雄英高校に通うため日本に移り住んで二週間が過ぎ、親父たちからのラブコールも少なくなってきた四月の今日――雄英高校の入学日。
特に遅刻することもなく自分のクラスである1-Aに入ろうと思ったんだが…
「そこの少年!」
「はい?って、オールマイト!? てか、なんでそんな遠くから…」
教室の扉を開けようとした直後、少し大きめの声が聞こえたので振り向くとオールマイトがそこにはいた。リアルオールマイト初めて見た。てか、なんか顔濃すぎじゃない? 圧がすごいよ圧が…
それになんで近くでじゃなくて少し遠めの曲がり角なんですか?手招きしてるからとりあえず教室に入る前に挨拶だけしとこうかな。
「えっと、おはようございます」
「うん! おはよう!! キミがワイルドタイガーの息子の鏑木転李くんだね?」
「は、はい…まさか本当に親父の友人なんですか?」
「あはは! 当たり前だよ! 私がアメリカに行ってた時にね君のお父さんと…っと、その話はまたにしておこうかな。昨日、ワイルドタイガーから連絡があってね?」
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【なぁ、俊倫。明日入学式だよな? 雄英高校の! もう、転李にあったか?】
【まだ入学前だというのに会える訳ないだろう?】
【そ、そうだよな! いやぁ…つい、うっかり。それとあいつのことよろしくな】
【なに心配いらないさ。君の息子はしっかりとヒーローに育てて見せるから……だから、毎日電話してくるのは控えてくれないか?】
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「―――っと、ここ二週間毎日同じような電話があってねぇ、はははッ!」
「ほんっと、うちの親父がすいませんでした」
親父、知らんところで恥をかかせないでくれ。なんで初日から先生に頭を下げなきゃいけないんだ。深々と頭を下げる俺の肩を叩き頭をあげるように声を掛けてくれた。本当はあげたくないが迷惑になりそうなので渋々と頭をあげる。
「それだけ期待されているんだよ。それじゃ、また授業の時によろしくね!」
「はい!」
そういって、素早く去って行くオールマイト。いやぁ、濃い顔だった。
にしても、本当に親父とオールマイトが知り合い…いや、友人だったなんて嘘ついてたわけじゃないんだな。
そんな事を想いながら改めて1-Aの教室に入る。……扉でかいな。
教室の扉を開けるとやはり中に居た生徒たちがこちらに視線を向ける、まぁ入学初日で知らない人ばかりだ。誰が入ってこようと注目は浴びるだろう。
既に仲良く話している者、静かに自分の席で時間が経つのを待っている者など様々だ。
さて、俺の席はっと…
「これから同じクラスメイトになる飯田天哉だ。自分の席は黒板に貼ってあるからそれを見て座るといい」
「ありがとう。俺は鏑木転李。これからよろしく飯田くん」
眼鏡をかけた男子生徒が早々に話しかけてきた。親切に教えてくれた飯田というクラスメイトに挨拶を返し、握手を求めるといかにも爽やかな笑顔で握手を返してくれた。
自分の席に座りにとりあえず時間が来るまで静かにしていようかと思っていたら、背中を軽く突かれた。
「っよ! 俺は上鳴電気。これからよろしく!!」
金髪ツンツン頭の上鳴。何とも先ほどの飯田とは真逆の性格みたいだ。
「よろしく。俺は鏑木転李」
「なぁなぁ、鏑木ってどこ中?」
いきなり呼び捨て…まぁ、良いけど。どこ中ってなんだ?
「すまん、上鳴くん。どこ中って、なに?」
「へ? いやいや。どこの中学出身ってことだよ。俺は谷便第一中学校、埼玉県の!」
「あぁ、そういう事か。俺、アメリカからこっちにきて…」
「うぇえ!! 留学生ってお前のことだったのか!!」
上鳴のすっとぼけた声と共に俺が留学生だと周りの同級生に知れ渡った。別に良いんだが、そこからがまぁ大変なことで…
「まじ!? アメリカのどっから来たの?」
「シュテルビルドってところで…」
「えぇ、でも苗字は鏑木ってバリバリ日本じゃん」
「両親ともに日本人でアメリカに住んでたんだ。だから、日本語も問題なし」
「なんで男なんだよ! 女を期待してたのに!!」
「それは悪かったな、男で」
今まで散らばっていた同級生が一気に詰め寄ってきてまさに珍獣扱い。そのおかげで大半の生徒の名前は憶えられたけどな。
あと、男で悪かったな峯田。
色んな質問が飛び交ってきて少し落ち着いてきたころに女子生徒――芦戸三奈がまたも質問をしてくる。
「なんで鏑木は態々アメリカから日本に来たの?」
「なんでって、そりゃヒーローになるためだろ?」
「えぇ、でもアメリカにもヒーロー科ってあるでしょ? それなのに態々日本に来る必要ってあったのかなって思わない?」
「確かに…」
「あぁ、単純にオールマイトが教鞭をとるってアメリカで聞いて。それなら雄英高校に進学しろって親父が」
「へぇ。お父さんってなんの仕事してるの?」
「あっちでヒーローしてるよ」
「ヒーロー!? ヒーロー名教えてくる!?」
人ごみかき分けて話に入ってきたのは緑髪の男子生徒。彼の急な登場に周りのクラスメイトはギョッとしてたけど、本人は特に気にしてない様子で親父の事を知りたがっている様子だった。
「お、おう。ワイルドタイガーって名前だけど……知ってる?」
「もちろん知ってるよ! アポロンメディア所属のヒーローで能力は"ハンドレッドパワー"。五分間だけっていう時間制限付きの能力だけど、その間だけはオールマイトにも引けを取らない身体能力が向上するって言われてる――」
「お、おう。良く知ってんな」
スラスラと親父の能力だけでなく所属まで答えなさるとは…
周りのクラスメイトも同じことを考えているだろう。
「「「(あぁ、こいつヒーローオタクだ)」」」