【本編完結】つよつよ神竜イルクスさん   作:デュアン

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中央歴1642年
先進11ヶ国会議(前編)


〈中央歴1642年4月22日 神聖ミリシアル帝国 カルトアルパス〉

 

『トルキア王国軍、到着しました! 戦列艦7、使節船1!』

『アガルタ法国軍、到着。魔法船6、民間船2』

「……この辺りは変わり映えせんな」

 

 次々と到着し、港へと誘導されていく各国の船団を見て、港湾管理責任者のブロントはそう呟いた。

 今到着しているのは中央世界の文明国の船団だ。これでも文明国圏外国の国々にとっては圧倒的なのだが、普段神聖ミリシアル帝国の()を見ている彼にとっては物足りなかった。

 

 そして、アガルタ法国の船団が全て着岸した頃に、その国の艦は現れた。

 

 

『第二文明圏、イルネティア王国艦隊、到着! 戦艦1、空母1、重巡洋艦2、軽巡洋艦2!』

「おお、来たか……大きいな」

 

 戦列艦がひしめき合う港湾内に、一際巨大な艦隊が入ってくる。その艦には科学製特有の煙突があり、そこから黒い煙をもうもうと吐き出している。

 それを見た文明国の者達は唖然とする。何せ、最も小さな艦でさえ自分達の戦列艦よりも遥かに大きいのだから。

 

「しかし、まさか文明圏外国の小さな島国がなぁ……」

 

 ブロントの知るイルネティア王国とは、第2文明圏外にある小さな島国であった。ただし魔法技術はかなり進んでおり、戦列艦でムー国をも超える速度を出せるとか。

 まあ、戦列艦である事には変わりはなく、ムー国の艦と戦えば負ける事は確実である、そんな国だ。

 

 しかし、かの国───グラ・バルカス帝国が王国に攻め入った頃から何かが変わった。

 神竜が現れ、全ての者の予想を覆して帝国軍を蹴散らしたのだ。

 列強レイフォルを単艦で滅ぼした伝説的戦艦『グレードアトラスター』もその時に拿捕された。今は神聖ミリシアル帝国で改造を受けているらしい。

 その後も来た艦隊を蹴散らし、多くの艦を拿捕、戦力へと変えた。

 

 その結果が、これである。今、カルトアルパスにいる中でこの艦隊相手に戦えるのはミリシアルの防衛隊にムー国の艦隊、そして───

 

 

『な、なんだあの船は!?』

『あれは船……なのか?』

 

「……来たか」

 

 水平線の彼方より、灰色の艦が顔を出す。それだけ離れている筈なのに、少ししか離れていない様に見える。つまり、それ程の巨艦だという事だ。

 船体に載るは巨大な3連装砲3基。砲口径は46cm。世界最大の巨砲である。

 

「しかし、もう1隻あったのか……グラ・バルカス帝国、一体どれ程の国力を……」

 

 グレードアトラスター級戦艦、2番艦『マゼラン』。

 

 現在も尚世界最大の戦艦が今、カルトアルパス港へと到着した。

 

 

 その後、日本国の巡洋艦(巡視船)と客船が到着し、奇妙な構造をしている巡視船を見て首を傾げる事になる。

 

 

 こうして、今回の先進11ヶ国会議の出席国が集まったのだった。

 

 

───────

 

 

〈『マゼラン』艦橋〉

 

 カルトアルパス港に到着した『マゼラン』。その艦橋にて、外交官であるシエリアは港のある地点を睨み付けていた。

 

「我が国の艦……こう見ると、中々に屈辱的だな……」

「今すぐにでも沈めてやりたい程ですな」

「ああ。だが……どうせこの後沈むんだ。今はまだその時ではない」

 

 イルネティア王国海軍艦は、元々グラ・バルカス帝国の艦であった。

 祖国の物とは違う国旗を大きく掲げているその姿を見ると、艦が子供の玩具にされているかのようで不快であった。

 それに同調するのは、この『マゼラン』艦長のラートス大佐である。本来ならば、ここに来るのは『グレードアトラスター』であり、ラクスタル大佐であった。

 名誉な役が回ってきたのは素直に嬉しいが、同期の不幸を喜べる程も彼は性根が曲がってはいなかった。

 

 ……それはともかく、会議が終わればすぐに実戦だ。気を引き締めなければ。彼は1度同期の事は頭の隅へと追いやり、海を見すえる。

 

 戦闘まで、あと僅かだ。

 

 

───────

 

 

〈港町カルトアルパス 帝国文化館〉

 

「これが先進11ヶ国会議……凄まじいな」

「これ程の文明国の一堂に会するなど……」

 

 カルトアルパスにある豪華絢爛な建物、その1つであり、今回の会議の会場である帝国文化館の前にて、イルネティア王国の外交貴族であるビーリー侯とその部下は、ぽかんと口を開けて呆然としていた。

 周囲には、この会議に呼ばれた国々───列強国に次ぐ実力を持つ、準列強と呼ばれる国々の外交官達が歩いている。

 つい1年前までは圧倒的に格上であった者達と同じ位置に、自分達は今居るのだ。

 

 因みに、何故イルネティア王国が呼ばれたのかといえば、やはり神竜がいるからである。寧ろ呼ばれない方がおかしいのだ。

 

 

 その後、館内へと入った後には各文明国の者達に、さながら帰国したスポーツ選手の如く取り囲まれ、結局会場に着くまでにかなりの時間がかかってしまったのだった。

 

 この時、実は日本国も接触をはかろうと思っていたのだが、他の文明国に遮られて接触出来なかったらしい。

 

 

 

『これより、先進11ヶ国会議を行います』

 

 議長席が並ぶ舞台を中心としたホール状の部屋。そこに、そんなアナウンスが流れる。

 開催期間は1週間。この1週間で、今後の世界の行く末が決められるのだ。

 

 今回の参加国は、以下の11ヶ国である。

 

〈第1文明圏(中央世界)〉

・神聖ミリシアル帝国(列強国第1位)

・エモール王国(列強国第3位)

・アガルタ法国

・トルキア王国

 

〈第2文明圏〉

・ムー国(列強国第2位)

・マギカライヒ共同体

・グラ・バルカス帝国(文明圏外)

・イルネティア王国(文明圏外)

 

〈第3文明圏〉

・パンドーラ大魔法公国

・日本国(文明圏外)

 

〈南方世界〉

・アニュンリール皇国(文明圏外)

 

 先進11ヶ国会議に、列強国が2つ抜け、文明圏外国が4ヶ国も並ぶという異常事態。

 今年は何かがおかしい、そう各国に思わせるには十分であった。

 

 

 そして始まった直後、青白い肌をし、4本の角を持つ大柄の男が手を挙げる。

 それを議長が指名し、彼は起立して話し始めた。

 

 

『エモール王国のモーリアウルである。今回は何よりも先んじて、皆に伝えなければならない事がある。火急の件につき、心して聞いてもらいたい』

 

 エモール王国。竜人族の治める国家だ。

 かの国も去年までは雲の上の存在であったのだが、例の件以降は国同士の交流が盛んになり、一気に近い存在へと変わった。

 ビーリー侯も本国へと帰った際、観光客として竜人族が多く来ている事に驚いたのだ。

 

 しかし、それでも竜人族は竜人族。やはり話す言葉の一つ一つに威厳があり、重要だと思わせる程の重みがあった。

 これが列強の外交官。流石だ、と感嘆した。

 

 

……因みにモーリアウルは1年前より、暇さえあればイルネティア王国へと来ていた。そしてそこで共に歩くライカとイルクスを鑑賞───しかし絶対に気付かれないように───するのが趣味(生き甲斐)となっていた。

 ビーリー侯は幸運であった。

 何せ彼が帰国した頃には、彼には一時的に竜王直々に出国禁止令が出されていたのだから。

 

 彼の竜人族に対するイメージは、幸運な行き違いによって崩れずに済んだのだ。

 まあ、それも風前の灯ではあるが。何せ色々と一段落ついた暁には、モーリアウルは辞表を提出してイルネティア王国へと移住するという決心を固めていたのだから。

 ただしワグドラーンはそれを許すつもりはない……と、話が逸れてしまった。

 

 

 彼は、ライカが見れば驚くであろう真面目な顔をして、ただならぬ雰囲気を漂わせながら話す。

 

『……先日、我が国で行われた〈空間の占い〉にて、古の魔法帝国───即ち、忌々しきラヴァーナル帝国が近いうちに復活すると判明した』

 

 

「───え?」

 

 

 発せられたその言葉を、ビーリー侯は一瞬聞き間違えかどうかと疑ってしまう。

 

「そ、そんな……」

「なんて事だ……」

 

 だが、周囲の者達の反応で、それが間違いなどではないという事を思い知らされる。

 そして、空間に歪みが生じて正確な予想が出来なかった事。魔帝は4年から25年の間に復活する事などが告げられる。

 最長でも25年。あまりにも時間が無さすぎる。

 

 そうして、皆で協力すべきだという旨を伝えた時。

 

 

「くっ……クックックッ、ハーっハッハッハ!!!」

 

 

 突然、1人の女が笑い始める。

 20代前半の女外交官。その下のパネルには、『グラ・バルカス帝国』と書かれていた。

 

「ああいや失礼。何せ占いなどという非科学的な事を大の大人が真面目に話すものでね、あまりにも滑稽な姿に堪えきれなかった」

『魔法を理解せぬ蛮族が……静かに聞く事すら出来んのか』

「ふふ、そもそも魔帝……だったか? その様な過去の遺物を恐れるとは。この世界の程度が知れるというものだ」

『同じ初参加国でも、礼節を弁えている日本国とイルネティア王国とは大違いだな。第2文明圏を好き勝手荒らし回っている事といい、下品極まりない』

 

 アガルタ法国のマギが彼女───シエリアを皮肉る。

 だが、動じる様子を見せない彼女に、マギは追撃をかける。

 

『そもそもお前達はつい最近2個艦隊を失っているではないか。よくもまあそこまで高圧的に出られるものだな』

「……」

 

 痛い所を突かれたのか、彼女の眉がピクリと動く。

 そして、マギの方ではなく話題に上がったイルネティア王国のビーリー侯の方へと向き、言った。

 

「……聞けば、第2次海戦の折にはそちらの軍は我が軍に手も足も出なかったとか。所詮は神竜が居なければ何も出来ない蛮族ではないか」

「おやおや、それは心外ですね。あの戦いは、言わば教育を受け始めたばかりの幼児と学院の教授が知識比べをする様な物。そんな戦いにおいて、そちらは飛行機械を3機も落とされている。

 異世界に来て、少し弱くなっているのでは無いですか? とても精強な軍とは言えませんね」

「何を……」

 

 苦し紛れに嘲笑しようとするも、逆に煽り返される。それにより彼女の額には青筋が何本も浮いていた。

 

「それに神竜が居なければ何も出来ない……確かにそうでしょう。しかし、それは逆に自らが神竜には勝てないと白状している様なものでは?

 ……我々は無駄な殺生は好みません。今! ここで!! 停戦を受け入れて下さい!!」

 

 ビーリー侯は畳み掛ける様に言い放った。




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こんなに真面目なモーリアウルさんが、少女にストーカー紛いの行為なんてする筈がないよなぁ!
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