【本編完結】つよつよ神竜イルクスさん   作:デュアン

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前夜(前夜とは言ってない)


決戦前夜①

〈中央歴1642年12月10日 神聖ミリシアル帝国 カルトアルパス〉

 

『アガルタ法国艦隊、到着! 魔導艦6、魔法船48!』

『トルキア王国艦隊、到着! 魔導戦列艦82!』

 

 あの前代未聞の襲撃から早くも8ヶ月が経ったこの日、カルトアルパスには中央世界各国の艦隊が続々と到着していた。それも前回の様な小規模艦隊ではない、正真正銘の主力艦隊である。

 

「いやあ、壮観だなあ」

「そうですね。まさか生きている間にこんな光景が見られるなんて……それこそ、魔帝が復活でもしない限り見られないと思ってましたよ」

 

 港湾管理局局長のブロントとその部下が話す。

 長年先進11ヶ国会議の艦隊を見てきた彼らでさえ思わずため息が出てしまう、それ程の規模の艦隊であった。

 

「あの魔導艦、アイアン級か……そういえば売却されたんだったな」

「その内ここに帆船が並ばなくなる日も来るんでしょうか」

「発展の証拠だが……それはそれで寂しいな」

「ですね。戦列艦には戦列艦なりにカッコイイですし」

 

 2人はアガルタ法国所属の6隻の魔導艦を見て、そんな言葉を交わす。

 

 ディバイン級魔導艦、それが彼女らの艦級である。神聖ミリシアル帝国より売却されたアイアン級魔導艦を改造した艦であるが、見た目は大して変化しておらず、周囲の魔法船は未だ前時代的な帆船である為にかなり浮いている。

 しかし、その内装は法国なりにかなり改造されており、魔導師の能力を最大限に引き出す事が可能だ。搭載されている魔導機関も法国基準ではずば抜けた能力であり、多量の魔力を消費する『艦隊級極大閃光魔法』の連射も可能となった。

 

「ここに帝国の主力艦隊3つと地方艦隊、そして第2文明圏の艦隊も加わるのでしょう? 総艦艇数は600を超えるとか。これ程の数が集まればあの様な不躾な者達(グラ・バルカス)など鎧袖一触ですよ!」

「そうだな。遂に奴らに神罰を下す時が来たという訳だ」

 

 帝国が670隻もの数を用意してくるという事は一般人には知らされていない。よって、彼らは勝利を疑っていなかった。

 カルトアルパスでは勝った。その事実が、彼らに不安を抱かせないでいた。

 

 

『出港ーーーっ!!!』

 

 

 中央世界各国、そして第3文明圏の間に合った一部の国々の艦隊が集結し終わった。

 彼ら彼女らはミリシアルの地方艦隊40隻に率いられ、道中で第2文明圏の艦隊と合流し、北回りの航路でイルネティア島を目指す。

 

 

 決戦の刻は近い。

 

 

───────

 

 

〈中央歴1642年12月29日 ムー国 首都オタハイト〉

 

 海岸は、この日の為に集結した大艦隊を一目見ようとする多くの人々で賑わっていた。

 軍人の家族であろうか、不安で涙を流す者達もいる。

 

 ラ・エルベン級戦艦『ラ・エルベン』

 ラ・ゴンコ級戦艦『ラ・ゴンコ』

 ラ・カサミ級戦艦『ラ・カサミ』以下4隻

 ラ・デルタ級装甲巡洋艦 8隻

 ラ・グリスタ級巡洋艦 4隻

 ラ・ホトス級巡洋艦 8隻

 ラ・シキべ級軽巡洋艦 16隻

 ラ・ハルハツ級駆逐艦 10隻

 ラ・ヴァニア級航空母艦 2隻

 ラ・コスタ級航空母艦 3隻

 ラ・モーグ級補給艦 7隻

 

 航空母艦の甲板上には以前開発された主力戦闘機『スカイ』、新型攻撃機『テンペスト』、そして新たに開発された最新鋭戦闘機『ウィンド』などがずらりと並んでいる。その中に複葉機の姿は無い。

 全てが、単葉機。また、並ぶ艦艇も巨大な物となっている。

 ムー国艦隊旗艦『ラ・エルベン』、そして新型戦艦『ラ・ゴンコ』。全長196.8m、222mものその巨体達の前では、最新艦の筈である『ラ・カサミ』がまるで小舟の様であった。

 

 以前とは比べ物にならない程に強力となった機動艦隊計64隻は第2文明圏艦隊、そして中央世界各国の艦隊と合流すべく出港するのだった。

 

 

───────

 

 

〈中央歴1643年1月9日 イルネティア王国 港湾都市ドイバ〉

 

 激動の年が終わり、そして始まろうとしている。

 冬だというのにも関わらずギラギラと太陽が照り付けるこの日、ドイバには世界各国の艦隊が集結していた。

 

・神聖ミリシアル帝国

[第一魔導艦隊]

 アダマン級魔導戦艦『アダマンタイト』(旗艦)

 ミスリル級魔導戦艦『カレドヴルフ』『エクス』

 シルバー級魔導重巡洋艦『レフィリー』以下4隻

 ブロンズ級魔導軽巡洋艦 8隻

 リード級魔導小型艦 20隻

 マカライト級航空魔導母艦 2隻

 『エルペシオ5』20機

 『エルペシオ4』100機

 『ジグラント4』160機

 

 [第二魔導艦隊][第三魔導艦隊](合計)

 ミスリル級魔導戦艦『コールブランド』(第二魔導艦隊旗艦)『カリバー』(第三魔導艦隊旗艦)

 ゴールド級魔導戦艦 2隻

 シルバー級魔導重巡洋艦 8隻

 ブロンズ級魔導軽巡洋艦 16隻

 リード級魔導小型艦 40隻

 ロデオス級航空魔導母艦 4隻

 『エルペシオ4』58機

 『エルペシオ3改』30機

 『ジグラント4』72機

 『ジグラント2改』50機

 

 [地方艦隊](合計)

 ゴールド級魔導戦艦『ガーンデンヴァ』

 マーキュリー級魔導戦艦 3隻

 シルバー級魔導重巡洋艦 4隻

 ブロンズ級魔導軽巡洋艦 10隻

 リード級魔導小型艦 20隻

 ロデオス級航空魔導母艦 1隻

 『エルペシオ3改』23機

 『ジグラント2改』33機

 

・ムー国

 機動艦隊 計64隻

 『ウィンド』10機

 『スカイ』50機

 『テンペスト』45機

 

・エモール王国

 アクセン級魔導竜母『アクセン』『ゴスニア』

 風竜騎士 40騎

 

・アガルタ法国

 ディバイン級魔導艦『ディバイン』以下6隻

 魔法船 48隻

 

・トルキア王国

 魔導戦列艦 82隻

 

・ギリスエイラ公国

 魔導戦列艦 98隻

 

・中央法王国

 大魔導艦 2隻

 

・マギカライヒ共同体

 機甲戦列艦 28隻

 竜騎士 50騎

 

・ニグラート連合

 クトゥール級竜母 3隻

 魔導戦列艦 27隻

 竜騎士 60騎

 

・バミール王国

 轟速小型魔導砲艦 115隻

 

・イルネティア王国

 魔導戦艦『イルネティア』

 ヘルクレス級戦艦『トワイライト』

 オリオン級戦艦『クレセント』

 タウルス級重巡洋艦『レプシロン』以下7隻

 レオ級軽巡洋艦 4隻

 キャニス・ミナー級駆逐艦『トイヌーシェ』『ムルシク』『ハルケン』

 ペガスス級航空母艦『エクリプス』『エディフィス』

 雷竜騎士 58騎

 神竜騎士 1騎

 

 総勢641隻、820機もの大艦隊。当然ドイバには入り切らない為、沖にかなりの数が待機している。

 大半が戦列艦とはいえ、この数は驚異的だ。海は海面が見えない程に埋め尽くされている。

 

 

「凄い……」

「こんなに沢山の船、見たの初めてだよ……」

 

 そんな壮大な光景を、連合軍総合本部の設置された建物より圧倒されながら見るライカとイルクス。

 

「……敵は、一体どれ位の数で攻めてくるんだろう」

「それも後でされる作戦会議で言われるのかな」

 

 今日、彼女らがここにいるのはその作戦会議の為である。2人は作戦上重要な役割を与えられるらしいのだ。

 それは彼女ら自身も理解していた。神竜というのはあまりにも強力な切り札だ。

 

 

「ライカ〜、イルクス〜、お久しぶりです〜」

 

 

「アルデナさん!」

「アルデナ!」

 

 と、そこにやって来たのはのんびりとした口調の少女、アルデナであった。彼女の背後には同じくローブを着た屈強な中年の男が立っている。

 

「どうしてここに?」

「こう見えても私〜、大魔導艦1番艦の副艦長なんですよ〜? 艦長の体調が優れないらしいので〜、その代理で〜」

「作戦会議に呼ばれたって訳だね、僕達と同じで!」

「その通りです〜」

 

 ライカは、彼女が大魔導師である事を改めて実感した。

 

「ノイエンミュラー、彼女らが?」

 

 その時、背後に立っていた男が口を開く。

 

「はい〜。そちらの大きい方がイルクスで〜、小さい方がライカですよ〜」

「小さい方……」

「そうか。お初にお目にかかる。私は中央法王国海軍で提督を務めているファルタス・ラ・バーンだ。神話に会えて光栄だよ」

 

 小さい方、と呼ばれて静かにショックを受けているライカを他所に、背後の男───ファルタス提督が言う。

 彼女は、提督、と言われて途端に緊張を取り戻す。

 

「わ、私はイルネティア王国雷竜騎士団副団長のライカ・ルーリンティアです。そ、そしてこちらが」

「イルクスだよー」

 

 中央世界の国の要人を前にしてガチガチのライカと、マイペースのイルクス。初めて会った時もそんなだったな、と思い出したアルデナがくすりと笑う。

 

「ははは、そこまで緊張しなくてもいい。私達の魔法など、君達の前ではそよ風も同然だろうからね」

「い、いえいえそんな……」

 

 謙遜する彼女に、また彼ははははと笑う。

 

「実績に反して謙虚な事だ。君はもう少し自らに自信を持っても良いと思うがね。おっと、もうこんな時間か」

 

 壁に掛けられた時計に気付く。

 針は、会議開始5分前を示していた。

 

「それではまた後ほど。ノイエンミュラー、行くとしよう」

「はい〜。2人ともまた後で会いましょう〜」

 

 そう言って、2人は歩き去っていった。

 しばらくその場にいた彼女らだったが、よく考えてみれば自分達も作戦会議に行かなければいけないのだったと思い出し、すぐにその後を追うのだった。




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