Fish that are called by different names as they grow larger   作:瓶ラムネ

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正論パンチは暴行罪が適用されないバグ

———-箱庭2105380外門。

ペリペッド通り・噴水広場。

 

日は完全に暮れ落ちて、箱庭の都市にはすでに夜の帷が降りていた。

街中を道ゆく住民の姿もまばらになり、家屋の窓にはポツポツと灯りがつき始めている。

 

この外門は世界の果てと向かい合っているため、他の地域と比べてもあまり栄えているとは言い難い。

昼時ですら閑散としていることが多く、夜にもなれば自然と静まり返ることがほとんどだ。

しかしこの日だけは、普段とは少々違った装いを呈していた。

 

「居ない!居ない!居ない!!!!アドルさんと飛鳥さんが居ない!!!!」

 

我らが箱庭の貴族が1人、黒ウサギが取り乱してそこら中のゴミ箱を漁る。

町中を探してもいないからと言ってゴミ箱の中にはいるわけがないだろう。

 

「どうどうどう、黒ウサギ。近所迷惑だよ近所迷惑。」

 

「で、ですがジン坊ちゃん!どこを探しても居ないんですよ!?お二人に何かあれば……!?」

 

と、突如。黒ウサギの視線の先にアドルと飛鳥が現れる。

 

「あら、私たちがどうかしたのかしら?」

 

「悪い、色々やってたら遅れた」

 

随分と遅い登場だが、問題児の残り2人は頓着しない。

 

「おう、お二人さん。俺が寂しく世界の果てなんかに行っていたってのにお二人さんはデートかよ?」

 

「あら、悪いかしら?世界の果てに黙って勝手に行った逆迴十六夜くん」

 

「先に抜けたのはお前の方が先だったと思うがな、十六夜。」

 

「おっと、やぶを突ついたか」

 

ガリガリと頭をかく十六夜。お互い様でしかなかった。

 

「さ。この後良いところに向かうのでしょう?さっさと行きましょう」

 

「時間は有限だ。」

 

新しいホームからここまでくるのにまた時間がかかった。

ホームの掃除もしていたこともあってもう大分日が傾いている。

しれっと2人は全員を促した。

 

「お二人が今までどこかをほっつき歩いていたのが悪いのですよ!?急に戻ってきてなんです!!?」

 

「まぁまぁまぁ。そう怒らないで。」

 

「怒りますよ!アドルさん、もっと我々のコミュニティの一員という自覚をですね」

 

「あら。私たちはいつあなたたちのコミュニティに入ったのかしら?」

 

しれっとコミュニティの一員扱いする黒ウサギに待ったをかける飛鳥。

肩を竦める。こういう態度で来られるとやはりイラっとはするものだ。

 

「うぐ。」

 

「忘れないでちょうだい。私たちはあなたたちの仲間になったつもりはないわ」

 

「そ、それは…そうですが……」

 

どうせお前ら行くところないやんけ、と言わんばかりの顔をする黒ウサギ。

その顔を見て飛鳥は額に青筋を浮かべた。

 

「……なるほどな。おいアドル、飛鳥。お前たち今まで何やってた?」

 

やはり十六夜はカンが良い。

まさかこうも早く見抜かれるとは思っていなかったアドルと飛鳥は顔を見合わせた。

 

「勘が良い奴だな。」

 

「全くね。十六夜くん、恐らくあなたの想像通りよ」

 

「あーお嬢はともかくアドルはなんだかんだ言って入ってくれると思ってたんだがな........こっちの事情は?」

 

「まぁ大体想像はついてるわ。どうせあれでしょう?黒ウサギのところはコミュニティが崩壊して火の車ってとこかしら?」

 

「それで復興を手伝えってことじゃないか?多分ノーネーム復興には相当の敵がいるとも見ているけど.........俺たちの予想、何点?」

 

ちなみに彼らが魔王に攻め滅ぼされたというのは不動産屋のおっさんから聞いている。

なんとなく予想しましたよ、全部はわかってませんよとアピールする。ちなみに飛鳥発案だ。

 

「90点というところだぜ。どうやって知ったんだか。チッ......最初から難易度ハードモードかよ」

 

舌打ちを打つ十六夜。勝手に戦力に組み込むんじゃないよ。

 

「あら、そもそも黒ウサギのコミュニティは元々ハードモードではなくて?」

 

「ヤハハ。そりゃ確かにそうだ。だが、お前たちが進む道もだいぶハードじゃないか?」

 

「そうかしら。少なくとも勝手に呼びつけておいて騙そうとする輩がいないだけマシだと思うけれど?」

 

飛鳥の舌鋒や鋭く、黒ウサギとついでにジン坊ちゃんとかいう男の子を刺し殺す。

 

「だとよ、黒ウサギ。やっぱ騙そうとしたのは悪手だったな」

 

「……話についていけてないですが。お二人はコミュニティを立ち上げると理解して良いですか」

 

「そうね」「そうだね」

 

「そんな!!それじゃなんのために僕たちが……!」

 

「ジン坊ちゃん!」

 

ジン少年の身勝手な言い分を黒ウサギがインタラプトする。

飛鳥が今にもキレそうな顔をしているからあまり刺激しないで欲しいものだ。

アドルはそう思いながら懐の短剣から手を離した。

 

「すみません、大声を出してしまって。そしてお二人、いえ、皆さんを騙そうとしたこと、誠に申し訳ございませんでした。」

 

「全くね。少なくとも黒ウサギ、あなたが私たちを騙そうとしなければ私はあなたたちのコミュニティに入ろうと思っていたわよ。......次からは正直でいるべきね。」

 

「だが、別に何も君たちに敵対するわけではない。そして君たちの目的達成のための手伝いをしないというわけでもない。魔王だろうが神だろうが戦うというのであれば轡を並べて一緒に戦う用意はあるよ。筋の通った話である必要があるがね」

 

「そ!……それは本気ですか?」

 

魔王だろうと神だろうと、と啖呵を切るアドルに驚きの声を上げる黒ウサギ。

ノーネームと一緒に戦ってくれる人間は愚か、ましてや相手は魔王。轡を並べて戦えるコミュニティが居るとは思っていなかったのだ。

 

「もちろんよ。言ったでしょう?私たちはあなたたちが騙そうとしなければコミュニティに属してあげても良かったと。」

 

「......魔王、ですよ?」

 

「知っているよ。だいぶやばい存在に目をつけられたらしいね君たちは。さっきサンダーバードをいてこましてきたけどあんなのとは格が違うんだろうね、楽しみだ。」

 

「は!?サンダーバード!!?」

 

「まさか水源荒らしの害鳥のことですか!?馬鹿な、サンダーバードは単体5層上位レベルの神鳥ですよ!?」

 

そんなに有名な害鳥だったのか。

まぁ確かにその神格は相当なものではあったが......所詮元は精霊種だぞ。

 

「アドルくんがワンパンだったけどね」

 

「とはいえ、能足りんの害鳥とはいえ神格は随分なものだったけどね。さすがは新大陸では神の鳥と言われているだけはあった。」

 

嘘である。

相性が良かったというのもあるだろうが、まぁこんなもんかレベルだ。

あのレベルなら元の世界にも結構な数がいた。

 

「ヤハハ、北米大陸の神鳥をワンパンかよ。随分と楽しそうなことをしてたんだなおい!俺も会ってみたかったぜ」

 

「うちに来れば見れるわよ。殺してはいないから」

 

「それこそ馬鹿な!神鳥を手懐けたっていうんですか?」

 

「別にそうおかしなことでもないと思うが。上位の存在が下位の存在に格を示して恭順させる。普通のことだと思うけど?」

 

「下位の存在ってそんな……。サンダーバードは黒ウサギより全然高位なんですが……。」

 

「え?そりゃ帝釈天のお情けで力を与えてもらった種族と地方とはいえ一つの信仰として成り立っているサンダーバードでは格が違うのは当然のことでは?」

 

アドルの舌鋒が黒ウサギに突き刺さる。もはや満身創痍だ。

 

「うぐっ。そりゃそうですけど……」

 

「というか君は僕たちのことをコミュニティ再建の切り札として召喚したんじゃないの?なんで君が上みたいな感じになってるの?平伏して奉れとは言わないけど、それ相応の態度ではあるべきだと思うんだけど、俺の感覚って間違ってる?」

 

「確かに。」「道理すぎて泣ける」「全くね」

 

「そ!そ、それは確かに、そう、ですね……」

 

「箱庭の貴族と言われて増長してたんじゃないかしら?」

 

飛鳥投手、黒ウサギの急所を突く球を放り、無事死球となる。

 

「ぐさっ」

 

「人を騙そうとするわナチュラルに見下してくるわ月の兎というのはこんなのばかりなのかしら?」

 

2投目、以下略。

 

「ぐさっ」

 

「そ、そこまでにしていただけませんか?」

 

「あら、あなたがリーダーのジン少年ね?」

 

「え、えぇ。そうです」

 

「言い直すわ。あなたが黒ウサギを矢面に立たせて全ての責任を黒ウサギになすりつけているリーダーね?」

 

3投目、以下略。

 

「うぐっ」

 

「うぐっ。じゃなくて私たちに何かいうことがあるのではなくて?」

 

「飛鳥、楽しそう」

 

「完全にS気質だな。アドル、あれの手綱を握るのは大変だぞ?」

 

「彼女は頭が良い。わざわざ手綱を握らなくてもなんとでもなるだろう。ダメだったらその時だ」

 

ダメだったらまた別のコミュニティを作るなりなんなりする。カンではそうならないとは思っているが。

俺のカンは当たるんだ。

 

「「す、すいませんでした!!!!!」」

 

黒ウサギとジン少年見事な土下座をきめた。

 

 

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