【本編完結】つよつよ神竜イルクスさん   作:デュアン

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フォーク海峡海戦(後編①)

〈グラ・バルカス帝国海軍東部方面艦隊〉

 

「なっ、何ィ!? 壊滅だと!?」

「は、はい……通信によれば、敵艦隊に損害を与える事も出来なかったと……」

「そ、そんな馬鹿な……」

 

 ペガスス級航空母艦『エニフ』艦橋にて、本艦隊の司令代理を務めるバリタスは思わずよろける。

 それも仕方がない。何せ200機もの大編隊が出撃し、生き残ったのは僅か17機で、更には敵艦隊に少しの損害すらも与えられなかったというのだから。

 

 ……正確には、イルネティア王国の『トワイライト』に1発だけ500kg爆弾を命中させているのだが、それを確認出来る者もおらず、またすぐに火災も消火された為に気付かれなかったのだ。

 

「こ、これでは第2次攻撃隊は……」

「不可能でしょう……無念ですが」

 

 本来の作戦であれば、第1次攻撃隊はもう少し帰還してくる筈だった。神竜は来ていない───本国が睨みを効かせている為、来れる筈がない───と推測されており、アレさえ居なければ蛮族なんぞに遅れをとる筈もない!と、思われていた。

 第零式魔導艦隊との交戦時に対応してきた『ジグラント2』が弱かったのもその認識に拍車をかけていた。

 

 だが、結果として帰ってきたのはシリウス型艦上爆撃機5機と、リゲル型艦上攻撃機12機のみ。これらが全て使える訳でもない為、今第2次攻撃隊として発艦出来るのは40機程度、しかもその中にアンタレスはいない。

 敵にどれ程の戦力が残っているのかは分からないが、これでは発進させても第1次攻撃隊の二の舞になるだけだろう。護衛のいない攻撃機などただの的にしかならないのだから。

 

 

「『マゼラン』より通信。"我、敵編隊と接触せり"」

「ぐっ……」

 

 そんな折、海峡封鎖を目的として航行していた『マゼラン』よりそんな通信が入る。

 『マゼラン』には直掩機としてアンタレスが20機ついている。だが、アンタレス100機を含む200機を壊滅させた相手では……

 

「耐えてくれよ……マゼラン……」

 

 彼は着艦していく艦載機を横目に、不安げにそう呟く。

 

 

───────

 

 

「撃てっ、撃てっ、撃てェェェェェッ!!!」

 

 破裂音、爆発音、また破裂音。グラ・バルカス帝国最大の戦艦『マゼラン』は今、そんな騒音に包まれていた。

 空は黒煙に覆われ、光弾がその隙間を埋め尽くす。時折それに絡め取られた機体が炎上して墜ちていく。

 

 今、『マゼラン』、タウルス級重巡洋艦2隻、キャキス・ミナー級駆逐艦3隻からなる小艦隊は、カルトアルパス近郊の海軍基地より飛び立った神聖ミリシアル帝国の攻撃隊に襲撃されていた。

 直掩機は既に生き残りのエルペシオや雷竜、風竜などによって全滅している。

 マルチロール機である『ジグラント2』38機、そして最新鋭機である『ジグラント4』4機の計42機。特に『ジグラント4』は新開発された試製航空魔導魚雷を装備しており、数さえあれば戦艦ですら撃沈する事も出来る画期的な機体だ。

 速度もかなり上がっており、最高時速は690km。これはグラ・バルカス帝国のどの機よりも高速であり、魚雷を捨てれば例え相手がアンタレスであろうが空戦をする事が出来るのだ。

 

「左舷高角砲被弾!! 火災発生!!」

「消火急げ!!」

 

 今も撃ち漏らされた機体より投下された520kg魔導爆弾がマゼランに命中する。

 その巨体にしてみればさしたる損傷でも無いのだが、その爆発は確実に高角砲を破壊し、機銃要員を焼いている。兵士達の精神をすり減らすには十分であった。

 更に、先程から急降下爆撃は左舷を集中的に狙ってきており、今の爆弾で左舷中央部の対空兵器は殆どが破壊されてしまっており、もしも今───

 

 

「左舷、敵機低空より接近!!」

 

「ぐうっ、やはりこれが狙いかァっ!! 回避運動、面舵一杯!!!」

 

 ラートス艦長のその指示で、艦がゆっくりと右に旋回していく。

 そんな中、彼は所々にヒビが入った艦橋の窓から、プロペラの無い奇妙な形の機体が4機、高速で接近するのを見た。

 その機───『ジグラント4』4機は周囲の艦からの猛烈な対空砲火の中を飛び続け、2機が途中で墜ちるも腹に抱えた試製800kg航空魔導魚雷を投下し、上昇していく。

 

「ら、雷跡ありません!!」

「構うな!! このまま旋回し続けろ!!」

 

 敵魚雷の進行方向も分からないまま、合っているかも分からない回避運動を行う。こうなれば、敵機の侵入角度から予測するしかない。

 第零式魔導艦隊との戦闘で生き残った重巡洋艦の乗組員から「敵が酸素魚雷を実用化している可能性」については聞いていたが……実際に相対してみると、雷跡が見えない事がここまで恐ろしい物だったとは……。

 

 

ドォォォン!!!

 

 

「うわぁぁっ!!?」

「ぐううぅッ!! 被害状況を知らせろ!!」

 

 やがて、激しい揺れが起こり艦左舷後方に大きな水柱が立つ。

 

「左舷艦尾付近に浸水発生!!」

「ダメージコントロール!」

 

 来た報告はそれだけだった。どうやら3発は避けられたらしい。

 だが、明らかに帝国のそれよりも大きな先程の水柱。どうやら、乗組員の話は本当だった様だ。

 ……実際には魔導魚雷と酸素魚雷は全くの別物であるのだが、コストと構造以外は殆ど同じである為、今回の場合はさしたる問題でもないだろう。

 

 

 結果として、今回の航空攻撃によって『マゼラン』は520kg魔導爆弾3発、試製800kg航空魔導魚雷1発を被弾する事となり、これによって左舷対空砲がほぼ全滅してしまう。

 また、その他にキャニス・ミナー級駆逐艦1隻が魔導爆弾の直撃を貰い、運悪く弾薬庫に引火して爆沈。

 

 彼女らは当初の6隻から5隻に数を減らし、海戦へと臨む事になったのだった。

 

 

 

『こちら攻撃隊、敵駆逐艦1隻を撃沈、また敵超巨大戦艦に爆弾3発、及び魔導魚雷1発を命中せり!! 敵艦隊は煙を吐けど、尚も進行中!!』

「こ、これは……!」

 

 『しきしま』に取り付けられた魔信機にそんな通信が入り、クルー達は皆驚きの声を上げる。

 

 海戦が始まる直前まで、正直な所彼らは生還を諦めかけていた。

 何せ敵は200機に対し、こちらは計100機だ。2倍というのは何とも覆し難い差であった。

 更に例え航空攻撃を切り抜けられたとしても、恐らく敵はあの狭い海峡を封鎖してくるだろう。そして、そこに鎮座しているのはあの大和擬き。こんな巡視船で勝てる筈もない。

 

 だが、蓋を開けてみればどうだ。

 200機の攻撃隊はその殆どが迎撃機によって撃墜され、僅かに突破してきた機も長門擬きかあの極太レーザーによって撃墜され、被害は殆ど無い。

 また、敵艦隊もミリシアルの航空攻撃によって駆逐艦1隻が撃沈され、大和擬きも少なくない被害を負っている。

 現在の所、なんとこちらは優勢ではないか。

 

「はは……この世界に前世界の常識が通用しないというのは理解しているつもり、だったんだがな……」

「正直、魔法舐めてました……」

 

 瀬戸とその部下はぼやく。

 アガルタ法国艦隊が彗星擬きに狙われた時、遂に味方から沈没が出ると思った。

 何せ法国艦はその全てが木造の戦列艦。そんな船が第二次世界大戦時レベルの航空攻撃に耐えられる筈がない。

 

 だが、なんという事だろう。あろう事か法国艦隊は全くもって仕組みが理解出来ない極太レーザーを発射し、敵機を薙ぎ払ったのだ。1機撃ち漏らしていたが、それも駆け付けた黒竜によって撃墜され、事なきを得た。

 

 これが魔法。これが、この世界の力なのだ。我々がこれまで見てきたのはほんの一部に過ぎなかったのだ。

 

「……」

「船長、我々はどうしますか?」

 

 既に分かりきっているであろう事を部下が聞く。

 

「……決まっているだろう。敵航空機のいない今、しきしまに出来る事は何も無い。我々はミリシアル、イルネティア両国の艦隊が海峡を封鎖する敵艦隊を()()()()()に現海域より脱出する」

「了解!!」

 

 彼は明るい顔でそう復唱するのだった。




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(補足)2度の敗北を受けて、流石のグ帝上層部でもグレードアトラスター単艦での突入はさせられませんでした。
 本来ならば第零式魔導艦隊との艦隊戦で生き残った艦も随伴する予定でしたが、大破した重巡1隻しか残らなかった為に艦隊戦に参加していなかった8隻の中のこの5隻しか随伴出来ませんでした。
 ちなみに残りの駆逐艦3隻は空母護衛の為に残ってます

グ帝が新型機を出してこなかった理由は後ほど判明します

次回投稿は2/7の朝7時半です
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