加古鷹おんらいん!   作:プレリュード

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というわけで予告通り、二航戦称号戦編開始です!


二航戦称号戦編
二航戦称号戦編1


「二航戦称号戦(タイトルマッチ)、ですか? ええっと、それは何なんでしょう?」

 

 古鷹さんがきょとんと首を傾げながらオウム返し。うーん、この人のこういう仕草って本当に自然に出てくるなといつも思わされる。たまにロールプレイがわざとらしくて見ていられないプレイヤーもいるんだけど、そういう意味ではこの『古鷹』は本当に完成している。

 

 おっとと、話が逸れた。そうそう、二航戦称号戦(タイトルマッチ)の話だ。

 

「えっとね、古鷹さん。そもそも私らの二つ名を覚えてる?」

 

「比翼の二航戦、ですよね?」

 

「そうそう。でも正しくは『比翼』だけで『二航戦』は使っちゃいけないのよ。いや、使ってもいいんだけど暗黙のルールで使わないっていうか、真なる『二航戦』ではないというか。まあ、端的に言えば二航戦称号戦ってのは私らみたいな飛龍と蒼龍のコンビが集まって、トーナメント形式で『二航戦』の称号を争う非公式な大会のこと」

 

「非公式なんですか?」

 

「まあねー。イベントがない間はヒマだからって有志が立ち上げたのがそもそもの始まりらしいよー」

 

 蒼龍が古鷹さんのもっともな疑問に補足をするっと入れた。ちなみにこんな感じで他にも一航戦や五航戦、その他諸々いろんな称号戦は開かれている。

 

「あれ、じゃあ比翼の二航戦の『二航戦』は……」

 

「勝手に名乗ってるだけだよ? ちょっと前に勝ち取ったのをいいことに名乗り続けてるだけ。正式には使えないから口頭で使ってるんだけどね」

 

「え、でもそれって優勝したってことじゃないですか!」

 

「正確には4回前の大会ね。それ以降は出場してないから『二航戦』の名前は放り出してるの」

 

 蒼龍が余計に盛り上げるから純粋に「すごい」一色で見つめてくる古鷹さんに対して、先にちょこっと制止をかけておく。私はやめようって言ったんだけど蒼龍は1回は勝ち取ったんだし、勝手にやるくらいいいじゃんという謎の理屈で以後はそのままになってしまっている。

 

「もう出場してないんですか? あ、予定が被ってしまった、とか……」

 

「ちょっといろいろあって……」

 

「違うよ? めんどくさいだけ」

 

 思わず蒼龍の頭を8割の力でスパーン! とはたいた。こっちが濁そうと思ったことを臆面もなく言わないでほしい。まったく私の相棒はどうしてこう、口が軽いのだろう。

 

「わー、ひりゅー暴力はんたーい」

 

「うるさい。いっつも勝手に話すんだから」

 

「あ、あの……もしかして私って聞いちゃいけないところまで聞いてしまいましたか……?」

 

 ほら見たことかと蒼龍に対して心の中だけで恨み言。古鷹さんが気にしやすい性格だから考えて話を進めたかったのに、蒼龍のせいでめちゃめちゃだ。

 

「話せないことじゃないから全然大丈夫。もうちょっと順序よくやろうとしてたのを蒼龍が端折りすぎただけどから。まあ、ぶっちゃけちゃうと蒼龍が乗り気じゃなかったから出てないってだけなんだよね」

 

「そうなんですか。なんだか飛龍さんがとっても憂鬱そうだったので心配しちゃいましたよ」

 

 やっぱりちゃんと見てるなあ、この人。確かに憂鬱なんだよ。なんたって私は板挟みなんだから。

 

「憂鬱ってのいうは正解。とりあえず、まずはこれを見てみて」

 

 可視化したウィンドウでメッセージを開くと古鷹さんに見せる。古鷹さんは身を乗り出して覗き込んだ。

 

「えっと……『今回こそ出なさい』ですか。え、これだけなんですか。運営からのメッセージだとしたらいくらなんでも雑すぎますよ」

 

「違うよ、もちろん。運営からのメッセージはもっときちんとした体裁で送られてくる。このメッセージの送り主は『灰燼の二航戦』ってコンビ。私らが4回前の大会で二航戦の名前を奪うまで、ずっと二航戦を守り続けたトッププレイヤー。ついでに私らが出場した1回以降、ずっと首位を守ってる」

 

「リベンジがしたいってこと、でしょうか……?」

 

「正解。『灰燼』は自分たちに黒星をつけた私ら『比翼』とまた大会で戦いたいって思ってる。でもね、蒼龍が乗り気じゃないのよ」

 

「や、めんどうだし、1度は取れたんだからもういいかなって」

 

 ほら、これだ。私は別に出ることはやぶさかじゃない。ただ蒼龍は基本的にやる気を出さなければ、まったく結果が伴わないタイプだ。雑な戦闘をする蒼龍に勝ったところで向こうは手を抜かれたと思って怒るに決まってる。もちろん、連続で大会をすっぽかしてる今でも十分に怒ってるのは知ってるんだけど。

 

 『灰燼』の気持ちはわかる。自分たちと対等以上にやり合えるプレイヤーが見つからなかった中、いきなり現れて自分たちから二航戦の名をかっさらっていった私ら『比翼』とは是非とも再戦したいのだろう。しかし蒼龍にその気がないのもわかっている。出たところで『灰燼』が満足いくような試合をできる自信が私にはない。全力の戦闘を望んでいる向こうからすると、手抜きされたように感じるはず。そしてそれは相手に対する侮辱だ。

 

 だから私はお茶を濁すことで逃げてきた。それも連続で4回。ただやる気のない蒼龍と『灰燼』が当たることのないように。

 

 そんなわけで私は板挟み。そりゃ、憂鬱にもなるってものだ。確かに毎回参加するのは私だって面倒だ。でもたまに参加するのはいいんじゃないかと思う。切磋琢磨という言葉もあるくらいだし。

 

「じゃあ蒼龍さんは今回も出ないんですか?」

 

「んー、たぶん出ないよ。ね、飛龍?」

 

「……だろうね」

 

 蒼龍ならそういうと思ったよ。そうわかっていたから、短くしか返さない。やる気のない蒼龍をやる気にする方針は初っ端から諦めている。

 

「そうですか……お二人が活躍するところを見られないのは残念ですけど、無理に出ても楽しめないですよね」

 

 そう言ってさっと古鷹さんは引き下がった。こっそりと内心で私はほっとしていた。出るように言われなくてよかった、と。

 

「古鷹ぁー。そろそろいい時間だしあたしは落ちるねー」

 

「加古が落ちるなら私もそうしようかな。すみません、じゃあお先です」

 

 ひゅん、と古鷹さんと加古さんの体が電子コードに分解された。気づけばイムヤちゃんもヴェルちゃんも落ちていたようでクランルームには私と蒼龍しか残っていない。当然そうなると流れは決まるわけで。

 

「んじゃ、私も落ちるね。また明日ね、飛龍」

 

「はいはい。また明日ね」

 

 蒼龍もいなくなったクランルームでひとり、私は佇む。思い返すは2人で優勝したあの時。あの感慨深さはひとしおだった。

 

「今回も辞退かな……」

 

 それだけ呟いて、私はメニューを開くとログアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうもこんにちは。古鷹です。特に何か目的があるわけでもなく、ぶらっと歩いていた古鷹です。いえ、他の艦娘(プレイヤー)が集まるところを見るのって楽しいんですよ。なんだかこう、個性のごった煮闇鍋みたいな感じで。ああ、褒め言葉ですからね?

 

 私のような『古鷹』のプレイヤーもそこそこに見ますけれど、いろんな古鷹がいるものです。あの眼帯をつけてる古鷹とかすごいですね。古鷹のインナーみたいなぴっちりとした服で全身が覆われてます。あれは大丈夫なんでしょうか。具体的にはレギュレーション的に。なにをどうこじらせてそこに辿り着いたのかは謎ですが、垢BANされていないということは運営は見逃しているのでしょう。まあ、このゲームの運営は緩いですし。

 

 こんなふうに面白い発見もできるのでわりと私はこうしてふらつくのが好きだったりします。今日は加古が遅く上がるらしいので、それまでのちょっとした退屈しのぎですね。

 

 ところで犬も歩けば棒にあたる、という言葉をご存知ですか。本来はでしゃばると痛い目に遭うという意味らしいのですが、最近では別の意味で使われたりもします。

 

 何かをしていると思いがけないことに遭遇する、とか。

 

「ごめんなさい。クラン『イーリス・アイリス』のクランマスターの古鷹さんだとお見受けします」

 

「はい、どうかされ、ました、……か?」

 

 いやいやいや。なんで。なんでこのタイミングで『灰燼の二航戦』ですか。おかしいでしょう。さしもの私ですら知っている一流プレイヤーが、どうして私なんかに声をかけるんですか。私、重巡洋艦なんです。空母じゃありませんよ?

 

「えっと、なんでしょうか」

 

「急に声をかけてごめんなさい。通りがいいので通称を使わせてもらうけれど、私は『灰燼の二航戦』の蒼龍です」

 

「同じく『灰燼の二航戦』の飛龍です」

 

「ど、どうも丁寧に……古鷹です」

 

 灰燼、なんて厳つい二つ名を持っているのでどんな苛烈な方々なんだろうと思っていましたが、想像していたよりもずっと礼儀正しい人たちでした。こういう場合って私も『双撃』の古鷹って名乗るべきなんでしょうか。だいぶ恥ずかしいので、ご勘弁いただきたいんですけど……。そもそも自分から名乗ったわけじゃないですし。

 

「どうかされましたか?」

 

「そちらのクランに『比翼』がいると思うんですけれど、今回はタイトルマッチに出てきてくれそうかな、ということをお聞きしたくて」

 

 『灰燼』の蒼龍さんが尋ねてきたことは腑に落ちるものでした。わざわざメッセージまで送って催促しているんです。クランマスターに接触して聞いてきても不思議はありませんでした。

 となると、答えにくいものです。嘘を言うわけにもいかないので、正直に答えますけれど、その返答は否定なんですから。

 

「えっと、ですね……あまり、芳しくなさそうです」

 

「そう、ですか……」

 

「今回も諦めようか、蒼龍。次回に出てくれることに期待しよ?」

 

「うん、そうだね……古鷹さん、お手間を取らせてどうもすみません」

 

「あ、あの!」

 

 肩を落として立ち去ろうとしている『灰燼の二航戦』を思わず私は呼び止めました。不審に思ったのか、はたまた単に呼び止められたせいか。とにもかくにも『灰燼』は立ち止まってくれました。

 

「どうして『比翼』にこだわるんですか?」

 

「どうして、ですか。決まってますよ」

 

 蒼龍さんが笑って言いました。でも、まったく目は笑っていません。ただそこには闘志が燃えています。

 

「『比翼』は私たちを破った唯一の二航戦なんです。あれがまぐれだったのか、それとも私たちの実力不足による必然だったのか。それを私たちは知りたい。もし、実力で競り負けていたとしたら……」

 

「したら、どうなんですか?」

 

 思わず唾を飲み込みました。先が気になっただけじゃありません。確固たるものをそこに感じて、気圧されたんです。

 

「越えるまで、でしょう。今まで私たちと対等以上に張り合えた二航戦はいなかったんです。でも『比翼』は私たちに勝った。だから私たちは『比翼』に挑みたいんです。限界まで出し切っても、なお及ばない相手に勝利するってわくわくするじゃないですか。負けたからこそ、勝ちたいんです。最強ってそういうものじゃないですか」

 

 となりで無論と言わんばかりに頷く飛龍さん。この二人が『灰燼』と呼ばれる理由がわかった気がします。きっとプレイスタイルから名付けられたものなのでしょう。でも、それだけじゃないんです。純然たる闘志と勝利への渇望、そして攻めの気性がこの人たちを『灰燼』たらしめているように私は感じました。

 

「『比翼』に伝えてください。『灰燼』はずっと待っている、と」

 

「そして次こそ勝つ、とも」

 

 立ち去る『灰燼の二航戦』を前にただ私は硬直することしかできませんでした。まるで『灰燼』の持つ熱にあてられてしまったように。

 





まあ、まだ始まりなのでアクセル控えめです。少しずつかけていければな、と思います。

しかしここでちょっと問題が。そろそろ書き溜めていた原稿がなくなりそうです、はい。今のところは書き上げられていたものを2、3日かけて軽く修正をかける形で投稿してきましたが、いい加減にストックがなくなります。
どこかで真面目に原稿やらないといけませんね。私、プレリュードの努力にご期待ください! 私自身が一番期待できませんけどもね! はっはっは!

 真面目に原稿してきまーす。
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