「お前らいつまで騒いでんだ。お友達ごっこがしたいなら他所へ行け…」
ボサボサ頭の緑髪の生徒が現れて、俺を中心に騒がしかったのが静まった瞬間。ボソッと声が届いた。
みんなが誰だ?と辺りをキョロキョロしていたら、上鳴が教卓の方を見て驚いたような声をあげる。それに周りの生徒も教卓の方へ視線を送ると…
「……チュ~~~。ここはヒーロー科だぞ」
「「「な、なんかいる!?」」」
寝袋に包まれながらウィダーインゼリーを呑んでいる男性。見た目だけならまるでホームレスの様だった。驚く俺たちを尻目に男は寝袋のまま立ち上がると包まっていた寝袋を脱ぎだし喋り始める。
「はい。静かになるまで1分かかりました。時間は有限…君たちは合理性に欠けるね」
「あれって…先生?」
「さぁ? わっかんねぇけど席に戻った方がよくね?」
芦戸と上鳴が声を潜めて話している。黒く長い髪はボサボサで目の下にはクマ。ひげの処理もしておらず、全身真黒で首には何重にも巻かれたマフラーのようなもの。
疑う俺たちなど気にする様子もなく。目の前の先生?はさらに話し続ける。
「担任の相澤消太だ。よろしくね…」
「た、担任!?」
「席に戻った方が良いよ、芦戸さんに桐島くん、それと君も」
「う、うん」
「別に戻らなくていいから。早速、これに着替えてグラウンドに出ろ」
そういって、寝袋の中から取り出されたのは雄英高校で各自用意されていた体操服だった。
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訳も分からず俺たちは担任の相澤先生の言う通りに体操服に着替えグラウンドに集合する。先に来ていた相澤先生が俺達全員が居るのを確認し、先ほどと同じ口調で気怠そうに口を開いた。
「今から個性把握テストを行う」
「え? 入学式はガイダンスは?」
先生の言葉に皆が驚く中、一人の女子生徒が質問をする。それに対し、先生は驚く生徒たちなど気にした様子もなく答えた。
「ヒーローを目指すなら、そんな悠長な行事。そして、それは先生側もまた然り……お前たちも中学の頃からやってるだろう? 個性使用禁止の体力テスト」
そういって手に持っている小型端末が表示する画面をこちらに見せてくる。画面には先生が言った通り、体力テストの項目が並んでいた。
「国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けている、合理的じゃない。まぁ、文部科学省の怠慢だよ……
爆豪。中学の時、ソフトボール投げの記録は何mだった?」
「……67m」
「じゃあ、個性を使ってやってみろ。その円からでなければ何してもいい」
そういって相澤先生はツンツン頭の爆豪という生徒に競技用のボールを投げ渡し、グラウンドに描かれた円の中に爆豪を進める。
軽く肩を鳴らす爆豪に先生は一言…
「思いっきりな」
「んじゃまぁ―――」
肩を軽く回したかと思うと思いっきり振りかぶり――
「死ねぇ!!!」
大声と共に彼の手から爆発音が響いた。急な衝撃音に周りの生徒は耳を塞ぎ軽く身を隠す生徒も出ている。
いや、それよりも…
「死ねって…どんな掛け声よ」
爆豪の投げたボールは彼の個性であろう爆発の爆風により雲を着るかのようにぐんぐんと空へと昇って行き見えなくなる。
相澤先生は手に持つ小型端末を静かに見つめ、機械音が鳴ったのを確認するとこちらに端末の画面を見せてくる。そこには、爆豪が投げたボールの飛距離であろう"705.2m"と表記されていた。
「まず、自分の最大限をしる。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
「なんだこれ! すげー面白そう!!」
「個性が思いっきり使えるなんて、流石ヒーロー科!」
個人の持つ個性は国の定めにより使用は禁止されている。それが今ここでは自由に使っていいという事に生徒たちは楽しそうに騒ぎ始める。
まるで、遊園地のアトラクションにでも乗る前の子供の様に。
それを見た相澤先生はただ静かに眺めていたが、静かに口を開いた。
「………面白そうか―――
ヒーローになる三年間。そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」
相澤先生の言葉に生徒たちは先ほどまでの浮かれた様子はなくなりジッと先生を見つめる。そんな俺たちを見て相澤先生は口元を緩ませ不敵な笑みを見せ。
「よし。トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し……
除籍処分としよう」
『はああぁぁぁッ!?』
職員室に戻ったオールマイトは自分の能力を授けた緑谷出久と親友の息子である鏑木転李の担任が誰なのか調べて頭を抱えていた。
「まさか相澤くんだったとは……鏑木少年は大丈夫だろうけど、緑谷少年には…こりゃいきなりどでかい受難だぞ」
どうしたものかと、拭えない不安がオールマイトの頭の中で立ち込めていたのだった。