【本編完結】つよつよ神竜イルクスさん   作:デュアン

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今回はあの魔法が活躍します


フォーク海峡海戦(中編②)

〈ヘラクレス級戦艦『トワイライト』〉

 

「敵機の一部が迎撃隊を抜けました!! 0時の方向、数20!!」

「来たか……主砲対空砲弾装填!! 全艦、対空戦闘用意!!」

 

 イルネティア王国艦隊旗艦『トワイライト』。その艦橋にて、本艦隊司令のレイヴェル・ディーツはそう指示を出す。

 

「ムー国航空隊、迎撃に向かいます……突破されました」

「……」

「主砲装填完了!!」

 

 エルペシオ、雷竜騎士団や風竜騎士団、それらを振り切ったシリウス型艦上爆撃機20機。その性能や外見は旧大日本帝国海軍の使用していた爆撃機『彗星』に酷似しており、最高速度は驚異の552km/hである。

 それに対し、ムー国の最新鋭機『スカイ』は固定脚の単葉機で、最高速度は432km/h。マリンよりはマシだが、振り切られるのも当然であった。

 今もレーダー上で追い付こうとしているが、その距離はどんどん離されており、やがて諦めて他の攻撃機の方へと向かっていった。

 

 そしてそれは賢明な判断だ。あのまま追っていれば、各艦の対空砲火に巻き込まれていたであろう。

 

「照準ヨシ!」

 

 やがて、艦前方の2基の41cm連装砲が敵機への照準を完了する。

 

 

 「撃ち方始めェ!!!」

 

 

 現状、世界で2番目に巨大な砲が火を吹いた───

 

 

───────

 

 

「ぐっ、ぐうぅっ……!」

 

 ガタガタ、と揺れる機体。感じる浮遊感。周囲を取り囲む濃密な曳光弾に、視界を埋め尽くす程の黒煙。今もその爆発に巻き込まれて1機が墜ちていった。

 そんな中を、シリウスに乗るコールスは飛ぶ(落ちる)

 目指すは敵に奪われたヘラクレス級戦艦。帝国の威信にかけて撃沈しなければならない、本作戦における最重要目標。

 そんな艦に、抱える500kg爆弾を当てる為に彼は急降下していた。

 

「蛮族の癖に、使いこなすのが随分と早いなァ!」

 

 たった1年、1年だ。その僅かな期間で、敵は帝国の兵器を完璧に使いこなし、これ程の対空砲火を実現している。

 恐らく、元から練度が高かったのだろう。これ程の兵士を戦列艦に乗っている内に倒せなかったのは残念としか言い様が無い。

 

 次々と撃ち上げられる機銃弾。周囲の艦からも撃たれ続け、既に生き残っているのは彼の乗る1機のみとなっていた。

 そんな彼の機も所々を弾が掠り、ボロボロとなっている。

 

「……だが、まだ飛べる。爆弾は無事だ」

 

 何としても当ててやる。彼は操縦桿を握り締める。

 高度計の針が動く。高度900、800……500。通常であれば投弾する高度。だが、まだだ。

 

「……今だッ!!!」

 

 そして、投弾。高度は300。通常よりも圧倒的に近い距離で爆弾を投下する。

 

「ぐっ、ぐううぅっ!!!」

 

 操縦桿を引き、機体を引き起こす。が、無数の弾が掠り、既に満身創痍であった機体だ。

 耐えきれずに右翼が折れ、動きが乱れた所を『トワイライト』の25mm機銃が捉えた。

 

 撃ち抜かれ、空中に放り出されるコールス。そんな彼の視界に、

 

 

「……よし」

 

 

 自らが投下した500kg爆弾が、『トワイライト』に命中する瞬間が映る。

 彼は満足げに笑い、次の瞬間には海に叩き付けられた。

 

 

 シリウス型艦上爆撃機20機による攻撃は、『トワイライト』に対して500kg爆弾1発を命中させるという戦果を上げ、代わりに20機全てが撃墜されるという結果に終わった。

 高性能爆撃機20機による攻撃にしてはかなり軽微な損害であった。

 

 

 

「ダメだ! 少数でやっても撃墜される!!」

 

 一方こちらは、漸く迎撃隊から逃れる事に成功したシリウスに乗るハリス。彼はイルネティア王国艦隊に攻撃を仕掛けた爆撃機隊の惨状を見てそう結論付ける。

 そもそも、シリウスによる爆撃ではどうやっても戦艦を仕留める事は出来ないのだ。艦載機での戦艦撃沈が可能になったのは雷撃機が開発されたからなのだから。

 しかし、肝心のリゲルはその鈍足さ故に旧式の単葉機(スカイ)にすら撃墜されており、全滅も間近である。

 

「……」

 

 どうする、どうすれば。どうすれば爆撃機でこの世界の列強(ミリシアル)の面子を潰せる。彼は頭を回し続けた。

 

 そして、体感1時間、現実では数秒にも満たない時間で、彼はある方法を思いつく。

 

 

「生き残った機は俺に続け!! 攻撃目標を戦列艦に変更する!!」

 

 

 そう、近代艦ではなく、旧時代の戦列艦への攻撃である。

 

 この世界は技術格差が凄まじく、未来的なデザインの艦が進む隣に、側面にズラズラと砲を並べた戦列艦が帆を張って進んでいるのだ。

 これはこれで中々に良い景色ではあるが、今はただの的にしか見えなかった。

 何せ、戦列艦である。情報によれば、このレベルの国の対空兵器といえば弓かマスケットを空に向かって放つ程度らしい。そんな物にシリウスが撃墜される筈がない。

 彼はそう考え、機首をイルネティア王国艦隊やミリシアル艦隊から離れた場所にいた戦列艦隊、アガルタ法国艦隊へと向けた。

 

 

 ……だが、この時、彼はここが異世界である事を失念していた。

 ここは異世界であり、魔法という物が存在する。魔法とは、魔力というインクを使って世界という小説に書き加える、所謂現実改変能力だ。

 

 そんな魔法を使えば、時に科学世界では想像もつかない様な事を起こす事が出来るのである。そう、例えば───

 

 

 

「ミリシアルより通信、敵機8機が此方に向かってきている様です!!」

「そうか……」

「どう、しますか?」

 

 アガルタ法国艦隊旗艦『アールヴ』。その通信士が、艦隊司令である()()に声を掛ける。

 その女性───アガルタ法国艦隊司令であり、大魔導師であるエルフのシルフィ・ショート・バクタールは少し考え、そして告げる。

 

「……艦隊級極大閃光魔法を使う。全艦、六芒星隊形に移行!」

「了解! 全艦、六芒星隊形へ移行!!」

 

 通信士が魔信機にそう叫ぶと、法国の魔法船が移動し、艦で正六角形を作り出す。その間に彼女は自らが持つ特殊な杖を甲板に突き立て、詠唱を開始する。

 まるで歌の様なその詠唱が始まるやいなや、無数の魔法陣が彼女を取り囲む様に浮かび上がる。

 続いて魔法船自体が浮かぶ海面にも巨大な五芒星魔法陣が現れる。それは6隻全ての魔法船下部にあり、それらが現れると同時に魔法船同士が線で繋がり、六芒星魔法陣が形成される。

 六芒星は悪魔を呼び、五芒星は悪魔を祓う。簡易型六芒星魔法陣によって異次元より召喚された擬似悪魔は周囲の五芒星魔法陣によって圧縮される。

 

 その圧縮された悪魔は逃げ場を求める。だが、周囲を抑えられている今、逃げる場所は何処にもない。

 やがて───

 

 

「薙ぎ払え!!!」

 

 

───限界を迎えた悪魔は、死ぬ。

 悪魔は、死ぬ時に膨大なエネルギーを放出するのだが、それに指向性を与える事に成功したのがこの"艦隊級極大閃光魔法"である。

 

 擬似悪魔の成れの果て、極太の閃光が今、接近する敵機へと放たれた。

 

 

───────

 

 

「敵機がアガルタ法国艦隊へ向かった!?」

 

 時は少し遡り、数分前。敵戦闘機隊を殆ど殲滅し、続いて爆撃機へと攻撃を仕掛けていたグラーフの元にそんな魔信が届く。

 

「ま、マズイ!!!」

 

 それを受け取った彼は顔を蒼白にし、急いでアガルタ法国艦隊へと騎首を向ける。

 もし狙われていたのがミリシアルやイルネティアの艦隊であったならば、ここまで焦る事もなかっただろう。何せ彼らの対空能力は随一であり、下手に近付けば逆に巻き込まれかねないからだ。

 

 が、他の文明国は別だ。

 彼らの対空兵器は未だにマスケットやルーンアローであり、そんな物では万が一にも敵機を墜とす事は出来ないであろう。近付かれれば、確実に撃沈される。

 先を見据えれば、ミリシアルの膝元で文明国の船が撃沈される、なんて事は無い方が良い。

 

 そんなこんなで彼は雷竜を駆り、敵機へと向かった。

 

 

『こちらアガルタ法国艦隊。只今より"艦隊級極大閃光魔法"を使用する。友軍機は直ちに退避されたし。繰り返す……』

 

「か、艦隊級極大閃光魔法?」

 

 そんな時、魔信機から告げられたその言葉。艦隊級極大閃光魔法、聞き慣れない単語に彼は首を傾げる。

 だが、退避しろと言われたのは事実だ。彼らある程度の距離をとってホバリングする。

 

 

「なっ!?」

『これは……凄まじいな』

 

 

 次の瞬間、戦場の空を巨大な閃光が薙ぎ払った。禍々しくも美しい、そんな光が駆け巡り、射線上にいた敵機は粉砕される。

 そんな様子を見て、彼とリーブスは呆然とする。が、

 

 

「あっ、ま、マズイ!!」

 

 

 光は永遠には続かず、寧ろ短い間で尽きてしまった。勿論敵機は殆ど墜とせたが、1機だけ、破壊を逃れて艦隊へと向かっていた。

 それに我を取り戻した彼はすぐにリーブスに指示を出して加速する。

 

 

 

「……っ、はぁ、はぁ……」

 

 魔法を撃ち終えたシルフィ以下魔導師達はその場にへたり込む。

 法国の魔法船には魔導機関が装備されているが、そこから生み出される魔力を制御するのは彼女ら魔導師なのだ。そして、それにはかなりの体力を要する。

 そもそもこの魔法は未だ試験段階である。完成すれば少しはマシになるのだろうが……

 

「し、司令!! 敵機が!!」

「なっ!?」

 

 その声に、彼女が空を見上げる。

 そこには、今まさに爆弾を投下せんとする爆撃機がいた。

 

 仕留め損なった。ああ、死ぬのか───時の流れが遅くなる中、彼女は呆然と機を見つめ続ける。

 

 

───ふと、光が走った。

 

 

「……っきゃあ!?」

 

 

 突然爆撃機がフラフラとする様になったかと思えば、その直後にその機を隣から突っ込んで来た黒竜が蹴り飛ばす。その際に生まれた風に押され、変な声を出してしまう。

 蹴り飛ばされた敵機は『アールヴ』のすぐ脇の海に突っ込んで行った。

 

「な、何が……」

 

 恐る恐る顔を上げると、そこには所々が紫色に光る黒竜が居た。それには男が乗っており、彼らが件の雷竜騎士だという事が分かる。

 余程急いで来たのか、2人とも肩で息をする。が、それを詳しく見つめる暇もなく、彼らはすぐに元の戦場へと飛び去っていく。

 

「あれが……雷竜……」

 

 彼女のそんな呟きは、吹いてきた風に溶けて消えていった。

 

 

 

───中央歴1642年。神聖ミリシアル帝国、フォーク海峡にて勃発したフォーク海峡海戦。

 その第1段階目である、グラ・バルカス帝国軍第1次攻撃隊200機と臨時世界連合艦隊迎撃機計104機の戦闘は世界連合側の勝利に終わった。

 グラ・バルカス帝国側は200機中183機が撃墜、または未帰還となり、また世界連合側も、『エルペシオ3』『マリン』は全機、『エルペシオ3改』は20、『エルペシオ4』は2、『スカイ』は5、雷竜は4、風竜は8騎が撃墜されるという少なくない被害を受ける。

 

 だが、この初戦において艦隊が負った被害は『トワイライト』が受けた500kg爆弾1発だけであり、それによって起こった火災もすぐに消し止められたのもまた事実。

 

 帝国の作戦は、初戦から躓く事になったのだった。




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次の更新は2/6の夜6時です

アガルタ法国は魔法第一主義なんで、性別に関係なく魔法を扱う技術が高い人が上にのし上がれます(オリ設定)

この世界線でのバクタール艦隊司令の勝手なイメージ(下描きなのは許して)
【挿絵表示】


艦隊級極大閃光魔法の設定は妄想です。魔法ガチ勢の方は生暖かい目で見守っておいて下さい
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