Death mark Vegito 作:名無しのななな
「わたし、さや先生に相談があってきたんですけど…おじさん誰?」
おじさん、か…それほどの年齢だと自覚はしていたが少々胸にちくりと来るものがある。
「あ!もしかしてさや先生の恋人?」
恋人とは…意外なことを言われたな
「まあ待て。俺は知人。弟子みたいなものだ。」
記憶がない以上こういうしかない。
「とりあえず本題に入りたい。」
と青い胴着を着た男が話を切り出してきた。
「そうですね。とりあえず自己紹介でもしときましょうか。私は【渡辺萌】といいます。」
「俺は【ベジット】だ。」
ベジット…芸名か何かだろうか。だからといって外国人には見えない。偽名の可能性が高そうだ。
「さっきも聞きましたけどそれって本名なんですか?」
どうやら、一緒に来たわけではないらしい。
「一応な。」
すると、渡辺萌が肩にかけているスポーツバッグから雑誌を取り出す。
「この愛読書を読んでここに来たの。」
霊能雑誌…愛読書というあたりかなりのオカルトマニアなのだろう。
その雑誌の中の一ページに
【この痣には記憶障害の霊障があります。痣のある方は一度、九条館までご相談ください。 心霊治療家・九条さや】
と記されている。
「この痣ってこのイラストと同じだよね?」
「悪いが俺にも知らないうちにそいつが付いていてな。」
渡辺萌はスカートの裾を少しまくり上げ、太ももに、ベジットは俺と同じ右手首に痣が浮かび上がっていた。
「とりあえず、中に入ろう。」
制服姿の女子高生がこの時間に玄関でスカートをまくり上げているところなど見られては面倒だ。
「うわー、すっごい豪華!天井高くてこの壺も高そう!」
天真爛漫というより警戒心がない子だ。先ほどのスカートの件と言い、純真な子どものように感じる。
「カプセルコーポレーションほどではないが広いな。」
カプセルコーポレーション…?有名なのだろうか?記憶をなくして思い出せないだけなのかもしれない。
「さて、本題に入ろうぜ?」
「そうだな、なあ渡辺さん」
「萌でいいよ。家でも学校でもそう呼ばれてるから。」
メリイのことが気になり、ちらっと横目で見るが目を閉じて赤いソファに座っている。このまま人形モードを続けるのだろうか?
「じゃあ萌にベジットさん、その痣についてだが」
ホールの適当な椅子に座ってもらい、痣について聞く。
「うん…」
萌が分かりやすくテンションを落とす。
「さや先生の記事にも記憶障害の霊障って書いてあったけど。最近、物忘れが激しくて…」
「俺は今のところはなにもない。」
「そういえば、ベジットさんもこの雑誌を見てここに?」と萌が聞く。
「いや、この痣から感じられる気と同じ気を感じてここに来た。ほかにも痣があるやつがいたが、ここの気が一番大きくてな。」
気…?まさかメリイと同じで感知能力があるのだろうか?
「えっと…気って何?」
「生命エネルギーってところだ。」
「えっと…それを感じてここに来たと…ベジットさんは超能力者なの!?」
「さあな。お前たちから見たら超能力者かもしれんな。」
「じゃあじゃあ、UFOとか宇宙のどこにいるのか分かるの!?」
落ち込んでいた萌の目がキラキラしている。正直、胡散臭いが、なぜかそれが真実だというような、嘘をついていないように感じる。
「知ってるやつがいるなら地球じゃなくても感知はできる。」
どこに住んでいてどこから来たのか気になるところだが聞かないでおこう。
「俺の話はあとだ。そんなことより、その記憶障害とやらはどこまであるんだ?」
「そうだね…この前、同じリップ二日連続で買っちゃって。あとそれから…自分の名前もときどき…」
少し落ち着きながら萌が話す。自分の名前を忘れてしまう…俺と同じ症状だ。
「一瞬だったんだけど、答案用紙に名前が書けなくて…これってこの痣によるものなのかなって」
「はい。その症状は痣によるものです。」
「えっ?どこから?」
「そこの人形か。」
「人形!?」
萌は体を捩じらせ、ホール内を見回す。
「ようこそ、九条館へ。」
メリイを見つけた萌の口がスロー再生のように開いていく。
「に、人形が…喋っ…た」
「申し訳ありません。驚かせてしま…」
だがメリイが言い終わる前に萌は「かわいい!」と黄色い声を上げ、赤いソファに突進していった。
ベジットさん登場!