【本編完結】つよつよ神竜イルクスさん   作:デュアン

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※今話には深刻なキャラ崩壊があります。全国1000万のモーリアウルファンの方はブラウザバックをお勧めします


目覚めし竜人

 機内に上がり込んできた男、その正体はエモール王国の外交担当貴族、モーリアウルその人であった。

 事前に何も知らされていなかったフィアームとその部下は驚愕で目を見開き、普段はこの様な場所に来る事のない風竜騎士がいる事で薄々察していたメテオスは苦々しい顔でこめかみを押さえる。

 

 そんな彼らを置き去りに、モーリアウルの部下達が次々と乗り込み座っていく。

 

 

『まもなく離陸致します。シートベルトの着用をお願い致します』

 

 そして、彼らが乗り切ったと同時にそんな機内放送が流れる。どうやら、機長達にはこの事は知らされていたらしい。

 そうだったのなら、先に教えてくれればいいのに、フィアームは心の中で愚痴る。

 

 

 そんな彼らを乗せ、ゲルニカと風竜騎士2騎は大空へと飛び立つのだった。

 

 

 

「……も、モーリアウル殿は何故この機に……?」

 

 意を決したフィアームがモーリアウルに話しかける。

 自分よりも体格も地位も遥かに高い人物。そんな人物を前にして、彼女のエルフ特有の長い耳は垂れ下がっていた。

 

「本来は便乗など我らのプライドが許さぬのだがな。今回は迅速に事を進める必要があった為に致し方なく、だ」

「な、なるほど」

 

 竜人族はかの光翼人に負けず劣らず、他種族への差別が酷い種族だ。奴隷にしようなどとしない分、光翼人よりかは多少はマシなのだが……。

 なので、竜人族をエモール王国以外で見る事は殆どない。その高いプライドが、他種族と混ざって住む事を許さないからだ。せいぜいトルキア王国に少数暮らしているのみである。

 

 そんな彼らの国には天の浮舟が無い。理由は単純で、領土の殆どが山か深い森であり、飛行場を造れるだけの用地が無いからだ。

 なので王国の外交官などが遠方へと向かう際には、必ずミリシアルの天の浮舟をチャーターする。

 だが、それにはどうしても時間がかかる。それならば、確かに便乗した方が速いだろう。

 

 

 しかし、神竜というのは霊峰よりも高い竜人族のプライドをも曲げさせる程の存在だというのか。

 そう考えると、彼女は少し興味が湧く。

 

 

「あの風竜は護衛ですか?」

「うむ。第2文明圏ではグラなんとかという蛮族が暴れていると聞く。念の為だ」

「まあ、風竜に勝てる訳が無いですからね……」

 

 風竜は、この世界最強の航空戦力である。

 最高時速は約500kmと、帝国の誇る最新戦闘機『エルペシオ3』の570kmにはやや劣るが、その機動力は凄まじく、過去に演習を行った際にも旋回能力に劣るエルペシオは風竜に翻弄され、次々と撃墜判定を食らっていた程である。

 

 たった2騎とはいえ、そんな風竜がいるのだ。護衛には十分な戦力であった。

 

 

───────

 

 

『まもなく、本機はイルネティア王国に到着致します───』

「ううーん! ようやくか……」

 

 フィアームは腕を伸ばし、長く座り続けた事により凝り固まった身体を解していく。

 

 燃料である魔石補給の為に道中何度か着陸し、2国の外交使節を乗せたゲルニカはようやくイルネティア王国へと到着しようとしていた。

 

 

『王国より連絡があり、飛竜が1騎、歓迎の為に本機の周囲を飛行する様です。襲撃ではないのでご安心下さい』

 

 

 機内放送。その内容に、フィアームは酷い既視感を覚えた。

 

「……前も同じ様な事があったような……」

「そうですね……」

 

 前は、確か飛行場への誘導だったか。

 そう、あの時も同じゲルニカに乗っていて、ふと窓の外を見たら───

 

 

───直後、窓の外を白い物が通った。

 

 

「「なっ!!?」」

「「やっぱり……」」

 

 何となく予想がついていた2人はため息をつき、これ程の速度の物を初めて見たメテオスとモーリアウルは驚愕する。

 

「す、素晴らしい!!」

「これが……神竜か」

 

 その次に、モーリアウルの方は目を輝かせながら言い、メテオスの方はうわ言の様に言う。

 

 ゲルニカは、神竜イルクスに歓迎されながら飛行場へと着陸するのだった。

 

 

 

「神聖ミリシアル帝国、そしてエモール王国の方々、ようこそいらっしゃいました。私がイルネティア王国国王、イルティス13世でございます」

「ふむ、御苦労」

「いやはや、国王直々に歓迎して頂けるとは。このフィアーム、感激でございます」

 

 ゲルニカより降りた使節達を待っていたのは、イルネティア王国国王その人であった。

 いくら相手が大国とはいえ、一外交官に対して国王が出迎える。それにモーリアウルはさも当然かの様に接し、フィアームは恐縮した様な反応を見せる……表面上は。

 

「(そうそう、これだよこれ! これぞ文明圏外国のあるべき姿だ!)」

 

 彼女はその姿を見て、前回日本へ行った時に粉々に打ち砕かれたプライドを治癒させる。

 

 

 彼女がそういう訳で悦に入っていると、隣の滑走路に白竜が着陸する。

 その動作は淀みなく滑らかで、それだけで竜騎士がかなりの技量を持っている事が分かる。

 

「おお!!!」

 

 その姿に、モーリアウルが歓声を上げる。

 

「そして、こちらが我が国の誇る竜騎士ライカと神竜イルクスで」

「神竜"様"であろう無礼者!」

「……神竜イルクス()でございます」

 

 彼女らを紹介しようとして、彼に怒鳴られたイルティス13世は表情を変えず───内心では彼を殴り倒して───呼び名を変える。

 相手は列強第3位。下手な事をすればグラ・バルカスが来る前に国が滅んでしまう。彼は込み上げる怒りをぐっと抑え込んだ。

 

 そんな彼を一瞥もせずに、イルクスの元へと駆けるモーリアウル。

 今イルクスからはライカが体を固定する為のベルトを外して降りている所だった。

 

 

 そして、そんなイルクスの元へと来た彼は、言った。

 

 

「こら!! さっさと神竜様から降りんか小娘!! この御方は貴様如きが乗って良い様な存在ではないのだぞ!!」

 

 

 次の瞬間には、彼は竜人形態になったイルクスによって殴り倒されていた。

 

 

「「「モーリアウル殿ぉぉぉぉぉ!!!!!???」」」

 

「ライカをバカにしないで!!」

 

 

 滑走路に倒れるモーリアウル、驚愕する使節団と国王達、そして鼻息を荒らげながら彼に言い放つイルクス。

 

「?????」

「ちょ、ちょっとイルクス!!」

 

 何故殴られたか分からない、といった様子で殴られた頬を触り困惑する彼を横目に、慌てて止めに入るライカ。

 その前方では、国王達が顔を蒼白に染めている。

 

「止めないでライカ!」

「わ、私は何も思ってないから! この人達はその……そういう種族なだけだから!!」

「じゃあ尚更叩き直した方が良いんじゃないの?」

「ブフッ」

「そうかもし、じゃなくて! た、例えそうでも人は殴ったらダメだよ!!」

 

 地に伏す竜人について口論を交わす2人。その途中にて的を得た言動が飛び出して思わず吹き出してしまうフィアーム。

 

「と、とにかく謝って。ほら、ごめんなさいって」

「むー……ごめんなさい」

 

 宥められ、一先ずは怒りを抑えたイルクスが非常に不機嫌そうな表情にて頭を下げる。

 

 そんな様子に、彼は列強国の、そして竜人族としてのプライドを背負い、怒り狂う───

 

 

「……素晴らしい……」

 

 

「「……え?」」

 

 

───事はなく、逆に空気に溶けてしまいそうな声でそう呟く。

 その目は今までに無い程に光を湛えており、まるでとてつもない財宝でも見つけたかの様であった。

 

「……()()()()様、ライカ殿。先程の無礼を謝罪いたします。誠に申し訳ございませんでした」

「分かれば良いんだよ」

「ちょっ、え、え?」

 

 突然態度を変えた彼にイルクスは満足し、ライカは困惑する。

 

「つきましてはイルクス様、我が国、エモール王国にお越し頂くことは出来ませんでしょうか」

「無理だよ。敵がイルネティアを狙ってるんだから」

「了解致しました。その様に本国へと伝えさせて頂きます」

 

 彼はあっさりと引き下がる。

 

 

───『神竜と会って』

   『様を付けろ無礼者』

   『神竜様と会って、どうするつもりですか?』

   『決まっておるだろう。我が国へとお招きするのだ。神竜様は人間の治める国、ましてや文明圏外国なんぞよりもインフィドラグーンの後を継ぐエモールの方が遥かに相応しい』

   『……もし、来ないと言ったら?』

   『その時は……』───

 

 

「(力ずくでも連れて来るんじゃなかったのか……?)」

 

 彼女は、ゲルニカに乗っている最中に交わされたそんな会話を思い出す。

 その時の言動と明らかに矛盾している今の言葉。それに彼女は呆然とした。

 

「も、モーリアウル様!!? よ、よろしいのですか!?」

 

 それは部下も同様だったらしく、慌てて止めに入る。

 

 だが。

 

「仕方あるまい。グラなんとかという蛮族はそれなりに強いと聞く。その様な輩が暴れている間に護るべき国から離れる訳にもいかんだろう」

「な……」

 

「(あまりにも理解があり過ぎる……!!)」

 

 普段の彼からは到底想像出来ない様なその姿。

 彼女も、彼の部下も、国王も、そしてライカも、それぞれが知っていた、もしくは伝えられていた人物像とはかけ離れたその姿に困惑するのだった。




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メテオス「なんだコイツら……」
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