息抜きで書いたHxH(仮)   作:せとり

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第6話

 

 

 

「それにしても……あの場面でよく思いついたもんだな」

「一人で待ってた時……。もしも5人集まらなかったら、床を破壊して進もうと考えてたから……」

 

 滑り台を下って、私たち五人は無事に三次試験を通過していた。

 その約一時間後にタイムアップが周知され、三次試験通過人数は26人だった。

 そして間髪入れずに四次試験が開始される。

 どうでもいいけど、あのリッポーとかいうモヒカンメガネのチビは性格が悪そうだ。

 そんな試験官の説明によれば、ゼビル島とかいう小島を舞台に一週間、受験生達はナンバープレートを奪い奪われしながら最終的に6点をもって集合しろとのこと。

 自分の物とターゲットの物はそれぞれ3点。それ以外は全て1点。

 くじで引いた私のターゲットは371……誰だこいつは。

 辺りを見回してみれば、殆どの者がナンバープレートを隠しており見つけられそうにない。

 とりあえず、そこそこの使い手である44と301は違うらしい。

 よし、適当に三人狩ろう。

 

「よう。隣いいかい?」

「……どうぞ」

 

 船の壁に背を預けて座っていると、トンパと名乗る中年の男が隣に腰を下ろした。

 何の用だと訝しげに見つめると、男は191と書かれた指定番号を見せてきた。

 

「この通り、オレのターゲットはお前さんじゃない」

「……」

 

 見ればわかる。続きを、と言わんばかりに小さく顎でしゃくる。

 

「オレは10歳の時からこの試験を受け続け、今回で35回目の挑戦となるベテランだ。その中には今みたいにナンバープレートを奪い合った経験だってある。それからは何かの役に立つかと思って、受験生のナンバープレートの番号は頭に入れてるのさ」

「!」

 

 そこまで情報を出されれば、私もこいつの言いたいことが察すことが出来た。

 この男は、私が自分の指定番号の人物を知らないだろうと読んだのだろう。そしてその人物を教えるかわり、私に何らかの便宜を図ってもらおうとしているのか。

 だが、こいつは私が暴力に訴えて、情報を搾り取られた後に殺されるとは考えなかったのだろうか。

 性格的に言えば、素直に情報を教えてくれて、トンパが私の指定番号ではなかったら見逃すぐらいは普通にしてやるのだが、最初にあれだけ脅しといたというのに勇気の有る奴だ。

 

 すっと指定番号の書かれた札を見せる。

 

「……知ってる?」

「ああ、もちろん」

「……わかった。情報を教えて……。そしたらあなたは、見逃してあげる……」

 

 言葉と共に軽くオーラをそよがせて威圧すれば、トンパは面白いように表情を青くした。

 あわよくば自分の指定ナンバープレートを取ってもらうのを手伝って貰おうとか考えていたのだろうが、そこまでやってやる義理も無い。

 私は情報を買い叩くことにした。

 

「ぐ……。わ、分かった! 分かったから! 凄むのをやめてくれ!」

 

 生意気にも交換条件でも出そうとしたのか、私の威圧に抗おうとしたのでそれを更に強めれば、何かがポッキリと逝ってしまったのかトンパは折れた。

 捲し立てるように371の情報を吐き出すトンパを見て、私はオーラを霧散させて聞きに回る。

 

「――こ、これで終わりだ。約束だ、オレの事は見逃してくれよ、いいな!?」

 

 対象の情報を頭で纏めながらも小さく頷くと、情報提供者のトンパは脱兎のごとく逃げ出した。

 約束の事を軽視していそうにも見える態度だったが、私は約束は守るつもりでいた。

 利用価値の無くなったおっさんを見逃す程度の価値は、齎された情報に存在していた。

 

 受験番号371番、ゴズ。

 黒い髪に髭、額に巻かれた鉢巻のようなもの。武道家のような衣服。そして槍。

 そこまで教えられれば、流石の私でも誰の事だか理解できた。

 一次試験では近くを走っていた記憶があるし、これまでも何度か視界に入っている。

 先程気配も覚えたので、これで四次試験は余裕で合格できるだろう。

 むしろ確実に出来るであろう一週間の暇。私にとってはそちらの方が難敵だった。

 

 

 

 

 

 初日に首尾よく槍使いの男を殺してナンバープレートを奪った私はスタート地点に戻って来ていた。

 ここはスタート地点であると同時にゴール地点であるらしく、もし万が一終了日を忘れてしまってもここにいれば安心である。

 沿岸の崖に腰掛けて、沖合にある船を眺めていた。

 何をするでもなく足をぶらぶらさせる。

 身体が鈍らない程度の運動しかできない為暇なのである。

 流石の私も、この状況で疲れを感じるぐらいの修行をやるほど非常識ではなかった。

 

(尾行してた奴、泳がしておけばよかったかも知れない……)

 

 私が指定番号だったのか、初日に尾行してきた受験生はさっさと追い払っていた。

 あれをそのままにしておけば、少しは緊張感もあっただろうにと微妙に後悔。

 顔面に針を刺しまくった、ヒソカとは違う方向性の変態。

 あれも結構な使い手だったため、舐めプしまくれば中々苦戦したかもしれない。

 そんな埒もない思考をする程、私は暇だった。

 

 日がな一日岸壁で瞑想し、思い出すように食事をとると、また瞑想。

 そんな日々を五日ほど送っていると、流石に飽きてくる。

 これほどの期間、点だけに費やす経験は初めてだったため、最初はいい機会だと思ったのだが……。

 よくよく考えれば私はこういう単純作業が大っ嫌いだった。

 どちらかというと私は天才肌の人間で、普通の人だったら長い時間を掛けて体に刻み込んでいくことも、私はちょっと齧ればすぐにコツを掴んで一流顔負けになったものである。

 

 初めは新鮮だった海の景色と波の音に潮の風は、最早不快にすら感じられていた。

 やはり森が至高である。緑に土の匂い、静謐さが感じられる澄んだ空気。

 5年間過ごした森の様子が思い起こし、いささかホームシックめいた感情が湧いてくる。

 

(そういえば、家は大丈夫かな。……荒らされてるだろーなぁ)

 

 試験終了の合図である汽笛が鳴らされるのは、それから2日後の事であった。

 

 


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