「……手が小さい」
……どうも皆様。
初命です。
今、勇者(笑)のプライドを壊したのですがある実験をしたら弱体化──幼児化してしまいました。
「……モフモフがいっぱい」
「これ、どうなっているのでしょう?」
「う~む、こんな魔物はいないはずじゃが」
「……運転の邪魔だなこれ」
「モフモフなの~」
「いやいや、皆集めてね?! これ一応、初命ちゃんだからね?!」
……唯一の幸いはここが密閉空間──車の中であったことだ。
私は”変成魔法”の応用が出来ないか、色々試していたのだが。
①分裂してみた→結果・成功したがステータスは落ち弱体化した。
②分裂した個体を別の生物への変形
→結果・成功したが処理が追いつかず自在には動かせなかった。
③分裂した個体を超強化
→結果・失敗、変なモフモフ(ケサランパサラン?)に何故か変形。個々の操作不可能。
①②までは良かったのだが③で何故か毛玉モンスター化。
普通の魔物のように生物を襲わないがふわふわ何処かへ風で流されそうになる生物になってしまった。
さて、最初にやった実験で分裂したせいで幼児化してしまったからモフモフが集まらないと完成復活できないのだ。
今の力だと精々、勇者くらいのステータスしか無い。
迷宮に行ったら死んじゃうね。
「香織、どのくらい集まった──「香織姉ちゃん」……香織お姉ちゃん」
香織──香織姉ちゃんが集めたモフモフをコネコネさせて合体させる。
え? 何でさっきから香織のことを香織姉ちゃんと呼んでいるか? ……私が妹だと分かると虚ろな目でお願いされるから呼んでいます……決して、香織姉ちゃんがお母さん見たいに怖かったからじゃないからね?
◇◆◇◆
「……戻らない」
ユエ姉ちゃんくらいの大きさにはなれたけど、まだまだ本調子ではない。
……ちなみに、後で分かったことだが残りのモフモフはミュウが隠し持っていたらしい。
あっ色々あったけど迷宮には着いたよ。
ただ、迷宮に入ると死ぬかもしれない状態だから分身を一体だけ連れていってもらっている。
サポートくらいしか出来ないんだよなぁ。
あっちが死んでもこっちが本体だから問題はないし。
さて、治療の続きでもしますか。
「はい、一丁上がり! 次の方ぁ!」
「嫌だ。嫌だ。死にたくないない。死にたくない」
「大丈夫、死ぬ程痛いだけで生き残る為の手段なのですから」
「さっきから、大人達が治療が始まったかと思ったら断末魔が聞こえてきて更に数分後には何も聞こえなくなり、終わったと思うとアイツら真っ白に燃え尽きていたんだぞ!!!」
「大丈夫、死にたくなければ──死ぬ程痛い思いをしてください」
私は”回復魔法”が使えないので”変成魔法”の応用で治療している。
まず、首と体を切り離して体の方を”変成魔法”で正常の状態に改変して体と頭をくっつける。
さっきから断末魔と言うのは頭は意識のある状態で体の方を弄るので激痛が走るからだ。
痛みによる気絶と痛みによる覚醒が交互に起きると言う地獄を味わっている。
一分くらいすると声が出せなくなるらしい。
だから一分以内には終わらせるようにしているのだがやはり難しい。
まあ、同時にこの暑さを和らげる魔物──木のような魔物による温度低下を行っているから許してくれ。
◆◇◆◇
「香織姉ちゃん。終わった?」
「あっ! 初命ちゃん。魔力は大丈夫? この石持っていって」
魔物の技能(温度低下)に使われる魔力で結構持っていかれているので魔力タンク代わりになる静因石はありがたい。
「……大丈夫なの? あの人達」
香織姉ちゃんが目線を注ぐのは先程、治療(地獄)をした男達だ。
どこかのボクサーのように真っ白に燃え尽きてやがる。
「……大丈夫だよ。……多分」
「……最後の多分が怖いなぁ」
まあ、肉体的には最高の状態だし精神安定剤として香織姉ちゃんが居るし大丈夫でしょう。
静因石を割って魔力を回復させると──分身が死んだ。
「あれ? どうしたの?」
「香織姉ちゃん。……少し、ヤバいかもしれない」
ハジメも見たことのない。かなり焦った顔でそう言った。
◇◆◇◆
ズドォオオオオオオオオ!!!!
頭上より、極光が降り注いだ。
まるで天より放たれた神罰の如きそれは、ハジメがかつて瀕死の重傷を負った光。いや、それより遥かに強力かも知れない。大気すら悲鳴を上げるその一撃は、攻撃の瞬間という戦闘においてもっとも無防備な一瞬を狙って放たれ──ハジメを、最後のマグマ蛇もろとも呑み込んだ。
それが私の分身が最後に見た景色だ。
さて、目の前には魔人族らしき奴が居る。
そして、極光を放ってきやがった。
つまり……敵だな。
「……とりあえず、死ね」
【血烈刀】を持って接近する。
しかし、途中でほぼカンで回避行動を取る。
それは正解だった。
空間が擦れ右腕が切断されたのだ。
「……空間か……問題ない」
切断された右腕を”血流操作”によって引き付け“変成魔法”による接着。
それを見た魔人族が驚きの表情を浮かべるがそんなものお構い無しに【血烈刀】を“血流操作”の刀身延長によって切りつける。
「チッ! ……火力が足りない」
初命は空中戦闘が苦手だ。
いや、本調子なら
「たっ退避ぃぃ!!」
延長させた攻撃での火力が異常な事に気がつき軍全体に命令を下す。
「追うのは……得策ではないな」
初命は考える。
死ぬ可能性があるが、《破界之鉄槌》で空間ごと破壊するか……いや、ハジメ兄の為とは言え──仇も取ろうとしないで何が家族だ? ああ、そうだ。仕方がない。
一つの肉片を取り出す。
「……人間じゃないし今更か」
そして、肉片を食うと初命の意識は落ちた。
◆◇◆◇
それは劇的な変化だった。
ある程度の大きさであったのに更に小さくなっている。
そして、目が虚ろになり。
首などに着いたいた赤黒い玉が輝き一つのハンマー……最早見ただけでは何なのか分からない程の大きさのハンマーに変化した。
「【黒天槌】暴食」
そのハンマーを勢いよく振り落とされる。
「ッ! 速い!」
大量の魔力を消費し”空間魔法”による転移を行う。
「……外したか」
目の前の化け物はそう言うとハンマーを持ち上げる。
その威力に驚かされるさっきまであった迷宮がすっぽり無くなっているのだ。
せめて、死体だけでも──
「は?」
──転移で逃げられた?
──しかし、適性の低い者も居たはず
──仲間も同時の転移をしたのか?
希望的な考えも出てくるがそれならそんな長距離の転移は不可能だから姿が見えないのはおかしい。
「……ごめんね」
目の前の化け物は何かに謝るとハンマーから何かが落ちてきた。
その落ちてきた何かは──醜い魔物だった。
一応、人の形をしているが大量の手が生え人の形を作っている化け物
ん? あのペンダントは──
「ッ! この悪魔が!!」
そのペンダントは部下の持っていたものだつまり──あれは部下達の成れの果て。
「……後は、別の機会にしてやる。……精々、生き残れよ」
魔物──部下は物凄い勢いの踏み込みで斬りかかってくる。
技術は私が上だとは言えステータスに差がありすぎる。
化け物はその場から消えた。
◇◆◇◆
「うっゲェェェ」
私は吐いた。
体の体積を無視した量を
【黒天槌】の能力は”暴食”接したものを食らう能力だ。
だが、指定が出来ないため砂なども食ってしまう。
だが、それよりもキツいのは──食った生物の記憶を強制的に見せられてしまうからだ。
「……ハハ。これをやっていってしまったら、悲しむことの出来ず人間性を失くしそうなんだよなぁ」
私の恐れていることは”人としての感情を忘れる”事だ。
そうやって、嘆くと影が動き手の形を作って初命を抱き締める。
「……ありがとう。でも、幼女状態の私にやると犯罪臭が凄いよ」
怒るかな?
それでも、私は心配されないように言った。
でも、影は離してくれない。
それどころか、人の手ではない別の生物の手が纏わりつく。
「フフ、優しいね」
素直に感謝の言葉を言う。
……忘れないようにしよう。
──私は何百何千の死体の上で成り立っているのだと。
──私はそれでもやりたいことがあるのだと
──それでも人になりたいのだと。
「さて、体が安定しないなぁ……やっぱり食べるか」
取り出すのはティオ姉ちゃんの肉片。
「……やっぱり、化け物だよなぁ」
一口食べると、一気に安定する。
最初に食べた肉片がティオ姉ちゃんの肉片だから、その時の状態を再認識してその状態に持っていく事が出来るのだ。
「……ごめんなさい」
食った魔人族達に謝る。
敵だとは言え同士討ちさせるなど外道のやることだ。
でも、私は激怒していたとは言えやってしまったのは事実。
せめて、謝罪の言葉くらいは言わせて貰う。
「……あっティオ姉ちゃん」
竜状態で空を飛ぶティオ姉ちゃんを見て。恐らくハジメ達を探しているのだろうと考える。
「……でも、もう少し。もう少しだけ」
この気持ちに向き合わせてくれ。
……魔物……部下はフリードを殺すためだけに作られたためどこまでもフリードを追いかけます。
生前の技量+変生魔法によるバグステータス・バグ技能により、肉片一つ残さずに消滅させなければ殺せないようになっています。