「聞きたいことがあるんですけど…」
「なんだ?」
「なんでこの店ここまで壊されちゃったんですか?」
「ああ!?てめぇ、もう新しい人生始めた気でやがんのか!ちったぁ、元お仲間の顔でも思い出せ!!!」
「いや、それがまだばっちり覚えてるんですけど。こう、余りにも手口が違うと言いますか…。聞いてた作戦内容と全然違う惨状なので…」
結局、(全壊した)イエローフラッグで朝を迎えた。夜はいろいろテンパって、運よく死なずに済んだものの冷静になると随分な賭けだったと今更鳥肌が立つ。そのついでに明るくなった店内を見て違和感を覚えた。
自分たちの任務は盗品の奪還と犯人の抹殺だった。対象がよく現れる場所ごとに3~4人のグループで行動、加えて上司の意向としては「なるべく速やかかつ秘密裏に」だった。ここまで大規模な破壊行動はまさに奥の手。よっぽどのことがない限り取られないはずのない選択だった。そういえばバオも「銃と手榴弾で穴ボコ」と言っていたが…。
「作戦も何も、店に入って来るなりドンパチ始めたのはそっちだ。全くあんな連中と同僚とは同情するぜ」
「え!店に入るなり?店の誰かと話をしてたとかは…」
「ねえな」
「じ、じゃあ、普段見慣れない客はいなかった?例えば、…北欧系のインテリっぽい男」
「知らねえ」
抹殺対象だった人間の特徴まで言ってしまったが仕方ない。ここでの出来事は私が認識していた作戦と違いすぎる。今回は盗品の奪還が優先の任務だった。ただ、バオがうそをつく必要も無い。だとしたらなぜ仲間たちは「真っ先に対象を殺す」ことを選んだのか。
「北欧系じゃねぇが、インテリつうかネクタイ締めた場違いな奴ならいたけどな。ラグーンの奴ら、まあこの街の運び屋だが、そいつらと一緒だったな。アジア系でお前と同じくらいの年の優男」
「アジア系…?」
「お前のお仲間は優男とラグーンの奴らを追っかけて行ったと思ったんだが…。心当たりねぇのか?」
なにかおかしい。私の仲間は誰を追いかけて行ったのか。アジア系の優男もラグーンとやらもブリーフィングで一つも聞いたことがない。いや、そもそもこの店に私の仲間は来たのか?私は誰についての話を聞いているんだ?
「バオ。…ここを襲った連中の人数や装備を覚えてる?」
「…人数は、全員かどうかは分からねえが、俺が見たのは20人ほど。装備はそうだな、これから戦争おっぱじめるのかってくらいたんまりと持ってたよ。クソったれ」
あ、これ違うわ。
嫌な予感は当たるものだ。彼の話を聞いて、この店を襲撃したのは私の仲間ではないと確信した。人数も装備も手口も全く違う。―――ここに張っていた同僚に同情する。
「おい、どうした?急に黙って…」
「どうやら違ったみたいです…」
「は?」
「ややこしい話なんですが――――」
つまりは昨晩この街にはよそ者が、私たちの他にもう一組いたのだ。彼らはバオの言う「ネクタイを締めたアジア系の優男」を殺すためにこの街にやって来た。そして奇しくも、このイエローフラッグで彼らは作戦を決行したのだろう。
彼らの特徴を聞く限りおそらく同業者だ。戦場ならともかく、こんな市街地でかち合うことなんて想像もしていなかった。自分はなんて間抜けなんだろう。本当にダメだ。
「あー、ご愁傷さまだなそりゃ」
彼女の結論を一通り聞いたバオは、心底呆れてそうつぶやく。彼にとっては誰の手によったのかなど関係ない。結局、店は壊れてしまった。その事実は変わらない。そしてそれは彼女―――アキラも。
「まあ、分かったところで私の置かれた状況は変わらないですけどね。
――――改めてこれからよろしくお願いします。バオさん」
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その後、アキラはバオの旧友の娘という格好で、娼館〈スローピー・スウィング〉に紹介されたのだが、
「娼婦にするには女性的魅力が無さすぎる」
という理由で雇用を断られ、アキラは何とか食い下がった結果(それなりに腕っぷしがあるところもアピールした)、
「安月給」かつ「危険」でもよければという条件で、〈スローピー・スウィング〉の用心棒兼その他雑用として働くこととなった。