原作では第零式魔導艦隊(笑)だった艦隊の勇姿、ぜひご覧下さい
「停戦……停戦だと?」
「……」
ビーリー侯の言葉に、彼女はすんと冷静になる。
もしや、受け入れるつもりなのか……? そんな思いが沸き起こる。
「ふざけるな」
しかし、そんな淡い期待とは裏腹に、返ってきたのはそんな言葉であった。
「そもそも、今回我々は"会議"などという子供の遊びをしに来たのではない!!」
「蛮族どもよ!! 我がグラ・バルカス帝国に従え!!」
彼女は、各国の代表達が見つめる中そう叫ぶ。
「従った者には永遠の繁栄を約束しよう。だが、従わぬ者に待っているのは滅びのみだ!!」
世界全てを敵に回す、この発言。
そんな言葉に、各国の代表達は一瞬静まり返る。
「沈黙は反抗と見なすが、どうなのだ?」
『……正気ですか?』
マギが言う。
『貴女方は本当に、全世界を相手にして勝てるとでも? たった一柱の神竜にも勝てぬ、そんな国が?』
それは誰が聞いても嘲笑にしか聞こえないであろう。勿論、シエリアもそう捉え、彼女は怒りが噴き出すのを堪えるのに必死であった。
だが、それと同時に「まあ、こうなるだろうな」とも思っていた。何せ、ここまで連戦連勝であったならば───本来の予定ではそうだった───ともかく、我々は2度負けているのだ。それも、この世界においては"文明圏外国"として蔑まれている国に。その国に住む、たった一頭の竜に。
「帝王様は寛大なお方だ。我らの真の力を知り、慌てて泣きついてきたとしても受け入れて下さるであろう」
結局、その言葉には何も返さずに彼女はそう言い捨てると、足早に会場より出ていってしまった。
そして、『マゼラン』に乗り込み、カルトアルパスからも去った為、残りの会議は10ヶ国で行う事になってしまうのだった。
───────
〈中央歴1642年 4月23日 神聖ミリシアル帝国 マグドラ群島付近〉
神聖ミリシアル帝国海軍に所属する『第零式魔導艦隊』は、この日マグドラ群島近海にて訓練を行っていた。
『第零式魔導艦隊』、この艦隊は別名『試験艦隊』とも呼ばれており、最新鋭の兵器が配備されている。
少し前まではそれはミスリル級魔導戦艦であった。しかし今は新開発されたメールリンス式魔導魚雷であり、魔導電磁レーダーである。
優秀な艦隊の海兵達は、この新兵器に慣れる為に日夜訓練を行っていた。
「レーダーに感! 9時の方向より速度27ノットで艦隊が接近中!! 距離
反応より、機械動力船と思われます!!」
「何!? ムー国の船は……なるほど、グラ・バルカス帝国か」
彼───第零式魔導艦隊司令官のバッティスタは、すぐにその結論に至る。何せ、今この世界の機械動力船でそれだけの速度を出せるのはグラ・バルカス帝国艦かイルネティア王国艦のみであり、王国には戦艦は今カルトアルパスにいる元ヘラクレス級戦艦『トワイライト』のみなのだ。
因みに、第2次海戦にて鹵獲したオリオン級戦艦1隻はムー国に貸与されている為、現時点で王国が運用出来る戦艦は『トワイライト』1隻だけなのだ。まだグレードアトラスターの改修は終わっていなかった。もうじき終わるらしいが。
「総員、第1種戦闘配置。正体不明の艦隊は敵である可能性が高い」
そして、彼はそう告げた。同じ内容の放送が全艦に流される。
各艦上では警報が鳴り響き、海兵達が慌ただしく走り回る。
「近くに航空戦力はどの位ある?」
「群島の海軍基地にジグラント2が25機です」
「ううむ……例のジグラント4があれば良かったのだがな……」
この第零式魔導艦隊には空母がいない。その為、航空支援が欲しければ近くの基地から貰うしかないのだ。
「例の空母……確か、マカライト級でしたか、あれがもう少し早く完成していれば良かったのですが……」
部下が呟いたそれに、彼も頷く。
『マカライト級航空魔導母艦』、それは新たに開発された『エルペシオ4』『ジグラント4』を運用する為に建造中の新型空母である。
完成した暁には、まずこの艦隊に配備される予定であったのだ。
だが、それは間に合わなかった。いずれ来ると思われていたグラ・バルカス帝国との初戦は、空母抜きで行う事になってしまった。
少し時間が経過する。既に艦隊同士の距離は50kmにまで近付いていた。
そんな時、グラ・バルカス艦隊にジグラント2の部隊が襲いかかる。
しかし、対イルクス用に対空兵器を増設、強化していた為に次々と機は落とされていき、結局1発も命中させる事なく航空隊は12機まで数を減らして撤退した。
「なんという苛烈な対空砲火だ……」
その様子を見ていたパッティスタは、ミリシアルのそれよりも遥かに苛烈な対空砲火に驚きを隠せない。
「……やはり、いち早く天の浮舟用魚雷を量産する必要があるな。急降下爆撃はリスクの割に効果が低すぎる」
一応、航空機用の魚雷も開発されているのだが、それもつい最近でありまだまだ配備は進んでいなかった。
と、その時。グラ・バルカス帝国艦隊の陣形が変化し、小型艦を前に出してくる。
そして、それをする理由について彼は心当たりがあった。
「敵艦隊との距離が
以前の自分ならば、この様な命令は下さなかっただろう。しかし、今は小型艦でも魚雷で戦艦を撃沈させられる事が分かっている。
距離32kmになった時、敵戦艦が発砲する。しかし、これも分かっていた事だ。
敵戦艦───オリオン級戦艦の最大射程は35.5km。こちらの主砲よりも射程が長い事に慌てる兵士達に、彼は慌てずに指示を出す。
「水属性魔力障壁展開。総員、衝撃に備えよ」
「は……は、はい! 装甲に魔力注入!」
ミスリル級魔導戦艦の装甲は、鉄とミスリルの合金である。ミスリルは魔力導率に優れており、魔力注入による装甲強化の効果が高いのだ。
そんな装甲が淡く光り、装甲が強化される。水属性は対衝撃用、対物理衝撃用の土属性でないのは、敵砲弾には爆薬が封入されており、その場合水属性ならば軽減出来るからである。
艦より100m程離れた位置に着弾、水柱が立つ。その巨大さが威力の高さを知らしめる。
そうしている間に、距離が30kmにまでなっていた。
「よし。魔力障壁解除! 主砲一斉射!!」
「了解! 主砲発射ァ!!!」
腹に響く音がし、次の瞬間には艦隊の3隻の戦艦から砲弾が発射される。魔導技術によって作られたこの砲より発射された砲弾は青白い尾を牽きながら飛翔し、敵小型艦の周囲に着弾する。
「敵艦への命中弾無し!」
「誤差修正プラス2度! 次弾魔力充填完了、主砲撃発回路への魔力充填90%、100%! 次弾発射用意完了!」
「次弾命中率48%まで上昇、発射まで5、4、3、2、1、発射!」
こちらの方が装填速度は速く、敵艦隊よりも先に第2射を放つ事に成功する。
「敵艦、主砲発射!」
が、それが着弾するよりも早くに敵艦隊より第2射が放たれる。
それに呼応する様に再び魔力障壁が展開され、艦体が淡い光に包まれる。
当たるなよ……パッティスタはそう祈る。
「主砲着弾! 敵小型艦2隻撃沈!!」
「「「おおおおおっ!!!」」」
こちらが放った砲弾が敵艦隊へと到達する。
再び上がる大きな水柱の中に、赤い光が2つ見えた。敵小型艦に命中したのだ。
紙装甲の駆逐艦が38.1cm砲弾の直撃に耐えられる訳もなく、艦は真っ二つになって沈んでいった。
そしてその直後、並走していたゴールド級魔導戦艦『ガラティーン』付近に大きな水柱が上がる。
「『ガラティーン』被弾! 喫水線付近に命中した模様!」
『ガラティーン』の船体に穴が空き、そこから水が流れ込む。が、対魚雷防御用としてバルジを追加していた為にそこまで被害が拡大する事は無かった。
「敵艦隊、巡洋艦の射程に入りました!」
「よし、敵小型艦は巡洋艦に任せ、戦艦はこれより敵戦艦への攻撃に移る!」
戦艦に続き、シルバー級重巡洋艦の20.3cm連装魔導砲やブロンズ級軽巡洋艦の14cm連装魔導砲が火を噴く。
口径が小さい分、戦艦のそれよりも装填速度は速い。それらが全て敵駆逐艦に向けて放たれる。
魚雷発射の為に突出していた駆逐艦は多数の水柱に囲まれ、堪らず投下予定地点より遥かに前方で魚雷を投下し、その直後には最後の1隻が撃沈された。
また、戦艦の方も善戦していた。口径が大きく、装填が速い。対艦戦闘においてこれ以上に有利な点は無い。
そして───
「小型艦部隊、魚雷投下!!」
距離12kmにまで接近した時に、第零式魔導艦隊に所属し、今に至るまで生き残っていたリード級魔導小型艦6隻が速度を上げ、艦隊前方へと飛び出して新兵器、メールリンス式魔導魚雷を投下し、再び反転する。
この魔導魚雷の射程は49ノットで約17km、39ノットでは驚異の32kmにまでなる。グ帝の53cm魚雷が45ノットで約6km、36ノットで約11kmだという事を考えると、その高性能ぶりが理解出来るだろう。
因みに第2次大戦中に日本で開発された九三式酸素魚雷が49ノットで19.8km、36ノットで39.4kmである。酸素魚雷つおい。
そんなこんなで、投下された魚雷は海中を進んでいく。
グ帝軍人達は、その小型艦の動きから魚雷を発射したと判断、海面に注意する様伝える……が、それは恐らく徒労に終わるだろう。何せこの魔導魚雷は、雷跡を一切残さないのだから。
そんな、偽
やがて、戦艦の猛攻を受けたオリオン級戦艦『プロキオン』が沈んだ頃、不利を悟ったのかグ帝艦隊は反転を開始した。
それがいけなかった。
反転を開始し、ミリシアル側に腹を見せたのが駄目だった。航跡は無く、魚雷は明後日の方向に行ったのだろうと油断していたのだ。
オリオン級戦艦『ペテルギウス』の右舷に、巨大な水柱が4本立った。
「な、な、何が起こったッ!!?」
「右舷に破孔発生! お、恐らく魚雷かと思われますッ!!!」
「ば、馬鹿なッ!! 雷跡は無かった筈だぞッ!!?」
艦橋にて、艦隊司令のアルカイドは柄にもなく狼狽える。
そんな、有り得ない。彼は目の前の現状を認める事が出来なかった。
雷跡を出さない魚雷、それに彼は心当たりがあったからだ。そして、それはグラ・バルカス帝国でさえ開発を諦めた代物。それが、こんな。
だが、今艦がダメージを受けたのは事実。彼は何とか対応する。
「ダメージコントロール!!」
「だ、駄目です!! 破孔が大きすぎて塞げません!!」
「そ、そんな……」
「『ソーラ』、『ゾネス』に魚雷と思われる兵器、命中! 両艦共に沈没!!」
「な……」
タウルス級重巡洋艦『ソーラ』、レオ級軽巡洋艦『ゾネス』の右舷にも同じ様に水柱が立ち、恐ろしい勢いで両艦は海中へと引きずり込まれていく。
そして、『ペテルギウス』も同じ運命を辿ろうとしていた。
「傾斜復元、出来ません!!」
「司令! 退艦命令を!!」
参謀が悲痛な声を上げる。既に艦はかなり傾いていた。
「ぐ……総員退艦!! 急げ!!」
その命令で、乗員達が次々と海へ飛び込んでいく。が、時既に遅し。
次の瞬間には艦は転覆。殆どの乗員、そしてグラ・バルカス帝国海軍東征艦隊司令アルカイドを道連れに沈んでいった。
「敵戦艦、重巡洋艦、軽巡洋艦、それぞれ1隻ずつ撃沈!!」
「「「うぉぉぉぉぉっ!!!!」」」
ミスリル級魔導戦艦『コールブランド』の艦橋内が歓声で沸き起こる。
まあ、それも仕方ないだろう。実戦での使用は初めての兵器、魔導魚雷。これまではその効果に懐疑的な者が多かったのだ。
しかし今、本来主に戦列艦相手に使われる小型艦4隻───2隻は発射前に沈められた───から放たれた計24本の魔導魚雷は、小型艦では太刀打ち出来ない戦艦や重巡洋艦を沈めた。これはとんでもない快挙であった。
「これが……魚雷か……」
その様子を見ていたパッティスタは声も出なかった。一応、先にベルーノより色々と聞いてはいたのだが……
「まさかこれ程とは……」
素晴らしい兵器だ。そう感心すると共に、もし魚雷の存在を知らず、敵小型艦を放置していれば自分達にあれが襲いかかっていたという事実に恐怖する。
しかし、海戦に勝利したのは事実だ。
今海戦の両艦隊の被害は、
〈神聖ミリシアル帝国〉
・沈没 小型艦4
・大破 戦艦1 重巡洋艦1 軽巡洋艦1
・中破 軽巡洋艦2 小型艦1
〈グラ・バルカス帝国〉
・沈没 戦艦2 重巡洋艦2 軽巡洋艦2 駆逐艦5
・大破 重巡洋艦1
結局、グ帝側で最後まで生き残り撤退に成功したのは重巡洋艦1隻のみである。対して、こちらの沈没は小型艦4隻に留まった。誰が見ても勝利である。
しかし、最新兵器を集めた艦隊で、しかも数の差もかなりあったのにも関わらず、こちらの戦艦が大破している。それに、パッティスタのプライドは傷付いていた。
「グラ・バルカス帝国……侮り難し」
彼は改めてそう思うのだった。
と、その時。
「対空魔導電磁レーダーに感あり!! 敵機大編隊接近!! 距離
「なっ!!? くっ、これが本命か!! 全艦対空戦闘用意!!」
レーダー員が悲痛な報告を上げる。
ここに、マグドラ群島海戦の後半戦が始まったのだった。
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実は第零式魔導艦隊の被害も原作より増えてたり