バフデバフ   作:ボリビア

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反転術式

 後日、というか歓迎会の次の日夜蛾学長から呼び出されて改めて一級審査について説明を受けた。

 確か、推薦には二名以上の推薦が必要らしいがどうしたのだろうか?

 一級術師との交流なんてしたことないんだけど。

 

「君を推薦したのは私と日下部篤也一級術師という事になっている。」

 

 日下部という人は確か二年生の担任のはず。

 というか、なっている?

 

「…情けない話だが、君が先日北海道で祓った一級呪霊は本来、日下部がいく予定だったが五条が代わると言って了承してしまった。」

 

「あー、なるほど。同じ悟としてなんか、すみません。」

 

 要するに、日下部さんは騙されたのだろう。

 五条先生が代わりに行くといい蓋を開けたら俺が単独で祓った。しかも、春休みの間バンバン俺が祓いまくっていた事を話したのだろう。

 特級である五条先生だが自身の生徒への推薦権はないから、二人を脅したのだろう。

 いや、五条先生風に言うならお願いしたのかも?

 

「だが、君が一級呪霊を祓ったのは事実。

 高専としても優れた呪術師には然るべき地位を与えられるべきだと思っている。

 改めて、一級の審査を受ける気はあるか?」

 

「勿論、今の所五条先生の教育方針は信用出来ますからね。」

 

 どうでもいいが、取って欲しいというなら取っておこうというのが本音だ。

 力を思いっきり奮えればそれで良い人間としては4級だろうが何だろうが、強い呪霊がいるなら勝手に赴くだろうな。うん。

 

「分かった。では京都に向かってもらう。

 俺と日下部が推薦した時点で必然的に京都呪術校で君の審査は行われる。

 気を付けろ、あっちで五条悟は嫌われている。」 

 

 まあ、五条先生の名前が無くても東京高専の一般人出身の一年生が一級の審査を受ける。

 しかも推薦人が学長と教師だし別の施設で審査を行うのは当然だろう。

 そして、五条先生が嫌われているのも当然だろう。

 俺も呪術師について学び始めたばっかりだが、あの人は良くも悪くも異端児だ。

 しかも、家柄も力もヤバイのだからその他大勢にはいい迷惑なのだろう。

 

「手配の関係もあって京都には三日後に向かってもらう。

 それと、悟から聞いているだろうが最低でも一月はかかると思うから準備しておいてくれ。」

 

「最低でも、ですか?」

 

「ああ、一級との任務自体は問題ないが、その後の単独での任務がな。」

 

 なるほど、試験は確か一級との任務を数回行う一時審査と単独で一級案件を行う二次審査がある。

 恐らく、一時審査の結果から二次の一級案件を選択するのだろう。

 にしても、京都か。

 中学校の修学旅行沖縄だし行った事ないな。

 学長の元から立ち去り、真希先輩に木刀の指導をしてもらう為に歩いていると、曲がり角から五条先生が現れた。

 

「あ、いたいた。

 ちょっと来て。」

 

 連れてこられたのは、北海道でも見た死体安置所の様というか正に安置所だ。

 恐らく被害者の死体を解剖して呪霊の能力や強さを分析する為だろう。

 

「また、死体を見るんですか?」

 

「ちがうよ、ここの主に会ってもらうのさ。」

 

「君が悟の愛弟子の悟か、ややこしいな。」

 

 後ろから声を掛けられて振り向くと隈のある白衣の女性が入り口にいた。

 

「此方、家入硝子、東京高専唯一の医者で反転術式の使い手で僕の同級生でーす。」

 

 反転術式とは本来マイナスの力である呪力を掛け合わせてプラスの呪力にする事で治癒や術式効果を逆にする事が出来る超高等テクニックな技術だ。

 

「どうも、轟悟です。

 そこの人と被るんで轟って呼んでください。

 愛弟子って何です?」

 

「ああ、宜しく。

 噂になってるよ、入学前から五条悟が面倒見てる生徒がいるって。

 そんな事より、さっさと本題に入ろう。

 君は自分の傷を癒せるって本当かい?」

 

 俺の術式で細胞の修復力とでも言うべきか、そういうパラメーターを伸ばすことで傷を塞ぐ事が出来る。

 何となく、五条先生が俺を家入さんと引き合わせた訳が分かった。

 解剖台の近くにあったメスを借りて腕に切り傷を付けてから術式で傷を塞ぐ。

 家入さんはじっとその過程を見た後、更に大きな傷を治してくれと言われたので、メスで何度か切り傷を作り治していく。

 

「ふむ、失礼。

 あ、治さないでね。」

 

「痛って!」

 

 ぶちりと音を立てながら治した部分をピンセットのような器具で引きちぎられた。

 家入さんは採取した細胞に興味深々で溶液に浸したりしながら観察している。

 ハンカチで傷を押さえながら待っていると顕微鏡から顔を上げたら家入さんが此方を手招きしてくる。

 

「結論から言うと、その術式による回復はオススメ出来ない。

 まだ肉眼でしか確認してないから絶対とは言えないけど再生した細胞はボロボロね。

 最悪、癌細胞になるよ。

 一応、血液検査しとくか。」

 

「…。」

 

 言葉が出ない。

 確かに呪力は負の力であると教わってから疑問に思ってはいたが、癌細胞になる可能性があるとは思わなかった。

 

「うん、やっぱりね。

 轟の術式的に十分可能だと思ったけど呪力は破壊の力、細胞を治すのは難しいからね。」

 

 ここに来てから傷を負う様な事はしてないので、殆ど使ってないが、小学生の頃良く使ってたからなー。

 というか知ってたら教えようぜ五条先生。

 

「そう、恨むような目で見ないでよー。

 大丈夫だったんだし。

 さて、ここからが本題。

 轟には反転術式を覚えてもらいます!

 反転術式は良いよー、24時間術式回せるようになるし、頭刺されても治るし。」

 

「人かそれ?」

 

 

 

 

 

 




家入さんの口調あんまり分かんない。

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