【本編完結】つよつよ神竜イルクスさん   作:デュアン

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決戦前夜②

〈港湾都市ドイバ 連合軍作戦司令本部〉

 

「私が今回世界連合艦隊の指揮を執らせてもらう、神聖ミリシアル帝国第一魔導艦隊司令、レッタル・カウランだ。よろしく頼む」

 

 ミリシアルの技術によって建てられた煌びやかな建築物、その中の一室、大会議室にてよく鍛え上げられた中年の男───レッタル・カウランは言った。

 彼の前には今海戦に参加する艦隊の要人達が揃っている。

 

「早速だが、今回の戦闘に参加する敵の数を伝えよう。

 

 敵の数は……約670隻だ」

 

「なっ!?」

「そんな……」

「ま、まさか!?」

 

 告げられた衝撃の事実に、要人達は驚愕する。

 何せ、今回集まった艦艇は全てで641隻。まさかこの数を敵が超えてくるとはこの中の誰も予想していなかったのだ。

 

 

「……で、勝算は?」

 

 そんな中、アガルタ法国艦隊司令のシルフィ・ショート・バクタールが尋ねる。彼女はカルトアルパスで1度死にかけたからこそ、ある程度現実は見えていた。

 こう尋ねたのも、このままでは勝つ事は出来ないと感じているからだった。

 

「勝算は……ある。そろそろ……」

 

 と、彼が何かを言いかけた時。扉が開き、彼の部下らしき者が耳元で何かを囁いた。

 それを聞いた彼はニヤリと笑う。

 

「どうやら到着した様だ。さて、皆さん。少し窓の外を見て頂きましょうか」

「……? 何だ、この音は……」

 

 ゴゴゴゴゴ、と低い音が腹に響く。窓はガタガタと震え、建物はギシギシと悲鳴をあげていた。

 急いで、要人達が窓の外を見る。

 

 

「な、何だ、アレは……!!」

 

 

 誰かが言う。それは、その場にいたミリシアル軍人以外全員の総意であった。

 

 そこには、にわかには信じられない光景が広がっていた。

 

「紹介しよう。アレは『空中戦艦パル・キマイラ』。かつて古代魔法帝国が使用していたと言われている、その名の通り空を飛ぶ戦艦だ」

 

 全長がグレードアトラスター程もある巨大な物体が2機、共にゆっくりと動き、航空機用の滑走路に着陸しつつあったのだ。

 その圧倒的な、非現実的な見た目にその場の殆どが言葉を失う。見た目は完全に横向きの車輪であったが、その様な事を口に出来る者は誰もいなかった。

 

 

「何あれ、車輪?」

「ちょっ!? イルクス、そんな事言っちゃダメだって!

 

 

 ……"殆ど"、いなかった。慌ててライカが口を塞ぐも時既に遅し。

 シン、と静まり返った室内に「ぷっ」という音が響く。ある者は口に手を当てて笑いを堪え、またある者は明後日の方向を向いて体を震わせている。

 そして、ドヤ顔で窓を見ていたレッタルは頬をヒクヒクと引き攣らせていた。

 

 

「……さて、それでは会議を続けようか」

「ブフッ、は、はい」

「え、ええ。そうね……ぷっ」

 

 そんな締まらない雰囲気の中、会議は再開された。

 

「今回の戦いでは、敵は確実にいくつかの艦隊に分かれて来るだろう。そこで、だ。敵艦隊を察知した時点で、その内2つには空中戦艦を1隻ずつ向かわせる事となる……」

 

 彼の作戦を要約するとこうだ。

 

 まず、敵艦隊は確実に3つ以上に分かれて来る。670隻もいるのだから、それくらい分けなければ意味が無い。

 それらを察知した時点で、まずパル・キマイラをその内2つに向かわせる。空中戦艦の性能は素晴らしく、1隻でも1艦隊を殲滅するくらいは楽勝なのだという。

 そして、残った艦隊にはこちらも艦隊で迎えうつ。ただし、空母は護衛と共に後方に待機させておく。世界連合側の勝利条件は『イルネティア島を守り抜く』事だ。わざわざ空母を前線に出す必要は無い。

 

 以上、単純な作戦だが合理的だろう。あまりにも空中戦艦に対する期待が高すぎる事に少し懐疑的な者はいたが、異議を唱える者は誰もいなかった。

 何せかつて世界全てを支配していたラヴァーナル帝国の古代兵器だ。きっとそれ程の性能があるのだろう……そう自分を納得させていた。

 

 

 

「それでは、ご説明いたします」

 

 灰色のコートに身を包み、謎の仮面で顔を隠したエルフの少女が一行に向かって言う。

 

 会議が終わった各国軍要人達は、レッタルに連れられてマカライト級航空魔導母艦『タスラム』へとやってきていた。理由は新型制空戦闘機『エルペシオ5』を見学するためである。

 この少女はルーンズヴァレッタ魔導学院にて開発に携わった対魔帝対策省の技術者の1人であり、今回説明のためにわざわざ駆り出されたというわけだ。

 

「随分と形が変わったな」

 

 そんな彼女にレッタルが尋ねる。彼自身新型機を見るのは初めてであり、だからこそ以前までのそれとは全く異なるその形状に疑問を抱かずにはいられなかった。

 

「はい。今回は単発であった前級までとは打って変わって双発式を採用しました」

「双発機など大型機でしか見なかったが……まさか戦闘機に採用されるとは」

 

 そう。『エルペシオ5』は双発機なのだ。

 両翼に取り付けられたエンジン、機首の4基の機銃など、その外観は地球における第二次世界大戦時にイギリスで開発されたミーティアと若干似ている。おそらくは偶然だろうが。

 

「双発式にしたことにより出力は大幅に向上、最高速度は910km/hを記録しました」

「きゅ、900だと!?」

「通常のワイバーンの約3倍か……」

「す、スカイの2倍以上……」

「僕の半分くら「シッ!」モゴ」

 

 薄い胸を張りながら語る彼女。そんな中、飛び出した数字に一同は騒然となる。因みに本当の最高速度は940km/hである。

 そんな彼ら彼女らの反応に満足しつつ、解説を続ける。

 

「そしてそして、今回最も注目していただきたい点がこの魔光砲です」

「……? 見た目は普通の魔光砲だが……?」

「見た目だけです。中身は全くの別物ですよ。

 この魔光砲の名は『レフュリシアン20mm魔光砲』。発射の際に()()()()()()()()()実に画期的な、メテオスせんp、ローグライダー大魔導師の血と汗の結晶なのです!!」

「なっ!?」

 

 それを聞いた瞬間、レッタルの脳内にある1つの記憶が蘇る。それは、とある噂。軍高官になった頃に伝わってきたある()()()()の情報。

 曰く、毎分3,000発の魔光弾を発射する。曰く、魔導電磁レーダーと連動して動き、自動で敵を捕捉して撃墜する。曰く、()()()()()()()()、一瞬で装填が完了する。轟音式対空魔光砲、通称『アトラタテス砲』の性能だった。

 そんな夢のような代物。まさか、解析に成功したのだろうか……彼は唖然となった。

 

 そして、その予想は半分正解である。かねてより解析が進められていたアトラタテス砲だが、遂に先日、対魔帝対策省、古代兵器分析戦術運用部に所属する大魔導師のメテオス・ローグライダーの手によって───本来ならば部署違いだが、そもそも古代兵器を運用することなどほぼ無いので解析もやっていた───光弾発射機構の解析が完了したのだ。

 それに伴い、一旦レーダー連動機能などはおいておき、一先ず“実弾を必要としない魔光砲”が実用化された。それがこの『レフュリシアン20mm魔光砲』である。発掘こそされていなかったが、遺跡の記述によれば魔帝も全く同じ物を作っていたらしく名前はそこから付けられた。

 エルペシオ5は本来であれば4と同じくフィルリーナ12.7mm魔光砲が取り付けられる予定だったのだが急遽こちらに付け替えられた。幸いにも双発式であるためにその出力は高く、供給しなければならない魔力なども十分に確保できたのだ。

 

「これの採用によってこの機体の発射可能弾数は格段に大きくなり、余程の超長距離飛行などを行わない1回の戦闘で少なくとも4,000発は発射可能です」

「す、すさまじいな……」

「また、上昇可能高度も向上し、高度12,000mでも戦闘が可能です」

 

 因みに本当はそれぞれ5,000発と14,000mだ。まあ、どちらにせよ反応は大して変わらなかっただろうが。

 

「し、しかし……少し過剰性能ではないか?」

「確かにグラ・バルカス相手ならば過剰でしょう。しかし、その先、対魔帝戦までを見据えれば過剰でもなんでもありません。寧ろ全然足りませんよ」

「っ!……」

 

 自分の甘い考えを窘められたレッタルは息を飲んで黙り込んだ。

 

「以上で解説を終わります。続いては実際に飛行している所を見ていただきましょう」

 

 そうして言葉による解説は終わり、次にその機体は一同が見守る中離陸していった。

 

 そのあまりの性能に、一同(2人除く)の顎が外れそうになったのは言うまでもない。

 

 

 

 そして、その1週間後。時に中央歴1643年1月16日。哨戒機よりある通信が入った。

 

 

『敵艦隊、発見』と───




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