たちの力を試すためにもギフトゲームには当然参加する。

 

だが、やはり自分の考えで店を出店して商売をしてみたいという欲求は強かった。

 

せっかく異世界に来たのだ。元の世界で出来なかったことにどんどんチャレンジしてみたい、そう思うわけだ。

 

「そうとも。今、東側で売られている商品は大概が既に市場独占されてる。この紅茶とかな。ここに今から新規参入しても勝負は厳しい」

 

「それはそうね。フォレス・ガロとか言ったかしら?彼ら、随分阿漕(あこぎ)な商売をしているらしいし。……そこで西側ってことね?」

 

東側最大のコミュニティ。フォレス・ガロ。

東側の外門の多くを保持し、大量のコミュニティを傘下に置く、巨大コミュニティ。

彼らの元締めには上層の魔王がいるとかいないとかいう噂も聞く。目下、彼らが追い抜く対象として目をつけているコミュニティだ。

 

「その通り。東側と真反対に位置する西側の特産品はこっちではとんでもない価格でしか手に入らない高級品。でも西側ではそう高くないわけだ」

 

「輸送費の問題ね。……でもそうなると私たちも仕入れるには同じく輸送費の問題が発生するわよ?」

 

「おいおい馬鹿言っちゃいけないぜ。こういうのもなんだけど俺は天空神の息子なんだぞ?空間転移くらいお手の物さ」

 

「ん……確かにそれはそうね。」

 

「何?何か不満でも?」

 

「…だって面白くないじゃない? アドル君ばかり活躍して」

 

机をトントンと叩き、面白くないと(のたま)う飛鳥。

せっかく初めて商売をするのだから、もっと苦労を重ね、創意工夫を凝らして市場で戦い、そして完膚なきまでに勝ちたい。そうありありと顔に書いてある。

それに何よりアドルばかりが活躍して、自分の出番がないのが最も面白くなかった。

 

「えぇ…いや、輸送問題を解決しないと厳しいぞ?他に勝ち目のある商売もなくはないが、全部ハードルが高いし。」

 

例えば上層の品や喫茶店などの飲食店経営ならばまだ勝ち目がなくもない。どちらも別の意味でハードルが高いわけだが。

アドルの言葉に理解を示しつつも、それでも飛鳥は面白くなかった。

子供のように頬を膨らませたりはしない。しかし、目が納得いかないと雄弁に語っていた。

 

結局、商品を仕入れる時の交渉の一部と店のレイアウトの決定権を飛鳥に委ねることで合意し、その場は収まった。

 

そして、彼らは動き出し、わずか3日で東側の市場を揺るがすほどの店を出店まで漕ぎ着けたのだった。

 

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