【本編完結】つよつよ神竜イルクスさん   作:デュアン

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巨大軍港ドイバ

〈中央歴1642年6月20日 第2文明圏 イルネティア王国〉

 

「ここも随分と変わったものだな」

 

 晴れて第2文明圏の仲間入りをしたイルネティア王国。その将軍であるニズエルは、変貌した港湾都市ドイバの姿を見てそう呟く。

 

 かつて美しい街、として名を馳せたドイバ。グレードアトラスターの艦砲射撃によって灰燼と化した後は、神聖ミリシアル帝国やムー国、エモール王国といった列強諸国の介入もあって信じられないスピードでの復興、発展を遂げていた。

 エモールは神竜が居るから、ミリシアルは"科学の勢力が強い第2文明圏において魔法文明の勢力を拡大させたい"、ムー国はそれを阻止したい、それぞれの思惑もありながらドイバはこうして立派な軍港として発展していった。

 始まってから1年が経った今も尚それは衰える事なく続いており、つい先程到着したミリシアルのモリオン級魔導重輸送艦が荷揚げを行っている。

 

 コンクリートで固められた近代的な軍港に、大量の倉庫や整備用ドッグ。真新しいクレーンに運搬用トロッコ。

 元々文明圏外国だったとは思えない様なその港には自国軍艦艇だけでなく、多数の外国軍までもが駐留していた。

 

 まず、いち早く来たのはエモール王国だ。

 エモール王国は地図を見る通り内陸国である。だが、仮にも列強だ。一応竜母は持っており、普段は同盟国のトルキア王国の港で埃を被っていた。

 アクセン級魔導竜母『アクセン』『ゴスニア』。エモールの保有する2隻の竜母がドイバに留まり、竜母による運用に慣れる為日夜訓練を続けていた。

 

 続いてミリシアル。現在でも港の拡張を続け、続々と軍艦を呼び寄せているかの国だが、6月に入ってからは遂に主力艦隊までここに来ていた。

 普段は東方の防衛を任されている第一、第二、第三魔導艦隊。3艦隊全てがここドイバ軍港に駐留しており、港を圧迫していた。

 

「しかし、やはりミリシアルの艦は圧倒的だな。イルネティアもいずれはあの様な巨艦を建造出来るようになるのだろうか……」

 

 彼は目の前に浮く巨艦を見上げる。

 

 神聖ミリシアル帝国の最新鋭艦、『アダマン級魔導戦艦』。その1番艦『アダマンタイト』がここに駐留している第一魔導艦隊の旗艦をしているのだ。

 

 全長240m、全幅40mで、基準排水量は41,000トン。

 主砲は、前方に雛壇状に積み上げられた3基の霊式41cm3連装魔導砲で、帝国最高の火力を誇る。副砲は後方に1基設置された霊式20.3cm3連装魔導砲で、こちらも副砲としてはかなりの火力だ。

 また、高角砲として霊式12.7cm連装高角魔導砲を左右に計6基装備。

 機銃も、

    ・第三世代イクシオン40mm8連装対空魔光砲を計8基

    ・アクタイオン25mm3連装対空魔光砲を12基

    ・フィルリーナ12.7mm単装対空魔光砲を20基

 装備しており、対空火力も高い。

 装甲はアダマンタイト-鋼合金が採用された。アダマンタイトはミスリルよりも更に魔力伝導率が高く、その為魔力を流した際にはミスリル級の2倍相当の装甲へと変貌する。

 更に、艦体前後4箇所に『人魚の唄声』(風神の涙式ウォータージェット)を取り付け、これによって急激な方向転換などが可能になった。この装備は画期的かつ有用な物であり、今後帝国の建造する艦の殆どで標準装備となるだろう。

 因みにこのアダマン級、元は魔帝の遺跡にあった物を解析した物だ。不明な点が多々あり複製に成功していなかったのだが、今回グレードアトラスターの解析にあたってそれらが解消。晴れて複製、改良に成功したのだった。

 

 

「で、こちらが空母か」

 

 次に、こちらも最新鋭艦である『マカライト級航空魔導母艦』である。これも第一魔導艦隊に2隻、『マカライト』『ローレライ』が配備されている。

 

 全長262m、全幅は80.2mで、基準排水量は70,100トン。

 前級のロデオス級と同じく複胴艦で、中央に艦橋が1つに、その両サイドに大型の空母が2隻繋がった様な形状を持つ大型空母だ。

 2隻の空母は着艦側、発艦側と分けられており、着艦側で降りた航空機が補給を済ませて発艦側へ移動する。艦橋後部で2つの飛行甲板は繋がっており、その際はそこを通る。

 また、損傷した機は発艦側に格納され、修理を受けて今度は艦橋下部の連絡路を通って発艦側へと移動、発艦する。

 緊急時にはどちらの飛行甲板からも発艦、着艦が可能となっており、単胴式よりも単純に2倍の速度でそれらが可能となる。

 

 主砲は艦橋前部、後部に設置された霊式20.3cm連装魔導砲で、重巡洋艦並の火力を持つ。

 対空兵器としては、

   ・霊式12.7cm連装高角魔導砲を6基

   ・第三世代イクシオン40mm8連装対空魔光砲を8基

   ・アクタイオン25mm3連装対空魔光砲を16基装備。

 

 そして、肝心の搭載機数だが───なんと、前級の3倍弱となる142機となっている。

 ただ、これはそもそもロデオス級が少なすぎたというのもある。読者の皆様には、旧軍の翔鶴2隻分とでも思っていただければいい。そう考えるとやや少ないが。

 搭載機は勿論『エルペシオ4』及び『ジグラント4』だ。寧ろこの艦はこれの為に作られたのだから当然だ。

 これらの機は性能の分滑走距離も伸びているのだが、飛行甲板には『風神の涙』が取り付けられ、制御された暴風によって非常に短い距離での発艦が可能となっている。

 この仕掛けはロデオス級にも組み込まれ、一応そちらでも新型機を運用する事は出来るのだが……まずロデオス級その物が欠陥だらけである為に全てがマカライト級に置き換わる事が決定している。

 また、技術の進歩によって艦その物の最高速度も31ノットにまで向上した。この点においては日本をも上回っているのでミリシアル人は誇っていい。

 

……余談だが、現在『エルペシオ4』の後継機が開発中である。それが完成した暁には、この艦に配備される事になるだろう。

 

 

「……で、これが」

 

 

 そして最後。こちらはミリシアル所属ではなくイルネティア王国所属の戦艦だ。彼の知る限り、これよりも巨大な艦はいない。

 

「こんな物が王国所属など……少し前ならとてもではないが信じられなかっただろうな」

 

 その戦艦が建造されたのはここではない。ミリシアルでもない。そもそもこの世界ではない。

 

 

 グレードアトラスター改装戦艦、魔導戦艦『イルネティア』。

 敵国出身の鹵獲戦艦が、世界一の国による改修を受けて戻って来ていた。

 

 全長263m、全幅39m、基準排水量は約63,000トン。

 主砲は前方に2基、後方に1基設置された45口径46cm3連装砲だ。これは現在のミリシアルではこれを超える物は制作不可能と判断され、建造当時の物がそのまま残されている、誰もが認める"世界最強の艦砲"である。

 副砲は前方、後方にそれぞれ1基ずつ設置された霊式20.3cm3連装魔導砲。これの装甲はアダマンタイト-鋼合金であり、魔力を通す事によってそれなりの装甲へと変化する。

 これを換装したのは、改造する際にこの戦艦の弱点となっている事が判明したからだ。何せ元の副砲である15.5cm3連装砲はそれ相応の装甲しか施されておらず、もしここに砲撃が直撃した場合その直下すぐ隣にある46cm砲の弾薬庫にまで被害が及び、一瞬で轟沈してしまうだろう。

 それを避ける為、46cm砲を防ぐとまではいかずともそれなりの攻撃には耐えられる様に、アダマン級に搭載する為に作られたこの砲を採用したのだった。

 

 続けて、対空兵器だ。

 こちらは霊式12.7cm連装高角魔導砲を12基装備。奇しくも『大和』と同じ配置になっていた。

 また、・第三世代イクシオン40mm8連装対空魔光砲を10基

    ・アクタイオン25mm3連装対空魔光砲を22基

    ・アクタイオン25mm単装対空魔光砲を26基

    ・フィルリーナ12.7mm単装対空魔光砲を艦橋に4基

装備しており、対空魔光砲の門数はミリシアルのどの艦よりも多い。

 

 装甲は取り替えられ、アダマンタイト-オリハルコン-鋼合金。オリハルコンは、アダマン級の次級として建造が予定されているオリハルコン級に使用される予定の金属であり、アダマンタイトよりも更に魔力伝導率が高い。

 オリハルコン級を作るにあたり、まず実際に運用してみて効果がどれ程のものか、それを確認する為にこうして試験的に『イルネティア』に使用されたのだった。

 装甲厚は元よりもやや薄くなったものの、魔力を供給すれば実に甲板で280mm、舷側ではなんと540mm相当の装甲へと変化する。元がそれぞれ230mm、410mmであるからかなりの物だ。

 勿論、その分コストもかなりかかっているのだが……これに乗るのはミリシアルの兵士ではなくイルネティアの兵士だ。実戦というどんな試験よりも優れた試験に自国の兵を使わずに済むのだ。安いくらいだ、との事らしい。

 また、アダマン級と同じ様にこちらにも『人魚の唄声』を艦体前後4箇所に装備し、機動性を確保。

 

 主機として元々配備されていたプロミネンス式蒸気機関を、副機としては高出力魔導機関を採用。前者は推力と46cm砲に、後者は装甲強化と対空兵器、レーダーや『人魚の唄声』に使用される。

 

 自他ともに認める、まさしく"最強の戦艦"。これがあるというだけで安心感が違う。

 

 

「……まあ、その分燃料も食うのだがな……うう、頭が痛い……」

 

 

 唯一の救いは、この世界のスタンダードが魔法文明である為に石油の値段が安い事だろうか。近くにムーという科学文明国がある故に採掘施設も整っている。

 

 彼はイルネティアの未来(国庫)を憂うのだった。




大胆な名付けは魔法文明の特権

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