破壊の熊は家族の元へ   作:悪魔野郎

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たったそれだけ

「あれ? ここは?」

 

 私は森のなかにポツンとある家の前に居た。

 

「■■■■! ご飯よ~」

 

 誰かの声がする。

 ああ、ここは私の家だ。

 

「分かったぁ~」

 

 持っていた木の剣を立て掛けて家に入るためにドアノブに手を書けると──景色が変わった。

 

 そこは町に死体が重なっている風景、そして──死人の怨みの声が聞こえる。

 

 ──生きたかった。

 

 ──欲しかった。

 

 その声に恐怖を浮かべていると

 

「過去を忘れるつもり?」

 

 どこかで聞いたことのある声の持ち主に首を切り落とされた。

 

 ◇◆◇◆

 

「ハッ!」

 

 ……夢か。

 

 周りを見ようとするが動けない。

 よく見ると蛇君が私を拘束していたようだ。

 

 うん、やめて蛇君……変な拘束の仕方しないで……変態さん達が鼻から幸福感を出して倒れてゆくから。

 

 え? どんな拘束の仕方? ……想像にお任せします。

 

「……初命姉ちゃん?」

 

「ん? ……ミュウちゃんだぁ!」

 

 周りがミュウの事を心配そうに見ているがそんな事お構い無しにミュウに抱きついた。

 

「ん? お母さんと会えた?」

 

「うん!」

 

「良かった。良かった」

 

 何故か分からないがこっちもとても嬉しくて顔がヘニャとなる。

 何故か、幸せそうな顔で倒れている奴らが居るけど気にしない。

 

「ん? ……ティオ姉ちゃんか」

 

 遠くから接近してくる“竜化“を見てそう呟く。”遠目”を使って見ると誰一人欠けずに踏破したようだ。

 

 その後、私のペットの説明やら要求されたが無視してミュウちゃんの家の庭に泊まらせて貰った。

 

 ◆◇◆◇

 

「お姉ちゃん!」

 

「また、来たの?」

 

 狼のブラッシングをしていると近所の海人族の子供達がやって来た。

 前にも来て親達に怒られていたはずなのに……子供って可愛いよね。

 

「じゃあ、空の旅でもしようか」

 

「空の旅?」

 

「おいで、【スターライト・クロウ】」

 

 すると影から大きなカラスのような魔物が出てくる。

【スターライト・クロウ】と言うのは種族名だ。

 私が行った“変成魔法“による進化と私の血を使ってどうにか二桁まで進化段階を進められた。

 進化段階は一桁で迷宮レベル。二桁で迷宮のボスクラス(ヒュドラなど)

 私は自身にしか“変成魔法“を使った事がなかったから他人に使用すると中々うまく行かなかった。

 ……3日かけても三十台にしか届かなかったよ。

 

「? どうしたの? お姉ちゃん」

 

「ああ、少しプライドに傷がついてね」

 

「?」

 

「さて」

 

 ハジメ兄特性の気球の乗る部分を“影魔法“で取り出し“血流操作“で作った紐を繋げて【クロウ】に掴んでもらう。

 

「これに乗ってこの街を見渡そうぜ!」

 

 その後、皆で空の旅に行ったのだけど……親達に怒られました。

 ……私って魔物連れていたから恐れられていたのに何で私も怒られてるのだろう。

 ……分かることは親は強しと言うことだ。

 

 ◇◆◇◆

 

 皆で海水浴を楽しんだ日、ハジメ兄は旅立つ事をミュウちゃんに伝えた。

 

「……もう、会えないの?」

 

「……」

 

 答えに窮する質問だ。ハジメの目的は故郷たる日本に帰ること。しかし、その具体的な方法はまだ分かっておらず、どのような形でどのタイミングで帰ることになるのか分からない。

 

 かつて、ミレディ姉ちゃんは、望みを叶えたければ全ての神代魔法を集めろといった。もしかしたら、そのタイミングで直ぐに帰ることになってしまうかもしれないのだ。旅の終わりまでエリセンに来ることはないだろうから、あるいは、これが今生の別れとなる可能性は否定しきれない。安易なことは言えなかった。

 

「……パパは、ずっとミュウのパパでいてくれる?」

 

 どう答えるべきかと悩むハジメに、ミュウは、その答えを聞く前に言葉を重ねた。ハジメは、ミュウの両肩をしっかり掴むと真っ直ぐ視線を合わせた。

 

「……ミュウが、それを望むなら」

 

 そう答えると、ミュウは、涙を堪えて食いしばっていた口元を緩めてニッと笑みを作る。その表情にハッとしたのはユエ達だ。それは、どこか困難に戦いを挑む時のハジメの表情に似ていて、一瞬、本当の親子のように見えたのだ。

 

「なら、いってらっしゃいするの。それで、今度は、ミュウがパパを迎えに行くの」

 

「迎えに……ミュウ。俺は、凄く遠いところに行くつもりなんだ。だから……」

 

「でも、パパが行けるなら、ミュウも行けるの。だって……ミュウはパパの娘だから」

 

 ハジメの娘たる自分が、出来ないことなどない。自信有りげに胸を張り、ハジメが会いに来られないなら、自分から会いに行くと宣言するミュウ。もちろん、ミュウは、ハジメが世界を越えて自分の故郷に帰ろうとしていることを正確に理解しているわけではない。まして、ミュウが迷宮を攻略して全ての神代魔法を手に入れ、世界を超えてくるなど有り得ない。

 

 それ故に、それは幼子の拙い発想から出た実現不可能な目標だ。

 

 だが、一体誰が、その力強い宣言を笑えるというのだろう。一体誰が、彼女の意志を馬鹿馬鹿しいと切り捨てられるのだろう。出来はしない。してはならない。レミアの言ったミュウが成長したという言葉の意味がよくわかった。ミュウは、短い時間ではあったが、それでもしっかりハジメ達の背を見て成長してきたのだ。そんな愛しい娘を今更手放せるのか。手放していいのか。いや、そんな事できるわけがない。していいわけがないのだ。

 

 だからこそ、ハジメは決断した。今、ここでもう一つ誓いを立てようと。

 

「ミュウ、待っていてくれ」

 

「パパ?」

 

 ハジメの雰囲気が変化したのを感じ取ったのかミュウが不思議そうな顔をして首を傾げる。先程までの、どこか悩んだ表情は一切なく、いつもの力強い真っ直ぐな眼差しがミュウの瞳を射貫いた。ミュウがずっと見てきた瞳だ。

 

「全部終わらせたら。必ず、ミュウのところに戻ってくる。みんな連れて、ミュウに会いに来る」

 

「……ホント?」

 

「ああ、本当だ。俺がミュウに嘘吐いたことあったか?」

 

 ハジメの言葉に、ふるふると首を振るミュウ。ハジメは、そんなミュウの髪を優しく撫でる。

 

「戻ってきたら、今度は、ミュウも連れて行ってやる。それで、俺の故郷、生まれたところを見せてやるよ。きっと、びっくりするぞ。俺の故郷はびっくり箱みたいな場所だからな」

 

「! パパの生まれたところ? みたいの!」

 

「楽しみか?」

 

「すっごく!」

 

 ピョンピョンと飛び跳ねながら喜びを表現するミュウ。そんなミュウに、ハジメは優しげに目を細める。ハジメとまた会えるという事に不安を吹き飛ばされ満面の笑みを浮かべるミュウは、飛び跳ねる勢いそのままに、ハジメに飛びついた。しっかり抱きとめたハジメは、そのままミュウを抱っこする。

 

「なら、いい子でママと待っていろよ? 危ないことはするな。ママの言うことをよく聞いて、お手伝いを頑張るんだぞ?」

 

「はいなの!」

 

 ハジメは、そんな二人のやり取りを微笑みながら見つめていたレミアに視線で謝罪する。「勝手に決めて済まない」と。

 

 それに対し、レミアはゆっくり首を振ると、しっかりハジメと視線を合わせて頷いた。「気にしないで下さい」と。その暖かな眼差しには、責めるような色は微塵もなく、むしろ感謝の念が含まれていた。

 

 そんなパパとママのアイコンタクトに気がついたのか、ミュウがハジメとレミアを交互に見つつ、ハジメの服をクイクイと引っ張る。

 

「パパ、ママも? ママも一緒?」

 

「あ~、それは……レミア?」

 

「はい、何ですか、あなた? もちろん、私だけ仲間はずれなんて言いませんよね?」

 

「いや、それはそうだが……マジ、こことは〝別世界〟だぞ?」

 

「あらあら。娘と旦那様が行く場所に、付いていかないわけないじゃないですか。うふふ」

 

 娘を抱っこするハジメと、それに寄り添うレミアの図。普通に夫婦だった。香織達が、「させるかぁー!」と言わんばかりに割り込み喧騒が広がる。最初のしんみりした空気は何処に行ったのか。香織達とレミアが笑顔の戦争を繰り広げていると、いつの間にか蚊帳の外に置かれたハジメに、ユエがトコトコと歩み寄った。

 

「……連れて行くの?」

 

「反対か?」

 

 ユエの質問に、ハジメがそう返すと、ユエは首を振り、どこか優しげな眼差しでハジメを見つめ返した。

 

「……それがハジメの決めた事なら」

 

「そうか」

 

「……でも、タイミングを選べなかったら?」

 

 それは、ハジメの懸念と同じ質問だ。神代魔法を手に入れて、仮に何とか故郷に帰る手段を手に入れたとして、いつでも好きな時に世界を越えられるとは限らないのだ。あるいは、ミュウとの約束が違えられる事態になる可能性も十分にある。そんな事になれば、ミュウの心は深い傷を負うことになるだろう。

 

 しかし、ハジメは肩を竦めると、口元に笑みを浮かべながら決意を宿した強い眼差しをユエに向けた。ユエも、一応聞いてみただけで、答えはわかっているとでも言うように口元が緩んでいた。

 

「どうとでもするさ。何があってもミュウのところに戻るし、日本だって見せてやる。ミュウを置いて世界を越えちまったのなら、何が何でも、またこの世界に来ればいい。何度でも世界を越えればいい。それだけのことだろ?」

 

「……ん。それだけのこと」

 

 互いに分かりあった笑みを浮かべ、間近で見つめ合うハジメとユエ。ユエは、ハジメが誓いを立てるほど、何かを大切に出来たのだと感じ嬉しく思った。ハジメもまた、そんな自分を理解して、微笑んでくれるユエに愛しさがこみ上げる。いつも通り、ハジメとユエのコンビネーション能力〝何処でも桃色空間〟が発動する。

 

「ハイハイ、桃色空間作らないでね」

 

 そこに邪魔が入る。初命だ。

 ユエは少し不満そうな顔になったがすぐに何かに気がつき黙る。

 

「あと、ハジメ兄。一つ言わせて貰うと──この世に不可能は存在しないんだよ。世界すら乗り越えられる強力な意思や魂さえあればね」

 

 それは家族に会いたいだけと言うことを──否、たったそれだけだからこそ、その強い意思を持った少女の力強い言葉だった。

 

 その翌日、ハジメ達は、ミュウとレミアに見送られ、海上の町エリセンを旅立った。

 




ペットの名前が決まらないねぇ。
能力とかは出来たんだけどなぁ。
さて、初命は“概念魔法“の存在に気がつき始めています。
それは次の話で
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