辺境のTROLL小隊 作:凹一
(1)休暇は終わりだ
『ラム、わたしと一緒に来てよ。きっと楽しいよ?』
誰が言ったのだったか。暗闇の中、私はその言葉を何度も反芻していた。いつもころころと笑っていた、あの人の声。でもどこか、悲しげな声。その声だけが、バラバラになった私を繋ぎ止める。
「OSのブートを確認。電圧コントロール順調。後は……あ、スレ立て忘れてた!」
眠りから覚めた私が最初に聞いたのは、そんな声だった。
「『【休暇は】ベテランによるメンタルモデル修復【終わりだ】 24体目』……っと」
声に耳を傾けていると、次第に体が暖かくなり、意識がはっきりしてくる。
重たいまぶたを上げると、一人の少女が私の瞳を覗き込んでいた。少し幼さを感じる顔立ち。健康的なピンクの頬。銀の長い髪。片側でワンサイドアップにしていて、前髪にはピンクのメッシュが入っている。大きくて丸い瞳は左右で色が異なり、どちらも宝石のように煌めいていた。
「お、目開いた! おーい聞こえてる〜?」
「……ァ」
少女の呼びかけに答えようとして、自分が満足に声を出せないことに気づく。
「おお! 反応あり! ナニナニ?」
「……ぁ…………ぁァ……」
返事をしようとしても、私の喉から出てきたのはかすれたノイズような音だけだった。そうしていると、また眠気が襲ってきた。私を温めていた熱が逃げていき、全身が倦怠感に包まれていく。だめだ。もう目を開けていられない。
「……」
「ああ待って! せっかく起きたんだから寝ちゃダメ!!」
少女の指が私のまぶたを無理やりこじ開ける。彼女の必死な形相が目に飛び込んできた。
少女は慌ただしく機器を操作しながら、手に持った小型端末の画面を覗き込んでいる。
「ゲインコントロールがうまく行ってないのか〜? スレのガラクタども、アドバイスプリーズ! ……『無理やり高電圧を叩き込め』? ヨシ!」
呼びかけに応えようとしない私の様子を見て、少女が何やら手元のパネルを操作しししいししし獅子しsiししししいししし市し氏ししししししいししししsisisししし四肢ししししししししししししししししいししししししししししししs
「イイイイイィいイいいいい%ぃぃイいいいいいい#いイイいい!!!?!!?」
「ほら諦めんな! もっと熱くなれよ!!」
その瞬間、背筋に凄まじい衝撃が走った。私の意思とは関係なく体が大きく反り返り、手足がピンと硬直する。首筋から注ぎ込まれる熱が身体中を狂ったように駆け巡り、その耐え難い苦痛に私は絶叫していた。それでも全身を焼くような熱が消えることはなく、逃げ場を失った熱が体の中でどんどん膨張していく。次第に目の前の景色が薄れていく。頭の中が真っ白になって──────
永遠のように感じた時間の後、私を貫いていた熱が一瞬で消え失せた。体の緊張が解かれ、手足が無造作に投げ出される。同時に灯りが消え、部屋が暗闇に包まれた。
静寂の中で、私は必死に頭を働かせていた。震える手でうなじを確かめるとナニカが接続されている。私は恐怖感にかられ、それを力任せに引き抜き、投げ捨てる。今のがもう一度来たら、間違いなく体が吹き飛ぶ。そういう確信があった。
混乱の極みにある私の傍らで、小さな明かりが灯る。携行用のランプを持った少女と不意に目が合った。ぐちゃぐちゃだった頭の中が、今度は怒りで真っ赤に染まる。
「な、ナニ!!? なんなの!!!?」
思わず少女に向けて絶叫する。すると彼女は一瞬目を丸くした後、小さく俯く。
「……キ」
「き?」
「キターーーーーーーーーーーーーーーーーーー!! 」
「えぇ!?」
少女が思いきり拳を天に突き上げる。その予想外のリアクションに私は驚き、身を竦める。
「すげーほんとに直せちゃった! どうしよう! あ、とりあえず証拠写真撮っておきましょ〜」
「え! ちょ、ちょっと……!」
「いや〜掲示板のガラクタ供もたまには役に立つじゃん!」
何がなんだか分からないまま、少女に肩を抱き抱えられ、写真を撮られる。かと思えば、彼女はニヤニヤ笑いながら手にした小型の端末を操作し始めた。自分を放って操作に集中するその態度に怒りが湧く。少女の肩に手をかけこちらに無理やり向き直させる。彼女はキョトンとした表情をした。
「ここどこ? あなたは誰?」
「おお〜そのテンプレ質問ホントに言うんだ!」
「てんぷ……?」
「でも、最初に聞くべきことはこれなんじゃない?」
私が聴き慣れない言葉に首を傾げていると、少女が続けて言った。
「私は誰? ってさ」
「え?」
そんなの──あれ?
「……え、あれ……ウソ……」
「あらら、やっぱり
信じられない、自分が誰だか分からないなんて。愕然とする私だったが、少女はにっこり笑って私の手をとって言った。
「じゃあ自己紹介からだね。わたしは"
こんな状況で何を、と思った。
だが不思議だ。少女に手を握られ、その温もりを感じることで、自然と安心している自分がいる。困惑しながらも彼女に質問する。
「LWMMG? それが私の名前なの?」
「そうだよ? 軽量化機関銃のLWMMG。分隊の火器支援を目的とした戦闘用の人形」
「機関銃?」
「まさか、自分が自律人形だってことくらいは覚えてるよね?」
「人形……」
その響きに頭の中の何かを刺激されたような気がしたが、やはりそれが何を意味するのかは思い出せなかった。
「……ごめん、何を言ってるのかわからない」
「う〜ん、基礎知識の部分まで欠けっちゃってるとは……。言語能力が無事だったのが不幸中の幸いだね〜」
少女のつぶやきから、私がいかに深刻な状態にあるのか察することができた。不安で思わず拳を握りしめると、少女が励ますように手を重ねてきた。
「ダイジョーブ! いつもなら半年ROMっとけ! って言うとこだけど、LWMMGには特別になんでも教えてあげるから!」
そう言って私に笑いかける。少女の屈託のない笑顔に、少し肩の力が抜ける。おかげで落ち着いて質問を続けることができた。
「私、ずっと眠ってた、のよね……?」
「まあね。三ヶ月くらいかなあ」
「それはどうして?」
「う〜ん、そこの経緯は複雑なんだけど、ざっくり言っちゃえば、作戦中にメンタルコアを破壊されたから」
「メンタルコア?」
「ここに入ってる、LWMMGの人格を形成してる大事なパーツ」
MDRは私の胸元をトントンと指で指して言った。私が視線を落としても、そこには傷跡もないまっさらな素肌があるだけだ。
「破壊って……誰に?」
「あ〜、今は何かと物騒な時代でさ。ゾンビやら狂った殺戮機械やらヒャッハーな世紀末集団やら、とにかくそういう奴らとの殺し合いには事欠かないってわけ」
いまいち要領を得ない返答だ。何かをはぐらかされたように感じる。そこで、さっき彼女が私のことを戦闘用の自律人形と呼んだことを思い出した。
「私は戦うことが役割の、人形?」
「そうだね。人形にもいろんなタイプがいるけど、私らみたいなのは演算能力とかが戦闘向けに調整されてるんだ」
「もしかして、LWMMGって私が使ってた武器のこと?」
「おお、飲み込みが早いね!」
少女が嬉しそうに言う。そこで新たな疑問が湧く。
「どうして私の名前が銃と一緒なの?」
「人形は戦闘用に換装されるときに自分に最もマッチした銃を与えられて、以降はその銃の名前で呼ばれるようになるんだよ」
「なるほど……」
そこでふと、少女も肩から銃を掛けていることに気づく。
「その銃、あなたも戦闘用の人形?」
「そう! ブルパップ式アサルトライフルのMDRだよ!」
彼女、MDRはそう言うと抱えていた銃を誇らしげに突き出した。ブルパップ式とやらがなんなのかは不明だ。
「私を直してくれたのはあなた?」
「そうだよ。こういうのはわたしが一番得意だからね〜。それでも大変だったんだぞ? いくつ実況スレを消化したことか──」
「どうして?」
「ん?」
「どうして直してくれたの?」
気づけばその質問が口をついて出ていた。理由はわからない。ただ、自分にとって、とても重要なことに感じたのだ。それまで饒舌に話していたMDRが押し黙る。
「わたしが、LWMMGに死んでほしくなかったから」
しばらく考え込んだ後、MDRがおもむろに口を開き始めた。
「最後の作戦、LWMMGが破壊された作戦だけど、わたしたち一緒に戦ってたんだ。まあ、それはあくまで成り行き上だったけど……。その時のアンタは、わたしから見ても優秀な人形だった。それで傷ついたアンタを見たとき、思わず助けちゃったんだよ」
MDRの真剣な表情から、それは彼女が本心から紡いだ言葉だと分かった。気づいたときには、私の頬を涙が濡らしていた。
「あれ……?」
「わわ! どうしたの、LWMMG?」
「あれ、なんで、私……」
理由はわからない。だが、私はMDRの言葉に心から安堵していた。涙が次から次へと溢れてくる。MDRはそんな私の目尻を指でそっと拭ってくれた。その優しい手付きに、少しだけ心が落ちつく。
「とにかく、アンタとまた話せて嬉しいよ、LWMMG」
MDRの言葉に、やっと私も笑みを返すことができた。しばし、無言で見つめ合う。そこに、どこからか足音が響いてきた。部屋の隅の扉が開き、MDRとは別の少女が入ってくる。MDRより背が高く、気怠げな雰囲気を纏った少女だ。
「おい、MDR。なんか配電盤吹き飛んだんだけど……。今度は何やったの?」
「は〜〜。
「えー……」
面倒くさげに少女がこちらに目をやる。私が控えめに手を上げると、彼女は大きく目を見張った。
「……マジで? 直ったの?」
「どうだ! わたしのたゆまぬ努力が身を結んだのだ!」
「……メンタルモデル修復できるって話、ウソじゃなかったんだ」
「失礼な! 嘘なんかつかないでしょ、わたし?」
「いつもくだらない釣りスレばっか立ててるじゃん……」
ため息をついた少女がこちらに向き直る。
「気分はどう? ウチに拾われるなんて災難だったね」
「えっと……」
「?」
「何にも覚えてないんだって。自分が人形だってことも。今は自己紹介も兼ねていろいろ教えてあげてたんだ〜」
「……そうなんだ」
私が言葉に窮していると、MDRが代わりに説明してくれた。少女の顔には驚きが浮かんでいる。ひとまず、私から挨拶をすることにした。
「LWMMG、です。よろしくお願いします……」
「……どーも。私
「……」
「……」
AA-12と名乗った少女はそれっきり沈黙してしまった。私から声をかけようにもなんと言ったらいいか分からない。見かねたのか、MDRが助け舟を出してくれた。
「ほーら! 久しぶりなんだから、
「そう言う無茶振りやめろって……えっと、そうだな……」
AA-12はしばらく考え込んだ後、何かに気づいたように続けた。
「……とりあえず、服着たら?」
「お、いいじゃん似合ってるよ!」
鏡の前で着こなしをチェックしていた私に、しばらく席を外していたMDRが戻ってきてそう言った。あっけらかんと笑うMDRに、つい恨みがましい視線を送ってしまう。先ほどは顔から火が出るような思いをした。何故最初から服を着せておいてくれなかったのか、思わず問いただしたくなってしまう。
あの後、素っ裸の私にMDRが服を用意してくれた。しかし改めて確認すると、へそ出しの短いシャツにショートパンツとやけに露出が激しい。
対するMDRはというと、顎下まですっぽりと覆う、真っ黒な戦闘服を身に着けていた。随所に入っているピンクの差し色が彼女らしい。下はスカートだが、黒いストッキングを履いていて、露出は極端に少ない。
そんな彼女の服装に比べると、なんとも心もとない衣装だったが、着てみると何故だか妙にしっくりくる。
「人形にはそれぞれデフォルトの衣装が設定されてるから、それを注文しといたんだ。それじゃ、鏡のほう向いといて」
MDRに言われて、鏡に向き直る。
これが自分の容姿かと、つい観察してしまう。少し冷たい印象の顔立ち。グリーンの瞳。MDRと同じ銀色の髪は、彼女のものに比べて少しだけ癖があり、毛先は赤く染められている。前髪は目元を覆い隠してしまうほど長い。
するとMDRが、ピンで目にかかっていた前髪を留めてくれた。そのまま後ろ髪を束ね、ヘアバンドで二つにまとめる。
「これでよし! やっぱアンタはツインテールがしっくりくるね」
「あ、ありがとう」
「じゃ、上行こっか。みんなのことも紹介しなきゃね」
そう言ったMDRとともに部屋を出る。どうやら今までいた部屋は地下にあったらしい。MDRに続いて階段を登っていく。
地上に上がると、物が散乱している廊下に出た。所々壁が剥がれ落ちており、床は砂だらけだ。割れたガラスや柱に刻まれた銃弾の跡もそのまま放置されている。どう好意的に見ても廃墟にしか思えない。
私が呆気にとられていると、MDRがある扉の前で立ち止まる。
「この中だよ。深呼吸でもしとく?」
MDRの軽口に私が苦笑を返すと、彼女は扉を開け、中に入るように促す。扉をくぐると、雑然とした部屋に見知らぬ少女たちが集まっていた。彼女たちも人形なのだろうか。私はMDRに促されるままに、空いているソファに座る。少女たちの目線が私に集中する。
MDRが軽く咳払いをしてから話し始めた。
「改めて、
トロール? 独特な響きを持つ名前だ。どういう意味なのだろうか。
「改めて、わたしが隊長のMDR! 作戦立案、指揮が担当だ! 容姿端麗、頭脳明晰、隊員からも愛されてるスペシャルな人形だから、ガンガンわたしを頼ってね?」
そう言ってMDRが私にウィンクしてくる。周りの少女たちからは特に反応がないが、MDRは特に気にしていないようだ。
「こっちが副隊長の"リー・エンフィールド"。凄腕の狙撃手で、LWMMGもお世話になることが多いと思うぞ!」
リー・エンフィールド と呼ばれた少女に目を移す。パンツスタイルの赤い制服に身を包み、肩には長いリボンをかけている。長くて艶のあるブロンドヘアは丹念に編み込まれ、瞳は透き通るような碧眼だ。その佇まいには自然と気品があふれている。
「リー・エンフィールド No.4 Mk.1です。よろしくお願いします、LWMMG」
「よ、よろしく」
彼女は真っ直ぐ私の目を見つめ、軽くほほみながら右手を差し出してきた。慌てて握手を返す。 ごく短いやり取りの中でも、彼女には礼儀正しく理知的な印象を受けた。一つ一つの動作が機敏で隙がない。
「こっちは
「……テキトーによろしく」
先ほど地下室で会った、気怠げな雰囲気の少女だ。先ほどは気づかなかったが、目元にクマができており、少し不健康そうな印象を受ける。AA-12はこちらを一瞥したきり、私と目を合わせようとせず、ポケットから取り出したキャンディーを舐め始めた。
「興味なさげに見えるでしょ? こう見えてウチの隊で一番面倒見が良いから、甘えてあげると喜ぶぞ!」
「余計なこと言うな……!」
AA-12の口調が、わずかに怒気を帯びていた。初めて見る反応に目を丸くしていると、AA-12は気恥ずかしげにこちらから目を逸らす。思ったより親しみの持てる性格なのかもしれない。
「そして最後が
MDRが小声で耳打ちしてきた。C-MSはこの中で一番小柄な少女だった。黒くて長くうねりのある髪に、白い肌、赤い瞳が特徴的だ。ノースリーブの白いワンピースに、オーバーサイズのコートを羽織っている。彼女は、先ほどから私のことをじろじろと値踏みするように見てきている。
「ねえ! アンタ、うちの隊に入るの?」
「え?」
C-MSが唐突に聞いてきた。私が返事に困っていると、MDRが代わりに答えてくれる。
「ノンノン、結論を急いじゃダメだよ、C-MSくん」
「……アタシの部下が増えたと思ったのに」
C-MSはそう言うと、興味を失ったように銃の手入れを始めてしまった。MDRがC-MSの頭を撫でながら、その隣に腰掛ける。
「あとはうちの社長のジェーンがいるけど、アンタが会うことは多分ないだろうね」
「社長?」
「ジェーンはうちの会社唯一の人間なんだ。ただ現場にはまず来ないし、業務連絡もネットを介して送られてくるだけだから、どこにいるかもわからない」
そこでMDRが一呼吸おいた。
「一通り紹介が終わったけど、ここまでで何か質問はあるかいルーキー?」
「えっと、なんでこんな廃墟に住んでるの?」
「廃墟! これでもやっとの思いで手に入れた、念願のマイホームなのに!」
「人が居ないからって、勝手に使ってるだけじゃん」
「しーっ!」
口を挟んできたC-MSの言葉をMDRが遮るが、私にはしっかり聞こえてしまっていた。MDRが苦笑しつつ続ける。
「この辺はコーラップスの汚染地域だからね〜。わたしたち以外に誰もいないから、のびのび自由に過ごせるよ!」
「コーラップス?」
「毒みたいなもんだよ。人間が防護服なしでこの辺にきたら、1時間もかからず死んじゃうだろうね」
なぜそんな危険な場所に住む必要があるのだろう。TROLL小隊の活動内容が関わっているのだろうか。
「そもそもTROLL小隊って何をしてるの?」
「おお! それを次に説明しようと思ってたんだ!」
MDRがタブレット渡してきた。画面には"タローン・インターナショナル "と表示されている。どうやら会社の登録証のようだ。
「わたしたちは民間軍事会社、"PMC"に所属してる部隊なんだ。小さな会社だから、部隊はウチだけ。任務内容は直接戦闘とか民兵の訓練とか物資調達とか、まあ色々だね。基本、お金になるなら何でもやるぞ!」
どうやら過激な方針の会社なようだ。記憶を失っている私でも、そのくらいはわかった。
「とにかく危険な職場だから、優秀な人材はいつでも募集中。LWMMGもウチに入りたいなら大歓迎だよ!」
「……安請け合いしないほうがいいよ。ウチ、他所がやりたがらないヤバイ仕事ばっか受けるとこだから」
「しーっ! しーっ!」
今度は、AA-12が横から口を挟む。MDRはまたも遮ろうとするが、やはり私には聞こえてしまっていた。
「まあ、その辺の説明はおいおいね……。別に強要するつもりはないから、LWMMGの好きにしてくれればいいよ。当面はTROLL小隊で面倒見るから、安心してね!」
「ありがとう……。とにかく今は、状況把握に努めることにする」
「後で一般教養くらい再インストールできないか試してみよう。それが無理でもネットに接続できれば情報も集めやすいし。え〜っと、それから……」
MDRが手のひらサイズのカードを渡してきた。カードには私の顔と型式番号らしき物が載っている。
「これはLWMMGの登録証。製造元のIOPに申請して取得しなおしといたから。これは肌身離さず身に付けといてね」
「人形でも身分証がいるのね」
「今の時代登録証つけてない人形なんて、すぐさらわれてブラックマーケット行きだよ?」
MDRの言葉に私は身震いする。ブラックマーケットがどういう場所なのかはわからないが、愉快な場所ではなさそうだ。
「その登録証では、LWMMGは戦場で保護した民間用の自律人形ってことにしてる」
「民間用? どうして戦闘用の人形として登録しないの?」
「戦闘人形の所有権て結構厳格でさ。戦場で人形拾ったからって勝手に修復したりすると、あとあと面倒なことになるなんだよね〜。まあ、前の職場でも正規の登録とかはされてないと思うけど」
意味深な言葉に私が眉を潜めていると、MDRが続けて言った。
「LWMMGの場合、IOPの正規修理にも出せなかったから、ひとまずこういう形にしてるってわけ」
「……どう言うこと? どうして私が修理を受けられなかったの?」
「アンタ前までは結構ロックな活動してたからね〜」
そう言うとMDRが書類を一束を渡してきた。表紙には"
書類のある箇所に付箋が貼られていたので、そこを開くと『反政府組織"
「う、嘘でしょ……」
目を疑うしかなかった。指名手配者一覧の末尾に"政府施設への攻撃"の文言とともに載せられていたのは、まぎれもなく、私の顔だったのだ。
はじめまして、凹一と申します。
MDRが主人公の話がないので書きました。
こんなんでも主人公はMDRです。
ドルフロ初見の人にも理解できるように書いていくつもりです。
よろしくおねがいします。