【本編完結】つよつよ神竜イルクスさん   作:デュアン

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第三次イルネティア沖大海戦(前編③)

 時は再び遡り、ライカとイルクスが敵航空母艦を撃沈したのと同時刻。イルネティア島沖南東部の空を1隻のパル・キマイラが飛行していた。目標は勿論、その方角より接近中の敵艦隊である。

 これをその艦隊───第三先遣艦隊は発見。第二先遣艦隊と同じく航空機隊には接近しないよう指示し、超重爆撃連隊への攻撃要請を出した。

 

「敵艦隊より発艦した航空機隊、本艦を避けるような進路を取っています」

「何?」

 

 そして、1号機と同じ様にそれを察知する。

 それを受け、艦の操作、技術監督を務めるコルメドは同じ様な事を言った。

 

「きっと本艦を恐れているのでしょう。気にする必要はありません。時代遅れの帆船が沈むだけです」

 

 彼はやや侮蔑にも似た口調で言う。

 後方にいる艦隊は各文明国の艦隊であり、その全てが戦列艦だ。そんな艦隊が帝国の航空機隊に襲われて耐えられる訳がないのだ。

 

 だが、そんな彼に対し、艦長を務めるメテオス・ローグライダーは言う。

 

「……おかしいねぇ」

「……? 何がですか?」

「この状況が、だよ、コルメド君。本艦は未だ、()()()()()()()()()()()

「は、はぁ」

 

 彼は顎に手を当て、俯いて考え込む様な素振りをしながら話し続ける。

 

「人は未知の物を恐れる。が、同時にその未知を()()()()()()()()()()()()()生物なのだよ」

「だから、1機も寄越さないのはおかしい、と?」

「そもそもここは戦場だ。この戦艦に神竜の様なレーダー遮断機能は付いていないからねぇ。敵の対空レーダーにはくっきりと直径260m分の未知の反応が現れているだろう。

 そんな状況で何も知ろうとしないのは余程の愚か者か、もしくは……」

 

 そこまで言い終わった時、対空魔導電磁レーダーを眺めていた魔導師が無感情な声で告げる。

 

「レーダーに感。10時の方向より接近してくる物体あり。高度5,000、速度760、距離130NM、数100」

 

 彼はその報告に顔を上げ、モニターを睨み付ける。

 

「……それが()()()()()()()()である場合のみだよ。超望遠魔導波検出装置を作動させ、その敵機を映したまえ」

「了解しました」

 

 その指示で、向かってきている航空機隊の姿が映し出される。

 遥か百数十km先もの物体をも鮮明に映し出す神代の技術は、天使(飛行戦艦)を喰らわんとする悪魔(グティ・マウン)の姿をくっきりと投影した。

 

 6基のエンジンを翼下に提げる巨大な機は、明らかに高度5,000m程度に収まる様な機体では無いように思えた。

 

「な……」

「こ、これ程の……」

 

 映像を見た艦橋の面々は口々に驚きの声を発する。

 

 現在、神聖ミリシアル帝国で運用されている天の浮舟の中で最大の機体は、旅客機である『ゲルニカ35型』の23m。テスト飛行が終わり、量産体制に入っている新型大型爆撃機『L-14』でさえ32mである。それに対し、グティ・マウンの全長は46m。約1.5倍である。

 

「ふむ、どこから存在が漏れたかは分からないが、どうやら対策を練ってきた様だねぇ」

「た、対策? 本艦は無敵の筈では?」

「馬鹿は程々にしたまえ。こちらの対空兵器はアトラタテス砲だけなのだよ? 敵機が高度10,000mから爆撃を行うとして、それを防ぐ力はこちらには無いよ」

「そ、それ程の高高度爆撃など当たる筈が」

「あれ程の巨体ならば、500kg爆弾ならば30から40発は入るだろう。それが100機。少なく見積っても3,000発もの爆弾の雨が降る訳だ。それ程投下すれば10発くらいなら当たるだろう。そして、1発でも当たれば液体魔石とジビルを満載している本艦はボカン、だ。パル・キマイラのシールドが想定しているのはあくまでも対空兵器だからねぇ」

「───っ!!?」

 

 メテオスは、長い研究で培った観察眼で敵機を分析する。

 そして、窘められたコルメドは目を見開き、続けて顔を青ざめさせる。それは他の乗員も同じだった。

 

「で、では一体どうすれば」

「コルメド君、落ち着きたまえ。()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

「パル・キマイラ2号機、ローグライダー艦長より通信! 『本艦は敵大型爆撃機に狙われている、至急神竜による救援を求む!』です!」

 

 

 

『こちら司令本部! ルーリンティア竜騎士、ただちに南東方面へと向かい、パル・キマイラ2号機の救援に向かえ!』

 

 

 

「了解しました、直ちに向かいます。行くよ、イルクス!」

 

 

 

 この判断が、運命を分けた。

 

 

───────

 

 

 かつて列強として名を馳せ、現在ではグラ・バルカス帝国の植民地と成り下がったムー大陸、レイフォル。

 それより西方のとある空域を、100機もの編隊が飛んでいる。勿論全機が帝国の誇る───機密である為一般には知られていないが───超重爆撃機、グティ・マウンだ。

 

「敵艦との距離60,000!」

「いよいよか……」

 

 超重爆撃連隊第二攻撃隊の隊長であるクルスフは呟く。だが、彼はそれ程緊張はしていなかった。何せ、つい先程第一攻撃隊より空中戦艦撃沈の報告が届いたからだ。

 我々の刃は敵に届く、それだけで随分と緊張が和らいだ。

 第三先遣艦隊に接近中の敵艦隊より多数の航空機(飛竜)が飛んではいたが、その何れもが速度300km/h程度であり、恐れる必要は何も無かった。

 何せ、今我々は高度11,000を飛んでいるのだ。先に片方が撃沈された事もあり、敵が迎撃機を向かわせてくるかもしれないという懸念から高度を予定より上げていた。

 高度11,000m。これ程の高度を飛べる戦闘機は、帝国海軍においてはカノープスしかいない。

 唯一気がかりな神竜も、第一先遣艦隊より本隊へと向かったとの報告があった。

 

 ……因みにだが、この時、1号機が撃沈した事は司令部には伝わっていなかった。

 第二先遣艦隊へと向かっていたミリシアル地方艦隊、及びムー国艦隊のレーダーからは消えていたのだが、戦艦の詳細を知る者が誰もおらず、レーダーから消失したのも()()()()()だと思い込んでしまっていたのだ。

 ()()魔法帝国の超兵器なのだ。その位は出来るのだろう、と。

 その為、撃沈を知るのはムー国航空隊が海面に浮かぶ残骸を発見してからになる。

 

 

「よし、訓練の成果を見せる時が来たぞ!!」

「「「おおおお!!!」」」

 

 そんな事はさておき、厳しい訓練の日々が、ようやく報われるのだ。乗員は一層奮起し、敵空中戦艦との対峙に備えていた。

 

 

……対空砲手が叫ぶまでは。

 

 

「後方上空に敵機!!!」

「はあ?」

 

 その声に、クルスフは間抜けな声を上げる。

 

「とぼけるな。俺達は今高度10,000を飛んでいるんだぞ」

「し、しかし隊長!」

「しかしもヘチマもあるか。俺達よりも高く飛べる敵機なんてある筈がない!」

 

 慌てる彼を窘めながら、窓より空を見上げるクルスフ。だが、次の瞬間。その表情は驚愕へと変わった。

 

 何故ならば、太陽を背にして白銀の竜がこちらへと急降下してきていたからだ。

 そして、その竜と目があったと思った瞬間、彼の意識は永久に途絶えたのだった。

 

 

 猛烈な対空砲火が打ち上げられる。目標はたったの1騎だけ。しかし、その1騎に既に5機もの超重爆撃機が墜とされていた。

 綺麗な編隊を組んでいるのも不味かった。

 神竜が光線を放ちながら首を上げる。瞬間、その先にいた3機の機首とその後方が断ち切られ、爆発した。

 

 艦隊の全力の対空攻撃すら無傷で凌いできた彼女らにこの程度の攻撃が通じる筈もなく、100機もの超重爆撃機は神竜に傷1つ与える事も出来ずに全滅した。

 

 

 その後、特に妨害を受ける事もなく進行を続けた2号機によって、第三先遣艦隊は全滅した。

 

 そして、その直後。司令本部より通信が入る。

 

 

「は……今、何を……」

『ムー国航空隊が海上に浮かぶ1号機の残骸らしき物を発見した……よって、これよりムー国艦隊及びミリシアル地方艦隊は敵艦隊との交戦に入る。それにより、2号機は……』

「そ、そんな……」

「パル・キマイラが沈むなど!!?」

 

 その言葉に、艦橋は騒然となる。

 中でも、メテオスの狼狽える様は他と比べても歴然であった。

 

「お、おおおおお、おおおおおおおお……おおおおお」

 

 狼狽は2分間たっぷりと続いた。

 

「そ、そんな、私は、私は皇帝陛下に何とご報告すれば……」

 

 彼はワールマンの愚かさが信じられなかった。慢心によって貴重な艦を潰した彼の行動が、思考が、その全てが信じられなかった。

 

 そして、この時点でパル・キマイラの作戦は終了となる。もし1隻でも沈む様な事があれば即帰投せよ、との命令が下っていたからだ。

 

 怒りと絶望の混ざり合った表情をした彼を乗せ、パル・キマイラ2号機はミリシエント大陸へと舵を切るのだった。




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ノーン!イルネティアノシンガタキダ!


ライカ&イルクスによる超重爆撃連隊の料理はバッサリカットです。どうせ一方的に斬られていくだけなので……
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