昨日はクソだった。
あの後歓迎会は会話も無く全員が速やかに席を立つ形で解散した。
俺と奴を残して。
その後は奴の部屋で高田ちゃんとやらの去年の夏に販売された写真集やらライブ映像、CM、出演番組を全て見させられた。
確かに去年の夏の高田ちゃんは俺好みの引き締まった体をしていたのは認める。
それをバカに伝えたら。
『やはり去年の夏の高田ちゃんが良いか、では此処から最新の高田ちゃんまで見てもらおう。
道は長いが心配するな、俺がいる。』
死んでくれ。
五条先生からの課題で常に術式を回して、術式による脳へのダメージを反転術式で癒しているから眠気なんてモノは皆無だが何で京都にきて俺はゴリラと色物アイドルの映像を見なくてはならないのだろうか。
『お前と女の趣味は似てるが、高田ちゃんに興味無いんだが?』
『そう邪険にしないでくれ、ここの連中は女の趣味が悪くて布教の機会がなくてな。』
それは多分お前が悪いと思う。
そして朝になった。
回想終了。
「さて、マイフレンド。
恐らく最初に審査員として見極めるのは俺だろう。
そこで先ずはお前の強さが知りたい。」
朝になり漸く布教活動が終わったと思ってたら、いきなり真面目な話をするな。
「先ずはお前の布教活動に付き合った俺を労れ。」
「マイフレンドが疲れてない事は把握している。
顔色を見る限り無理をしているとかではなく、疲労を常に反転術式で回復しているのだろう。」
話を聞け。
「反転術式を使える時点で感涙に値するが、それだけでは一級になれん。
それに俺とマイフレンドは何時か背中を任せ合うような事があるかも知れない。
故に実力が知りたい。」
「わかったから取り敢えずシャワー位浴びさせろ。」
シャワーを借りてさっぱりした後、東堂の案内で学校の外れ庭園の様な場所にたどり着いた。
地面には玉砂利が敷き詰められて、所々に岩が設置されている。
確か、枯山水とか言うんだけっか。
そこで俺と東堂は適度な距離で相対する。
(さて、相手はバカとはいえ一級。
一級呪霊に対して優位に戦える実力があるって事だ。)
俺が東堂に対して不利な点は2つ、1つは素のフィジカル。
あの筋肉に呪力をブーストした一撃を術式使わずに受けるとヤバい。
もう一つの不利な点は場数が違うって事だ。
呪霊退治なら経験値積んだけど、術式ありの対人戦の経験は無いに等しい。
「よし、マイフレンド打ってこい。」
「なら遠慮なく。」
『加点法 神級』
放つ一手は正拳突き。
俺以外が止まって見える速さ、並みの術師ならこの時点で勝敗が決まると確信する一撃、だが東堂は拳が届く直前に消えた。
(消えた…?)
違う、消えた様に見えるが宙に玉砂利が浮いている事に気付いた。
玉砂利は奴の呪力を帯びている。
(拍手による入れ替えが東堂の術式…!)
消えた東堂が後ろにいるのは肌で感じ取れている。
正拳の姿勢から裏拳を後ろに放つ。
拍手
裏拳が空を切る。
今度は俺と自分の位置を入れ替えたのか。
なるほど、呪力を帯びた物なら何であれ術式の対象なのか。
意識して見れば、既にあちらこちらの玉砂利に呪力が付与されている。
自分と玉砂利、自分と俺、俺と玉砂利を拍手によって移動させる。
つまり…
「テメーのホームグラウンドで戦うって随分じゃないか?」
「己の術式を最大限生かす場を作り出すのは当然の事。
それよりマイフレンド、今のが本気か?」
「なわけねーだろ。」
更にギアを上げて震脚を放つ。
本来なら反動を利用して次の技の威力を上げるそれは、俺が使う場合全方位への衝撃波を起こす立派な技になる。
敷き詰められた玉砂利がめくり上がり吹き飛ばされる。
条件付きではあるが強制的な位置移動、東堂の術式範囲はそれほど広くないはず。
震脚の反動で空に飛んで上から東堂を確認する。
(いない…?)
パパパン
複数回の拍手の音と同時に背中に衝撃が走り地面に叩き付けられる。
振り替えり上空を見ると東堂が踵落としをした事がわかった。
なるほど、複数の石を投げて術式で飛んだのか。
「なるほど、マイフレンドの術式は強化か。」
空から降りてきた東堂は追撃をしてこない。
模擬戦はここまでという事だろうか。
「開示してやろうか?」
既にバレた術式で開示による縛りを付与するには事細かに説明する必要があるが、俺の場合術式がシンプル過ぎて多分意味の無い底上げになるな。
「いやいい、それより今のも本気ではないな。」
「模擬戦だしな、本気なら5秒で東京に帰れる位は出来るし、東京タワーだってぶん投げれる。」
やった事無いけど。
「なるほど、マイフレンド。
お前は俺より強い。
そしてその強さは既に特級に至っていると俺は考えている。」
「そうか?」
「さっきの空中での俺の一撃。
あれは俺の本気だった。
俺は去年、特級を祓ったがその時に出した一撃をお前に喰らわした。
それでもなおマイフレンドに傷がつかない時点で俺がお前に勝てる見込みはほぼない。
おそらく俺が黒閃による不意打ちでもしない限り勝てないだろう。」
なるほど、確かに東堂の呪力は開始時より大分落ちている。
それに黒閃か。
さっきの威力が2.5乗されたら確かにヤバいかもな。
けど俺には反転術式もあるわけで、そう考えると東堂の意見もわかる。
「術式で強くなるのは筋肉だけか?」
「いんや、神経系や内臓、脳ミソだって強化出来る。
だからこういうのもイケる。」
恐らく人類史上初というか誰もやらないふざけた行い。
黒閃凸ピンを披露して見せた。
これには流石の東堂も眼を見開いている。
「ま、こんなこと出来てもNo.1にはなれないけどね。」
俺の術式一本では五条先生を越える事は出来ない。
多分、星が壊れるような一撃でも届く気がしない。
「五条悟を越えるならば、領域展開を習得する他ないだろう。」
五条越えという呪術師にとってジョークにしか聞こえない俺の考えを疑わない辺りやっぱり東堂葵は普通じゃない。
「領域展開だけじゃ足りない。
絶対対策取ってるだろうし、あの人も領域展開を持ってるからそれだけじゃ負けるよ。」
仮に領域に引き込めたとして、とんでもない呪力量によるガードをされて五条先生の領域に押し潰されるのが目に見えている。
「なるほど、ならば提案がある。
もう一度、俺と死闘をしよう。
マイフレンドに足りない物は応用力だと今の組み手で確信した。
五条悟以外の術師なら恐らく術式だけで圧倒する事が出来るだろうが五条悟を越えるならば、応用力の無さは致命的だ。」
なるほど、確かにその通りだ。
「理屈はわかったが何で死闘に繋がる?」
術式を制限して戦うだけならわざわざ死闘である必要はないだろう。
「簡単だ、術式が強すぎるなら術式に制限をかけて戦えば応用力は必然的に身に付く。
反転術式を覚えているなら術式反転も使えるだろう。
…死闘の理由は単純明快、血肉沸き上がる戦いに勝る経験なし!!」
「俺は傷を治せるがお前は良いのか?」
「何、これは俺の為でもある。
轟悟という強者を全力で喰らう事でより高みを目指せるからな。」
「なるほど、お前の壁になる代わりに俺はお前から経験を得るって訳か。」
上着を脱いで上半身をさらして構えを取る東堂。
既に消費した呪力を回復し、さっき以上に全身に漲らせている。
まだ同意していないのだが、もはやこいつは止まらないだろう。
(それに、言い分に納得がいくのも事実。)
此方も構えを取り、術式を走らせる。
強さは東堂に並ぶ程度。
俺はこの縛りの中で術式を生かす技を覚える。
「…行くぞ、ブラザー。」
「…ああ、殺ろうぜブラザー。」
報告
許可なき学生同士の術式を用いた私闘及び校内の敷地を著しく破壊した以下の二名を府立京都呪術高等専門学校学長及び都立東京呪術高等専門学校学長の名において1週間の停学処分とする。
三年 東堂葵
一年 轟悟
以上
最後の文書はスマホにあわせているのでPC版の方は読みにくいかもしれません。
申し訳ありません。