〈中央歴1642年4月25日 神聖ミリシアル帝国 カルトアルパス〉
『マギカライヒ共同体機甲戦列艦隊、出港!!』
『アガルタ法国魔法船団、出港!』
世界の中心たる神聖ミリシアル帝国、その港より、無数の船が出港していく。それらは全てが(この世界基準では)強力な船であり、勝てる者などいないだろう。
『ムー国機動部隊、出港!!』
この世界では珍しい、完全な科学技術によって造られた艦隊が煙突より黒煙をもうもうと吐き出しながら出港する。
空母や装甲巡洋艦を有したその強力な艦隊の先頭を走るは、ムー国最新鋭の戦艦、『ラ・カサミ』だ。その外見は、日本人が見ればあの『三笠』であると思うだろう。実際は、対空兵装など違う部分もあるのだが。
『イルネティア王国艦隊、出港!!』
次に出港したのは、今回が初参加となるイルネティア王国の艦隊だ。完全科学製であり、ムーと同じく煙突より煙を吐き出している。
だが、その外見は大きく違い、重巡洋艦でさえ『ラ・カサミ』よりも大きい。
また、その先頭を進む戦艦『トワイライト』はこの中のどの艦よりも力強く、また巨大な砲を装備している。
『日本国巡視船、出港!』
最後は日本国の船だ。戦場に似つかわしくない白い船。
甲板上にも目立つ砲は見えず、一体どうやって戦うのかすら判断出来ない。
しかし、あの列強パーパルディアを下した国の船である。恐らくは凄いのだろう、殆どの人間はそう考えていた。
そんな船『しきしま』の船長、瀬戸は、先行する各国艦隊の後ろ姿を見つめていた。
「まさか巡視船で大和と戦う事になるとは……こうなる前に、勝手に逃げておけばよかったな」
「そういう訳にもいかないでしょう。日本国という看板を背負っている以上、外交官殿達の顔に泥を塗れば懲戒処分ものですよ」
部下はそう、皮肉げに返す。
「しかし、他の船は殆どが戦列艦か……」
「相手は第二次世界大戦レベルの艦艇です。戦力になるのは神聖ミリシアル帝国の重巡洋艦、ムー国艦隊、あとはイルネティアの艦隊くらいでしょうか」
「だろうな。特にあの長門擬きと翔鶴擬きは心強い……積んでるのがワイバーンとかでなければ」
「ははは、有り得そうで怖いです」
彼らは恐怖を笑って誤魔化す。しかしながら、この状況において長門を見、かなりの心の支えになっているのも事実であった。
昔の軍人達もこんな気持ちだったんだろうな、と。
今回の臨時連合艦隊の戦力は、以下の通りだ。
・日本国(第3文明圏外)
巡視船1隻
・パンドーラ大魔法公国(第3文明圏)
魔法船8隻
・ムー国(第2文明圏列強)
戦艦2隻、装甲巡洋艦4隻、巡洋艦8隻、空母2隻
・マギカライヒ共同体(第2文明圏)
機甲戦列艦7隻
・イルネティア王国(第2文明圏外)
戦艦1隻、重巡洋艦2隻、軽巡洋艦2隻、正規空母1隻
・トルキア王国(中央世界)
戦列艦7隻
・アガルタ法国(中央世界)
魔法船6隻
あとここに、神聖ミリシアル帝国の魔導重巡洋艦8隻と航空隊、そしてエモール王国の風竜騎士22騎が加わる。
計59隻にもなる大艦隊。技術の差はあれど、下手な文明国であればこれだけで滅ぼせる程の戦力だ。
また、エアカバーも世界最強たる風竜騎士団、及び列強第1位のミリシアルの天の浮舟が行う為、各国の者達は安心し切っていた。
一方その頃、カルトアルパス近郊にある神聖ミリシアル帝国海軍飛行隊基地にて。
ここでは、接近していると思われる敵機に対抗する為に戦闘機の発進準備が進められていた。
「これが『エルペシオ4』か……全然違うな」
基地司令が、目の前にて準備が進められている新型戦闘機───改良しただけなので純粋にそうとは言い難いが───である『エルペシオ4』を見て、そう呟く。
その見た目は、
「ええ、3から最高速度は200kmも上昇しました。その分機動力は落ちましたが、そこは速度でカバー出来るかと。
第零式魔導艦隊の生存者からの情報によれば敵爆撃機は『ジグラント2』では追い付けていなかった様ですが、3ならばともかく、4ならば大丈夫でしょう……ただ1つ懸念があるとすれば、数が少ない事ですね」
「3が16機、3の第1次改装型(エンジンを少し弄った物。最高時速630km。通称エルペシオ3改)が26機、4が5機か……確か、艦隊を襲った敵機は200機だったな?」
「はい。60機程撃墜したそうですが……」
「それでも100機は来るだろう。あとは風竜が22騎に雷竜が15騎か。確かムー国の新型機もいるんだったか」
「『スカイ』ですね。見た目はグ帝の物とあまり変わりませんが、どちらの方が性能は高いのでしょうか」
この1年間で軍事技術が向上したのは何も魔法文明のみではない。ムー国も、イルネティア王国より貸与されたオリオン級戦艦や、ペガスス級空母に積んであった補用の航空機などを解析していたのだ。
寧ろ、同じ技術系統によって作られている為、ミリシアルよりも解析は容易であった。
そして作られたのが、新型戦闘機『スカイ』だ。これはムー国初の単葉機であり、最高時速は430km/h。『アンタレス』より遅いが、マリンで戦うよりかはマシだろう。
「うむ、まあこれだけあれば大丈夫か……」
戦力になるであろう航空戦力が、合わせて100機以上いる。これならば……そう、彼が思ったその時であった。
『敵機確認!! 距離
「な、そんな馬鹿な!!?」
敵の規模が判明した。その数は、第零式魔導艦隊を襲ったのと同じ200。こちらの2倍だった。
「て……敵は一体、何隻の空母を持ってきているんだ……」
彼は唖然とした。200機中60機が落とされたのにも関わらず、またも200機を出してきたのだ。
これで全戦力だと仮定するならば、敵は少なくとも260機を連れてきている事になる。
今回、グラ・バルカス帝国は計6隻もの空母を連れてきていた。正規空母であり、搭載機数84機のペガスス級2隻、そして新たに建造された、搭載機数35機の護衛空母、『イーグル級護衛空母』が4隻である。
搭載機数は計308機。補用を除いても284機である。
帝国は、転移した直後から駆逐艦、及び小型空母を大量に造船所に発注していた。戦列艦相手に戦艦や大型空母は過剰戦力であり、燃料の無駄だと判断されたのだ。
両者共に、余りの建艦スピードからそれぞれ"日刊駆逐艦"、"週刊空母"などと呼ばれ、既にその"週刊空母"こと『イーグル級護衛空母』は30隻が就航していた。圧倒的な国力を誇るグラ・バルカス帝国だからこそ出来る
そして、その護衛空母は本来の目的───対ワイバーン用に小艦隊に随伴させる───ではなく、失った4隻の正規空母を補う為に使われる事となったのだった。
「発艦準備急げーー!!」
敵機接近との報告がミリシアルより寄せられた各国艦隊は、その空母より次々と航空機や飛竜を発艦させていく。
ムー国空母からは最新戦闘機『スカイ』、そして型落ちとなってしまった『マリン』が。
地上基地からは天の浮舟『エルペシオ4』や『エルペシオ3』、
そして、イルネティア王国空母からは、今回が正式には初戦闘となる雷竜騎士団が発進していた。
「あ、あれは!!!」
「知っているのか、船長?」
その様子を見たアガルタ法国船の船長は、飛び立った黒い竜に目を剥いた。
「あれは竜人族でさえ調教が叶わなかった属性竜、雷竜ではないか!! な、何故その様な種族をイルネティア王国が!!?」
「な!!? ……やはり、神竜か」
「ぐうぅっ……我が国にも神竜がいれば……」
彼らは有り得ない仮定を話しながら、敵へと向かっていく航空隊を見つめるのだった。
「ワイバーン……じゃないな。何だあの竜」
「ガハラにいた風竜とも違いますね。何なんでしょう」
『しきしま』にて、瀬戸と部下が雷竜を見て首を傾げる。
「ただ、普通のワイバーンよりも強力そうです。これはもしかしたら、もしかするかもしれませんよ」
「そうなら良いんだがな……」
2人はあまり抱いていなかった期待を、少しだけ膨らませるのだった。
飛び立った飛行戦力は、『エルペシオ3』16機、『エルペシオ3改』26機、『エルペシオ4』5機、『スカイ』10機、『マリン』10機、風竜22騎、雷竜15騎だ。
計104機の大編隊。しかし、これでもなお敵の半分しかいない。
空を飛ぶ彼らは、迫り来る恐怖を堪えながら、カルトアルパスを襲おうとする200機へと向かうのだった。
この小説が面白いなと思ったら高評価低評価チャンネル登録ブックマーク手洗いうがい三密Goto5つの小よろしくお願いします