アークナイツ 『アナタがいないと』トロフィー獲得RTA 作:野口さん
青い炎がこちらに手を伸ばすように飛んできた。
咄嗟に横に転がって避ける。
少し掠ったかもしれない。
すると後ろから熱を感じる。
振り向くと、甲板の出入口の扉が真っ赤になっていた。
先程の炎が扉を溶かしていたようだ。
触ったら無事ではいられない。
つまりこれでもう逃げられない。
逃げるつもりはないが
モスティマの方を見ると、そこには普通ではない彼女がいた。
前髪が垂れていて顔が見えない。
ふらりと二つの杖を構えている。
あれではまるで幽霊か何かだ。
彼女が右手の杖を振ると、青い炎が1本の矢のように飛んできた。
見るだけでその炎の熱さが容易に想像出来る。
当たれば全身真っ黒だろう。
しかし師匠との訓練で、動体視力は鍛えてきた。
弓矢程度の速度なら、
「!!」
避けることは難しくはない。
しかし俺が炎をかわすたびに、後ろの壁や窓、難しそうな機械が溶けていく。
床も黒く焦げ始めている。
鉄が溶ける光景を見たのは初めてだ。
このままではロドスが・・・
あの炎を止めなくては!
「ア・・・ス・・・」
炎が飛んでくる。
それを横に避けると、それを読んでいたかのように二つ目の炎が飛んできた。
慌てて横に飛び込むようにして避ける。
前髪が少し焦げて、フードが外れてしまった。
炎の光に目が眩む。
思わず目を閉じてしまった。一瞬の硬直。
三つ目の炎が飛んでくるのをジリジリと感じるが、目が開かない。
避けれない。
熱っ・・・
その時、体が勝手に動いた。
いつも通りの動きで、
しかしそこには何もない。刀は部屋に置いてきた。
でも、できる。
確信があった。
師匠の言葉を思い出す。
『君が望めば、君の思うように刀が動く』
できる
腰にあるだろう鞘を左手で掴み、
いつも通りの動きで、
腰を捻って、右手で刀を掴み、抜く。
刀はいつの間にかそこにあった。
居合斬り
手応えはあった
目の前の熱が二つに分かれて、横に消えていくのを感じる。
切った!斬れた!
達成感で、思わず顔が緩む。
慌てて前をむくと、モスティマがまた杖を構えていた。
走る
再び炎が飛んでくる。数が多い。
地面を蹴る。
あと5歩
飛んできた炎を刀で打ち払う。
あと4歩
右足に炎を受けた。
が、なぜか痛みを感じない。
走る
あと3歩
目の前が炎一色だった。
構わず飛び込み、3歩の距離を一気に縮める。
熱い、熱い炎が体を焼く。
服を脱げば、全身火傷しているかもしれない。
早く治療しなくては危険だ。
しかしそんなことよりも
やらないといけないことがある。
「モスティマ!」
至近距離まで近づいて名前を呼んで目を合わせる。目を合わせてくれない。
杖を掴んで再度呼びかけても、反応はない。
「・・・!!」
モスティマが暴れ出す。
彼女が杖を強く握ると、杖が彼女の意思に呼応するように、炎のような熱をもった。
杖が熱い・・・すごく熱い。手が真っ黒になるが、離すわけにはいかない。
彼女が杖を振るうようなことがあれば、間違いなくこのロドスが全焼してしまうだろう。
そんなことは起きてはならない。
もしそんなことが起きれば、
彼女がみんなに怒られてしまう。
彼女が杖を振り上げて、俺を振り払う。
受け身をとって着地したが、再び距離が離れてしまった。
まずい・・・
「・・・煙?・・・硝煙?」
モスティマが頭を押さえている。
何やら苦しそうだ。
心配だが、これはチャンスだ。
落ち着いて距離を詰めていく。
深呼吸すると、肺が焼けているような感覚がする。
少し煙を吸いすぎてしまったのかもしれない。
でもなぜか痛みを感じなかった。
これが昔誰かが言っていたアドレナリンというやつか。
そんな呑気なことを考えていると、モスティマが動いた。
相変わらず顔は見えないが、杖を二つとも構えている。
一気に温度が上がった。
まずい!
火の玉、いいやもう火の波と言ってもいいかもしれない。
高さも2、3Mはありそうだ。
それが床の鉄を溶かしながらこちらに迫ってきた。
耳を澄ますと、誰かの騒ぎ声が聞こえる。
流石にロドス職員にも気付かれてしまったようだ。
刀を腰に構える。
やることは変わらない。
さっき切ったものが、すこし大きくなっただけだ。
鞘を握る左腕が熱くなって行くのを感じる。
波が迫ってくる。
もう少し、
今!!!
刀を波に滑らせる。
下から上に、斜めの切り上げ。
すごく軽かったが、なぜか腕が痺れた。
目の前から波が消えると同時に、再び距離を詰める。
驚愕しているモスティマの顔を見る。
やっと目があった。
思わず表情が緩んでしまう。
モスティマは再び距離を空けようとしているようだ。
無論、そんなことはさせない。
刀をくるりと横に半回転させる。峰打ちの構え。
そしてイメージする、師匠の姿を。
あの時の一撃をここで再現する。
肩の源石から力を感じる。身体が熱くなって力が溢れてくる。
ダンッと床がひび割れるほど、右足が砕けるほど強く、強く踏み込んで刀を振り下ろす。
「!!」
モスティマが杖を水平に構えて防御しているが関係ない。
渾身の力で振り下ろす。
斬月
師匠の技は、モスティマの杖を粉々に砕く。
しかし、俺はまだまだ未熟だったようだ。
杖を少し歪ませる程度の攻撃しかできなかった。
真っ直ぐだった杖二つが、中央から歪んでいる。
しかし持ち手には少しダメージが入ったようだ。
モスティマが初めて膝をついた。
杖を持つ手も、痺れて力が入らないのかカランと杖を両方とも落としてしまった。
刀をしまって、彼女を見る。
自分の手のひらを見て、呆然としていた。
まるで自分が何をしていたかわからないみたいに。
周囲をキョロキョロと見渡して、俺を見つける。そして固まった。
悪戯がバレた子供のようだ。
とりあえず、大きな怪我はないようだ。
俺は固まったままのモスティマにそっと近づいて、
抱きしめた
彼女は驚いたのか弱々しく抵抗していたが、やがてそれもやめて俺の服を掴んでいた。
そして顔を埋めてくる。もう異常はなさそうだ。
戦いが終わった。
そう認識した瞬間、どっと疲れが出てきた。
足がすっごく疲れてるし、右足も痛いし、左肩なんてもっと痛い。あとすごく眩しい。
身体中もあつい。今にも倒れそう。
でもなぜか自分は真っ直ぐ立っていられる。
彼女を支えないといけないから。
耳をすますと後ろの方から、たくさんの音が聞こえる。もうロドス職員がすぐそこまで来ているようだ。
どうすればモスティマが怒られないか、言い訳を考えないといけない。
彼女と一緒に、
彼女が泣き止んでから。
久しぶり
もう働いてるの?
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学生です
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社会人です
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定年退職しました
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学生でも社会人でもないです・・・