雄英高校に海外からの留学生   作:翠星紗

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第4話

個人把握テスト全種目最下位者除籍。1-A担任である相澤先生の言葉に生徒全員は言葉を失っているなか、俺は静かに手をあげながら口を開いた。

 

「それは冗談とかではなく?」

 

「こんなこと冗談で言ってなんになる?」

 

だろうな。この先生の感じからすると、本当にやる気なんだろう。

 

「入学初日ですよ!? いや、初日じゃなくても理不尽すぎる!」

 

「……自然災害、大事故。身勝手なヴィラン達。いつどこから来るかもわからない厄災。日本は理不尽にあふれている。そういう理不尽を覆していくのがヒーローだろ。放課後、マックで談笑したかったのならお生憎様。これから三年間。雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける――

 

Plus Ultra(更に 向こうへ)さ。全力で乗り越えてこい」

 

人差し指を縦て挑発的な笑みを見せる相澤先生。それを見て、改めて自分が目指しているモノの恐ろしさを感じる者。気を引き締める者。笑みを見せやる気を見せる者など様々な表情を見せる。

俺自身、相澤先生の言葉に震えが止まらなかった。

 

そうして、入学初日から除籍処分を賭けた個人把握テストが幕を開ける。

 

――――――

――――

――

 

【第1種目 50m走】

 

それぞれが己の個性に会った競技に全力を出すであろう。今、目の前で飯田くんが自らの個性をフル活用して50mを走りきった。彼のふくらはぎにあるエンジンだろう。3秒04とありえない速さでゴールしていた。

けど、こういった競技なら俺は負ける気はしない。

 

「次、芦戸三奈と鏑木転李。早くしろ」

 

「よぉし。鏑木には負けないかんね」

 

「こっちも負けないよ」

 

何とも除籍処分がかかってるとは思えないやり取りだが、俺も芦戸さんも本気だ。芦戸さんはクラウチングスタートの姿勢を見せて開始の合図を待つ。その横で俺はただ立っているだけ、走る構えさえ見せない。

親父の個性は確かにパワー系だが、必ずしもそれが受け継がれるわけではない。

 

[ヨーイ……ドンッ!]

 

「ふぅ…」

 

「へッ!? うっそ!!」

 

合図とともに芦戸さんは低い姿勢をあげて加速を付けようと足に力を入れた瞬間だった。先ほどまで横にいた筈の俺が一瞬にしてゴールに立っていたのだ。

何が起きたのか理解できなかった芦戸さんは躓きそうになりそうな態勢を何とか立て直し、自らの個性を使い走り出した。

 

[1秒06!]

 

「反応に少し遅れたな…」

 

鏑木転李

個性:テレポート

己自身、または両手に触れた物体を半径200mまで瞬間移動させることが出来る。一度に移動できる重量は80kgまで。それ以上の重量を瞬間移動させると座標がずれてしまう。動いているモノを瞬間移動させると慣性は動いたままになる。

また、視野で確認できるところで移動させないと移動先でそこにある物体に身体がめり込み最悪の場合死んでしまうため要注意!

 

担任である相澤先生に関してはクラス全員の能力は把握済みのため特に驚くことはないようだが、クラスメイトは俺の能力に軽くざわついていた。

 

[7秒10!]

 

「はぁはぁ……もぉ~鏑木のせいでスタートミスったじゃん。そんな能力なら先に言っておいてよぉ」

 

「ごめんごめん」

 

遅れてゴールした芦戸さんは、ぶぅーっと不貞腐れた姿に俺は少し苦笑いを見せてしまった。

そうして、長座体前屈や走り幅跳びなど様々な種目を終えて今では5種目であるハンドボール投げ。

短距離走は一位の成績を取り走り幅跳びは3位、他は平々凡々と言ったところだった。

今のところ最下位ではないためだいぶ気は楽である。しかし、ある一人の生徒は種目が終えるにつれて顔色がどんどん悪くなっていた。

 

「大丈夫か、緑谷くん?」

 

「え? う、うん」

 

「次、緑谷。準備しろ」

 

「はいッ! じゃ、じゃあ行ってくるね」

 

「おう…あまり考え込むなよ。リラックスしろ」

 

「ありがとう鏑木くん」

 

返事を返す緑谷くんだったが、その表情はあまりにも暗い。ずっと一人で何か抱え込んでいるようだった。

歩いていく緑谷くんの後姿を眺めていると飯田くんと先ほどハンドボール投げ距離∞を出した麗日さんが近寄ってくる。

 

「まずいな…このままだと緑谷くん」

 

「なんで個性使わないんだろう」

 

「彼の個性が競技に合ってなかったとか?」

 

「いや。彼は入試の時に筋力強化系の個性を見せた」

 

「なら、50mでも握力の時でも個性を使えるときは多かったんじゃないのか?」

 

「ただ、彼が個性を見せた時に自らの身体が骨折していたんだ」

 

「そういえば…入試の時に両足と右手がボロボロになってたよね?」

 

「……彼自身、自分の個性が御しきれていない?」

 

「何言ってんだ、てめぇら? 無個性の雑魚だぞ?」

 

「な!? キミは彼が入試の時に何をしたのか知らんのか?」

 

「は?」

 

会話に入ってきた爆豪くんは飯田くんの言葉が理解できないと睨みつけていた。

 

「爆豪くんは緑谷くんのこと知ってるの?」

 

「うるせぇウサギ野郎」

 

「う、ウサギ?」

 

なんでウサギ野郎?

元々機嫌悪いのに、さらに機嫌悪くなったな。よく分からん愛称に不意を突かれて言葉を失っていると、緑谷くんがボールを振りかぶり思いっきり投げた。

そのバールは弧を描く様に飛んでいき、次第にボールは加速を失い地面に落ちた。

 

瞬間、相澤先生の小型端末にピピッと機械音が鳴り緑谷のハンドボール投げの飛距離が表示された。

 

 

 

―――46m―――

 

「な、なんで。今、個性を使おうと…」

 

確かに緑谷は個性を使おうとした。しかし、実際はただの全力投球。

絶望と困惑が緑谷を襲うなか、相澤先生が彼に歩み寄り…

 

「個性を消した――」

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