【本編完結】つよつよ神竜イルクスさん   作:デュアン

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ベルーノの受難

〈イルネティア王国 港湾都市ドイバ〉

 

「これは……」

 

 未だ艦砲射撃による破壊の痕が生々しく残る港湾都市ドイバ。その港にて、1人の男がプルプルと震えていた。

 彼の名はベルーノ。神聖ミリシアル帝国の技術研究開発局開発室長であり、今回、鹵獲された巨大戦艦を見る為に使節団に加わっていた。

 先の放送を彼は観ており、その大きさは概ね把握していたのだが……。

 

 

「お……大きすぎる……!」

 

 

 今、彼の目の前には繋留されているグレードアトラスターその物が鎮座している。

 その威容は、画面越しとは比べ物にならなかった。

 以前、彼は日本にてその軍事技術なども見てはいるが、それとはまた別ベクトルの、もっと分かりやすい"強さ"であった。

 これと真正面から戦える戦艦は、帝国には無い。エリア48にあるという古代兵器ならば別だろうが、あれらはまだ帝国には造れない物なのだ。

 

 グラ・バルカスはこの空前絶後の巨大戦艦を、科学技術のみで造り上げた。

 魔法と科学、違う分野ではあるから一概に比較は出来ないだろうが、少なくとも大口径砲を作るという技術において、ミリシアルはグラ・バルカスに負けている。

 

「この短期間で我が国を超える技術力を持つ国が2つも……それもどちらも科学文明国か……、どうせなら魔法文明国ならば良かったものを……」

 

 それならば、我が国も参考に出来るのに、彼は思った。

 

 神聖ミリシアル帝国は自他ともに認める"世界最強"だ。しかし、それはラヴァーナル帝国の技術を発掘し、それを複製したからである。その為、帝国は"自力で開発する"能力に欠けているのだ。

 その問題点はベルーノも理解している。だが、古代兵器はあまりにも高度な技術が用いられており、理解する前に複製が完了してしまうのだ。だから、理解されないまま次の技術へと進んでしまう。

 

 これまではそれで良かった。しかし、これからはどうだろうか。

 

「せめて、何か技術の新しい方向性でも示してくれる様な物があれば……」

 

 彼はため息をつく。

 

 

 次に乗ったのは、キャミス・ミナー級駆逐艦という名の小型艦だ。

 主砲は長砲身の10cm連装砲4基と、帝国の小型艦の標準口径である12.7cmよりかは小さいが、数が多く、また長砲身の為に射程も長そうだ。

 ミリシアルの、魔法技術によって造られた先進的なデザインではなく、科学技術によって造られたどこかごちゃごちゃとしたデザイン。ムーの船を進化させればこうなるのだろう、そう感じさせる。

 

「あの装飾は一体……」

 

 そんな中、まず彼の目を引いたのは艦橋後部のマストに取り付けられた鉄製の装飾だった。

 

「何かお困りですかな?」

「あ、ニズエル殿」

 

 と、頭を捻っていた所に、イルネティア王国の将軍であるニズエルがやってくる。

 彼はニズエルに、あの装飾は何かと尋ねてみる。

 

 すると、驚きの答えが返ってくる。

 

 

「ああ、あれですか。捕虜に聞いた所、電波なる物を飛ばし、遥か彼方の物体を察知する為の装置であるそうです」

「な……そ、それではまるで」

「ええ、我らも聞いた時は驚きました……」

 

 

 彼は絶句する。

 電波を利用し、遠方の物を察知する。それは完全に、かのラヴァーナル帝国が使用していたという、『魔導電磁レーダー』の記述と一致していたからだ。

 

「ま、魔導電磁レーダーを……実用化しているのか……」

 

 それも小型艦に設置出来る程、である。

 

 目眩が止まらない。

 科学技術によって作られた飛行機械は魔力を帯びていない為、現在帝国が使用している魔力探知レーダーでは探知しづらい。その為、魔力を帯びていない物質でも探知出来る魔導電磁レーダーの実用化が急務とされていた。

 つまり、もし仮にミリシアルとグラ・バルカスが戦う事になった場合、こちらの航空機は敵に早くから察知され、逆に敵の航空機はかなり接近するまで察知出来ないという事が起こってしまう。

 

「……つ、次に行こう……」

 

 彼は一旦レーダーの事を頭の隅に寄せ、艦後部へと歩いていく。

 

 科学技術艦特有の大型の煙突の脇を通り、設置された9メートル内火艇の上を歩き、口径25mmの連装機銃も見学して、彼はまたもや不可解な物を発見する。

 それは、鉄製の台形の箱の前部と後部から4本の筒が突き出している様な形の物だった。

 

「ニズエル殿、これは……」

「これですか。確か、魚雷という兵器を発射する装置……だったかと」

「ぎょ、ぎょらい?」

 

 妙な名前の兵器が飛び出してきた。

 しかし、魔導電磁レーダーを実用化している様な国が作る兵器だ。恐らくは強力な物なのだろう。正直、そうでない方が嬉しいのだが。

 

 そして、その予想は当たってしまった。

 

 

「ええ。捕虜によれば、発射された後の魚雷は水中を泳ぎ、敵艦の喫水線下に命中、爆発して大きな孔を空けるとか」

「───!!!」

「べ、ベルーノ殿!?」

 

 彼はショックの余り甲板に仰向けで倒れ込んだ。雲1つ無い空から降り注ぐ日光が彼の顔を焼く。

 

「な、なんという事だ……」

 

 彼は寝転がったまま、呟いた。

 

 神聖ミリシアル帝国において、小型艦は随伴艦以上の意味を持たない艦だ。

 12.7cm連装砲2基に、対空魔光砲数基……哨戒艦として造られた為、たったそれだけの武装しか装備されておらず、また装甲も紙同然だ。

 だが、ムーを除けばどの文明国の艦も全てが戦列艦。その砲の精度も射程も、そして威力もこの小口径砲に負けており、これでも問題無いとされてきた。実際、無かったのだ。

 

 だが、この魚雷という兵器は、小型艦に『戦う艦』としての意味を与えられる物だ。

 水中を進み、喫水線下に大穴を空ける……上手く行けば、()()()()()()()()()()()事すら可能になる。

 

「……幸運だった。我々は、本当に幸運だった」

「べ、ベルーノ殿?」

「ニズエル殿……この艦を拿捕して頂き、ありがとうございます」

「え、ええ……」

 

 もし何も知らないで戦っていたとしよう。

 帝国の艦隊はいつも通り戦艦を中心とし、砲撃戦に移ろうとするだろう。そんな中、グラ・バルカス側から小型艦が突出してくる。

 小型艦の小口径砲では戦艦にはさしたるダメージにはならない。艦隊司令官は小型艦を無視し、敵戦艦に砲撃を集中する様命令するだろう。

 

 そしてある時、小型艦が妙な位置で反転するのだ。司令官は首を傾げるだろう。

 そのまま砲撃戦は続けられ───ある時、不意に戦艦の傍らで巨大な水柱が立つ。

 司令官は困惑するだろう。攻撃を受けてもいないのに、何故か喫水線下に大きな孔が空いているのだから。

 

 

「───っ!!!」

 

 と、そこで彼は再び閃く。

 この兵器があれば、()()()()()()()()()()()事も可能になるのでは、という事に。

 

 航空機で戦艦は撃沈出来ない。それはこの世界の常識だ。

 だが、この魚雷を小型化した物を航空機の下部にでも取り付けて水面ギリギリを飛んで戦艦に接近、ある程度近付いた所で離せば、小型艦から発射するよりも高い命中率を誇ることだろう。

 

 そして、この程度の事をグラ・バルカスが思い付いていない筈がない。

 

「……これは、報告書を書くのが大変そうだ」

 

 彼は祖国の未来の為、何としてもこれを上層部に伝える事を決意するのだった。

 

 

「あ、魚雷といえば」

「な、何ですか……」

「忘れていましたが、グラ・バルカスにはその魚雷を使い、水中から攻撃する『潜水艦』なる兵器もあるそうで……ベルーノ殿?」

 

 ベルーノは気絶した。

 

 

「ベッ、ベルーノ殿ぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 その後、なんとか目を覚ましたベルーノは、対象物に接近しただけで爆発、砲弾の破片で航空機を撃墜する近接信管や、それを発射する高角砲を効果的に運用する為の高射装置なる物についての説明を受けた。

 終わった後の彼は、始まる前から10年分は老け込んでいた。




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「ミリシアルに魚雷と潜水艦と高射装置と近接信管がインストールされました」
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