【本編完結】つよつよ神竜イルクスさん   作:デュアン

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レイフォル解放作戦 -最後の都市レイリング-

〈中央暦1643年6月12日〉

 

「前方左の建物の中に敵兵! リーリャさん気を付けて下さい!」

「分かってるわよ! そっちこそ撃ち漏らさないでよ!?」

「分かってます……よッ!」

 

 レイフォリアより東方に行くこと450km。西を森、南を川、北と東を山脈に囲まれたこの地にはレイリングというレイフォル第二の規模を誇る都市が存在する。

 西にある森と森の間にはアルマイ平野があり、グラ・バルカス帝国はそこに要塞を設置する事でこの都市そのものを基地と化した。

 だが、その地下要塞ラテ・アルマイは陥落した。最早障害は消えたミリシアル・ムー連合軍は一路レイリングへと向かい、現在に至る。

 

 今、この街には帝国軍が立て篭もっている。レイリング駐屯地は既に空からの攻撃で破壊され、生き延びた兵達が市街戦へと持ち込む為に逃げ込んだのだ。

 連合軍とて純軍事施設である要塞や基地などは容赦なく空爆出来るが、流石に都市に対して攻撃は出来ない。

 その結果、帝国軍人の思惑通り市街戦が発生したのである。尤もその形態は彼らの想定していた物とは違うだろうが。

 

「今っ!!」

「はい!!」

 

 青年が窓へ向かって銃撃し、そこに潜んでいた帝国兵士の身体を撃ち抜きそのままの勢いで内部に突入する。

 

 現在、この街では()()()()()()()が建物の間を縫う様にして()()()()()()()

 この2人───アガルタ法国に所属する魔導師のリーリャと神聖ミリシアル帝国軍の兵士であるヴィリアスもその中の一つであり、彼らは今、箒で飛んで建物内部に居る敵を掃討していた。

 ワイバーンよりも魔力効率は悪いが小回りが聞き、尚且つ小さい箒はこうして市街戦で役立っていた。

 

「なっ!? ほ、ほうぐぇッ!!?」

「な───がっ」

 

 突然箒に跨った男女が突入してくるという非現実的な光景に、内部に更に潜んでいた帝国兵は一瞬怯んでしまう。

 その一瞬を見逃す筈もなく、リーリャが箒の先端で兵士の喉を突き、ヴィリアスが拳銃でもう片方の兵の頭を撃ち抜く。次に喉を押さえて藻掻く兵に発砲してトドメを刺し、一先ずその部屋の制圧を終える。

 

「目ェ瞑りなさい! 『光の精霊よ、我に応えよ』!」

 

 窓ガラスが割れる派手な音を聞き、帝国兵がドタドタと廊下を駆けてくる。それを察知し、リーリャは箒を両手に持ち詠唱を始める。

 そして、ヴィリアスが目を閉じ、けたたましい音を立てて扉が開かれた瞬間───

 

「『閃光(フラッシュ)』!!」

「お───がっ!?」

「ぐぁっ!!?」

 

───箒の先端から激しい閃光が放たれ、帝国兵の目を潰す。

 堪らず目元を押さえたその隙を見逃さず、ヴィリアスはナイフを抜き彼らの喉元を斬る。彼らはその場に崩れ落ち、暫く痙攣した後に動かなくなった。

 

 そして、2人は部屋を出て別の部屋へと行く。そこで何度か同じ様に戦闘を行い、2人はとある部屋に辿り着く。

 その部屋の扉を挟み、2人は何度かアイコンタクトを交わす。そして扉をまず少し開け様子を窺う。

 

「「っ!!」」

 

 次の瞬間、けたたましい発砲音と共に扉に幾つもの孔が空く。安易に扉を開いていれば即死だっただろう。

 それを見た彼女は彼へ耳を塞ぐ様合図を送り、自らは小声で詠唱を行いそして甲高い音を発生させる。

 耳を塞いでも尚聞こえるその音が起こり、内部からくぐもった呻き声がしたと同時に彼は内部に突入、そこで耳を押さえる数人の帝国兵を撃ち抜き絶命させる。

 

「くっ……テメェ……!!」

「っ!! しまっ───」

 

 だが、彼は1人を見逃してしまった。偶然扉のすぐ隣に居て凶弾を免れた兵士が彼に向かって銃口を向け───

 

「ガッ」

「あ……」

 

───次の瞬間、彼の喉から剣先が飛び出した。兵士は目を見開き何度か口を動かした後、その場に崩れ落ちてぐったりと動かなくなる。

 

「全く……あんたはもう少し周囲を見なさい」

「り、リーリャさん……」

「でも……よくやったわ」

「! ありがとうございます!!」

 

 それを行った者───リーリャは、はあ、とため息をつき剣に着いた血を拭う。

 助けて貰った事に意気消沈し、しかし直後に柔らかな笑みで褒められた彼は喜びから思わず彼女へ抱き着いてしまう。

 年端もいかぬ少女に抱き着く青年。見た目はアウトだが彼女はエルフであり人間のヴィリアスよりも実年齢は上なのでセーフである……本人が良いとは限らないが。

 

「ちょっ、近い……近いわよ!!」

「ぐえっ」

「あっ、やば、箒で殴っちゃった。先に一言くらい言いなさい! 全くもう……だ、大丈夫? ちょっ、ひ、『治療(ヒール)』! 『治療(ヒール)』!!」

 

 

 

『こちら司令部。飛行魔導師戦隊は一度集結し、合図と共にレイリング中央にある町役場へと突入せよ』

「了解。こちらリーリャ。全機に通達、病院屋上に一度集結!」

『こちらレックス小隊、了解!』

『こちらリアフィス小隊、了解』

 

 彼女が魔信に話しかけ、それに応える様に他の隊長達から通信が入る。

 

「ヴィリアス! あんた今の話聞いたわよね、突入するわよ!」

「了解ですリーリャさん! 任せて下さいよ!」

 

 頭にタンコブを作ったヴィリアスが彼女の声に応えサムズアップする。

 

 その後、病院の屋上に箒の部隊───飛行魔導師戦隊は集結した。

 眼下の道路では連合軍の戦車や魔導兵が、敵兵が集まっていると思われる町役場へ向かって進んでいる。あれが突入した後に彼女らも上階の窓から侵入するのだ。

 やがて陸軍が突入を開始し、激しい銃撃戦が繰り広げられる。

 

『こちら司令部。突入を開始せよ』

「了解。全員気張りなさい!!」

「「「了解!!」」」

 

 そうして、皆が浮かび上がり町役場へと飛んでいく。

 

 

 窓に向かって突撃していき、それに気付いたらしい帝国兵が慌てた様子で自動小銃で迎撃してくる。

 

「ぎゃあっ!?」

「くっ……」

 

 リーリャの隣で飛んでいた魔導師が胸を撃ち抜かれ、制御を失った箒は後ろに乗っていた兵士の悲鳴と共に地面へ墜落していった。

 それを苦々しく見つめる彼女の後ろで、ヴィリアスは拳銃で狙いを定め、迎撃してくる敵兵に向かって発砲する。4発撃った所で命中し兵士はその場に倒れる。迎撃が弱まった事で進行が速まり、数機数を減らしつつも飛行魔導師戦隊は町役場に突入した。

 

 彼女らは箒に乗ったまま廊下を爆走していく。道中発見した敵は撃ち殺すか箒で体当たりして倒していき、そうして内部を制圧していった。

 一方、下層でも魔導兵による攻略が進められ、上部と下部からの同時攻撃により呆気なく町役場は制圧される。これによりレイリングは完全に連合軍の手に落ちた事になる。

 

 

 そして、レイリングが陥落した事により、中央歴1643年6月12日。この日、長らくグラ・バルカス帝国の占領下にあったレイフォルは解放された。

 圧政に苦しんでいた旧レイフォル国民達は歓喜に沸き、逆に生き残ったグラ・バルカス帝国人はその大多数が迫害を恐れて国外逃亡を選ぶ事になる。

 

 ともかく、ここに第二文明圏内の帝国勢力は完全に駆逐されたのである。




この2人は多分もう出てきません

つよイルのキービジュアル的なアレです(背景は未定)

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