これはきっと、確かにどこかにあって、でも本当はどこにもなくて、誰かが体験していて、でも誰も当事者なんかじゃなくて、過去でも現在でも未来でもない、残酷で、悲しみだらけの、とても美しい世界のお話。
わたしたちは支配者から逃げるしかありませんでした。立ち向かうことなんてできなくて、圧倒的な力の前で生きるには、ただ必死に逃げるしかなかったんです。
でもあの日から、あの瞬間から、わたしの運命と世界は変わったのかもしれません。それが希望だったのか、はたまた絶望だったのかはわたしにはわかりません。
ただ、その瞬間にわたしの心臓がはじけたことは覚えています。それがわたしの世界の始まりでした。
「フリーデン王国」
それがこの世界を支配する唯一の国家です。機械技術に富んでいて、その名が意味する通り、王国内はとても平和で、国民たちも笑顔があふれる豊かな生活を送っています。まるで幸せという言葉を体現したかのような国。
でも王国の外には幸せなんてありません。
王国はその領土を広げるためにとても強力な軍隊を出して、その土地の非王国民を皆殺しにしてしまいます。大量の機械兵士と戦う力なんて誰も持っていないから、生きるためには逃げるしかありません。毎日侵攻してくるわけでもないですし、運よく世界は広いので逃げる場所には困りません。でも逃げ遅れれば必ず殺されます。
ただただ運が悪かった。
王国民に生まれることができなかった。
そんな自分の運の無さを恨むしかありません。
わたし自身も非王国民に生まれてしまいました。
15年もこの世界で生き延びているのは運がいいのかもしれません。仲間もいます。大体20人くらいの小さな集団です。常にその集団で固まって生活してます。王国からの攻撃が来たときも、そのたびに遠くの地に移動して、そこにも攻撃が来たら、また移動して。その繰り返しです。非王国民にとって安住の地なんてどこにもありません。幸せに、安心して生きたいのなら、王国民に生まれることを祈るしかありません。
きれいごとかもしれませんが、それでもわたしは、王国民に生まれたかったとは思いません。だからといって非王国民に生まれてよかったとは微塵も思ってません。単純に、この世界にわたしを作ってしまった神様が嫌いです。
もうわたしは疲れました。何度もあきらめて死のうと思いましたが、こんな世界にしてしまった神様に一言くらい文句を言いたいので、それまでは頑張ります。
「いたっ」
ちょっとした頭痛がしました。
とにかく今日はもう寝てしまいます。今日も農業を頑張ったのでへとへとです。
おやすみなさ、、、
ドンッ 鈍い爆音。
「六花!逃げるよ!」
焦る仲間の声と表情。
やっぱりわたしは神様が嫌いです。
初めまして、水色ワンコと申します。初めての自作小説で、つたない部分や表現に乏しい点が多々あるかもしれませんがよろしくお願いします。