Death mark Vegito 作:名無しのななな
「い、今の声って…」
「ああ、さっき外で出会った警備員だろう。」
こんな場所にあの警備員以外に誰かいるとは考えずらい。どこかで足を滑らせたて驚いただけと信じたいところだが…
ベジットさんが少し驚いた顔をして人外の動きをした。ベジットさんの安心感はあるが、嫌な空気は変わらない。
声のボリュームからして遠いわけじゃない。
花彦くんが姿を消した以上、ここに留まる必要もない。また、あんな叫び声を聞いておきながら駆け付けないのも人道的ではない。
「ところでベジットさんどこに行ったか分かる?」
萌が聞いてくる。俺にもわからない。少しの間二人でいてくれと言っていたが、そこからは気が付けばいなくなっていた。
「わからん。萌の言う通り本当の宇宙人かもしれないな」
否定はできない。花彦くんの前でもあの堂々とした振る舞い。普通の人間には不可能だ。
「それは冗談?本気?」
「両方だ。」
俺と萌は入ってきた昇降口を抜け、反対側の校舎を進んでいた。
すると一瞬だけ嵐のような突風が廊下を吹き抜けた。
ッッッ!!!
「萌、大丈夫か?」
「大丈夫、だよ。でも一体どこから…?」
俺も萌も腰が抜けたようにひっくり返り、散乱していたガラスが飛んできたが奇跡的にお互い無事なようだ。
「ここの壁、穴が開いてるな。しかも、穴が開いて新しい…?」
廊下から校舎の裏側に穴が開いていた。その穴はまるでさっき開いたように木くずが落ちている。
「この教室…職員室からか?」
職員室のプレートが見える。その扉も吹き飛んでいる。花彦くんの仕業なのか?
すると、その教室には…
「よう、こっちに来たのか」
ベジットさんと警備員がいた。しかし、警備員の様子がおかしい。
「ね、ねえその植物って…」
「ああ、どうやらこの警備員の左腕にくっついちまっているみたいでよ…」
腕にくっついている、というより…
鮮血にまみれ、毒々しい植物に蝕まれていた。
「ね、ねえ…生きてる、よね?」
警備員はぐったりと床に寝そべっている。
「気を失っているだけだ。だが、こいつの左腕はもうないと思った方がいいだろう。」
当然だ。もうその左腕には赤と緑しかない。
「その植物取れたりはできないの?」
「やってみたが、それだとこいつの肌ごと取れちまう。」
「そっか…」
「ところで、あの穴は何だ?花彦くんの仕業か?」
花彦くんの仕業なのだろうか。花彦くんは簡単に人を殺す力がある。あれくらいおかしくはないだろう。
しかし、帰ってきた答えは予想のはるか斜め上だった。
「悪い悪い。つい勢い余っちまったんだ。」
「「…えっ?」」
九条館のでベジットさんが幽霊を見たことあると答えた時を思い出す。萌と驚きの声が重なる。
「…えっと、もしかしてベジットさん…?」
「安心しろ、花彦くんに少し痛い目に合ってもらっただけだ。」
「じゃあ、あの突風は…」
「あー、たぶん俺の気合砲だな」
…やっぱり宇宙人だ。少なくとも地球人じゃない。なんだよ気合砲って…しかし、おかげでこの警備員の姿に対する恐怖が薄れた。
いきなり左腕が鮮血と植物で蝕まれている警備員を見て動揺したが、こっちの方がインパクトが強い。
「少しだけ収穫もあったな」
「えっ何かわかったの!?」
「花彦くんの攻撃パターンってところだな」
攻撃パターン…つまり殺し方か。
「知っていて損はないだろう?」
ごもっともだ。
「頼む。説明してくれ。」
するとベジットは警備員を見ながら話す。
「あいつは大きいとげを飛ばしてきた。」
「大きいとげ?」
「ああ、このとげだ。」
アイスピックのようなとげだ…かなりでかい。そんなものが体に突き刺さったら…
「で、このとげはおそらく…」
「この警備員のように刺さった奴の体を植物で埋め尽くすようになっている。」
沈黙が流れる。前例がある恐怖からくるものだろうか。
思えば九条さやの時と似ている。
「ベジットさん慣れてるね…」
沈黙の中、萌が口を開く。たしかにベジットさんはこの警備員の有様を見ても動揺していない。
「そうだな…花彦くんと同じくらい悪趣味な奴がいたから、そいつで慣れちまったのかもな」
「それも幽霊…?」
「さあな。俺にもよくわからん。」
萌はかなり動揺している。俺も動揺している。なぜこんな冷静でいられるのか、怪異とは違う恐怖がある。
「とりあえず、今はこいつを何とかしようぜ?」
そう言い、ベジットさんは警備員をロッカーの中にしまった。
はーい、ご都合設定発動でーす
花彦くんの飛ばすとげが「刺さった奴の体を植物で埋め尽くすようになっている」とありますが、実際そんな描写ありませぬ
でもって本来なら警備員さんは左腕だけでなく左上半身植物で埋め尽くされております。もちろん顔もです。ここベジットさんによる救いです。