Death mark Vegito 作:名無しのななな
金髪の少女の人形は腕の球体関節を見なければ普通の少女で通るだろう。
「私の名はメリイと申します。あなた様がみたであろう異変はすでに察知しております。」
「二階で九条さや様の死体を見つけられたことも…」
やはり、あの女の死体は九条さやで間違っていないようだ。
「我が主人、九条さや様は【シルシ】から逃れることができなかったのですね」
「…シルシ?」
聞きなれない言葉に思わず聞き返す。
「あなた様も、そのシルシについて、なき主人を訪ねてきたのではないですか?」
右手首を見ると、まるで犬にかまれたような痣があった。
「何だこれは…いつの間に…?まさか…」
「そのまさかでございます。それが【シルシ】でございます。」
シルシ…これが俺が九条館に来た理由なのだろうか。少々オカルト的な響きだが、辻褄はあっている。
「さや様はシルシから逃れる方法を探しておりました。そのなき主人に変わり、あなた様にお伝えすることがございます。ですが、その前に…」
「ご自身の名前がわかりますか?」
名前。名前くらい幼児にでも答えられる。
「俺の名前は…」
…おかしい。なぜかすぐに出てこない。九条さやを思い出そうとした時と同じ。脳内に霧がかかっているように真っ白だ。
すると、メリイが俺の顔を見ながらなるほど…と、わずかに首を動かす。
心当たりがあるそうだ。
「不便でございますね。どうお呼びすればわからないのは」
仮の名前を考えなくては。
しかし、今の俺にわかるのは「大きな屋敷に心細く立ち竦んでいる一人の男」くらいだ。好きな食べ物や音楽等何も思い出せないとメリイに伝える。
「では、八敷一男という名はどうでしょうか。」
不意にメリイがそう尋ねる。
「なかなか立派な響きに聞こえるのですが…」
立派かどうかはわからないが、仮の名前はあった方がいい。
「なら、それでいい。」
「承知致しました。」
それから、メリイにシルシについて教えてもらった。
刻まれた者は、近いうちに命を落とす。信じられないが、九条さやの死が現実を物語っている。
九条さやの死体はどうみても人間によって殺されたとは考えづらい。この世のものではない、何かによって殺された…こう考えるのが妥当だろう。
次に恐ろしいのは死を迎えるその日まで、少しずつ記憶が壊されていくこと。そして、今の俺の状況を整理する…
自信の名前を忘れてしまった自分。まさに記憶が壊されている。そしてメリイから告げられた…
本日の夜明けに死を迎えます。
ジャスト千文字!次から1章なのでベジットさん出せる!