息抜きで書いたHxH(仮)   作:せとり

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第5話

 

 

 

 大分打ち解けて談笑なんかをしながら歩いていると、やがて開けた場所に出た。

 左右対称な造りのせり出した足場、中央にある小島みたいなものに、その四方を囲む篝火とスクリーン。まるで観客席の無い闘技場だ。

 向こうの足場には、囚人服を着て手錠を掛けられた者が五人。

 そのうちの一人が監視カメラに話しかけると、手錠が外されフードを取り去った。

 出てきたのはメンチが嫌いそうなハゲだった。

 筋肉質で大男。傷が勲章のようにそのハゲに刻まれている。軍人系かもしれない。

 

「我々は審査委員会に雇われた――」

 

 うんたらかんたら。

 なんか採決を求められたので適当に○を押しておく。

 

「こちらの一番手はオレだ! さぁそちらも選ばれよ!」

「私が、出る……」

 

 ようやく話が終わったらしい。私はすっと前に歩み出て宣言した。

 

「おい、勝手に決めるなよ。まずは話し合ってからだな……」

 

 頬に湿布を貼った青年、レオリオが止めてくる。

 彼の言い分を聞いてみると、アイツはどう見ても肉体系だから勝負の方法は危険に決まっているとのこと。

 いや、私のことをヒソカ以上だと同意していた君は何処に行ったのか。

 外見で侮られているのが分かっても、それはレオリオの生来の優しさが原因だろうと理解できて、不快感はなかったが。

 

「心配は、無用……。むしろ、歴史や国語で勝負とか言われたら、困る……」

 

 レオリオとクラピカは微妙な顔をした。

 それと対照的に、ゴンとキルアはその可能性があったかと言わんばかりにハッとなり、二人して自分が行くと言い出した。

 ええい、先に行くと宣言したのは私だ!

 己の知識に対する不安げな表情に私は親近感を覚えたが、それとこれとは話が別。順番を代わる気は全くない。

 

 数分後、先鋒の座を巡った攻防を制したのは私だった。

 独りでに渡された空中廊下を歩いて中央のリングに行くと、ハゲの男は呆れたような顔をして待っていた。

 だが、私がリング中央にやってきて気を取り直したのか、男はデスマッチを提案してきた。

 内心でほっとしながら、しかし表には出さずに承諾の意を伝える為に頷く。

 

「俺は女子供だからといって手加減しない。それでは……勝負!」

 

 筋肉系ハゲは私に飛び掛かるようにダッシュしようとして、そのまま糸が切れたように前のめりに倒れた。

 原因は、一瞬の内にハゲの背後に回り込んだ私である。

 俯せに倒れ込んだ男はビクビクと手足が痙攣し、やがて動かなくなった。

 見れば、頭の付近から血が吹き出し、後頭部は抉れていた。

 どう見ても即死で、下手人は私である。

 殴りかかるように見せて、直接は念弾で傷つけたので手は汚れていない。

 人を殺したとは思えない程、私は身綺麗なものだった。

 

「これで、一勝……」

 

 ピッっとこちら側の表示に“1”が表示される。

 誰一人として私の動きが見えた者はいなかったのか、全員、呆けたように突っ立っていた。

 

 

 

 

 

 50時間の足止めペナルティを受けることになった部屋で、私の責めるような視線に変態レオリオ(エロ)は挙動不審に目を逸らしていた。

 なんとこいつはTPOも弁えず、エッチな誘惑に負けて50時間もかけた賭けに負けたのである。

 しかもそこまでやってもヤレることは、なんとおっぱいを揉むことだけ!

 とんだ詐欺に引っかかった駄目男である。

 それで分かった。先の評価は微妙に間違っていたのだと。レオリオは優しいのではなく、ただ甘いだけだ。

 どうせヤルんならももっとエロ同人みたいに盛大にやってみせろと、私の中でレオリオの株は大暴落していた。

 それに比べたらクルタ族の生き残りとか暗殺一家のエリートとかはどうでもいい。

 というか幻影旅団とか緋の目とかゾルディックとか言われても、この世界に無知な私としては訳が分からない。

 

「まぁ終わった事だし、これ以上レオリオを責めても仕方ないよ……。ね、それよりレアもこっちに来てゲームやろうよ! 楽しいよ!」

「あ、ああ、そうだな! こっちこいよ!」

 

 そう言ってゲームに誘ってくれるのはテレビの前でコントローラーを構えたゴンとキルア。

 気まずげな空気を晴らそうとしてくれる彼らに、私も不毛な行為を切り上げるべく、その誘いに乗った。

 その後は何故か全員を巻き込んだゲーム大会が始まり、50時間の拘束が終わる頃にはもう、気まずげな雰囲気は何処にも残っていなかった。

 

 

 

 

 

『長く困難な道なら○。短く簡単な道なら×を押してください』

 

 壁に無数の武器が立て掛けられた、武器庫のような部屋で。

 二つの扉の上にある像から、何度目かのアナウンスが聞かされる。

 残り時間は一時間を切っていた。

 うん、バグ技を解禁してしまおう。

 

「みんな、○を押して……。私が壁を壊す……」

 

 誰が三人に入るかで揉めようとしていた四人に私は言った。

 別に今すぐ扉自体をぶっ壊してもいいのだが、ここまで来たのだから一応多数決はしておくべきだろう。

 

「……! そうか! 扉を見る限り、二つの通路は壁を挟んで隣り合っている。長く困難な道を選択して50分以内にその壁を取り払うことが出来れば……」

「全員合格できる!」

 

 全員がその発想は無かったという顔をして納得。そして時間が惜しいとばかりに○を押していく。

 扉が開いた。

 

「やっぱり斧がいいかな!?」

「ああ! 先端が重そうな奴にしとけ!」

「斧は三つしかねーぞ!?」

「ならば、私はこれでいい!」

「……」

 

 壁を壊す為、四人は武器に駆け寄り、壁を壊すにはどれが効果的かと意見を交換し始めた。

 “私が”壁を壊すの部分はなんだかスルーされてしまったようだ。

 そんな四人は放っておいて、私は無言で扉を潜ると壊すべき壁の前に立った。

 軽くオーラを拳に集め、やりすぎないよう、かるーくパンチ。

 分厚い石壁が粉砕される轟音。

 濛々とたちこめる埃が晴れると、壁に直径一メートルほどの大穴が空いていた。

 よし、通路は潰れていない。

 壁に開けた穴を、私は潜った。

 

 

 


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