Fish that are called by different names as they grow larger 作:瓶ラムネ
「さて、そろそろ前置きは良いとしてさっさと話を進めようではないか。黒ウサギたちとアドル殿たちの用件は別なのだろう?」
「え、えぇ。アドルさんから用件をすませますか?」
「俺たちはサウザンドアイズにはただの買い物をしに来たんだよ。」
「主に家具とかね。他にも何かあれば買っていこうとは思うのだけれど。サウザンドアイズは色々売っているのでしょう?」
「お客様、こちらお飲み物です。長旅でお疲れでしょう、どうぞ」
こちらが真っ当な客だと見て接客し始める店員。
黒ウサギはワナワナと震えた。
「あら、どうもありがとう」
「いただこう」
煎れてくれたのは最高級玉露抹茶。
ぬるくもなく熱くもなく、ちょうど飲みやすい温度で非常に美味であった。
「ヤハハ。ノーネームってのはキッツイなぁおい」
「うん、悔しい」
「す、すみません....ですが、多分これからもこういうことは何度もあるかと......」
「ま、君たちはうちで買い物しなよ。お友達価格で提供するともさ」
アドルは鴨を見つけたような顔でグッと親指を立てた。
「やれやれ、お前ら相手だと毟られそうだぜ」
「あら、じゃぁうちもノーネームお断りにしようかしら」
「飛鳥お嬢様、こちら当店自慢の黒ウサギでございます。」
「ちょっ!?」
「良い心がけね。買うわ」
「いやいやいやいや!?ちょっと待ってください十六夜さん!?」
「そうだぞ!黒ウサギを売却するならウチに売却するのが良いぞ!?言い値で買うとも!!」
「そうじゃありません!!!ふざけてないで話を進めましょう!!」
黒ウサギのハリセンがとび、場がリセットされる。
「さて、黒ウサギを苛めていてはいつまで経っても話が進まん。となるとどうする?アドル殿たちは店を見て回るとするかの?」
「そうですね。そういえば黒ウサギたちは何しに来たんだ?」
店を見て回ろうと思うがふと思い立って黒ウサギに話を振る。
「あ、私たちはギフトの鑑定をしてもらおうかと」
「あ?ギフトの鑑定?」
「えぇ、十六夜さんも気になりませんか?自分のギフトについて」
「別に。他人の鑑定を受けるなんて俺はイヤだね」
「私も。別に困ってないし」
十六夜と耀は心底嫌そうな顔をした。
「ちょ!?今後自分のギフトを知っておくというのは重要なことですよ!?」
「別に自分のギフトで出来ることは大体知ってるし」
「他人に貼られたレッテルで自分を知るとか底が浅いと思う」
十六夜と耀はにべもない。ガンとして譲らない構えだ。
「ううむ。ギフト鑑定か......私の苦手な分野の話じゃの......おんしは」
「私に出来るとお思いで?」
「だろうの。となると.....アレに頼るのが一番なんじゃが......」
「マスター、自店の利益を度外視にした商品供与は社内規則に反します。」
「いうと思ったわい。......ううむ、どうするか」
「ほら、白夜叉も困ってるみたいだし、良いんじゃない?」
白夜叉たちのやりとりを槍玉に上げて言い訳を重ねる耀。
「そうだぜ、さっさと帰って飯にしようぜ飯に」
さっさと切り上げようと十六夜が立ち上がろうとするが、アドルは一つ思いついた。
「それなら俺が出そうか?その金」
「おい、アドル。余計なことしなくて良いぞ、おい」
「そうそう」
心底嫌そうな顔をする十六夜達。
しょっぱなにネタバレを食らうなど嫌に決まってるが、こちとらもうすでにネタバレをされた身。
死なば諸共である。
「いやいや、多分君たちにとっても必要なものだと思うよ。箱庭では広く流通しているようだし、ギフトカードは」
「ギフトカード?」
「お中元かなんかか?」
「こういうのさ、こういうの」
アドルがギフトカードを取り出す。
セルリアンブルーに輝き、雲と雷と星、そして一本の剣が描かれた一枚のカードだ。
「あん?そんなカードがどうしたってんだ?」
「これは言わば四次元ポケットみたいなものだ。物置として重宝する。」
アドルのあまりにもあまりな言い草に黒ウサギはツッコミを入れた。
「ギフトカードを物置扱いって......」
「ほう。そりゃ随分と便利だな。」
「便利だよ。これで飛鳥のギフトの名前も判明したし」
飛鳥も自分のギフトカードを取り出す。
ワインレッドカラーのギフトカードだ。
「ふぅん。お嬢様のは威光か。で?アドルのは?」
ーーー■■■■■■■■
ーーー■■■■■■■■
ーーー■■■■■■■■
ーーー■■■■■■■■
ーーー■■■■■■■■
ーーールーン魔術
ーーークレソベリアル・ガラティーン
ーーークリスベリアの剣
ーーーサイネリアの靴
ーーー黄金: 9812gg
ーーードラクマ金貨4千枚
ーーー葉擦れ森の権利書
ーーー黄若葉の湖の権利書
ーーー■■■の家の権利書
ーーーサンダーバード隷属の証
「ほとんど読みとれねぇじゃねぇか!!」
「所詮はこの程度の性能ってことさ。朝の情報番組の正座占いとでも思えば良いよ」
「ギフトカードは全知の一端、ラプラスの紙片を星座占いごときと同列には語れんじゃろて......」
「全知ねぇ。今まで全知とか言ってる奴が驚愕に慌てふためく姿を何度も見たけどね」
「ぐぅ。......アドル殿ほどの高位存在ともなれば彼らの知識を上回ることが出来ることもある......」
「それを全知と言って良いのかしら?全てを知ってるから全知と言うのではなくて?」
飛鳥は訝しんだ。
「この話は止めよう!わしが方々から怒られる。」
「逃げた」
「さて、ギフトカードをアドル殿が建て替えるということで良いのか?」
「俺としては黒ウサギたちへの手向けとして送らせてもらおうかと思うけど?君たちもこれから下層を抜け出し魔王とやらに復讐しに行くんだろう?使える物はなんでも使わないとじゃないか?」
「えー面白くねぇなぁ」
「うん、施しを受けてるようで嫌」
面白さ重点の十六夜となんか嫌精神で嫌がる耀。アドルは呆れた。
「プライド高いなぁ......」
「ではこうしたらどうかしら?」
「ん?」
白夜叉が用意していたギフトカード2枚を取り上げ、代金を勝手に支払う飛鳥。
ギフトカードを黒ウサギに渡す。
十六夜と耀が止める暇すらも与えない早業だった。
「十六夜くん、春日部さん、ノーネームという底辺コミュニティが可哀想で可哀想で仕方がないから、このギフトカードを恵んで上げるわ。悔しかったらアドル君が払った代金を耳揃えて1週間以内に払いに来なさい。まぁ、あなた達に出来るとは思わないけれどね...勿論出来なくても良いわよ?私たち、優しいから」
飛鳥は座布団に座る十六夜と耀を上から見下ろした。
顔には嘲の笑みが浮かんでいる。
「ざっけんなこらー!」
「すっぞこらー!」
見え見えの挑発に乗る十六夜と耀。
瞳には闘志が宿っていた。
「これでやる気出すのか、おんしらも随分と傾奇者じゃのう」
白夜叉は自分を棚にあげた。
「さて、一件落着ね。アドル君、さっさと買い物しましょう。日が暮れたわ」
窓を指差す飛鳥。
既にとっぷりと日が暮れていた。