バフデバフ   作:ボリビア

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ハンバーガー

「よーお、停学野郎。」

 

「それ流行ってるんすか。」

 

 次の日、任務から帰ってきた真希先輩と一緒に高専の武器庫へと訪れた。

 準一級になるのは明後日からなので貸し出しはされないのだが、暇なので確認したいし真希先輩と会いたいからしかたないね。

 武器庫には四級から特級までの位で分類されて管理されており、今回は真希先輩の権限でお邪魔している。

 真希先輩の位は四級だが天与呪縛という特異体質と五条先生パワーで武器庫へのアクセスは特級まで出来る。

 目録を見ながら使えそうな呪具を真希先輩の権限で取り出して試してみようという訳だ。

 

「お前なら何でも使えると思うけど、どんなの欲しいんだ?」

 

「昨日、パンダ先輩と話したんですけど俺の場合攻撃より防御を重視した方が良いかなって思うんですよね。」

 

 攻撃面に関しては東堂との戦いから問題ないと思うが、防御面には少し不安がある。

 物理面ならともかく、物理的破壊を伴わない呪術の場合すこし心配な点がある。

 例えば、狗巻先輩の呪言は認識した時点で効果が発揮される為、呪言の内容によってはいくら身体能力を強化しようと致命傷を負う可能性がある。

 

「真希先輩はどうしてるんですか?」

 

「アタシはコレだな。」

 

 懐から藁人形を取り出して見せてくる。

 

「身代わりですか。」

 

 藁人形にはおそらく真希先輩の体の一部が入っている筈だ。

 人型の人形に呪いを肩代わりさせるのはある種のポピュラーな話だが本当に実在するとは思わなかった。

 

「使い捨てだし、普通は呪力でガードするから需要少ないしで足元見やがってクソ高いんだよな。」

 

「でもそれ不意打ち対策としては結構使えますね。

 いくら位するんですか?」

 

 俺の質問に対して真希先輩は黙って指を三本立てて来た。

 三本という事は0が3つ、つまり100万位はするらしい。

 うん、無理。

 

「…マジですか。」

 

「一応、学校が半額出してくれてるけどな。

 後、これ自分に影響ある呪術に反応するからお前使えねえぞ多分。

 おとなしく、ごり押しで解決しとけ。」

 

「えぇ…。」

 

 欠陥品過ぎる…。

 頭を呪力でガードしてそれ以外は切り捨てて新しいパーツを再生させるしかないらしい。

 呪われた部分を術式反転で崩して反転術式で新鮮な状態に戻す練習をしておこう。

 

「…防御面は一先ず諦めます。

 じゃあ出ますか。

 お礼、ジュースで良いですか?」

 

 となると、武器庫に来た意味が失くなってしまった。

 武器に関しては昨日のパンダ先輩との話し合いで木刀一本で問題なしと結論が出ている。

 

「昼時だし、外に食いに行こうぜ。」

 

「自分停学野郎なんですけど。」

 

「飯食う位大丈夫だろ。」

 

 一応表向きは断ってるが真希先輩とランチと校則、どちらを優先すべきかは明らかである。

 武器庫を出て二人で校門へと向い歩いていると、前から伏黒が歩いた来た。

 いつの間にか京都から戻ってきたらしい。

 

「よお、恵、飯行こうぜ。」

 

「真希先輩に轟か。

 飯はいいんですけど、轟は停学中ですよね。

 流石に学外は不味いですよ。」

 

「なら僕がいれば問題ないよね、教師が監督してればオッケーでしょ。」

 

 後ろから聞いたことある声がして振り返ると、やっぱりいた。

 伏黒がいる時点で京都から帰ってきているだろうとは思っていたが。

 五条先生の登場で真希先輩と伏黒が顔をしかめる。

 この人との会話は大事な事以外ほぼくだらなくてどうでも良いことをずっと喋るから疲れるのだ。

 俺も正直断りたいが、五条先生の言い分は間違ってなく五条先生がいたほうが問題なく外出出来る。

 

「はぁ、しょうがねぇ。」

 

 真希さんが決断して、四人で昼食をとる事になった。

 向かった先は高専から一番近いファストフード、ハンバーガーチェーンとしてはすこしお高目な所だ。

 五条先生が来る時点で奢り確定なので、全員一番高いメニューを頼んだ。

 ここでの話題は京都での話になった。

 

「そういえば、真依は元気だったか?」

 

「あー、俺は歓迎会でしか見てませんけど健康状態は良かったと思いますよ。」

 

「禪院先輩なら俺も会いましたけど、不審な感じは無かったです。」

 

「そっか。」

 

「ねー知ってる?

 揚げパンって海外だとフライパンって言うんだよ。」

 

 真希先輩と真依先輩は双子の姉妹らしい。

 二人はわざわざ別々の高専に通っているから仲が悪いと思っていたが真希先輩は嫌ってる訳ではないみたいだ。

 優しそうな笑みも素敵だ。

 

「そういえば、お前と同級生って話ししたら加茂さんに同情されたぞ。」

 

「はぁ!?」

 

 つい驚いてしまった。

 それはつまり、俺が東堂と同じ人間だと思われているのか…!

 真希先輩と五条先生は伏黒の発言にゲラ笑いし始めた。

 

「あれは、東堂のバカに乗せられたんだよ…!」

 

「乗せられたにしても、敷地ぶっ壊すのはヤバいでしょー。」

 

「一番やりそうな人がそれ言うか!?」

 

 絶対、この人も学生時代にやらかしているだろ…!

 

「いや、僕はちゃんと壊していい場所を壊してたから。

 普通の人間は乗せられてもあそこまで戦わないでしょ(笑)。」

 

「あれ、お前がやったのか。」

 

 ぐ、ぐうの音も出ない…!

 伏黒も俺が何をしたのか知らなかったらしく、敷地をぶっ壊したと聞いて引いてる。

 ちょっと地盤沈下したぐらいじゃん!

 

「それでも、東堂と同じは納得できない…!」

 

 あいつは、人間性に問題があるドルオタだぞ。

 

「あ、そうそう、東堂が番号知りたがってたから教えといたよ!」

 

「お前か、犯人!」

 

 生徒の個人情報を危険人物に晒すな。

 

「まあ東堂のお陰で対呪術師の経験出来たし、おかげで恵を京都に連れていっても面倒事も無くて良かったよ。

 学べたでしょ?」

 

 それはまあ、否定できない。

 東堂の術式は「一定量以上の呪力が宿った物体同士を拍手で入れ換える。」という単純なもの。

 自分と相手、あるいはその他、拍手だけを行うブラフを組み合わせて常に複数の選択肢を迫ってくる。

 本人には絶対言わないが、術式を使いこなす頭脳は尊敬に値する。

 呪術師としてだけは尊敬出来る。

 

(あいつの術式って集団戦の方が向いてるのに、本人の性格が集団向けじゃないって何なんだろう。)

 

「じゃ、僕はそろそろ仕事があるから轟連れて帰るけど二人はどうする?」

 

「ついでに買い物して帰る。

 恵、荷物持ちな。」

 

「じゃあ、本屋よってください。」

 

「よし決まりだな。」

 

 油の付いた指を舐めとる動作もセクシー…は?

 何それデートじゃん。

 

「そっか、じゃ帰るよー轟。」

 

「待って俺もあっちが良い!」

 

「停学中に何言ってるの。

 帰るよー。」

 

 クソが!

 何もかも東堂のせいだクソッタレ!

 交流会で覚えてろよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公の天敵候補その1 釘崎野薔薇

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