移動する車の中から京都の街並みを眺める。
日本有数の観光地として栄えている京都には多種多様な人種が神社仏閣、日本の歴史を体験しに集まる。
やれ新撰組、忍者、芸者、スキヤキ。
目的は違えど、老若男女の欲を満たせる観光地は中々無い。
因みに、人生初京都だったりする。
中学生の修学旅行の行き先は沖縄だったし、歴史に対して興味が無いため高専に入らなかったら一生行かない可能性がある。
観光客溢れる姿をこの目で改めて見ると、二重の意味でやはり行かなくて良かったと思う。
人混みが苦手なのもあるが、人は群れると騒がしくなり、京都の厳かなイメージをぶち壊している。
それと、比較的陽気に満ちているが呪術師として自覚した今の俺では漂う呪力が鬱陶しい。
東京よりマシだが此方は此方でかなりの負を感じる。が、ちらりと車内に目を向けて、隣にいる三輪先輩を見ると一切動じずに前を見ていた。
車内に会話はない。
京都駅での一件の後、お互いに気まずい空気で自己紹介をして車に乗り込んだが、そこから一切会話はない。
あのアホゴリラの言動に対するリアクションから気難しい人では無いんだろうけど車に乗ってから、仕事出来る人感だして何か話しづらいのだ。
そういうわけで再び外へと顔を向けているのだが。
(ただなぁ…。)
チラ…
チラ…チラ…
チラ…チラ…チラ…
時折というか、結構な頻度で視線を感じる。
視線の主はどう考えても先輩なのだが、此方が顔を向けると仕事出来る人モード。
まともそうに見えたが、どうやら彼女も立派な呪術師らしい。
京都の高専に着くまで無視しても良いが、一応お世話になる学校の先輩であるし、仲良くしておいて損は無いだろう。
「あの、何か用ですか?」
「…。」
まさかの無視。
「いや、無視してもさっきから結構な頻度で視線感じてるんですけど。
仕事出来ます感出してますが、鍍金剥がれてますから。」
「視線なんて向けてませんが?」
「いや、車走り出してから興味ありますって視線バシバシ来てましたから。」
流石に誤魔化すのは無理と悟ったのか、小声でボソッと。
「……五条悟の弟子って本当ですか?」
(なるほど、そうきたか。)
どうやら、彼女は反五条派の人間から送られてきた刺客らしい。
いくら呪術師とはいえ学生を使うとはちょっとモラルが欠けてるのでは?
まあ、五条先生が困ろうと俺には関係が無いというか、あの人ならどんな嫌がらせも倍にして返すだろうからペラペラ喋っておこう。
もしくは俺の早とちりで単純に噂好きなだけかもしれないし。
「弟子というか、俺がパンピー出身なんで色々と呪術について教わっただけですよ。
まあ、教師と生徒って関係だから弟子とは呼べなくはないでしょうが。」
実際、あの人から教わった事ってあんまりない。
呪霊の発生原因とか術式の解釈くらいで呪術師業界の事は伊地知さんから教わったし、武術については真希先輩から教わってるし。
いやでも実践経験積ませてくれたのは五条先生か。
「弟子ということは、五条悟さんの好物とか詳しいんですか?」
はい、只の五条ファンでした。
あの人背も高いしカリスマ性あるからファンが多いって伊地知さんから聞いていたが実物は初めて見た。
普段の姿を知っている身からしたら、ファンとかあり得ないけど普段会わない人間からしたらカリスマ性と最強という称号、あと若いから虜になってしまうんだろう。
(現物見せてやりてー。)
とりあえず質問に答えるか。
「五条先生は術式が結構繊細で頭使うから甘いものが好きですね。
特にザラメを口一杯に放り込んで、熱々のコーヒー飲むのが好きみたいですよ。」
「なるほど、ザラメ…!」
必死にメモしているが、半分嘘である。
ファンから差し入れとしてザラメを渡されて困惑する五条先生が見たいと思い、つい口が滑ったのだ。
その後も五条先生のプライベートな情報を嘘と僅かな真実で埋めていく。
普段知れないプライベートに興奮しているからか、必死にメモを取る姿につい嘘が加速する。
後からメモを見返せば、可笑しい点は多々あると思うが、『五条悟だから。』というある種の信仰が疑うことを止めるだろう。
一つ残念な点が有るとすれば、この仕掛けが何時何処で効果を発揮するか分からない事だ。
出来れば間近で見たいが、まあ見れなくても多分暫く首を傾げるだろうから、その姿くらいは見れると期待しておこう。
最終的に家の中に地上三階から地下五階まで落ちる滝がある家に住んでる事になった辺りで京都校に着いた。
主人公の呪術師の基準が変人かどうかになってる気がする。