アニメが再び始まったり本誌が渋谷事変が区切りついたのでぼちぼち再開しますん。
三輪先輩に案内された場所は、高級旅館かと一瞬思ってしまう程落ち着いた応接室であった。
「楽巌寺先生、轟悟君をお連れしました。」
「うむ、ありがとう三輪。
さて、席に座りなさい。」
三輪先輩は一礼と共に退出し、俺は中にいたぬらりひょん、訂正、呪術高専京都校学長の楽巌寺学長に促されて目の前の席に座り、自己紹介を行う。
「初めまして。
都立呪術高専より一級審査を受けに参りました。
一年の轟悟です。
この度は受け入れありがとうごさいます。
こちら、夜蛾学長からです。」
「おお、わざわざありがたい。
それに、礼儀正しいのぉ。
五条悟の弟子なら移動中に食ってしまうかと思ったが。」
流石京都、口を開けば皮肉が出てくる。
「随分、噂が広まってるみたいですね。
確かに基本の手解きを受けましたが、それだけです。」
「ほう、では一級の試験を受ける程の実力は己で掴み取ったと?」
ジロリと、くぼんだ眼を開き睨むように此方を見定めてくる。
厳しさはあるが、悪意はない。
なるほど、五条先生を心底嫌いでも教師としてのプライドはしっかりあるらしい。
「まあ、そうですね。」
正直、俺は一級がどれだけ凄いのか良くわかってない。
五条先生以外の呪術師の強さが良く分かってない。
真希先輩との稽古はしてるがお互い本気じゃないし、真希先輩は天与呪縛という例外的な強さだ。
故に全うな呪術師を知らない俺は一級呪術師の実力を正確に把握出来ていない。
まあ、五条先生が特級だからその次位には強いのだろう。
「…特級とは斜めに外れた位置に存在する例外的存在。
一級こそ呪術界を牽引していく存在だと儂は考えておる。
術師に成り立ての小僧には荷が重いと思うが、せいぜい頑張ると良い。」
「応援ありがとうごさいます。」
なるほど、規格外はあくまで規格外。
集団の模範にはならないし、目標足り得ないという事だろう。
遥か彼方、霞みの先にいるのが特級なら一級は同じ道を走る先駆者って感じだろうか。
(…という事はもしかして俺は全力を出さない方が良いのか?)
いや、でも俺は術式がおかしいだけで他は多分普通だし、大丈夫かな?
学長との話も終わり、廊下で待機していた三輪先輩と共にお世話になる寮へと向かったのだが。
「…豪華ですね。」
「大きいですよね!
御三家含めて京都には歴史の古い呪術師の家が数多くあるので、屋敷も多いらしいです。
ここも元は別荘だったらしいですよ!」
一般出身のミーハー感全開の三輪先輩の解説を聞きながら寮を眺める。
東京のザ・学生寮とは違い、京都の名に恥じない伝統と趣を感じる屋敷が京都高専の寮。
正直、権威主義を感じて少し引いている。
「では、私はここで。
中の事は待機している加茂先輩に聞いて下さい。」
「案内ありがとうごさいます。」
(今さらだが、三輪先輩って普通過ぎるよな…)
さっきの解説やら五条先生のファンやらどことなく性格の良さが滲み出てる。
俺の知る呪術師は大体頭が可笑しいというか、根っこの何処かしらネガティブな部分があるのに彼女からはそれを感じない。
(もしかして彼女みたいのが普通で東京側が異端なのか?)
五条先生が教師やれてる時点で可能性としてはあり得なくはない。
もしかしたら呪術師って意外と良い奴多いのではという説を考えながら、寮の扉を開けると既に黒い神主みたいな服を着た男の子が立っていた。
木造の上品な玄関とミスマッチしている気がしなくもないが、着ている人間の佇まいが上品なおかげで違和感は少ない。
「君が轟悟君だね。
私は三年の加茂憲紀、君の案内役を学長から仰せ付かっている。」
「一年の轟悟です。
よろしくお願いします。」
(加茂…
御三家って奴か。)
禪院家、五条家、加茂家は呪術業界では古くからある家系でプライドが高いらしい。(五条家は当主がアレなので除く。)
禪院家なんかは術式も呪力も無いというだけで真希先輩に嫌がらせするような所だし。
「そんなに畏まらなくても良い。
学年は私が上だけど、一級の審査を受けている人間という立場から考えて対等みたいなものだよ。」
素直に驚いた。
まさか肯定的な言葉を聞けるとは思わなかった。
…もしかして京都流の皮肉なのだろうか?
「失礼全開で聞きますが、御三家の割には実力主義なんですね。」
「家名が長く残るという事はそれだけ、実力を示してきたという事でもあるからね。
禪院家はともかく、加茂家、というか次期当主たる私自身はそこまで拘りは無い。
さ、寮を案内するよ」
なるほど、御三家としては余り良く思われてないけど個人的にはそこまで気にしてないと。
(深読みかも知れないけど、まあ所詮審査受けてる間の話だし別にいっか。)
部屋に案内されるまで誰とも合わないのは恐らく京都校も生徒が少ないのだろう。
「それと、皆君に興味があるらしくてね。
顔合わせも兼ねて今夜歓迎会を開くからよろしく頼むよ。」
「ぶぶ漬けは勘弁ですよ。」
「それは君次第かな。」
あ、本当にぶぶ漬け出す文化あるんだ。