【本編完結】つよつよ神竜イルクスさん   作:デュアン

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世界のニュース(後編)

───第1文明圏。中央世界とも呼ばれるそこには2つの列強国が存在する。

 1つは言わずもがな、自他ともに認める世界最強の国、神聖ミリシアル帝国である。

 かの国はラヴァーナル帝国の遺跡を解析、複製し、世界の如何なる国であっても追従を許さない技術力を手に入れた。グラ・バルカス帝国にも最も警戒すべき相手だと認定されている。

 

 そして、もう片方の列強国は中央世界の、更に中央に存在する。

 日本国の四国程の面積の国土に、竜人族のみで構成された人口およそ100万人程度の国。

 人口、国力共に下手な文明圏外国よりも少ないその国は、しかし世界の五大国、列強の第3位として数えられていた。

 

 その国の名は───

 

 

〈中央世界 エモール王国 竜都ドラグスマキラ〉

 

 船の走る砂漠を抜け、針葉樹の山脈も抜ける。

 北壁である霊峰アクセン山脈から湧き出て、神聖ミリシアル帝国の帝都ルーンポリスまで流れる大河の水源近くに、この王国の竜都ドラグスマキラは存在する。

 

 そのドラグスマキラ北部、王の座す城、ウィルマンズ城のとある部屋にて、彼───王国の外交担当貴族、モーリアウルは食事をとっていた。

 本日の食事は、大河に生息する巨魚エルジュラームを竜都近郊の森で採られた山菜と共に蒸した料理である。

 彼はそれを2m近い巨躯に見合う大きな手で食べながら、ミリシアルより輸入されたテレビを観る。

 普段は他種族を見下しがちな竜人族であったが、この様に画像を動かす技術は素直に感心せざるを得なかった。

 

 今は、制作した美容液の小瓶1つが金10gと同じ価値であるという魔導師の紹介が流れているが、正直彼には興味が無かった。

 そこで電源を切ろうとした時、新たなニュースが流れてくる。

 

 それは、イルネティア王国という文明圏外国が、グラ・バルカス帝国という同じく文明圏外国を返り討ちにしたという内容であった。

 所詮は文明圏外国同士の小競り合い。誇り高き竜人族である彼にとっては取るに足らない事であった。

 

 

『はーい! 僕がイルクスでーす!』

 

 

 だが、次の瞬間。1人の少女が画面に映った所で、彼のそんな思考は吹き飛んだ。

 彼は画面に見入るあまり食事の手を止め、それどころか掴んでいた魚の身を落としてしまう始末。

 口をぽかんと開け、微動だにしないその姿は、普段の彼を知る者が見れば思わず笑ってしまうであろう、そんな滑稽な物であった。

 

 腰まである長い白銀の髪。アメジスト色の美しい瞳に、エルフの様な長い耳とエルフ顔負けの白い肌。

 頭に髪をかき分けて生える2本の角、背に生える一対の翼、背中下部から尻、そこから伸びる1.5m程のこれまた美しい、白銀の鱗に覆われた尻尾。

 

 そのどれしもが、彼の心を刺激した。

 色恋沙汰には無縁であった長い生涯。それにうつつを抜かし、仕事に身が入らなくなる同僚も多く見てきた。

 そんな彼らを彼は全くもって理解出来なかった───この時までは。

 

 

「……美しい……」

 

 

 思わずそんな言葉が口から漏れてしまう。

 この瞬間、彼の視界に色が付いた。そんな気がした。

 

 

『イルクスは、あの神竜なんです』

 

「───!!? んぐっ、げほっ、げほっ!」

 

 

 しかし、次に人間の少女から放たれた言葉で、彼は思わずむせる。

 見入るあまり、食事中でしかもまだ食物が口の中に入っているのだという事を忘れてしまっていたのだ。

 

「し、神竜!!!?」

 

 彼は我に返ると勢いよく立ち上がり、テレビへと飛びつく。

 

 エモール王国は、かのインフィドラグーンの生き残りの竜人族達が集まって建国された国である。

 その為、インフィドラグーン時代に強力な戦力として君臨し、そして竜神の眷属でもある神竜は、エモール王国人にとっては言わば御神体の様な存在なのだ。

 

 そんな神竜が、今画面の向こうに居る。その事実は、彼を動揺させるには十分であった。

 

「そ、そんな、そんな馬鹿な!!?」

 

 彼には理解出来なかった。

 何故竜神の眷属である神竜がこのエモール王国でなく、文明圏外国なんぞに居るのか。

 欺瞞ではないかとも思ったが、今画面でやっている様な、船を単独で持ち上げるなど神竜にしか出来る筈がない。

 

「と、とにかく伝えねば!!」

 

 彼は食事もそのままに部屋を飛び出すと、竜王ワグドラーンの部屋へと向かったのだった。

 

 

 

 その後、彼よりその事を聞いたワグドラーンは即座にイルネティア王国へと使節を派遣する事を決定。

 その使節は本人の希望もあり、そもそも外交担当貴族であるモーリアウルが任命された。

 

 そして、任命された彼は早速王国へと向かう───事はせず、魔信機にてとある場所へと連絡を行う。

 

 

「おお、我だ。モーリアウルだ。早速だが、貴国もイルネティアへと使節を派遣するのだろう? ならば、その機に我らも同乗させてもらいたい」

 

 

───────

 

 

〈中央世界 神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス〉

 

 この日、帝都ルーンポリスにあるアルビオン城は大騒ぎであった。

 その理由はただ1つ。つい先程行われた放送の内容である。

 

 

───これまで一切姿を見せなかった神竜が、突然、それも文明圏外国に現れた。

 

 この事実に国の上層部は驚愕した。

 そこで件のイルネティア王国について調べてみると、興味深い記事が見つかった。

 

 

『王国初の風竜騎士、初参加の飛竜レースにて堂々たる優勝!!』

 

 

 過去に行われた飛竜レースについての新聞記事である。

 確かに、帝国でも文明圏外国にて風竜を従えた者がいる事は把握していた。しかし、特に疑問は感じなかった。同じく文明圏外国で風竜を使役している国は存在していたからである。

 

 だが、その新聞に載っていた写真を解析した所、どうも通常の風竜とは少々、いや全く違う。色も角の形も翼も。寧ろ、何故これまで気付かなかったのか、それが不思議でならなかった。

 

 音よりも速く飛び、魔帝の使用した様な魔導電磁レーダーの真似事が出来、更にそれを妨害する事も出来る。

 強力な光線を放ち、海中をも飛べ、果ては誘導魔光弾まで撃てる。

 その様な出鱈目な存在を放置しておける筈がなかった。もし解析する事が出来れば、帝国にとって大きなプラスとなる。

 特に魔導電磁レーダーと誘導魔光弾については帝国でも解析が難航しており、いつ魔帝が復活するか分からない現状、一早い解析が求められていた。

 

 この事実を知ったミリシアル8世は即座にイルネティアへと使節を送る様指示。

 そのメンバーには外務省外交官であるフィアーム、そしてその場で神竜についてある程度調べられるよう、魔帝対策課より大魔導士であるメテオス・ローグライダー、その他数人が選ばれ、いつもの如くゲルニカ35型にて向かう事となった。

 

 

「……全く、何故世界第1位の国たる神聖ミリシアル帝国が、わざわざ文明圏外国の小さな島国に赴かなければいけないんだ」

「フィアームさん、それ日本の時も言ってましたよね」

「うぐ……だ、だが今回は正真正銘、本当の文明圏外国なんだろう?」

「まあそうですけど……」

 

 フィアームとその部下が話す。彼女は、世界一の超大国である神聖ミリシアル帝国の外交官である自分が、わざわざ文明圏外国のイルネティア王国に行かなければいけない事に少々苛立っていた。

 彼女自身は優秀な外交官ではあるのだが、やはり文明圏外国に対してはかなりの偏見を持っているのだ。まあ、それは文明国全ての住民に言える事なのだが。

 

 そんな彼女だが、先日同じく文明圏外国である日本国に派遣された。

 あの列強4位のパーパルディア皇国を下した国である。

 

 そこで彼女はいつもの様に苛立ちながら向かい───そして圧倒された。

 音よりも速く飛ぶ戦闘機、ミリシアルのどんな建物よりも高い高層ビル、スマートフォンという超高性能端末、時速300kmで走る鉄道……そのどれもが、祖国を上回っていた。

 それで彼女のプライドは全て打ち砕かれたと思われたのだが、やはり染み付いた物というのはそう簡単には抜けないらしい。

 

 

 一方、彼女の反対側の窓際の席には白髪の中年の男が頬杖をついて外の景色を見ていた。

 彼は今回神竜解析の為に派遣された大魔導師、メテオス・ローグライダーである。

 普段は魔帝の遺跡、兵器を解析している彼は、その頭脳を評価されて今回の前代未聞の使節団に抜擢されたのだった。

 

「風竜……」

 

 そんな彼の視線の先の滑走路には、ワイバーンとは少し違う飛竜が座っていた。

 それに乗るのは、鱗の生えた青白い肌、赤い髪と瞳、そして頭に生える角が特徴的な種族、竜人族である。

 

 彼は何故風竜、それも恐らくはエモール王国の騎士団の者が、何故ここに居るのかを考えて───とはいっても殆ど予想はついていたが───いた。

 

 

「それにしてもまだ出発しないのか? もうかれこれ1時間は経ったぞ」

「さあ……機長に聞いてきましょうか」

「ああ、そうしてく───」

 

 

 と、部下が立ち上がろうとしたその時であった。

 

 

 

「ふむ、間に合ったな」

 

 

 

 豪華絢爛な装飾品を着けた竜人が機内へと入ってきたのは。

 竜人族は装飾品で身分を表す。分不相応な装飾品を着ければ罰せられる為、この者は相当に高い身分の者だという事が分かる。

 

 そして、彼女達には彼にとても見覚えがあった。

 

 

「「も、モーリアウル殿(様)!?」」

「……おお、やはりか」

 

 

 2人が驚く中、メテオスは予想が当たった事に少しだけ頭を痛くするのだった。




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一応言っておくと、モーリアウル殿はガイアらないのでご安心ください
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