【本編完結】つよつよ神竜イルクスさん   作:デュアン

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長らくお待たせ致しました。まだ受験は終わっていませんが、一先ずフォーク海峡海戦が一通り書き終わったので5話毎日更新します


フォーク海峡海戦(中編①)

 フォーク海峡上空を、グラ・バルカス帝国海軍東部方面艦隊の第1次攻撃隊が飛ぶ。一糸乱れぬその飛行からは彼らがよく訓練された精鋭だという事が分かる。

 アンタレス型艦上戦闘機100機、リゲル型艦上雷撃機50機、シリウス型艦上爆撃機50機の計200機。その内、アンタレス30機は残り170機の上空を飛び、来たる戦闘に備えていた。

 

 その30機の先頭のアンタレスに乗る、第1次攻撃隊護衛隊隊長のアークウェストは、戦闘直前であるというのにも関わらず気を緩ませていた。

 どうせ今回の敵も雑魚だろう、彼はそう思っていた。いや、この攻撃隊の全員がそう思っている事だろう。

 

「敵艦の対空攻撃は脅威だが、敵機は雑魚ばかりだ」

 

 あの第零式魔導艦隊とかいう大層な名前の敵艦隊を攻撃した者達は、皆口を揃えてそう言う。

 かくいう彼も、あの時護衛のアンタレスに乗り、迎撃に来たミリシアル機を返り討ちにしていたのだ。

 

 あの時彼らが戦ったのは『ジグラント2』で、最高速度は510km/h。

 なるほど、確かにアンタレスにとっては雑魚だろう。速度もそうだが、何よりも天の浮舟はジェット機であり機動力が弱いのだ。速度でも機動力でも負けて、ジグラント2がアンタレスに勝てる訳がない。

 

 だが、そもそもジグラント2はマルチロール機、要するに爆撃機である。

 それに対し、今回彼らの元へ来ているのは制空戦闘機。最高速度530km/hの『エルペシオ3』だけならば何とかなっただろう。

 しかし、今回向かってきているのはその大半が最高速度630km/hの『エルペシオ3改』。更に、最高速度730km/hの『エルペシオ4』が5機いるのだ。到底油断していい相手ではない。

 

 更に更に、敵はミリシアルのみではない。速度でも機動性でも勝る雷竜騎士が15騎存在する。まともにぶつかれば敗北を喫してしまう敵がいるのだ。

 

 

 今、彼の眼下には雷竜とエルペシオ3、そしてエルペシオ3改の計3()7()機が飛んでいる。

 と、ここで彼は致命的なミスをした。

 

トカゲ(ワイバーン)ロケット花火(天の浮舟)が40機弱か。えらく数が少ないな、俺達を舐めてるのか?」

 

 そう、雷竜をワイバーンだと勘違いしてしまったのだ。何故か体が紫色に光っていたり、速度がかなり速かったりとすぐに分かる違いがあるというのに。

 

「よし、じゃあ全機……ん?」

 

 そんな事は露知らず、彼は率いる全機に急降下しての攻撃を命じようとする。

 

 が、その時。ふと上から殺気を感じた。

 

 

「なん……っ!!! 上だァっ!!!」

 

 

 彼が空を見上げたその時、護衛隊の隙間を何かが高速で通り過ぎていく。

 次の瞬間には、激しい爆発音と共に5機のアンタレスが墜ちていった。

 

「なっ、く、クソッ!!」

 

 奇襲を仕掛けようとした側が、逆に仕掛けられる。

 仲間を殺された怒り、栄えあるグラ・バルカス帝国の戦闘機が上を取られたという事に対しての屈辱。それらが一度に込み上げてくる。

 彼の顔が表現し難い表情に歪む。

 攻撃隊の方にも敵機は行っていたが、数も少なく、しかも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、彼はそう判断し、スロットルを上げて奇襲を仕掛けてきた敵機を追った。

 

 後の世で、フォーク海峡海戦と呼ばれるこの海戦は、まず神聖ミリシアル帝国軍の『エルペシオ3改』20機、『エルペシオ4』5機の計25機による奇襲から始まった。

 

 

───────

 

 

「作戦は成功だ!! 全騎俺に続け!!」

『『『おおおお!!!』』』

 

 上空に居た敵機に、ミリシアル機が攻撃を仕掛ける。それを見たイルネティア王国軍雷竜騎士団団長のグラーフ・アンティリーズは魔信にそう叫び、眼下を飛ぶ敵攻撃隊へと降下する。

 それに他の雷竜騎士、そして『エルペシオ3』16機と『エルペシオ3改』6機も続く。

 

「よしッ……テェ!!!」

 

 彼のその号令で、雷竜達が一斉に雷光を放つ。それに呼応してエルペシオからも光弾が放たれる。

 15本の雷に、22機分の12.7mm魔光弾。それらは飛行していた攻撃隊を貫いた。

 魔光弾が命中したリゲルの翼はもげ、アンタレスの機尾は弾け飛ぶ。

 雷光が命中したシリウスは、機体からプスプスと煙を上げ、静かに墜ちていく。機体に目立った損傷は無いが、コックピットの中の人間はその高電圧に耐えきれず一瞬で絶命していた。

 

「全騎突撃ィィィィ!!!」

「雷竜に負けるな!! 攻撃開始ィィッ!!!」

 

 墜ちていく10数機。それを尻目に雷竜とエルペシオが攻撃隊の中へと突撃する。それを迎え撃つは、世界連合に先手を取られた形となった護衛のアンタレス70機だ。

 

 

 雷竜の巨体を絞らせ、速度を上げる。

 

「リーブス、気を付けろッ!!」

『分かってる!! 馬鹿にすんなッ!!!』

 

 そして、前方より向かってくるアンタレスの機銃弾を躱していく。数発は掠っていたが、雷竜の硬い鱗の前には無意味であった。

 

「テェ!!」

 

 そんな1騎と1機がすれ違う───直前、彼の乗騎であるリーブスの口より雷光が放たれ、直後にすれ違う。放たれた雷光は、正確に敵を捉えていた。

 高圧電流が機体の中を駆け巡り、パイロットを絶命、炭化させる。操り手の居なくなった機体は制御を失い、墜落した。

 

「墜とせる……墜とせるッ!!!」

 

 この日の為にやってきた数々の訓練、それが報われた瞬間であった。光弾と雷の飛び交う中彼は一瞬だけ歓喜し、次の瞬間には味方を追っていた機体(次の標的)へと目を向けていた。

 

「よしッ!!! 次だッ!!!」

 

 

 

『後ろに付かれた!! 誰か助け』

『は、速い!! 追い付けねェ!!!』

「クソッ!! コイツら、今までの奴とは違う!!!」

 

 一方その頃、パイロットのレマークは自らが操るアンタレスの中でそう毒づいていた。

 目の前に広がる景色は、彼が戦闘直前まで思い浮かべていた物とは大きく異なっていたからだ。

 

「帝国はッ、アンタレスは最強の筈だッ!!!」

 

 出しうる最高速度でプロペラの無い妙な機体(エルペシオ3改)を追う。が、一向に追い付けないばかりか逆に離されていく。

 と、そこでゾクリと悪寒が走り、彼は無我夢中で操縦桿を傾ける。その隣を無数の光弾、そして敵機が通っていった。

 

「クッ、ソがァァァァ!!!!」

 

 彼はその機体を追い、背後に付く。今度は何とか追い付く事が出来た。

 すかさず、機銃を発射する。放たれた7.7mm弾はその機体に命中する。

 

「は、ははは!!! やはり帝国は最強だァ!!!! ハハハハハハ!!!!」

 

 黒煙を吹いて墜落していくエルペシオ3(引退直前の最新鋭機)を見ながら、彼は狂った様に嗤う。

 

 次の瞬間には、上空より降ってきた魔光弾がコックピットを破壊、貫き彼に命中した。

 

 

 

「クソっ、クソっ、クソォっ!!!」

 

 リゲルを操縦するアーディスは今、恐怖に駆られていた。操縦桿を握る手がプルプルと震える。

 後ろには怯えた顔をした機銃手が7.7mm機銃を連射している。隣では同じく飛んでいたリゲルが今まさに()()()()()に切り裂かれ、墜落していった。

 

 そう、今彼らは遅れて来た風竜騎士団に襲撃されていた。

 生物でありながら500km/hもの速度で縦横無尽に飛ぶ風竜は、最高でも380km/h程でしか飛べないリゲル型艦上攻撃機には正に天敵であった。

 護衛のアンタレスは雷竜とエルペシオに妨害され、また数機が振り切って来るものの、圧倒的な機動力に翻弄されて撃墜される。多数対少数ならば分からないが、極小数対少数ならば負ける筈もない。

 

 今、風竜騎士団を阻む者は誰もいない。

 こうして彼らは次々と風の刃に切り裂かれ、撃墜されていった。

 

「あ……」

 

 そしてアーディスも、他のパイロットと同じ運命を辿ったのだった。

 

 

 

「くっ、まさかこんな事に……」

 

 シリウス型艦上爆撃機に乗るコールスは、味方の惨状に顔を歪ませる。

 鈍足のリゲルとは違い、最高時速550kmのシリウスはなんとか風竜の襲撃から逃れる事に成功していた。

 

「何とか爆弾を当てなければ……ヘラクレスを狙うぞ!! 俺に続け!!」

 

 まさか蛮族───自分を保つ為に言っている───相手におめおめと逃げ帰る訳にもいかない。せめて一矢報いたい。

 そんな彼が見つけたのは、1年前の海戦でイルネティアに奪われたヘラクレス級戦艦であった。

 

 その号令に、彼に従う20機のシリウスは件の戦艦『トワイライト』へと接近するのだった。




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