破壊の熊は家族の元へ   作:悪魔野郎

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勇者になりたいと言うのなら

「……終わったかな?」

 

 爆発音が聞こえなくなったので起き上がり周りを見る。

 何か集まっているのであっちに行こう。

 

「ハジメ兄~終わった~?」

「…………」

「痛い! 痛い! 無言で頬を引っ張らないで!!」

「下手すれば俺たちも巻き込まれていたんだぞ! なにやってるんだ!!」

 

 ブニ~と餅のように伸ばさないでぇ~! 

 しばらくすると飽きたのか止めて犯人の方を向く。

 

 ◆◇◆◇

 

 

 

「何だよ、その間抜面。自分が魔人族から目を付けられていないとでも思ったのか? ある意味、勇者より厄介な存在を魔人族が放っておくわけないだろ……〝豊穣の女神〟……あんたを町の住人ごと殺せば、俺は、魔人族側の〝勇者〟として招かれる。そういう契約だった。俺の能力は素晴らしいってさ。勇者の下で燻っているのは勿体無いってさ。やっぱり、分かるやつには分かるんだよ。実際、超強い魔物も貸してくれたし、それで、想像以上の軍勢も作れたし……だから、だから絶対、あんたを殺せると思ったのに! 何だよ! 何なんだよっ! 何で、六万の軍勢が負けるんだよ! 何で異世界にあんな兵器があるんだよっ! お前は、お前は一体何なんだよっ!」

 

 ……馬鹿じゃねぇの? こいつ。

 

 要約すると愛子先生を殺せば魔人族に()()として迎え入れられる予定だったらしい。

 てか、勇者って? ()()()()()()だ? 

 

 私にとって最も勇者だと思う事は──

 

「動くなぁ! ぶっ刺すぞぉ!」

 

 ありゃ、先生が捕まっちゃった。

 犯人の拘束はしっかりしようぜ(呆)

 まあ、どんな状況でも危害は加えさせないが。

 個人的に愛子先生はかなりいい人だと思うから死んでほしくない。

【魔眼】って様々なものが見えるんだよね。

 魔力の流れ以外にも空気の流れや筋肉の動きすら見える。

 そして、()()()も見える。

 魂ってより意思の形かな? 

 愛子先生は今まで見たことのある魂の中でもまっすぐな形だ。

 ちなみにハジメ兄の形は歪だけど綺麗な青。

 ユエ姉の形は……よく分からない。

 ユエ姉だけは何故かちょくちょく変化しているから見ていて楽しいんだけどさあ……おかしいんだよねぇ。

 

 まあ、それはさておき。

 ちょっと流石に動こうかな? 

 

 ──次の瞬間、野生の勘で瞬発的に動く。

 

 間合いの距離の関係上、あの馬鹿と愛子先生を移動させるのは困難。

 だが、打ち落とす。

【シャルル】を第四形態──【殺生槍】に変形。

 “竜心機臓“で推進力を増加。また、【魔眼】による空間把握能力強化を同時発動。

 

 飛んできた物体を【殺生槍】を投げて粉砕。

 同時に残っている【シャルル】を第二形態──【イコル】に変形。

 暗殺者? 始末者? に弾丸を射つ。

 

「……ごめん、逃がした」

「……まあ、いい」

 

 シア姉が私の動きと同時に馬鹿と先生を突き飛ばしたらしい。

 もちろん、ユエ姉が馬鹿を抑えている。

 

「クソクソクソ、クソがぁぁぁぁ!!!!」

 

 狂乱したようにわめき散らし始める。

 魔人族側に裏切られたことを理解し先生を殺して見る無理に魔人族の勇者になることも出来ないと悟ったのだろう。

 

 まあ、私にとってはこれくらいの狂乱の声なんてずっと聞いていたもんだから子守唄のような気もする(笑)

 

 まあ、このままじゃあうるさいので試練でも与えて見ますか

 

「私の()を見ろ」

 

 それは静かに響く声音。

 絶対の決定権は自分にあると言うが如く覇者の一声。

 そのまま、清水幸利は──試練に入った。

 

 ◇◆◇◆

 

「……どこだ? ここは」

「ここは永遠の記憶……忘れられてもきっと誰かが必ず思った思いや記憶の果て」

 

 そこには初命と幸利しか居ない空間であり周りにはガラクタばかりある。

 

「さて、力が欲しいんだよね?」

「ッ! くれるのか!!」

 

 初命が女神のような笑顔で言うと幸利が叫ぶように言う。

 

「でもね──それには試練が必要なんだ」

「ッ! ……言ってみろ」

 

 一瞬、怯えるような顔をしたがすぐに前を見る。

 

「じゃあ、()()()()()()()()()()()()

「……は?」

 

 幸利は毒気の抜かれたかのような顔をし……答えようとして──答えられなかった。

 

「……あー。気がついた? これは()()()()()も無い質問であり

 

 ──決して簡単に答えられない問題だよ」

 

 幸利は考える。

 どうにか答えが無いのか。

 そもそも何故、()()()()()()()()()と言う疑問すら生まれ、自身の根本の行動原理を覆しそうになっている。

 

「……答えは出た?」

 

 無慈悲に初命は問いただす。

 ただ、淡々と。

 永遠に感じるような時間が経った後──初命が問うのでは無い言葉を言った。

 

「……私にとっての勇者は──

 

()()()()()()()()()()

 

 幸利は首をかしげる。

 それでは勇者の意味を言っているのか? 

 様々な疑問が生まれるが初命はそんな幸利を無視して続きを言う。

 

「人……生物の最初の英雄譚とは()()()()()()()()()()()だと思う。健康な体……一切の傷も無く生まれた時点で最初の英雄譚としては十分だろう。だってそれだけで()()()()()()()()()()()()()()のだから」

 

 幸利はハッとした表情をした。

 今までのライトノベルの勇者だって最初は周りの人の勇者になっていっていたことに気がついたからだ。

 

「その先はもう分からない。どんな英雄譚を作るかは人それぞれだ。

 例えば、すぐに死んで異世界で両親の元に行こうとする英雄譚を作ろうとしているかも知れないしね」

 

 聖母の如く、全ての生物への愛情の込められたかのような優しい笑顔を浮かべる。

 

 その顔に幸利は純粋に綺麗だと思った。

 邪な思いは一切無く、ダイヤが煌めいて綺麗だと思うのは当たり前の如くそう思った。

 

「さて、答えは出たかな?」

 

「ああ……俺の考える勇者は──

 

 その先の答えを知るのは初命だけだった。

 

 そして、認められる。

 様々な英雄達の意思がここに残留する。

 そして、一つの意思が幸利に力を貸す。

 

「……良かったよ……そんな汚れた魂が──ダイヤモンドの如く光る色になって」

 

 最早、それは愚かな愚者ではない。

 しかし、勇者でもない。

 誰かの為にあろうとする者

 強く生きたと言えるようにする者

 

「さぁ、力は与えた……どうするかは君次第だ」

 

 初命は飛びっきりの笑顔を浮かべ幸利の顔は少し赤くなっていた。




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さて、清水幸利君生存+強化ルートです。
……こいつそんなに悪い奴には見えなかったので救ってやりました(作者のわがまま)
こいつが嫌いだった人はすいません。
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