【本編完結】つよつよ神竜イルクスさん   作:デュアン

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魔導技術の進む道

〈イルネティア王国 港湾都市ドイバ沖〉

 

「それでは始めます……3、2、1、発射!!」

 

 ムー国やエモール王国からの支援などにより、かつての瓦礫の山から立派な軍港として再建されつつある都市、ドイバ。

 そんなドイバ沖にてこの日、とある()()の試射が行われていた。

 

 その兵器は、イルネティア王国兵器開発局の開発者や責任者、ムー国やミリシアルの技術士官などまでが見つめる中、それなりの高速で()()を進んでいく。

 そして発射から10数分後。

 

 

「「「おおおおお!!!」」」

 

 

 発車地点より20km離れた位置に浮かべられた、標的艦である旧式艦、アイアン級魔砲船の舷側に巨大な水柱が立ち、見る見るうちに水中へと引きずり込まれていった。

 その様子に見ていた者達は歓声を上げる。

 

「実験は成功だ!!」

 

 その中の1人、イルネティア王国の技術者であるメールリンスはこの兵器───()()()()の開発者だ。

 ここまで苦節約1年。敵の駆逐艦に搭載されていた53cm魚雷を解析し、どうにかして魔導技術で再現できないかと日夜研究に勤しんだ。

 

 そうして考え出されたのが、『風神の涙』を使う方法だ。

 『風神の涙』は圧力に作用する魔術だ。他の文明国などでは空気圧を変化させ、それによって発生する風を帆に当てるのだ。

 しかし、ここイルネティアでは別の方法で船を進めていた。

 

 それは、風神の涙を船上ではなく船尾下部に取り付けるという物であり、それによって水を押し出して船を進めるのだ。

 これが、今回の開発においてのヒントになった。

 

 そして長きに渡る開発の末、生み出されたのがこの魔導魚雷。

 これは主に炸薬、魚雷を浮かべる為の気室、風神の涙を起動させる為の液状魔石、そして雷尾に設置された風神の涙という構造になっている。

 単純に言えば、風神の涙によって水を押し出して魚雷を進めるのだ。科学風に言えばウォータージェットである。

 

 この方式はかなり効果的であった。

 まず、雷跡が出ない為、察知が難しい。グラ・バルカス帝国の魚雷は圧縮空気式であり、水に溶けにくい窒素が放出されてしまう為にどうしても雷跡が出てしまうのだ。

 次に、射程が長い。イルネティア王国の開発した風神の涙はパーパルディアのそれに匹敵する程の性能があり、燃費が良いのだ。

 そして、威力が高い。これは2つ目にも関連しており、燃費が良い為に液状魔石のエリアを狭く出来、炸薬の量を増やせたのだ。

 

 もし、グ帝の技術者がこの魚雷の性能を知ったら、こう言うだろう。

 

 

「蛮族が、酸素魚雷の実用化に成功した」と。

 

 

 この魚雷はメールリンス式魔導魚雷と名付けられ、イルネティア王国と神聖ミリシアル帝国で量産が進められる事となる。

 また、この魚雷の開発は、列強各国からのイルネティア王国の評価を『神竜がいるだけの文明圏外国』から『侮れない魔導技術を持ち、神竜もいる実質文明国』へと変える事になった。

 

 

 時に中央歴1642年2月6日。

 カルトアルパスにて、先進11ヶ国会議が開かれる2ヶ月前の事である。

 

 

───────

 

 

〈神聖ミリシアル帝国 ルーンズヴァレッタ魔導学院〉

 

「「「おおおおお……」」」

 

 ここは列強第1位、神聖ミリシアル帝国の誇るルーンズヴァレッタ魔導学院、その天の浮舟部が保有する飛行実験場である。

 そこで今、技術者達が空を飛ぶ天の浮舟を見て唖然としていた。

 

「……まさか、これ程とは……」

 

 その理由は、今飛んでいる天の浮舟───帝国の最新制空戦闘機、エルペジオ3を日本の助言を受けて改造した物───の速度にある。

 

 つい先日、わざわざ皇帝陛下より直々に、「日本に助言を求めろ」との勅令が下った。

 日本とは、かつての列強パーパルディアを下した国だと聞いていた。確かにそれは凄いが、パーパルディア皇国は所詮、第3文明圏とかいう大した文明国もいない様な地域でお山の大将を気取っていた国だ。

 それに国そのものにも様々な問題を抱えていたので、正直少しつつけば簡単に壊れてしまう、そんな国だった。

 

 そもそも日本は科学文明国だ。何故そんな国に助言を求めなければいけないのか、技術者達が反感を覚えるのも無理は無い。

 しかし、これは勅令だ。無視する訳にはいかないので取り敢えず言う通りにした。

 

 

 その結果、エルペジオ3は時速630kmを記録した。何を言っているのか分からないと思うが、技術者達自身も何が起こったのか分からなかった。

 少しエンジンを弄っただけでこれである。

 その後日本の言う通りに翼の形やら何やらを弄り、もうこれエルペジオじゃないだろみたいな改造をした結果、最終的にエルペジオ3(仮)は時速730kmを出した。

 

「結局の所、科学も魔法も突き詰めればあまり変わりません。燃料が魔力か、石油かの違いのみです」

 

 技術研究開発局開発室長であるベルーノは、そう言ったという。

 

 その後技術者達は何故こうなるのか、という質問を日本にぶつけ、説明を受けた。

 それを何となく理解し、同じ様にマルチロール戦闘機のジグラント3も改造したら690km出た。技術者達は、自分達はこれまで何をやっていたのか、と頭を抱えたという。

 

 こうして、飛行力学やらなんやらに基づいて生まれ変わったこれらの2つの天の浮舟はそれぞれ『エルペジオ4』、『ジグラント4』と名付けられ、量産が開始されるのだった。

 

 

 時に中央歴1642年3月21日。

 カルトアルパスにて先進11ヶ国会議が開かれる1ヶ月前の事である。

 

 

───────

 

 

〈神聖ミリシアル帝国 ルーンポリス魔導学院〉

 

 ドン、ドン、ドン。

 空に向けられた魔導砲より、連続で砲弾が発射される。

 その標的はムー国の旧式複葉戦闘機。時速280kmで、中には人間と同じ程度の魔力を放出するゴーレムが乗せられている。

 流石にゴーレムでは大した操縦も出来ないので戦闘機はただただ真っ直ぐに進むだけだった。

 よって、開発されたこの()()()でも撃ち落とす事が出来たのだ。

 

 放たれた砲弾が戦闘機の近辺を通るやいなや破裂、その破片が戦闘機を破壊し、火達磨になって落ちていく。

 そして、機が地面に猛烈な音を立てて落ちた瞬間。

 

 

「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」

 

 

 それを見ていた技術者達が、大きな歓声を上げた。

 

 今回、この学院で開発されたのは対空高角砲、及びそれに装填する近接信管だ。

 グラ・バルカス帝国の艦に装備されていた近接信管を見た時、技術者達は唖然とした。

 敵に近付いただけで爆発する? なんだそのチート砲弾は、と。

 

 そんな彼らがそれを魔導技術で再現しようとするのは当然であった。

 

 帝国軍の近接信管を解析してみると、中に小さなレーダーが入っていた。よって、まずは魔導電磁レーダーの開発から始められた。

 これにはかなり難航───しなかった。それは何故か。

 ここでもやはり、先程のベルーノの言葉が効いてくる。帝国のレーダーを解析した所、魔法を使う所、要するに魔力を電気エネルギーにさえ変換すれば、そこから先は魔導技術でも十分再現可能である事が分かったのだ。

 ほぼコピー。コピーならばこれまで腐る程やってきた。

 

 そうして魔導電磁レーダーは無事再現された───のだが、ここで問題が発生した。

 構造も何も分からずに再現した結果、砲弾の中に入れる為の小型化が出来なかったのだ。

 結局、構造を理解するのにはかなりの時間がかかってしまった。

 

 

 そうして、開発スタートより約1年。魔力を殆ど放出しない相手に対しても通用する近接信管が完成した。

 それを発射する為の高角砲も開発され、これらは『1型魔導近接信管』、『霊式12.7cm連装高角魔導砲』と名付けられた。

 

 

 時に中央歴1642年4月12日。

 カルトアルパスにて、先進11ヶ国会議が開かれる僅か10日前の事である。

 

 

───────

 

 

〈神聖ミリシアル帝国 カルトアルパス〉

 

 そしてこの日。中央歴1642年4月22日。

 カルトアルパスにて、先進11ヶ国会議が開かれる。

 

 ここに、この世界が初めて体験する世界大戦、その幕が上がったのだった。




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作者はミリタリーにわかなんで、開発スピードが早すぎるッピ!とかそういう事は気にしないでください
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